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Elysion Online ~ドラゴニュートと召喚師~  作者: とんし
キングコングの砦
195/1716

#184 フリーティア騎士団訓練試合②

第三試合


相手はサラ姫様の隣にいた細身の双剣使いだ。間違いなく強いだろう。


彼が前に出て、名乗る。


「フリーティア近衛騎士団二番隊隊長ブラスです。いざ尋常に勝負を」


対するはイオンだ。


「リープリングのイオンです。全力で戦わせて貰います」


互いに武器は双剣で頭脳派のスピードタイプ。ならば勝負を決めるのは引き出しの多さと戦術の深さだろう。


互いに武器を構える。そこでイオンが構えたのは短剣だった。


俺にはイオンの戦術がわかる。対する相手がどう来るか。


「第三試合、開始!」


「「はぁぁ!」」


互いに開始と同時に間合いを詰め、斬り合う。


片手剣の場合だと威力と間合いの広さで有利になるのに対して、短剣は小回りの速さで有利になる。


つまりブラスはイオンを懐に入れないように間合いを取りながら、攻撃することになる。


対するイオンはブラスの斬撃を捌きながら懐に入ろうと前に進む。だから一見するとイオンが攻めて、ブラスが守ってるように見える。


だけど、実際は違う。イオンはなんとかフィールドの端に詰めたいが余裕を持って対処されている。


完全に誘ってるがイオンはそれに乗ることにしたみたいだ。


イオンが短剣で届かない突きを放つ。


「氷刃!」


短剣が氷の剣となって刀身が伸び、突きがブラスの頬を掠める。


だが、ブラスの対処も早かった。氷の剣を弾き飛ばす。イオンはすかさず距離を取り、腰の双剣を抜き、武技を使う。


「ダブルスプラッシュ!」


一見すると無謀な攻撃のように見えるがブラスの背後からは二本の氷の剣が襲い掛かっていた。


イオンは氷の剣を弾かれる前に投げていたのだ。そして投げた氷の剣をブラスは弾き飛ばした。


イオンが投げた物なら投擲操作の効果を受けることができる。


前から連続技の武技、背後から飛んでくる二本の氷の剣。普通なら対処不可能な攻撃だ。


「アクセラレーション!」


ブラスの剣に魔方陣が見えた瞬間、ブラスの動きが劇的に変化する。残像すら残すスピードで背後の氷の剣を地面に刺さるように弾き、使えないようにする。


そしてイオンのダブルスプラッシュも全て受けきり、双剣を弾き飛ばす。


「デュアルエッジ!」


「くっ!? 氷刃!」


ブラスのデュアルエッジに対して、イオンは自分の腕に氷刃を使い、辛うじてガードする。


「素晴らしい戦術と反射神経です。時空魔法が無ければ、やれられていましたね」


アクセラレーション。あれは時空魔法なのか…とんでもない魔法みたいだ。効果時間は短いみたいだが、スピードが圧倒的に速い。


しかもスピードだけじゃないだろう。思考速度、反射速度も上がってるはずだ。でなければあのスピードで攻撃、防御が出来るはずがない。


「反則の魔法ですね…」


イオンの言う通りだろう。しかもブラスは杖なしで魔法を使用した。特殊な職種かスキルを持っているのは間違いないだろう。


「降参しますか?」


「まさか…相手がどんなに強くても最後まで戦うのが強さなんだと私はタクトさんから学んでいます。ですから最後まで全力で戦わせて貰います!」


イオンが氷の剣となった腕を地面に突き刺す。


「竜技! ドラゴンウェーブ!」


溢れる水が波となって、ブラスに襲いかかる。


「今日あなたと全力で戦えたことに心から感謝します。ですから私もあなたの全力に応えましょう!」


ブラスが双剣を上で交差させる。すると魔方陣が合わさり、新たな魔方陣を完成する。


「合成魔法! ゼピュロスエッジ!」


渦巻く嵐の刃とイオンの波が激突する。勝敗は明らかだった。嵐の刃はイオンの水を巻き込みながら、イオンを狙う。


勝敗がついたと思ったその時だった。


「蒼波動!!」


イオンの最後の一撃が嵐の刃を貫き、ブラスに襲いかかる。


「な!?」


ブラスにイオンの蒼波動が直撃した。


「はぁ…はぁ…う…」


イオンは全てを使いきり、倒れる。対するブラスはライトシールドで蒼波動を防御していた。


「あ…」


会場がこの結果に静まり返る。


「えー…おほん。勝者、ブラス」


勝者宣言しても誰も拍手しない。


「えーっと…姫様。勝ちました」


「そうですね。最後彼女の全力に応えると言ったのに守って勝ちましたね」


「うっ!? いや、あれは受けてはダメな一撃でしたよ!?」


「嘘はやめようぜ? 全部作戦だったんだろう? 流石だぜ…どんな狡い手を使っても勝ちを取りに行くなんてよ」


「違いますよ! 姫様! ガルー! 信じてください!」


向こうは勝ったのに大変みたいだ。


