#259 暴食者とミントティー
俺はフリーティアの門まで来た。
「ふん~。ふふ~ん」
リリー、リビナ、ブランと一緒に…説得など不可能で誰が一緒に行くかじゃんけんの結果、リリーが勝ってご機嫌だ。
リビナとブランは空を飛べるから護衛で後はヒクスだ。
空を飛び、一気にヴェルドーレ村に向かう。
すると下でモンスターが大量発生した。識別する。
グールLv13
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
やはりグールか…だが生憎スルーだ。綿が俺たちを呼んでいるのだ!
よし!ヴェルドーレ村が見えた!
そう思った時だった。急に後ろから風を感じたら、ヒクスの動きが止まる。
「タ、タクト!? 下から妙な風が」
「す、進めません!」
リビナとブランの言う通り、下から妙な風が発生して、先に進めない!なんだこれ!?
「というかこれ、吸い込まれてない!?」
リビナの言う通りだ。地面にいる何かに吸い寄せられている。そして徐々に吸い寄せられる力が強くなっている。このままじゃ、まずい!
「ヒクス、降下するぞ! リビナ、ブランは上昇しろ!」
「わかった!」
「わかりました!」
俺たちがそれぞれ別れると吸い寄せる力は俺たちを狙ってきた。
結果、リビナとブランが自由になる。
「やった! 吸い込みが無くなったよ!」
「しかし主たちが狙われてます!」
『自由になったなら、吸い込みの範囲に入らないように敵を攻撃してくれ!』
俺がシンクロで指示を送ると二人は指示通り敵を見つけ、攻撃する。
「天輪!」
ブランが天輪を飛ばす。しかし謎の敵に効果がなく、俺たちは吸い込まれ続けている。
俺も目視で敵を捕らえた。
グラトニー?
? ? ?
敵はグールより一回り大きいぽっちゃりしているグールだった。
そのグラトニーのお腹が開き、お腹の中に吸引される風が発生している。
リビナの魅了も効かず、仕方無く物理攻撃をする。
「でやぁああ! リビナキック!」
するとリビナの足がグラトニーの皮膚に埋まり、グラトニーの顔がリビナを見る。
「ちょ!? ま、待って…まさかボクを食べたりしないよね?」
グラトニーの口が人ではあり得ないほど開き、リビナの体が口の中に吸い込まれていく。
「いやぁあああ! た、食べられる!? ちょっと! ブラン! 助け」
「ごめんなさい」
「見捨てた!? いやぁあああ!」
リビナが吸い込まれてしまった。俺たちも他人事ではない。ヒクスの限界が近い…何かいい手はないか…
アイテムなし。装備なし。お金なし。
ゲームオーバーの三段活用。
やはりデスペナ中に外に出るべきじゃなかったな。後ろにいるリリーに呼ばれて、振り返るとリリーが笑顔で言ってくる。
「タクト…死ぬときは一緒だよ」
リリーが死亡フラグを立てた!?俺たちはグラトニーのお腹の中に吸い込まれ、死に戻った。
ベッドで目覚めた俺はすぐに再ログインする。元々デスペナ中の俺にデスペナは無意味だ。
そして全員を呼び出す。
「タクト! ブランがボクを見捨てたよ!」
リビナが怒るが俺はブランを擁護する。
「リビナ、ブランを責めるな…ブランも助けられるならしている。今回の落ち度は弱体化している状態で外に出ようとした俺にある」
「むぅ…それを言われたら、ボクたちもわがまま言ったから何も言えないじゃん」
全員が落ち込むなか、俺はブランに聞く。
「ブラン…全力状態、切り札なしであいつに勝てると思うか?」
「戦って見ないことにはなんとも言えません。ただ主が見つけたあの吸い込みの弱点を突けば、倒せると思います」
ブランが言う弱点は吸い込んでいる最中は動けない点だ。奴はずっと俺たちを狙ってきた。ならさっきのように攻めれば倒すことが出来るだろう。
しかし気になる点がある。
「まず敵は俺が名前以外識別出来ない強敵だ。更にリビナは吸い込み攻撃中に別の攻撃で倒された。つまり無防備と思って甘くみてると同じことを繰り返すぞ」
「確かにそうでした…認識を改めます」
うん。まずその認識を変えることが必要だ。あのグラトニーは雑魚じゃない。俺を狙った理由は謎だが、もし召喚師を狙ったなら馬鹿でもないだろう。
「みんなと情報共有しておいたほうがいいな…出現条件も無さそうだし、もしグールが出現するところならどこでも現れるなら大問題だ」
そんなことをしているとヘーパイストスが来た。手には刀がある!
