#256 黒幕の正体
ゲームにログインした俺はセフォネに料理をねだられ、ご馳走すると当然のように参加したリリーたちと一緒に料理を平らげた。
最早何も言うまい。
「大満足なのじゃ…おっと、人間はご馳走様でしたと言うんじゃったな」
「あぁ、お粗末様でした。本当によく知ってるな」
「当然じゃ! 妾ほどフリーティアを知っておる亜人種はおらんぞ?」
話を聞くとどうやら影召喚でちょくちょく地上を覗いていたそうだ。そこで俺は重要なことに気が付いた。
「フリーティアのことはほとんど知っているのか?」
「うむ! なんじゃ? 知りたいことがあるならなんでも答えてやるぞ?」
「シルフィ・フリーティア姫様を襲った悪魔を知っているか?」
全て知ってるなら可能性は十分にある。
「犯行現場は見ておらぬがシルフィ姫の部屋に結界をすり抜け、侵入した奴なら見ておる。その日から病気が発病したからほぼ間違いないじゃろ」
犯行現場は見ていないが犯人はそいつで間違いないだろう。
「犯人の姿を教えてくれないか? 出来れば名前を知りたいが」
さて、どんな大物がヒットする?
「名前は知らぬがナイスボディーの女性であったな」
うん。それだけじゃ夢魔種が全てヒットしてしまうぞ。だが他にもセフォネはヒントをくれた。
「後、虫の羽があったのじゃ」
虫の悪魔で真っ先に浮かぶのは蝿の魔王だよな…勘弁してくれ…しかし違和感がある。これは確かめるしかないな。
というわけでフリーティア城に向かい、拘束されている悪魔オセと面会の許可を貰う。
「貴様はゼパルを倒した召喚師か」
「生憎人違いだな。あいつを倒したのは俺も知らない冒険者たちだからな」
「ふん。シルフィの奴を襲った犯人なら口が裂けても言わんぞ」
「それなら犯人はわかったよ。お前たちの行動を見ていたやつがいてな。犯人はベルゼブブだろ」
俺がそういうとオセは笑い出す。
「あのお方がお前たち下等な人間に手出しをするものか! 俺を罠にはめた人間というからどれ程かと思えば、期待外れにも程があるぞ!」
「期待に添えなくて悪かったな…それと俺の期待に答えてくれて、ありがとうな。お陰で犯人がわかった」
「な!? き、貴様!」
俺が罠にはめたことを知っていたのに警戒しないこいつはマヌケ以外の何者でもないな。
そもそもヒントはあったんだ。ゼパル、オセ、フォルネスはソロモンの魔神で登場する。
だが、ネビロスは真正奥義書、大奥義書に登場する悪魔だ。
共闘している点がおかしい。だが、このゲームでは色々な悪魔が共闘している設定なら話は別だ。
そして今回の事件の黒幕にぴったりな悪魔でシルフィ姫様を襲える力を持った蝿の羽を持った女性悪魔に心当たりがある。
そいつはゾロアスター教の悪魔にして、ヴェンディダードの七大魔王の一角。不義、虚偽の悪神で腐敗した死体を温床とし、世界に不浄をまき散らす存在。
「ドォルジ。それともドォルジナスと呼んだほうがいいか?」
オセは黙り込む。沈黙は是なりだぜ?
俺はオセがいる部屋を出るとサラ姫様がいた。
「犯人はわかりましたか?」
「はい。ドォルジもしくはドォルジナスという悪魔を知りませんか?」
「すみません。私にはさっぱりです…図書館や獣魔ギルドなら何かあるかも知れません」
なら調べに行ってみるか。
「この悪魔は処分して良いですか?」
「はい。よろしくお願いします」
このオセはシルフィ姫様を殺そうとした悪魔だ。フリーティアが処分するのが筋だろう。経験値のことを考えたら、勿体無いけどね。
俺は獣魔ギルドに向かうとネフィさんがいた。アウラさんたちはファストの町の復興に向かったそうだ。
「ドォルジですか…すみません。聞いたことないです。私のほうで調べておきますね」
「すみません。せっかく休みになったのに…」
「ふふ。気にしなくていいですよ。どうせ、グラマスが逃げ出さないように監視しないといけませんから」
ネフィさんも大変だな。さて、俺は久々に図書館に向かう。せっかくだから色々調べてみよう。