#271 デュエルトーナメント個人戦
翌朝、朝食を食べてからログインするとメルたちがいた。イベント結果を聞くとメルとリサはタッグで本選が決まったみたいだ。ミライはダメだったみたい。
というわけで明日はミライと観戦が決まった。
他のみんなでは、与一さんと満月コンビ。トリスタンさんは俺たちとは関係がない人と組み、出場が決まった。アーレイとレッカ、ケーゴとユーコ、チロル、烈風さんが出場が決まった。
召喚師では他にタクマとサンドアントで一緒したアロマ、マヤ。召喚師の交流会でフレンドになったコゼット、ララ、フェルトが決まった。
「結構知り合いが出るな…ん? ルークはダメだったのか?」
「うん…アクシデントがあったらしくてね…フリーティア勢は前のイベントでレベルがだいぶ上がったからね。それに召喚獣の強さが際立っているよ。何人も召喚師とは対戦したけど、大変だったよ」
「あたしたちは召喚師相手なら全勝だったけどね!」
まぁ、メルが召喚獣を引き付けている間にリサが召喚師に格闘戦を挑んだら、勝てるわな。
「今日はリリーちゃんたちを連れていくの?」
「あぁ。その代わり、明日は連れて行かないよ。アーレイから警告を受けたからな」
「そうなんだ…うん。それがいいと思うよ」
というわけで先に獣魔ギルドで召喚をする。狙いは前回失敗したインプだ。今度こそ召喚してやる!中魔石をセットする。
「リスト召喚!」
魔法陣が黒く輝く。そしてインプが現れた。インプはフェアリーと同じ小さい女の子だな。ただフェアリーは色白だが、インプは褐色だ。更に蝙蝠の羽に悪魔っぽい尻尾に角も二本ある。目の色が赤でギャルっぽい服装をしていた。
なんとなくこの子は俺の苦手なタイプな気がする。するとインプが俺の所に来て、自分を指差し、腕を組む。
なんとなくさっさと名前付けなさいよと言われている気がする。今まで癖はあれども、いい子たちばっかりだったが、今回の子はかなり気難しい子みたいだ。
名前をどうするか悩む前にこの子を見ていて思いついた。
「名前はシンス。なんてどうだ?」
名前を聞いたインプにまぁまぁねと言われている気がする。まぁ、気に入って貰ったなら良かった。
名前の由来はヒヤシンス。花言葉は嫉妬。嫉妬は悪魔のレヴィアタンが司っている。流石にレヴィアタンになることはないと思うが、悪魔つながりであっていると思う。
ではステータス確認だ。
名前 シンス インプLv1
生命力 20
魔力 30
筋力 20
防御力 20
俊敏性 30
器用値 22
スキル
飛行Lv1 吸血Lv1 夜目Lv1 気配遮断Lv1 潜伏Lv1
闇魔法Lv1 呪いLv1
うむ。ステータスもフェアリーに似ているがフェアリーは魔法よりでインプは噛み付くことを目的にしているみたいだな。
俺はその後、待たせていたメルたちとリリー、イオン、セチア、恋火、ブランでイベント会場のライヒ帝国に向かった。
ライヒ帝国はコンクリートの家と工場が大量にある街並みだった。セチアが愚痴を呟く。
「…ここ、嫌いです」
エルフは工場が大嫌いらしいからな。ここが嫌いなのは当然だった。
「無理しなくていいんだぞ?」
「大丈夫です。私も戦闘を見て、勉強したいですから」
「どうしても無理なら言うんだぞ?」
「はい。タクト様は心配性ですね」
気分悪そうにしているからだろ。全く…そんなことを話していると目的地に到着する。そこには見事なコロッセオがあった。
どうやら観戦は無料で、早速席を確保する。
そしていよいよイベントが始まる。
まずは司会者がトーナメントのルールを説明する。
そしてトーメント表が発表される。海斗の言ったように闇落ち職が多いな。それでも通常のほうがまだ多いのは元々人数が少ないのが影響しているのかも知れない。あ、火影たちの名前がある。やはり一騎打ちだと忍者は強いよな。
そしてイベントが開始された。
一回戦を終えてお昼休憩のため、俺たちは帝国のお店でご飯を食べていた。一回戦を見て思ったことはやはり闇落ち職の強化が目立ったこととその闇落ち職を圧倒する通常プレイヤーの姿だ。
メルが話す。
「銃は反則だよね…」
「火縄銃だから一発勝負のはずだが、あれは完全に狙っていたな。それを可能にするほど練習したんだろうな」
「兄ちゃんは気になった人はいる?」
「侍とチャイナ服の武闘家、チェーンソー木工職人、闇落ち忍者、真っ黒の闇落ちの騎士、復讐者のマント男は凄く強かったな」
ちょっとこの人たちは勝てるか自信がないレベルで強かった。
「空を飛んだ魔法使いは?」
「強くはないが、早く魔法は覚えたいと思ったね」
初めて飛行魔法がお披露目となった。まぁ、空に逃げた後は魔法を使って、勝利を収めていたがあれでは勝ち残れないだろうな。フィールドの広さが設定されている以上、空を飛んでも弓矢などの遠距離攻撃の的だ。
相手が遠距離攻撃を持たないスピードが遅い重戦士でラッキーだっただけだ。彼の次の対戦相手は闇落ち忍者だし、何か隠し玉がないなら負けてしまうだろうな。
すると大人しかったリリーが口を開く。
「タクト…ここの料理」
「折角の他国の料理だぞ? 食べなさい」
「うぅ…」
リリーが涙目だが、他のみんなも涙目だ。
「しかしタクト様、こう薬ばかりの野菜は…」
「まだ野菜はいいじゃないですか…魚を見てください」
帝国の料理は食品添加物などの化学に頼った料理が主流みたいだ。別にそれが悪いだけではない。寧ろ現実でも使われているものだ。問題はその量、身体悪くするんじゃないかと思えるほど無駄に使われている。
天然の食材を全否定しているように俺には感じる。一応出てきた料理を鑑定してみた。
黄色い唐揚げ:レア度2 料理 品質F-
黄色い着色料を使った唐揚げ。体に害はない。
農薬サラダ:レア度2 料理 品質F-
農薬を使用した野菜で作ったサラダ。体に害はない。
アブラハヤの缶詰:レア度2 料理 品質F-
アブラハヤを缶詰し、長期保存したもの。体に害はない。
さて、ツッコミを入れていこうか。まず体に害はないと説明で書くな!心配になるだろ!
