#186 恩には礼と九尾の罰
目が覚めると豪華なベッドの上だった。そしてインフォが来る。
『依頼クエスト『フリーティア騎士団訓練試合』をクリアしました』
『片手剣が15に到達しました。武技【ハヤブサ斬り】を取得しました』
『リリーの大剣が15に到達しました。武技【グランドスラッシュ】を取得しました』
「タクト~! 大丈夫? 怪我はない!? 腕はある!?」
リリーがあちこち触ってくる。そんなリリーをイオンが叩いて止める。
「何やっているんですか! タクトさん、気分はどうですか?」
「あぁ~…最悪だ。テントの中の寝袋で1日中寝ていたい」
「それならば大丈夫そうですな」
俺の視界にヒポクラテスが映る。
「ここは?」
「王城の医務室です。今、蘇生魔法で復活させたところです」
蘇生魔法あるんだね。いや、アイテムあったし、あって当然かも知れない。
「やっぱり負けたか…あのオーラ、反則だろ」
「反則なのはあなた自身です」
そう言いながらサラ姫様が現れた。
「いやいや、サラ姫様のほうでしょう」
「何も使わずに圧倒してきた人の言うセリフじゃないですよ」
むぅ…これでも必死だったんだけどな。
「俺たちから言わせたらどっちも化け物だけどな!」
「ですね…騎士団に入れば間違いなく一番になりますよ。どうですか? 彼女たちと一緒に入りませんか?」
インフォが流れる。
『フリーティア騎士団に入りますか?』
こういう流れで来るか。でもノーだな。
「俺はリリーたちと冒険をしたいので、申し訳ありませんがお断りします」
「そうですか。まぁ、冒険者なら当然でしょうね。では予定通りこれをあなたに贈らせてもらいます」
サラ姫様から勲章が渡され、インフォが流れる。
『称号『騎士の勲章』を獲得しました』
『魔法剣スキルが解放されました』
え?騎士の勲章だと?内容を見る。
称号『騎士の勲章』
効果:一部スキルの解放
国から騎士として認められた証。
一部スキルが魔法剣ということなんだろうな。サラ姫様が言う。
「本来ならフリーティアの騎士の勲章を差し上げたかったのですが、冒険者を続けたいということなのでこの称号にいたしました」
「ありがとうございます」
お礼を言うとブラスさんが聞いてくる。
「ところでどうしてエクスマキナを使わなかったんですか?」
あぁ…気になるか。正直に話そう。
「イクスは俺の剣術を完全再現します。サラ姫様の前に俺の剣術を見せると最初から本気を出させてしまうので、それを避けました」
「いぃ!? お前の剣術を使うのか?」
「はい。皆さんの剣術の真似も出来ます。流石にステータスやスキルや武技は真似出来ませんけどね」
「いやいや! お前さんの剣術を使うだけで十分だからな?」
リリーたちまで頷くが俺は今回負けたからまだまだ修行が足りない。
「このあとは何か用事がありますか?」
「はい。保護した彼女を送り届けてあげようかと」
「保護ですか?」
ひょっとして把握していないのか?俺は事情を説明する。
「確かに誘拐の話は聞いていましたがまさかそんなことになっているとは…どういうことですか?」
「駐在している兵の目を盗んでやっているんだろうな」
「だとするとその暗黒召喚師はこちらのことをよく知りすぎていますね。騎士団の中に情報を流しているものがいるかと」
「見つけ出しなさい。そして暗黒召喚師の情報を吐かせるのです」
「「は!」」
ガルーとブラスは部屋を出ていく。
「もう暗黒召喚師は国外に逃げていると思いますがあなたはどうするつもりですか?」
「襲ってくるなら次は仕留めるだけです」
アイテムで逃げるなら全裸にして、斬り殺すまでだ。
「私がそいつならあなただけは絶対に狙いませんね」
えー。結構経験値になったし、恋火そっくりの和狐にあんなことをしたんだ。しっかり仕留めたいものだ。
というわけで俺たちは和狐の案内でイエローオッサ山脈に向かう。洞窟を通ると幻影が現れる。
『またお前か…ここから先は通さぬといったはずだ』
「うちは斎の巫女の和狐どす。九尾様に取りついでもらえへんか?」
『ふん。お前などとうに捨てられておるわ。失せよ』
「そ、そんな…」
俺は確信した!九尾はいい奴じゃないな!