俺はイオンを回復させる。


「タ、タクトさん。私…負けちゃいましたか…」


俺はイオンの頭を撫でる。


「よく頑張ったな。勝負には負けてしまったけど、イオンの成長しっかり見せてもらったよ。誇っていい。素晴らしい戦いだった」


「タクトさん…ありがとうございます」


そして観客からも拍手と歓声がイオンに贈られる。それほど素晴らしい勝負だった。


そしてサラ姫様がこちらに来る。


「大丈夫でしたか?」


「は、はい! タクトさんに回復して貰ったので、大丈夫です」


「素晴らしい戦いでした。あなたの最後まで諦めない強い意志、騎士として参考にしたいと思います。みな!この素晴らしい戦いを見せてくれたドラゴニュートのイオンにもう一度、盛大な拍手を!」


『わぁー!!』


歓声全員から拍手が贈られる。


「あ、あはは…は、恥ずかしいですね」


「それだけの戦いをしたんだよ。俺も情けない戦いはできなくなっちゃったな」


「えぇ。我々の戦いも負けないくらいいい戦いにしましょう」


俺たちが話していると大男が来る。 


「その前に俺たちの戦いだけどな!」


リリーも元気よくそれに答える。


「負けないよ! お姉ちゃんとして、イオンちゃんの仇はリリーが討つ!」


「は! 上等だ! 返り討ちにしてるぜ!」



第四試合


先程の大男が大剣を手に出てくる。


「フリーティア近衛騎士団一番隊隊長ガルーだ」


こちらもリリーが元気よく大剣を2本持ち出て行く。


「リープリング長女のリリーだよ!」


わざわざ、この場で長女を強調するリリーは凄いと思う。


「おいおい。そんなの使いこなせるのかよ」


「戦ってみればわかるよ」


確かに普通大剣二本持ちを使いこなすのは困難だ。だけどリリーはその戦いを一度見ている。しかもさっきの戦いでイオンはリリーのためにわざとスキルを温存した。


それをリリーがどう活かすかだな。


「それでは第四試合、始め!」


開始と同時にリリーが練気を使い、ガルーに空を飛びながら近づき、大きく右の大剣を構える。


「ヘビースラッシュ!」


それに対して、ガルーは何も使わず、リリーの大剣に攻撃を合わせる。


「重くいい攻撃だ。だが甘ぇ!」


リリーを強引にパワーで吹っ飛ばした。


「わわ!?」


やっぱりこのセリアンビーストの隊長、半端ない。練気で強化されたリリーのヘビースラッシュを何も使わず、真正面から受けて吹き飛ばした。


間違いなくリリーと同じパワータイプで筋力はリリーを遥かに上回っているな。


「すごい! でも負けないよ!」


「はっ! 来い! 嬢ちゃん!」


リリーは地面に降り、しっかり足に力を入れて、大剣を振るう。それに対してガルーも真っ向からぶつかり合う。


純粋なパワーとパワーの激突に試合を見ている騎士たちは興奮する。そして徐々にリリーがガルーを押し始めた。パワーで負けていてもリリーは大剣を二本持っている。片手なので武器に加わる力は弱くなるが手数で多いから、ガルーも防御に回るしかない。


「ちぃ! なら俺もちっと本気出すぜ! 仙気!」


ガルーが緑色のオーラを纏い、大剣が振るわれるスピードが速くなった。そのスピードで二本の大剣を持つリリーが全然対応出来てない。


「むぅぅ! ヘビースラッシュ!」


リリーが左手で決死のヘビースラッシュを放つが、ガルーさんはリリーのヘビースラッシュをあっさり弾く。


「悪いがおわーーッ!?」


大剣を構えて斬ろうとしたガルーの視界にもう一本の剣の輝きが映る。


「ヘビースラッシュ!」


「ちっ!」


ガルーは咄嗟にガードするが地面に踏ん張りがきいていない状況でのガードは流石のガルーもリリーの攻撃はガードしきれず、ぶっ飛ぶ。


しかしガルーは平然と立ち、近づいてくる。


「今のは連撃か? いいスキル持ってるな。嬢ちゃん」


「これでおあいこだよ!」


リリーが片方の大剣を離し、両手で一本の大剣を持つ。それ見て、ガルーは獰猛な笑みを見せる。


「あぁ。これでチャラだな。ここからが本番だぜ!」


「いくよ!」


再び、ぶつかり合う。ただ今度は純粋なぶつかり合いだけではない。互いに武器でぶつかりながら剣を弾くタイミングを測っている。


その剣戟の応酬を見ていたイオンが言う。


「リリー、楽しそうですね」


今、リリーは笑いながら、戦っている。そしてガルーも同じように笑っている。


「俺たちの中でリリーとパワーで戦えるのがいなかったからな…自分と同じタイプの人と全力で戦えることに喜びを感じるのは当然だろうな」


「もしかしてタクトさん、こうなることをわかってて試合を了承したんですか?」


「流石にそれはないよ。サラ姫様のお願いなら断るわけにはいかないからな。けどどうせ戦うならリリーとイオンには同じタイプの強い人と戦っていい経験を積んで欲しいとは思ったよ」


