#264 透明の襲撃者
翌日帰宅し、ログインするとアンリ様とネフィさんがいた。
「お邪魔しております。タクト様」
「今日はタクトさんに重要な話がありまして、来ました」
あ、これは面倒ごとだ。間違いない。
「昨夜若木の森が解放されたのは、ご存知ですか?」
「はい。ルインさんたちから聞きました」
「そうですか。我々、獣魔ギルドとしては一刻も早く浄化作業を済ませて、召喚を行えるようにしたいのですが、それは至難の技なのはご理解しておられると思います」
うん。してますね。
「しかしその至難の技をやってのける亜人種がいるのです。それがエルフです」
俺はセチアを見る。
「私には出来ませんよ!? ただ高位のエルフならそういうことぐらいなら恐らく余裕で出来ます」
さらりと恐ろしいことを聞いた気がする。話が戻される。
「私たちはエルフと交渉したのですが、エルフの出した条件がタクトさんとセチアさんと会談をしたいとのことで…申し訳ありませんが受けてくれませんか?」
依頼クエスト『エルフとの交渉』:難易度B
報酬:エメラルド
エルフと交渉し、若木の森を復活させる木を入手せよ。
ほら~面倒臭い依頼だよ。しかも受けないと召喚がずっと出来ず、他のプレイヤーに影響が出る極悪っぷりだ。まぁ、報酬は嬉しいね。
「俺は構いませんよ。セチアはどうする?」
「私も大丈夫です。どうせ魔法剣のことで釘を刺されるだけでしょうから」
わざわざ俺たちを指名したってことはやっぱりそういうことだよな。まぁ、悪いことはしてないし、大丈夫だろ。
「すみませんが宜しくお願いします。会談場所はエルフの森です。明日お時間頂けますか?」
え?エルフの森に行けるの?やったぜ。
「明日の今ぐらいの時間からなら大丈夫です」
「わかりました。では明日、王城でお待ちしております」
ネフィさんはそこで帰るがアンリ様は残る。理由はなんとなくわかる。
「あの…タクト様にお願いがあります」
「シルフィ姫様の件ですね?」
「はい…エルフは調薬においても最高峰の技術を持っています。もしかしたら、治せる薬があるかも知れません。ですからお願いします!」
本当にこの娘はシルフィ姫様の事になると必死だな。わざわざお願いに来なくていいのに…
「俺は既にグラン国王様から依頼されていますからわざわざお願いに来られずとも大丈夫ですよ。ちゃんと聞いて来ます」
「あはは…わかっているんですけど、直接言わないと不安で」
あ~それは分かるな。アンリ様は安心したのか王城に帰った。
それから俺はいつもの浄化作業をしていると殺気を感じる。
「隠れるならもう少し上手く隠れたらどうだ?」
俺がそういうと誰もいないところからいきなり矢が放たれる。
問答無用かよ!
ぷよ助が矢をガードしてくれたが矢から電気が発生し、ぷよ助が死に戻る。
これは魔法弓!?しかもぷよ助の弱点を正確に狙ってきただと!?
俺はまともに戦えるのはサビクしかいない…しかもサビクは敵を察知出来てないみたいだ。
どうしたもんかな…俺は考えながら、格闘の構えを取る。
『サビク…土に潜って待機しててくれ』
サビクが土に潜るとそれを合図に別方向から矢が3本飛んで来る。
俺は矢をかわし、正面から飛んで来た矢目掛けて走る。
しかし、デスペナの影響で距離を縮められない。このままじゃあ、どうしようもない。
俺はフリーティアに向かい走り出した。
俺の狙いに気がついた敵が本気になる。無数の矢の雨が降り注ぐ。
くそったれ!
俺が和狐が作ってくれたマントを犠牲に防御しようとすると地面からサビクが出てくる。
あぁ…わかってるよ…
俺は必死に走る。背後からは無数の爆発音とサビクの声が聞こえた。しかし一度は倒されたサビクだが、蘇生で復活し、俺のために時間を稼いでくれた。今度は雷の音が聞こえて、サビクの悲鳴が響いた。
俺は誓う。ぷよ助とサビクを殺したこいつらは絶対この手で殺す!
