#190 大地の大精霊の試練
昨日告知が遅くなったので、改めて告知します。
明日から来週の日曜日までGWということで2話更新いたします。
朝の7時と夜の23時に更新致します。今回の2話更新で3章の終わりまで行く予定です。
俺が目を開けるとそこは荒れ果てた大地のみが広がっている世界だった。
まるで世界の終焉のような…
『然り』
急に脳内に声が響いた。
『この世界は数ある未来の一つの姿なり。生き物の手で自然が壊され、生き物が絶滅した世界』
『我は大地の大精霊ジ・アース。エルフと契約を結びし人よ。汝に問う。この世界を見て何を思う?』
この世界を見て、どう思うかか…きっとこの世界は…
「人間が過ちを正そうとせず、私利私欲のために突き進んだ果ての世界なんだと思います」
現実でも人間は自然を壊し続けている。一生懸命訴える人もいるし、環境にいい技術開発に力を入れている人もいるが、未だに世界は纏まってない。
なら現実の世界がこのままならどうなるか?きっとこの世界のようになってしまうんだと思う。
『然り。人は自然を壊す。人だけではない。他の亜人種も当然エルフも自然を壊す。故に我は汝らを許すことは出来ない』
当然だろうな。自然を散々壊した挙句にこの世界があるなら人類はこの結果を受け入れなければならないだろう。なぜならこの世界はこんな世界になると知っていたが何もしなかった世界なのだから。
『汝は我に何を示す?』
「俺もセチアも自然を大切にしているとは言えません。木を切り倒し、武器を作ってきました」
『…』
「それはあなたから見れば正しい行いじゃないかも知れません。しかしお陰で俺たちはアスタロトと闘うことができました。木から武器を作っていなければアスタロトと闘うことも今まで戦って来ることも出来なかったでしょう」
俺の杖も木で出来ているからな。
「だから俺は自然に対し、感謝と謝罪を示したいと思います。俺たちの今までの旅を支えてくれた感謝と傷つけたことに対する謝罪です」
『言葉だけでは足りぬのはわかっているな?』
「はい。人も亜人種も過去の過ちから学ぶことが出来ます。セチアが自然の危機に対して、俺に助けを求めるならば俺は仲間総出でそれに応えます。この手で木を植え、育てることが必要ならそれを行うことを約束致しましょう」
『汝は我に誓いを示した。その誓いを持って、セチアの進化を祝福しよう』
大地から緑の光が溢れ、荒れ果てた大地に草が生え、花が咲いていく。そして俺の目の前から一本の木が生え、育っていく。その木を中心に次々木が育っていき、森となっていく。
その光景はまるで自然の誕生を早送りで見せているようだった。
『大地も草木、そして生き物も自然なり。壊すことは簡単なれど直すことは困難。しかと心に刻み込むといい』
そして最初の木が輝き、小さくなっていく。やがて俺と同じ身長まで小さくなると俺のよく知る姿になる。
光が収まり、進化したセチアが現れた。そこでインフォが流れる。
『セチアがハイエルフに進化しました。精霊召喚【中精霊召喚】を取得しました』
あぁ…これが竜化クラスの技だな。
進化したセチアだが胸が急成長してる。和狐級だ。問題なのは和狐は巫女服なので自己主張はしていないが、セチアは自己主張しまくりだ。今までは上は普通のおしゃれな服装だったが、今回は最早ブラと言ってもいいだろう。
あくまで服で表すならへそ出し肩だしトップスと言えばいいのか?俺はこれに慣れないといけないのか…いやリビナや最初のイクスよりはマシだ。きっと大丈夫!