しかし予想外の声がする。
「自分の眷属のために動かん思うたら、切り捨てとったんか…あの小僧」
『え!?』
全員が声をしたほうを見ると、そこには落ち着いた雰囲気で超巨乳のセリアンビーストの美女がいた。
プラチナの髪に狐耳、そして十の尾を持っている。この人はまさか…
「「空天狐様!?」」
恋火と和狐が土下座する。やっぱりそうなのか。そして稲荷様は俺の頭を撫でてくる。
「よううちの依頼、果たしてくれはったな。報酬を渡したいから奥に進もうか」
『な!? 誰だ! 貴様! 勝手に進むと』
「誰に口聞いとるんや? 若造。狐からやり直しぃ」
「コーン」
謎の強そうだった存在がただの狐になった。えー…なんだこれ。恋火と和狐は抱き合い怯えている。
「ほな、いこか」
その後、襲いかかってくる強そうな狐が次々と普通の狐に戻される。
ごめんな…俺たちのせいでこんなことになって…その後進んでいくと巨大な鳥居がある場所にたどり着く。
「ここはたくさんの斎の巫女たちが何重にも結界を張っとる場所どす。簡単には突破は」
空天狐が触れるとその結界が全て粉々になる。
「いくで~」
「う、うちたちの苦労が…」
和狐が座り込んでしまう。どうやら相当苦労して作られた物らしい。
そして目的地に着く。目の前に巨大な扉が現れる。どうやって開けるんだ?これ?
空天狐がパンチで扉を粉々にする。うん。そうなる気はしていた。
中を見ると七の尾や八の尾の巨乳美人ばかりの狐のセリアンビーストの中に一人だけ九の尾を持つチャラそうな男のセリアンビーストがいた。
「あーん。うん? 誰だ? お前ら、ぐぼらっ!?」
空天狐が一瞬でチャラ男との間合いを詰め、殴り飛ばした。
「九尾様!?」
「何者だ! 貴様!」
あー、そんなことを言うと…巨乳のセリアンビーストは子供になってしまった。人類の宝が失われた気がする。
『な!?』
全員、絶句。そしてチャラ男改め九尾がいた所に空天狐が座る。
「うちは空天狐や」
『ヒッ!?』
空天狐を知った子供たちは土下座する。
『ご無礼を働きました! どうか命だけはお助けください』
空天狐、どんだけだ。
すると九尾が空天尾に襲いかかる。
「死ねや!」
「お座りや」
「コーン!」
九尾はお座りをして元気に返事をする。
「な!? これは言霊!? あ」
「うちに手を上げるとは随分偉くなったな。小僧」
「げぇええええええええええええ!? バ、ババア」
九尾が一瞬でぼろ雑巾になる。
「なんか言うたか?」
「な、なんでもありません…お美しい姉上様」
ひでぇ。まぁ、九尾が悪いと言えるが…そして九尾が衝撃の一言が飛び出す。
「ん? な!? 俺の嫁が全員子供になってるぅ!?」
あはは。あの美人のセリアンビーストは全員嫁か。まぁ、男として言いたいことはあるが、俺もリリーたちがいるから何も言わないでおく。
「うちに歯向かいよったからな。天罰や」
「何が天罰だ! 巨乳を無くすとはてめえには男のロマンがわからねーのか!」
「そんなん知らんわ。知っとるんは眷属のピンチを見捨ててここでお前さんが怠惰を貪っていたことや」
そこで九尾がこちらを見ると和狐を見つける。
「ちょ、ちょっと待て。弱肉強食が俺たちのルールだろうが! 負けた奴を捨てて何が悪い!」
「将来有望な眷属を守り、育てるのもうちらのルールやで?」
「こ、こいつは有望じゃなかったんだよ!」
最悪だな。こいつ。
「そうか。なら和狐や」
「は、はい!」
「お前さんの斎の巫女の役目は終いや。今日からその召喚師の召喚獣となって姉妹一緒に励むとええ」
「「え!?」」
ちょっと待て!和狐が俺の召喚獣になるの!?いや、それよりも姉妹ってまさか…
「ん? なんや。気づいとらんかったんか? その二人は姉妹やで?」
な、なんだって!?すると恋火が言う。
「懐かしい感じがしたのはそういうことだったんですね…」
あー…恋火が試合前に和狐の言葉で固さが無くなったのは姉妹だったからか。妙に納得した。
すると九尾が言う。
「待て待て! 俺様の眷属だぞ! 誰がこんな奴に」
空天狐の蹴りが炸裂する。
「うちらの眷属を助けてくれた人になんや? その口の聞き方は? 恩には礼で返せと教えたはずや」
「ぐ、ぐふ…」
「タクト言うたな? お主には和狐とこの九尾の領域以外のイエローオッサ山脈の立ち入りを許可するわ」
「いいんですか?」
「ええよ。ただしモンスターはそれなりに強いし、危険もある。そこだけは覚悟して入りや」
「わかりました」
「ほなら。タクト、これ使いや」
真っ赤に玉を渡される。鑑定してみる。
焔魔石:? ? ?
?
ダメだ全然見えてない。そして鑑定した結果、レベルが2つも上がった。これってもしかしなくても炎魔石の上の魔石!?