黄色い唐揚げ…なぜ黄色にした?意味がわからない!因みにこの黄色い唐揚げは油がどろどろで黄色い着色料も混ざって、モザイクを推奨したい料理となっている。
農薬サラダ…一番まとものように見える。見た目は普通だ。逆に怖い。農薬はほとんどの野菜で使われている。主に殺虫剤、病気を防ぐための殺菌剤、草刈りの手間を省く除草剤などが農薬に当たる。当然農薬は毒で食べ過ぎると人を殺してしまうものもある。それ故に不安を感じて仕方がない。
アブラハヤの缶詰…鑑定する前は?が来ると思った。だって原型止めてないし、ギドギドの油だらけでなぜか油が虹色に輝いている。俺はなぜかそれを見て工場排水を思い出した。気のせいだと思いたい。
ちゃんとしたレストランで缶詰をその場で開けて出したこととリリーたちに態度が悪かったことは一億歩譲って見逃そうと思う。
「なんかモッチさんのお店を思い出すな」
「え?」
イオンが不思議そうな顔をする。あれが出ていたのは最初の頃だったからな。リリーしかわからないだろう。
「あぁ! タクトと最初に食べた料理がこんなのだった!」
「そうなんですか? え? モッチさんはこんなの出していたんですか?」
「これとはまた違った不味さの料理だったな」
「タクトが料理するきっかけだったよね!」
懐かしいな。ボア肉があって、試しに料理したら、料理スキルが解放されたんだったな。俺がそんな話をしているとイオンたちは熱心に聞いていた。
「で、この料理どうするの?」
メルが現実に戻す。どうすると言われたら、食べるしかない。
俺たちは今度からは料理を持参することを心に強く誓った。
その後、イベントはお昼休み後、再開された。やはり純粋に強い人たちが勝ち進んでいる。そしてイベントが進むに連れてスキルがわかってくる。更に隠し玉も出てくる。
イオンが聞いてくる。
「あの復讐者の人…あっさり負けてしまいましたね」
「今まで闇落ち職と当たってばかりだったからな。ワイヤーで絞め技は見事だったが相手が侍の人じゃなかったらもっと上に行っていたと思うけど、トーナメントの当たり順が悪かったな」
「兄ちゃんが推していた武闘家の女の子も負けちゃったね」
なんかリカに責められている気がする。
「あぁ、寝技をしようとしていたが流石に出来なかったな」
「え? なんで?」
「リカちゃん…普通あの服装でみんなが見ている前で男の人に寝技は出来ないと思うよ」
システム的に見えないがそれでもやはり乙女の心理的に出来ないだろう。おかげで闇落ち職の騎士は命拾いしたな。
「火影さん…悔しそうだった」
「火影さんは忍者が好きだからな。闇落ちの忍者にはどうしても勝ちたかったみたいだが、やはり通常の忍者と相性の差が出たな」
抜け忍は通常の忍者と違い、暗器を装備出来るみたいだ。暗器とは暗殺用の武器こと。通常の物に刃物が隠されていたり、服に隠されていたりする武器だ。
抜け忍は開始早々、腕に仕組んだ毒針を撃った。火影さんはそれを変わり身で回避するが変わり身は一度きりの技だ。二度目がない以上、毒の苦無などを投擲させ、しかも投擲操作で操られた攻撃に防戦一方となり、決死の覚悟で攻めに出るが忍術の威力、ステータスの差があり、打つ手なしだった。
「サ、サスケ〜…」
「俺は甲賀者だ」
それが彼らの最後の会話だった。
午後の部が終わりベスト4が揃った。
ベスト4に揃ったのは侍さんとチェーンソーの木工職人、抜け忍と暗黒騎士だ。対戦カードは侍さんと抜け忍、チェーンソーさんと暗黒騎士となっている。純粋に楽しみな組み合わせだ。