#232 ドワーフの里探索とエルフの魔法剣物語
召喚獣を戻し、ドワーフの里に入る。セチアとの条件だし、トラブルはごめんだからな。ドワーフの里の代表にクエスト達成の報告をする。
「まさか本当にクイーンサンドアントたちを倒すとはな…約束だ。土偶の話は無しだ。それとお前さんたちには里に入るのを許可しよう」
『ドワーフの里に入れるようになりました』
お!ドワーフの里に入れるようになった!
「俺たちは職人だが人でなしではない。この里の抱えていた問題を解決してくれたもんにはそれなりの恩を返す」
へ~意外だ。
「ただしこの里ではあちこちで武器を売っておるが一切まけんからな!」
「しっかりしてますね」
「当然じゃ。ただで武器渡したら、わしらは全滅じゃわい」
ごもっともだね。全員と相談した結果、まずは二人組でバラバラに探索することにした。
俺はアルさんと回ることになった。
「やはり武器が中心ですね」
「ですね。依頼も受けてくれるみたいですし、戦闘職は案外利用するんじゃないでしょうか?」
確かにそうなるだろうな…流石にヘーパイストスのみに依頼が集中しているからここに来れたら、依頼が落ち着くかも知れない。
俺がアルさんと歩いていると石の看板のお店を発見した。中に入ってみると鉄鉱石などが売られており、火薬などの爆弾素材もあった。
更にペンチの看板のお店になるとそこには魔核や属性石があった。アルさんと目を合わせる。二人の意見が一致した…この里はやばい。
極めつけが刀の看板。これは入るしかない!しかしそのお店には刀がなかった。どういうことだろう?お店の人に聞いてみた。
「うちは刀鍛治してたんだけど、夫がサンドアントにやられてね。刀が作れなくなったから鉱石屋に変えるところなのさ」
無念だ…するとアルさんがとんでもない物を発見した。
「あの…この本も売っているようですが」
「そうだよ。夫が使っていた刀鍛治の本さ。どうせ使わないなら売ろうと思ってね」
「買います!」
というわけで刀鍛治の本をゲットした。これでヘーパイストスが刀を作ってくれるに違いない。ただいくつも種類があり、どれがいいのかさっぱり分からなかったので、全部買うことにした。安かったから問題ない。
他にもドワーフの里は俺にとって、イクスの武器素材を買うことが出来る重要な場所であることが判明した。
その後、リープリッヒに戻り、花火ちゃんたちのお待ちかねの鹿肉を振る舞う。当然のように参加しているリリーたちには目を瞑ろう。
巨鹿のステーキ:レア5 料理 品位D+
効果:満腹度60%回復、一時間筋力アップ(大)
巨鹿の肉を焼いた料理。味付けは塩が使われ、お肉の味を楽しめる料理となっている。
みんなが盛り上がっている中、メルたちに皆から許可を貰い、攻略情報を教える。敵が武技を使ってくることなどを教えてくれたお礼だ。
情報を聞いたメル、満月さん、レッカが話す。
「クイーンサンドアントを倒すと強化されちゃうんだね」
「この場合だとキングサンドアントを先に倒しても同じかも知れないな」
「同時に倒したら、弱体化しそうではあるね。かなりきついだろうけど、やってみる価値はあるかな」
更にドワーフの里の情報を公開する。
『荒れるな』
全会一致だった。与一さんと火影が言う。
「武器素材までなら良かったですけど、属性石はダメですよ」
「爆弾素材は大歓迎でござるよ! 早く攻略せねば!」
そこでルインさんが話す。
「逆に言うとそれって、そこから先のエリアはそれらを使った素材や武器が必要になる難易度ってことよね?」
『…』
全員沈黙…やっと鉄、銀の武器をゲットしたところだからな。
そこでルインさんがクエストの情報を教えてくれる。食料調達のクエストが来ているらしい。俺の鹿肉はでかいし、美味しかったので、結構な金額を貰えるとのことだ。でもあれ倒すの大変なんだよね。
祝勝会が終わった後、俺はセチア、リアン、ヘーパイストスを呼ぶ。今日の素材と本、魔法剣についてだ。
「まずヘーパイストス。これを見てくれ」
「こ、これって刀鍛冶の本ですか!?」
「あぁ。ドワーフの里でみつけて、買ってきた。これで刀は作れそうか?」