「なんや? 召喚師なのに知らへんのか? 成長した召喚獣との契約にはそれ相応の魔石が必要になるんや。和狐は特別な力持っとるし、これくらいじゃないと契約できん」
なんかヤバい感じしかしないがやるしかないな。
俺は焔魔石を持ち、和狐に話しかける。
「俺の召喚獣になってくれるか?」
「助けてもらいましたご恩返し、しっかりさせて貰います」
焔魔石が和狐の中に吸い込まれる。そしてインフォが流れる。
『シュラインビースト和狐と契約に成功しました』
これで俺が召喚できる召喚獣の数は4になった。そしてセリアンビーストじゃなかったんだね。
「上手くいったようやね。あとはお前さんたちの罰やな」
『ヒッ!?』
「命はとらん。せやけどお前さんたちはうちが預かるわ。みっちり立派な女として修行したるから覚悟しぃや」
子供になったセリアンビーストたちの顔が絶望に染まる。そして九尾の罰は、というと。空天狐が手を叩くと九の尾を持つ銀髪の男性たちが現れる。
『お呼びですか。空天狐様』
「天狐たちよ。九尾の小僧の教育とここの管理を任せる。ええな?」
『はっ!』
巨乳ハーレムからイケメンハーレム送りか…ドンマイとしか言えない。
さて、和狐のステータスを確認するか。
名前 和狐 シュラインビーストLv1
生命力 75
魔力 90
筋力 45
防御力 40
俊敏性 90
器用値 90
スキル
扇Lv10 舞踊Lv10 投擲操作Lv10 邪炎Lv10 忌火Lv10 気配察知Lv10
危険察知Lv10 封印魔術Lv10 幻術Lv10 炎魔法Lv5 神道魔術Lv10 妖術Lv10
裁縫Lv10 革細工Lv10 料理Lv10 血醒Lv5 神降ろしLv1 獣化Lv1
改めてセリアンビーストじゃなかったんだな。いや、恋火のお姉さんだから当然かも知れないが、いかんせん胸がデカいわりに顔と身長で幼く見えていたから、ギャップが凄いんだよ。
折角なので色々聞いてみた。
まず扇はやはり武器。それだけではなく踊る時に使うと舞踊の効果がアップして、更に投擲操作で操ったり、打撃、防御にも使える優れものらしい。
邪炎と忌火については邪炎が炎属性と闇属性の攻撃で、忌火は火属性と神聖属性らしい。
封印魔術が俺よりレベルの高い和狐は俺の知らない魔術を覚えていた。それは【ルーンマジック】。魔法を封じるものだ。俺もちゃんと使えるようになろうと思った。
神道魔術は恋火の血醒の時に見たが、和狐は祓い(はらい)と結界を使えるようだ。禊と祓いの違いは、どうやら禊は自身に神聖属性を付与するもので、祓いは聖なる祈りで自分を中心に一定範囲のアンデッドを浄化してしまうものらしい。
その代わり強い敵には効果がなく、祈っている間は動けなくなり無防備になるそうだ。そこをフォローするのが俺たちの仕事だな。
結界は相手を光の壁で閉じ込めるもので外から攻撃可能らしい。閉じ込めて一方的にボコボコにしろってことだな!他にも敵の侵入や敵の攻撃を防いだり出来るらしい。
妖術は恋火も使えるが、変化の他に祟りを使えるそうだ。攻撃を受けないと使えないらしいが、自分を攻撃した者に呪いと病気の状態異常を与えるらしい。
えげつない。呪いがあるから恐らくクリアが通用しなくなるんだろう。しかもリターンも封じられた状況で全ステータスダウンは致命的だ。
裁縫と革細工は服、防具を作る時に必要なスキル。これからは和狐に手作りの防具を作って貰おう。
神降ろしは稲荷様を自分に降ろすためのもの。戦うためのものじゃなく、稲荷様と会話することができ、稲荷様が必要と判断すれば自分が稲荷様の寄り代になるためのスキルらしい。
獣化は竜化のバージョン違い。巨大な狐の獣になって暴れるらしい。代償も同じだろうな。
まとめると彼女は後衛サポートだな。日常でもサポートをこなせる頼りになる存在みたいだ。改めてクエストを頑張って良かったと思った。
名前 タクト 中級召喚師Lv13
生命力 47
魔力 94
筋力 33
防御力 23
俊敏性 33
器用値 67
スキル
格闘Lv9 蹴り技Lv16 杖Lv21 片手剣Lv18 投擲Lv4 高速詠唱Lv14
召喚魔術Lv24→Lv25 封印魔術Lv3 錬金Lv9 採掘Lv14 伐採Lv17 解体Lv25
鑑定Lv13→Lv15 識別Lv21 風魔法Lv20 火魔法Lv21 土魔法Lv22 水魔法Lv20
闇魔法Lv20 神聖魔法Lv3 雷魔法Lv21 爆魔法Lv20 木魔法Lv20 氷魔法Lv19
時空魔法Lv21 水泳Lv8 読書Lv8 料理Lv30 餌付けLv6 釣りLv14 シンクロLv9