表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Elysion Online ~ドラゴニュートと召喚師~  作者: とんし
ゾンビ襲撃
250/1718

#237 邪竜の試練と人魚

俺は目を開けるとそこは暗闇の世界だった。自分の身体だけは認識出来る。後は全部真っ暗だ。


まず地面の感覚を確かめる。何も見えはしないがちゃんと感触があるから地面もしくは地面に類するものがある世界なのだろう。


その世界で強烈な殺気を感じ、見ると上に真紅の目が二つあった。その存在が名乗る。


『我が名は邪冥龍王じゃめいりゅうおうディサピアードラゴン。世界の悪を司りしドラゴンじゃ』


あ、殺気を放つおじいちゃんキャラ…全然いい予感がしない。


『ふぉっふぉっ。察しが良いのぉ。ではお主の試練を始めようかのぉ』


邪冥龍王がそう言うと俺の目の前に目が死んでいる刀を持った子供が現れる。この子供も暗闇の世界で見ることが出来た。流石に俺の子供の頃ではないが、俺の子供の頃を再現したのはなんとなく理解出来た。


『お主の悪…見事実力で超えてみせよ』


邪冥龍王がそう言うとその子供は斬りかかってくる。ちょっと待て、武器すら構えてないぞ!?


俺は子供の刀を白刃取りで止めると蹴りを放つ。子供はあっさり刀を手離すと俺の蹴りを手でガードし、俺の足を掴み、噛み付こうとした。子供の刀を捨て、殴り飛ばそうしたが、躱され、距離を開く。


子供の手に再び刀が出現する。これは聖輝龍王様の時と同じイメージした武器で出る感じか?それなら俺もイメージする。


しかし何も現れない。


『お主の実力で超えてみよと言ったはずじゃぞ?』


あぁ…確かにそう言ったな…


もういいよ。自分の武器を取り出すから…しかしインベントリが開かない。


『同じことはもう言わんぞ?』


つまりこの身一つで勝てってことね…試してみたが武技も使えなかった。悪を司っているってこれはやりすぎだろ。


『悪に限りなど有ると思っておるのか?』


思ってないさ。そもそも悪か正義なんて論ずるのが馬鹿馬鹿しいと思えてしまうものだ。なぜならそれを決めるのは己であり、また大多数の意見であり、法律だからだ。


自分は正義と思っていても大多数が悪といえばそれは悪になる。大多数の人間が正義と判断しても法律で悪ならばそれは悪となる。


どれが悪でどれが正義かなんて決めれるはずがない。だからこそ悪に限りなど存在するはずがない。


しかしどれだけ悪いことをされても自分が正しいと思った道を進むしかない。だからこれ、俺はこの子供に勝たないといけない。


この子供の太刀筋は既に見切った。お世辞にもいい太刀筋じゃなかった。まるで漫画を見て、それを真似たような感じだったからな。


…ん?ちょっと待て…それはおかしくないか?目の前のこの子供は俺を真似たんじゃないのか?


明らかに力が入ってない斬撃、その後の蹴りへの対応。それは子供の頃の俺にはなかったものだ。つまり目の前のこの子は子供の頃の俺の姿を真似ているだけってことになる。


そしてこれは悪を司っている龍王の試練だ。それぐらいのことはするだろう。全く…意地が悪いことこの上ないな。


俺は手を開いて構えを取る。するとその子供は上段で斬りかかってきた。ここでの上段斬りは致命傷だぞ。


俺は上段斬りを躱し、子供の手首を掴み回転させる。すると子供は地面に叩きつけられ、俺は刀を没収する。合気道の刀取りの技だ。


「俺に中途半端な剣術は通用しない。それに俺の格闘戦を見せたことがなかったな。ノワ」


「…痛い」


子供の姿がノワになる。ノワの擬態だ。恐らくさっきの子供はノワがアバターの俺の子供の姿を真似たものだろう。それなら違っていて当然だし、ノワは武器を使わない子だ。俺やリリーたちの真似をすることしか出来ないだろう。結果、あんな中途半端な剣術になる。


「…にぃ。酷い…放り投げるなんて…」


「姿を変えて動揺を誘い、無防備な俺に斬りかかってきたノワにだけは言われたくないな」


「…それは邪冥龍王の命令。ノワは悪くない」


だろうな。そしてあっさりネタバレをして、無実を主張するノワは大物だな。


『あっさり話すでないわ。馬鹿者が』


「…邪冥龍王様はわかってない。このままじゃあ、ノワはイオンからお尻を叩かれる。それは嫌」


ノワは恋火の光景を見ているからな。


『ふぉっふぉっ。罰を逃れるのもまた悪か…いいじゃろう。この試練は合格じゃ。我が眷属の求めに従い、ノワの竜の血を覚醒させるとしよう』


ノワから黒い光が放たれ、進化が始まった。


進化が終わると擬似竜化状態のノワの姿があった。


「…また大きくなった」


『当たり前じゃ。性欲もまた悪。胸の大きさなくしてどうすると言うんじゃ?』


あ、この邪冥龍王様はスケベジジイだ。間違いない。


それにしても良かった…どこまで意識しているか謎だが、もしあのままノワを殺していたら俺は自分が許せなくなっていただろう。両親を失ったあの日の再現を今度は自分の手ですることになる。意地が悪いなんてものじゃない。