「中身を読んでみないとわかりませんが、タイトルを見る限り作れると思います」
よし!どうやら大丈夫みたいだな。
「それで刀を二本頼む」
「分かりました! 銀のインゴットを使いますね」
「ん? まだ作って無かったのか?」
「はい。タクトさんならいい素材をすぐに見つけて来そうなので最後にして置きました。リリーさんと恋火さんのは現在作っているので、明日にはお渡し出来ると思います」
あぁ、確かにそれなら銀の武器は最後になるよな。リリーと恋火は明日新しい武器が手に入るとしり、テンションが上がっている。
そして刀も重要だが、それよりも重要なものがある。俺はルビーを取り出す。
「セチア、ヘーパイストス。これを使って、魔法剣を作ってくれ」
「このルビー…ドワーフから貰ったものですよね?」
隠さず、話そう。
「そうだ。属性石もドワーフの里で買うことが出来る。セチア…お前がドワーフを嫌っていることは知っているつもりだ…それでもセチアが作る魔法剣は切り札になるはずだ…頼めないか?」
「はぁ…タクトさんはずるいですね…そこまで言われたら、作るしかないじゃないですか」
あぁ、俺自身ずるいと思う。それでもセチアには作ってもらう必要がある。恐らく今回のラスボスはネビロスだからだ。
「悪いな…」
「謝らないでください…腐敗ゾンビをなんとかしたいのは私も同じです。作る武器はタクトさんの武器でいいんですね?」
「あぁ、片手剣で頼む」
それをきいて、全員が驚く。
「刀じゃなくていいの? タクト」
「あぁ。片手剣が一番使い勝手がいいし、セチアもヘーパイストスもいきなりの刀の魔法剣はきついだろう?」
「確かに刀すら満足に作っていない状況でいきなりの魔法剣は厳しいですね」
「私も初めてですから、やはり最初は片手剣がいいと思います」
というわけで記念すべき最初の魔法武器は片手剣に決まった。それとまだ色々、抱えているんだよな。
「タクトさんは松の杖でいいですか?」
「ん? 何か理由があるのか?」
「実は松は火属性の杖になるのであまりエルフとマーメイドとは相性が良くないみたいです」
まぁ、セチアは樹魔法があるし、リアンにいたっては火魔法を覚えていない。それなら俺が使うのは間違いじゃないな。
「わかった。楓なら相性はいいんだな?」
「はい! ばっちりです! リアンの琴も作りますね。弓も新調出来そうです」
矢は松を使ってもらう。流石にセチアだけでは負担が大きいのでユグさんにも頼んだ。
「これで杖作りたいんだけど…ダメ?」
「全部、矢です」
「自分は作るくせに!」
「俺が伐採したんですから、当たり前じゃないですか…時間があったら、伐採して売りますから矢を優先してください」
ユグさんに念入りにお願いされたが、一時間の重労働なんだよな〜…時間が余るといいね。その後、セチアのお願いで宝玉生成の現場に付き合うことにした。まずセチアは宝石細工でルビーを磨きあげた。そしていよいよ宝玉生成に入る。
「ふぅ〜…では作成しますね」
「頼む」
「宝玉生成! 刻印!」
セチアがルビーに杖をかざすとルビーが真っ赤に輝き、形を変えていく。そして美しい真紅の玉が作られた。鑑定してみる。
紅宝玉:レア度7 素材アイテム 品質C+
ルビーの原石を加工し、宝玉生成で作成した宝玉。刻印も刻まれており、その真価は武器素材として使った時に発揮される。
レア度7!?ルビーのレア度が5だから二つもアップしている…これはやばい気がする。セチアが出来栄えを確認する。
「うーん…やはりイマイチでしたね」
…これでイマイチ?するとセチアが聞いてくる。
「タクトさんはなぜエルフが魔法剣について、ドワーフと衝突したかわかりますか?」
「え? それは自分たちの技術を真似されたからじゃないのか?」
「ハズレです。私たちエルフは鍛冶に誇りを持っているわけじゃないんです。別に真似をされたから怒るものじゃないんですよ」
えぇー!?そう言われてみたら、エルフは鍛冶をすること自体が変な気がする。ならなんで魔法剣をエルフは作ったんだ?強敵が現れたからじゃないのか?