「お取り込み中でしたか? 新しい鍛治場が完成して、早速注文を受けていた刀を作成して見たのですが…」
「大丈夫だよ。新しい鍛治場が完成したんだな」
「はい! いきなり広くなって、ちょっと落ち着けませんが使い心地は最高です! あ、見に来ますか?」
「あぁ。新しい鍛治場で刀を見せてもらおうかな」
というわけでヘーパイストスの鍛治場に向かう。煉瓦作りで円柱型の家だ。煙突がある。
中に入るとこれぞ鍛治場って感じだな。家の地下から一気に家になったんだ。確かに広く感じる。
因みにここにはヘーパイストスの希望でベッドもある。武器に囲まれて寝たほうが安眠出来るそうだ。
まぁ、趣味嗜好は人それぞれだ。本人がそれを望むならそうしてあげようと思う。
「では、こちらが完成した刀です。初めてなので何か気になった所があれば言ってください」
「あぁ。恋火」
「はい!」
二人で刀を受け取る。鑑定するとこうなっている。
リープリングの銀刀::レア度5 刀 品質D
重さ:20 耐久値:55 攻撃力:35
追加効果:アンデッド特攻(大)、アンデッドの蘇生無効化
銀で作られた刀。鉄より軽いのが特徴。銀色に輝く刀身は刀を愛するものを魅了する。ただ他の刀に比べて物を斬ることには特化していない。刀の鍔にはクラン『リープリング』のエンブレムが焼入れされている。
まず持って思ったことは軽いということ。刀の重さを考えるとちょっと使いづらいかも知れない。
軽いと速くなるがその変わりパワーは失われる。それは鑑定結果にも書かれている。
刀を抜く。銀色の刀身が美しい。なんというか武器というより、芸術品という感じだな。
恋火を見るとやはり首を捻っている。
「やはり…ダメでしたか…」
「出来栄えは見事なんだけどな。やはり重さが気になるな」
「それです!」
恋火が違和感が分かりすっきりした顔をしている。
「重さですか…でも」
「分かってる。銀で頼んだのは俺だ。ヘーパイストスは悪くないよ。やはり刀は鋼じゃないとダメなんだな」
正確に言うなら日本で作られた日本刀や刀剣は玉鋼という鋼で作られている。
製鉄で生み出すことが出来るのか。それともアイテムでゲット出来るか謎だが現状どうしようもない。
「とりあえずそれ以外は問題なさそうだし、使わせて貰おうよ」
「あたしもです! ありがとうございます!」
ヘーパイストスにお礼を言った後はフィールドの浄化作業中。グラトニーが若木の森の攻略中に出てきたら、厄介この上ない。
みんな来ないからメールで警告する。せっかくなのでミントのクエストを受ける。
すると雑草と一緒にミントが入っている大きいバケツを10個渡される。それを見て、一言言いたい。
ミントだけ採取しろよ!
まぁ、クエストだから仕方ない…みんなで手分けして、作業する。するとすぐに事件が起きる。
「リリーお姉様! それは雑草です!」
「え? ミントだよ。セチアちゃん」
「どう見ても雑草です! あぁ!? ノワとリビナもです!」
セチアがノワとリビナを止める。
「…全部草に見える」
「ノワに同意!」
リリー、ノワ、リビナはミントを教えても区別がつかなかった。
「うぅ…鼻が曲がりそうです…」
「すみまへん…ちょっと無理どす…」
「妾も薬の臭いはダメじゃ~…」
恋火、和狐、セフォネはミントの臭いがダメでダウンしている。
結局イオン、セチア、イクス、リアン、ブラン、ルーナ、伊雪、ミールで作業する。
するとメルたちが来た。しかし人数が足りない。ミライとケーゴがいない。どうやら撤退してきたな。メルとレッカが話す。
「いきなり空から大岩が飛んできてね…」
「カタパルトの恐ろしさを思い知ったよ…」
更に巨人がたくさん現れて、急いで逃げてきたらしい。メルが確認してくる。
「ボスがギガースなんだよね?」
「図書館のデータが正しいならそうなるな」
「じゃあ、あの岩はギガースの攻撃だったのかも知れないね…」
それならジャイアントがいきなり現れたことの説明がつくな。俺からもグラトニーの説明する。
「私たちを襲ったのはグラトニーっぽいね」
「タクトは若木の森の解放戦にグラトニーが現れると思ってるんだよね?」
「あくまで予感だ。図書館ではディープレット荒野で出てくるはずのモンスターがまったく関係がないところに出てきた。何か意味があるようにしか思えないんだよ」
するとメルたちに笑われる。
「何故笑う?」
「ごめんね。すっかりゲーマーになっちゃったなと思ってね」
何故ゲーマーの話になる。レッカが説明する
「タクトが感じているのはこのゲームの特徴だよ。それを感じると言うことはもう立派なゲーマーって話さ」
ぬぐ…そういうもんかな?