「確かにいい経験になりましたけど…タクトさん、スパルタ過ぎです」


イオンから非難の視線を受けるが最初に俺は厳しいと言ったからそれでも望んだのはイオンたちだ。非難されるのは的外れだ。


リリーとガルーは互いに距離を取り、武器を構える。どうやら決着になるな。


「いくよ! 獣のおじちゃん!」


「お兄さんだ! こい! 嬢ちゃん! 俺様も本気を見せてやる!」


互いに自分の最大の攻撃を放つ。


「竜技! ドラゴンクロー!」

「ぶっ飛びやがれ! 諸刃の一撃!」


竜の爪と渾身の一撃がぶつかり合う。


「やぁああ!」

「らぁああ!」


互いの気持ちがぶつかり合った攻撃の勝敗はガルーに軍配が上がる。リリーの大剣は弾かれ、リリーはぶっ飛ばされる。この瞬間、ガルーは勝負に勝ったと思い、油断した。


ぶっ飛ばされたリリーは翼を羽ばたかせ、再度ガルーの懐に入り込む。


「光拳!」


ガルーの腹に放った左手の光拳はガルーの仙気に邪魔され、惜しくも届いていなかった。


「残念だったな…嬢ちゃ、ん!?」


しかしリリーの右手がドラゴンの爪と化す。


「竜技! ドラゴンクロー!!」


ガルーにほぼゼロ距離のドラゴンクローが直撃する。ドラゴンクローは素手でも使えたんだな。初めて知った。


「はぁ…はぁ…うぅ…」


リリーが魔力切れで倒れる。対するガルーは仁王立ちで立っていた。


「大した嬢ちゃんだ。俺に二撃も与えたことは誇っていいぜ」


「勝者、ガルー!」


今度は騎士たちから歓声が起きる。ガルーはポーズで答えるが内心では冷や汗をかいていた。


「(あっぶね~。諸刃の一撃の反動で防御ダウンと動けない所にあのコンボはやばかった…仙気使ってなかったら、死んでたぞ)」


「見事な勝利でしたね」


「まぁな! ブラス、見たか? これが男の勝ち方ってもんだ!」


「…仙気なかったら、負けてたくせに…」


「なんだと!」


「まぁまぁ。次は私の番ですね」


「決めてください。姫様」


「任せてください!」


ブラスはサラ姫様にそういうがガルーはサラ姫様に忠告する。


「姫さん、最初から本気で戦ったほうがいいぜ?」


「? もちろんそのつもりですが…どうしたんですか? ガルー?」


「あなたらしくないですよ?」


ガルーは本能的にタクトのやばさを感じていた。さっきの戦いもずっと自分たちをタクトは見ていた。


戦っている時は気にしていなかった。だが今、サラ姫様が戦うとなった瞬間に猛烈なプレッシャーとなって、ガルーに襲い掛かっていた。


「上手く言えないんだけどよ…あの嬢ちゃんたちを鍛えたのは間違いなくあいつだ。油断していると負けちまうぜ?」


「肝に命じておきます。では、行ってきます」


サラ姫様が舞台に上がる。


一方、俺はリリーを回復させる。


「負けちゃった…ごめん、タクト」


俺はリリーの頭を撫でる。


「よく頑張ったな。リリーはあの強い人に認められたんだ。謝る必要なんてないさ。俺はリリーの戦いを誇りに思うよ」


「うわーん! タクト~!」


よしよしっと。さて、次は俺の番だな。


「タクトさんはあのお姫様に勝てますか?」


「勝てないな」


イオンに聞かれたので、正直に断言する。


『え!?』


「そこは勝てると言うところじゃないんですか?」


「そうなのか? でも実力差は明白だからな。リリーたちがどうしようもないように俺もどうしようない。ただ俺は本気であの人と戦う。リリーたちがそうしたからな」


リリーたちは息を呑む。タクトの戦いは暗黒召喚師の時にも見たがリリーたちは何となく分かっていた。自分たちはまだタクトの本気を見ていないと…


本気のタクトが舞台に上がる。この試合の勝敗を決める大将戦が始まろうとしていた。

ブラスについて補足します。彼は魔法騎士で魔法剣という剣で魔法で使用できるスキルを持っています。本来は魔法剣専用の武器がありますが、今回は使っていません。


合成魔法も単独で使用できるのは二刀流スキルを持っているためです。本来は同じスキルを持っているもの同士が同時に使用することで使うことが出来ます。

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動物保護をしている少年は異世界で虐げられている亜人を救います
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