「強い敵なんて精霊召喚で十分じゃないですか。この宝玉の始まりはとあるエルフが鍛冶師の人間に恋をした時にプレゼントとして作ったものなんだそうです。そしてそのプレゼントから作成されたのが魔法剣なんです」
「ん? ということは魔法剣を作ったのは人間なのか?」
「はい。魔法剣を作成した人間は一気に鍛冶職として有名になりました」
まぁ、そんな凄い武器を作ったら、有名にもなるわな。良かった、これでめでたしだ。
「しかしそれが原因で二人は別れ、死ぬことになります」
話が重いわ!!
「鍛冶職の人間は国からたくさん魔法剣の受注を受けますがエルフはそれが許せなくて、彼と別れることになるんです。魔法剣を作れなくなった彼は魔法剣を没収され、国の依頼を達成出来なかった彼は死刑にされてしまうんです」
あぁ〜、なんとなく話が読めてきたぞ。
「エルフが怒った理由はエルフにとって、宝玉は大切な恋心を込めて作ったものだからか?」
「流石タクト様ですね。その通りです。それを量産する発言は決して許されるものじゃありません。もっといえば他人に渡す行為も許せなかったみたいですね」
そりゃ、そうだろ…でも鍛冶の人も鍛冶職として生計を立てるのに必死だったんだろうな。
「そのエルフも死ぬんだよな?」
「はい。彼が自分のプレゼントのせいで死んだことを知った彼女は彼が作成した魔法剣を国から奪い、魔法剣を使用します。彼を殺したその国は魔法剣の一撃で滅び、その時に彼女も死んだそうです」
なるほどね…それでエルフが作成した魔法剣の噂が広がり、ドワーフの耳に入るが肝心の宝玉のことが伝わっておらず、エルフの宝玉を批判して、戦争にまでなったわけだな。
「ドワーフに宝玉のことを教えることはしなかったのか?」
「言えるわけじゃないですか。なぜ赤の他人に自分の恋心を説明しないといけないんです?」
ごもっともだが、それで戦争まで行ったんだぞ。そこでセチアが宝玉生成の話に戻す。
「宝玉生成は必然的に自分の一番強い思いを込めたものが最強のものになります。今回は試しなので、その思いは込めませんでした。それでも強力な武器になると思いますのでタクト様にはこの話を聞いてもらう必要があると思いました」
確かに強い武器は持つことが必ず幸せになるとは限らない。誰しもが強い武器は求めるからだ。それを作り、使おうとしている俺には責任があるのだろう。
「話してくれてありがとうな…肝に命じておくよ」
「はい。ではヘーパイストス君と作成に入りますね」
セチアがそういって、ヘーパイストスのところに向かう。そこで魔法剣を作ったヘーパイストスがえらい目に合うんじゃないと思ったが、わざわざ俺にこの話をしたってことはセチアが他人に使いたくないってことだよな。
プレイヤーへの対処法を色々考えながら、ログアウトした。
名前 セチア ハイエルフLv7
生命力 52
魔力 128
筋力 45
防御力 36
俊敏性 37
器用値 128
スキル
杖Lv14 魔法弓Lv12 鷹の目Lv6 射撃Lv5 木工Lv12 採取Lv22
調薬Lv12 刻印Lv3→Lv4 宝石魔術Lv1→Lv2 宝石細工Lv1→Lv2
風魔法Lv7 火魔法Lv16 水魔法Lv20 土魔法Lv13 闇魔法Lv1
神聖魔法Lv3 雷魔法Lv1 爆魔法Lv2 木魔法Lv16 氷魔法Lv3
樹魔法Lv9 ハイエルフの知識Lv15→Lv16 精霊召喚Lv6 料理Lv8