するとメルが大量のバケツに注目する。
「それってもしかしてミント!?」
「あぁ。農耕ギルドでクエストを見付けてな。フレッシュミントティーならお手軽に作れるから、クエストを受けてみた」
「へぇ~そうなんだ~」
メルが甘えた声を出す。そんなものは俺には通用しない。
「欲しかったら、買えよ」
「けち! 私がミントティーが好きなの知ってる癖に!」
佳代姉はコーヒーがダメだから紅茶やミントティーをよく飲んでいる。ブレンドするぐらいのファンだ。
俺はコーヒー派だが、別に嫌いじゃないから今回選んだ。メルに売り捌こうとはちょっと思ってるぐらいだ。
俺たちが談話しているとルインさんたちが来る。なんとイエローオッサ山脈に関係ありそうなクエストを発見したそうだ。
流石だな。内容は狐のセリアンビーストのお助けクエストらしい。既に何人ものプレイヤーが発見して、クエストをしているそうだ。
それを聞いたメルたちは明日チャレンジするそうだ。俺はレッカにお金を払い、明日の朝ヴェルドーレ村に運んで貰うことにした。
ミントのクエストを終え、クエストをクリアした俺はミントの種とミントの茶葉を貰った。
そしてまずは待っていたリリーたちにミントティーを淹れる。
フレッシュミントティー:レア3 料理 品質D
効果:満腹度10%回復、恐怖解除、魅了解除
生のミントで作成したミントティー。気持ちを落ち着かせる効果がある。
これは予想外の効果だ。
リリーたちは好みが別れた。肉好きはダメで野菜や魚好きは大丈夫みたいだ。
ルインさんが決めてくれたお金を貰い、みんなにもご馳走する。するとメルとユウナさんが感想を言う。
「ちょっときついフレッシュミントティーかな?」
「ですね。でもこれは淹れ方で直ると思う」
下手くそで悪うございました!俺はコーヒー派なんだよ!因みにメルたちが淹れると確かに美味しかった。しかし…
「品質が低いな」
戦争勃発。そんな中、一緒に飲んでいたヘリヤがミントティーを淹れると俺と同じ効果でメルたちより美味しいミントティーを淹れた。惨敗である。
『参りました!』
「あ、あの…偶然…ですから」
最初から偶然で美味しいミントティーを作れたら、苦労しない。これからミントティーはヘリヤに淹れて貰おう。
今日はこれで解散することになったので、生産作業だけ済ませて、ログアウトした。
名前 ロコモコ ハピネスシーフLv8
生命力 104
魔力 69
筋力 11
防御力 89
俊敏性 48
器用値 40
スキル
飛行Lv6 体当たりLv3 危険察知Lv11 逃げ足Lv3 育毛Lv10→Lv11
採乳Lv10→Lv11 耐寒Lv1 幸福Lv8 祝福Lv8 守護Lv4
光魔法Lv3 天の加護Lv10
名前 アラネア 土蜘蛛Lv7
生命力 46
魔力 55
筋力 52
防御力 28
俊敏性 34
器用値 86
スキル
噛み付きLv6 格闘Lv1 粘着糸Lv14→Lv15 柔糸Lv9→Lv10
鋼糸Lv23→Lv24 罠設置Lv20 糸察知Lv6 毒ブレスLv3
土潜伏Lv3 投擲Lv4 土魔法Lv1 呪いLv1 妖術Lv1
名前 エアリー ズラトロクLv8
生命力 84
魔力 50
筋力 52
防御力 32
俊敏性 65
器用値 45
スキル
角擊Lv18 登攀Lv4 危険察知Lv14 跳躍Lv10
疾風Lv15 木魔法Lv3 光魔法Lv12 採乳Lv9→Lv10
守護Lv5 祝福Lv6 蘇生Lv1 狂戦士化Lv2