すると邪冥龍王様は言う。


『じゃが、お前はその絶望の未来をその瞳と脳で見事に回避した。胸を張るがいい。お主は我が用意した悪を乗り越え、正しい選択をしたのじゃ』


「悪を司っているからこそ善も司っているってことですか?」


『然様。この世は悪と善で成り立っている。中立など存在せん。何もしなかったものも善か悪になる。故に悪に落ちたくなければ自分が正しいと思った選択を選び続けるしかないのじゃ』


ドイツの哲学者で有名なフリードリヒ・ニーチェが提唱した善悪二元論(ぜんあくにげんろん)だな。世の中の事象を善と悪の二つに分類する事で世界を解釈する認識法だ。俺もこの考え方は正しいと思うから答える。


「そうですね…肝に命じておきます」


『うむ。我が眷属を頼む』


暗闇が晴れ、元の世界に戻る。


戻ってきたノワの第一声がこれだ。


「…にぃ。感想」


あぁ、まだ言ってなかったな。改めてノワの姿を見るとゴスロリドレスに黒のフリルが追加され、背中には大きな黒のリボンがあり、腕や首にもリボンが追加された。そして黒のメイドカチューシャを付けていた。


「リボンがたくさん追加されて、可愛くなったな」


「…ありがとう」


角がカチューシャの邪魔になっていないか心配だったが大丈夫みたいだな。それじゃあ、ステータスを確認しよう。


名前 ノワ ドラゴニュートLv30→ドラゴニュート・オブセッションLv1


生命力 32→52

魔力  76→96

筋力  23→43

防御力 20→40

俊敏性 30→50

器用値 66→86


スキル


影操作Lv11 飛行Lv1 呪撃Lv1 影探知Lv8 影移動Lv4 影潜伏Lv9 

影縛りLv9 影召喚Lv2 隠密Lv7→気配遮断Lv7 擬態Lv3→Lv4 

夜目Lv15→暗視Lv15 邪眼Lv2 闇波動Lv1 竜技Lv3 

擬似竜化Lv3→竜化Lv3 邪竜の加護Lv1


オブセッションの意味は執着だな。既にノワは俺の影に潜んでばかりいるから今更な気がする。


ステータスはリリーやイオンと比べると低い気がするがノワの真価はスキルにある。


まずノワによると今まで影移動の範囲は俺とノワの範囲だけだったが、これが仲間なら誰でも可能になり、運べる人数もパーティー数である6人に増えた。これだけでもだいぶおかしなことになっている。


謎だった呪撃について聞くと攻撃を当てるとその傷が相手に残り続け、継続ダメージを発生させるものらしい。攻撃を当てた分だけダメージは大きくなっていくそうだ。しかも邪眼、竜技、闇波動もあり、竜化も出来る。


かなり強いと言っていいだろうな。


さて、次は待たせちゃったリアンの進化だな。リアンが青い光を放ち、進化する。


名前 リアン リトルマーメイドLv20→マーメイドLv1


生命力 20→25

魔力  40→55

筋力  18→23

防御力 15→20

俊敏性 38→48

器用値 35→40


スキル


槍Lv6 杖Lv1 歌Lv8 呪歌Lv1 遊泳行動Lv4 水弾Lv8 水魔法Lv11 

潜水Lv3 魅了Lv1 音響探知Lv3 人化Lv11 


『リアンの進化が完了しました。呪歌スキルが解放されました』

『リアンに魅了スキルが解放されました』


まぁ、リトルが消えただけだな。そして魅了スキルを覚えてしまったか…これは仕方ない。だって、スタイルがリビナに引けを取らないマーメイドだもん。魅了されるに決まっている。


「ど、どうですか? タクト先輩」


「綺麗になったな。リアン」


「えへへ。ありがとうございます」


スタイルが同じでも性格が違うと受けるダメージが全然違うな。ただ呪歌もある。これは人魚の伝説からだろうな。人魚には人に友好的な話と航海者を歌で魅了して難破させたり、襲ったりする話がある。そこから来てるんだろうな。


効果は歌を聞いた敵を呪いと病気の状態異常にするものだ。この組み合わせ多くなってきたな。


「むむむ〜」


リビナがジト目を向けてくる。するとルインさんからメッセージが来る。


『広場でNPCと一緒に祝勝会が開かれているわ。進化が終わってから良ければ参加してちょうだい。ただサラ姫様たちのお願いでリリーちゃんたちは不参加でお願いされたわ』


まぁ、守護竜様の話とかがあったからな。俺も祭り上げられるのはごめんだ。リリーたちに料理を持っていくことを約束し、広場に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最新作『動物保護をしている少年は異世界で虐げられている亜人を救います』を連載開始しました。
以下のリンク先で連載中です。


動物保護をしている少年は異世界で虐げられている亜人を救います
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