俺が走っていると6人のNPCがいた。しかしマーカーがモンスターを示すものと同じだ。識別に成功する。
盗賊?
? ? ?
しめた!俺が喜んでいると盗賊がいう。
「へっへっへ。聞いたぜ? お前、金をたくさんもっているんだってな!」
全部金庫の中だよ!
「すげー武器も持っているんだろ?」
それも金庫の中だよ!だから格闘戦をしようとしたんだよ!
「お前が弱ってるのも知っているんだぜ? 潔く金目の物を」
「おら!」
「ほぐっ!?」
俺はリーダーとおぼしき山賊の股間にドロップキックをお見舞いした。
『ボス!?』
俺はすぐに立ち上がり、ボスと呼ばれた奴の股間に足を乗せる。
「おっと、動くな。さもなければこいつの股間を踏みつけるぞ」
極悪非道な俺の脅しに盗賊達が引く。
「て、てめぇ!? なんてこと言いやがる!?」
「この人でなしが!」
「それでも男か! 男ならその痛みを知ってるだろ!」
「知ってるからやっているんだろうが!」
知らないのにこんな脅しをする奴がいてたまるか!
「あ! サキュバスの格好をした美人のエルフだ!」
『え!? どこ?』
無論いないがそれを聞いて反応してしまうのはNPCでも同じなんだな。
「いねーじゃねーか!」
「透明になって、消えたんだよ」
さて、思惑通り行くか…
「ちっ…あいつらやっぱり」
すると何かを話そうとした盗賊の頭部に矢が命中し、爆発する。口封じをしたみたいだが、間違いないな。敵はエルフだ。
俺が確認すると再びアローレインが放たれる。
なめるな!御劔流の秘技、絶対防御を誇るこの技の前ではそんなものは無意味だ!
行くぜ!命名、俺。
「御劔流、人体防御!」
俺はそういうと倒れていた盗賊のボスを壁にした。
『あいつ最悪だ!』
盗賊たちがアローレインで全滅した隙にフリーティアになんとか逃げ込むことに成功した。
その前にもう一回ぐらい襲撃があると思ったがフリーティアの城壁近くで暴れるのは問題があるのか襲って来なかった。
俺は警戒しながら、なんとかリープリングにたどり着いた。すると俺の様子にリリーたちが慌てて駆け寄ってくる。
「タクトどうしたの!?」
「浄化作業をしていたら、姿を透明にしている奴らから攻撃を受けた」
「え!? 大丈夫だったんですか!?」
「俺は見ての通り大丈夫だったが、サビクとぷよ助がやられた」
俺の言葉にみんなが怒り出す。俺は迷ったが事実を告げた。
「俺たちを襲ってきたのは、たぶんエルフだ」
「え!?」
セチアが驚く。しかしあの盗賊のリアクションと口封じをしたことから間違いないだろう。
「そうですか…でもどうしてエルフが今、タクト様を狙ってきたのでしょうか?」
「それは俺にもわからない。明日の会談をよく思っていない奴がいるのが妥当なところではあるけど」
「エルフは自分たちの森に人間を含めた他の存在が入ることは嫌がるはずです。しかしこんなことをするとは私には思えません」
「そうか…いずれにしても明日の会談は平和で終わりそうにないことは確定したな」
デスペナ中ぐらい平和で過ごさせて貰いたかったが、サビクとぷよ助を殺された以上、俺も黙っているつもりはない。襲撃者の気配は覚えたから見つけたら、絶対に逃しはしない。
名前 サビク ユルルングルLv3
生命力 79
魔力 44
筋力 58
防御力 42
俊敏性 64
器用値 48
スキル
噛みつきLv21 巻き付きLv14 薙ぎ払いLv3 鉄壁Lv3
猛毒Lv19 熱探知Lv13 水中行動Lv1 雷魔法Lv3 水魔法Lv3
土移動Lv3→Lv4 雨乞いLv7 水ブレスLv3 蘇生Lv1→Lv2