#23 初めての魔石召喚と新たな召喚獣
無事に契約が済み、外に出る。
「無事に終わりました。ありがとうございます」
「いいのよ。召喚獣の幸せが私の幸せだから」
「……それなら抱き付くのはやめてほしい」
リリーが初めてツッコミをした気がした! よっぽど嫌だったんだな。
「そういえばタクト君は魔石召喚はしないのかしら?」
「これからするつもりです。まだ水性石や水晶石を魔石にしてないので」
俺がそう答えるとアウラさんの目が輝く。あ、やばい。
「素敵! 次は水系の召喚獣狙いなのね! 材料は揃ってるのよね?」
「え、えぇ。でも」
「じゃあ、ここで魔石作っちゃっていいわよ。ついでに召喚の間も使わせてあげる!」
くそ、逃げ場がない!
「その心は?」
「私も新しい召喚獣を見てみたい!」
ぶっちゃけたよ……まぁ、いいか。
俺は召喚の間に戻り、水性石8つから魔石生成を使い、4つ出来上がる……なぜ失敗しない? 失敗したら逃げられたのに! そして貴重な水晶石を使うとこれも成功した……アウラさん、何かしてないだろうな? 出来上がったのはこちら。
水魔石:レア度3 素材 品質E
水属性を宿した魔石。
通常の水魔石より強い水の魔力を宿しているため、レア度が上がっている。
水魔石:レア度2 素材 品質E-
水属性を宿した魔石。
水属性の召喚獣を召喚することが出来る。
疑惑を持つが取り敢えず準備は整ったので、リリーを下がらせると魔石召喚を実行する!
水魔石が5つ浮かび上がる……水晶石を元に出来たレア度が高い水魔石を中心に4つの水魔石がくるくる回りながら下の魔法陣に吸い込まれていく。
そして魔法陣が青くなる。魔法陣から青い光の粒子が放たれ、周囲を明るく照らす。
「綺麗…」
リリーが思わず綺麗と言ってしまうほどに美しい光景だった。そして召喚獣が魔法陣から現れた。
その子は青い髪をツインテールにした可愛らしい女の子だった……え? また?
少女が目を開ける。綺麗なサファイアブルーの目だ……ただ目付きは優しいというよりちょっときつめかな? 服装はリリーが黄色を基準にしているように青を基準にしている。そしてその子が聞いてくる。
「あなたが私を召喚したんですか?」
「あぁ、召喚師のタクトだ」
「タクト…さん。私に名前を下さい」
名前…名前ね…しかも女の子のね…どうしたものか。
俺が考えているとまだ漂ってる青い光の粒子が目に入り、閃く。
「イオン…なんてどうかな?」
「イオン…それが私の名前…」
「嫌だったら、考え直すけど」
「いえ、気に入りました。これからよろしくお願いします。タクトさん」
笑顔を見せるイオン。うん、リリーとはまた違った笑顔だ。可愛い……とりあえずステータスを確認しよう。
名前 イオン ドラゴニュートLv1
生命力 10
魔力 10
筋力 8
防御力 6
俊敏性 20
器用値 14
スキル
二刀流Lv1 水中行動Lv1
え…ドラゴニュートってリリーと同じ? でもステータスもスキルも全然違うぞ。イオンはスピードタイプでスキルは水中特化って感じだ。
「あぁ、こちらこそよろしくな。イオン」
「任せて下さい!」
こうして新たな召喚獣イオンが仲間になり俺達はこれでフルパーティだ。一応仲間同士自己紹介しないとね。
「とりあえず仲間を紹介しようか。リリー」
「はいはーい!」
リリーが手をあげながら近付いてくる。
「イオンと同じドラゴニュートのリリーだ」
「リリーだよ! これからよろしくね! イオンちゃん」
「よ、よろしく、お願いします」
イオンがリリーの勢いに呑まれている。
「むー、イオンちゃんもリリーの名前を呼んで!」
「え……えっと……リリー?」
「うん!」
リリーは満開の笑顔だ……なんというかやっぱり自分と同じ仲間がいるというのは嬉しいことなんだな。
「あ! リリーがこれからイオンちゃんのお姉ちゃんだからね!」
「え…」
イオンが凄く嫌そうな顔で固まった。
「冗談ですよね?」
「冗談?」
リリーには冗談がわからないか。
「嘘ってことだよ」
「嘘じゃないよ! 本当のことだよ!」
リリーが騒ぐとイオンが鬱陶しそうな顔をする。
「タクトはリリーがお姉ちゃんだと思うよね?」
「タクトさんはそんなこと思いませんよね?」
こっちに飛び火した。確かに立場上リリーが姉だと言えるが俺は姉妹の大変さを知っている。というわけでこの話題は躱そう。
「どっちでもいいんじゃないか? 個人的には対等な立場であってほしいが」
「良くないよ!」
「タクトさんがそういったんですから、対等な立場で決まりですね」
「うぅ~納得行かない! こうなったら勝負で決めよう!」
あぁー変なことを言い出す。
「こらこら。イオンは武器がまだ無いんだぞ。勝負なんて出来ないだろ」
「じゃあ、武器を揃えてから!」
「いいですよ。白黒はっきりつけてあげます」
「決まりだね!」
あーあー。どうなっても知らないぞ。リリーよ。
その後、グレイ、虎徹、コノハを召喚して自己紹介する。こちらは問題なく終わる。そしてまた召喚石に戻し、外に出るとアウラさんが目を見開き、鼻血を出しながら、姿が消えた……あぁ~。デジャブ。
「幼女キター!」
「キャー!? な、なんですか!? この人!?」
アウラさんはイオンを押し倒している……両手足を封じている。逃げ場がないな……あれ。
「はぁ……はぁ……か、可愛い声……それにツインテール……可愛い……可愛い過ぎる」
「ちょ、ま、って……どこ触って……きゃっ!? ……や、やめ」
「嫌がってる姿も可愛い……はぁ……はぁ……」
「タ、タクトさん。リリー……助け……」
イオンが助けを求めるが流石にこの光景を邪魔できるスキルを俺は持っていない。
「リリーの事をお姉ちゃんと認めたら、助けてあげる」
リリーよ。そこまでして姉にこだわるのか? しかしあれだけ嫌がっていたイオンが呆気なく声を発する。
「認める……から……早く……助けて……」
「もう。仕方無いなー。お姉ちゃんが助けてあげる~」
リリーが嬉々として近付くと一瞬でイオンがいる所に押し倒される。
「リリーちゃんもいらっしゃ~い」
「え!? え!? え!?」
リリーがパニクってる。
「さぁ、3人で楽しいアバンチュールを楽しみましょう!」
「あっ!? ダ、ダメ…ふゃ!? 耳、触らないで~」
「助けになってないじゃないですか! あ、ダメ! 耳は……敏感で……」
耳、敏感だったのか……。
「ふぇふぇふぇ。えぇのんか? ここがえぇのんか?」
もはやアウラさんはセクハラおじさんにしか見えないな。現実なら間違いなく通報している。
「「タクト(さん)、助けて~」」
助けてやりたいが俺では無理だな……俺はハリセン装備の店員さんを探しに行った。