スカートは今まで普通のミニスカートだったが材質がチュールになったと言えばいいのか?はっきり言うと薄くなった。そしてベールが追加された。
「あ、あれ? タクト様? ここは一体…」
「大地の大精霊が俺に見せた世界だ」
あの大精霊は人が嫌いだと言うのは本当だろう。でも人が努力すれば壊れた自然も元に戻せることをきっと俺に伝えたかったんだと思う。
「えぇ!? 大地の大精霊様に出会ったんですか!?」
「姿は見てないよ。声だけだったが、それでも俺に自然の有り難さを教えてくれた」
「私、何もしてませんけど…」
「する必要なかったんだろうな…」
自然の有り難さを伝えるなら召喚師だけでいい。俺は教えて貰ったこと、誓ったことをセチアに伝えればいいからな。
「私も声だけでもお聞きしたかったです…」
そんなうらめしい目で見られても困る。
お楽しみの進化したセチアのステータスを確認しよう。
名前 セチア エルフLv30→ハイエルフLv1
生命力 35→50
魔力 90→110
筋力 25→40
防御力 22→36
俊敏性 22→36
器用値 90→110
スキル
杖Lv14 弓Lv6→魔法弓Lv6 鷹の目Lv1 射撃Lv1 木工Lv10 採取Lv14
調薬Lv8 刻印Lv1 宝石魔術Lv1 宝石細工Lv1 風魔法Lv7 火魔法Lv13
水魔法Lv14 土魔法Lv13 闇魔法Lv1 神聖魔法Lv1 雷魔法Lv1 爆魔法Lv1
木魔法Lv15 氷魔法Lv1 樹魔法Lv6 エルフの知識Lv13→ハイエルフの知識Lv13
精霊召喚Lv5 料理Lv2
やばい。セチアに魔法で抜かれそうだ…そして新しいスキルがやはり多いな。
まず弓が進化して魔法弓になった。これは自身の魔法を矢に付与することが出来るものらしい。矢に属性があっても上乗せされるらしいからかなり強力になった。
鷹の目はトリスタンさんが使っていた遠くの敵を目視で確認出来るスキルだ。
射撃は矢が届く距離が伸び、命中率が上昇するスキルらしい。
刻印は武器や装飾に文字を刻むことで武器を強化出来るスキルらしい。通常は魔法文字を刻むそうだが、セチアはエルフ文字を武器に刻むことで魔法文字より強力な効果を武器に付与することが出来るらしい。ただし、一日一回までで効果はランダムとという話だ。
宝石魔術と宝石細工がこの進化の目玉みたいだ。まず宝石細工は宝石を磨き、形を整えることが出来るものだ。これで宝石が使えるようになったわけだな。
そして宝石魔術だが、宝玉生成しか使えないらしいが、この宝玉は宝石から作られるもので、セチアが自慢する。
「宝玉を作れるのはエルフだけです。ドワーフもホビットもこれだけは作れません」
セチアが自慢するのは珍しい。よほど凄いものみたいだな。
「宝石と宝玉は魔法剣などの魔法武器や魔法道具で使われるものですが宝玉は魔力の貯蔵力が桁違いなんですよ」
エンジンの馬力の話をされてる気がしてきた。ついでに魔法剣について聞いてみた。
「魔法剣にはまず二つの種類あります。一つは魔法属性がある石で作った剣に宝石を嵌め込み、魔法文字を刻んだもの。これは魔法が使えない者のために作られました」
理論は宝石に封じられた魔力をマナが流れている石に流し、刻まれた魔法文字が魔法陣の代わりをして、魔法が発動するというものらしい。
「もう一つは魔法属性がある石で作った剣に宝石を嵌め込み、魔法が使える者の魔力と宝石の魔力を合わせ、魔力を増幅させるというものです」
こちらは魔法が使える者専用。つまり俺はこっちになる。この説明なら宝玉は魔力を増幅させる量が増えると言うことだろう。因みに使い手が魔法使いなので魔法文字を書く必要がないらしい。
「ドワーフやホビットは魔法文字を刻むことで魔法の威力が上がると武器の価値を上げていますがそんなことはないので、タクト様は気を付けてくださいね」
ばっさりだな…これは魔法剣を巡って何かあったな。
あとでヘーパイストスに聞いた話だが、最初に魔法剣を作ったのはエルフという話だ。そしてその魔法剣の性能が物凄く高く、鍛冶命のドワーフはそれが気に入らなかったらしい。
結果、ドワーフたちも魔法剣を作ったのだが、それを知ったエルフは当然パクられたので、怒る。結果互いの魔法剣の貶し合いになり、戦争にまでなったらしい。
下らない話だね。因みに現在進行形でドワーフはエルフの魔法剣を超えようと必死になっているそうだ。
確認が終わったところでセチアが元の世界に戻される。
「イオンお姉様にスタイルを自慢してお待ちしてますね」
わざわざ言わんでいい!イオンとは頼むから仲良くしてくれよ。
そして俺は赤い光に包まれ、新たな世界に転移する。次は恋火だな。