#183 フリーティア騎士団訓練試合①
第一試合。相手に出てきたのは背中から翼を生やしたホークマンの騎士だった。騎士が武器の槍を振り回して名乗る。
「我はフリーティア騎空騎士団一番隊隊長エアティス! さぁ、相手を呼び出すがいい!」
空を飛ぶ相手が来るとは予想外だが、相手は決まったな。
俺はリビナを呼び出す。男性騎士たち、大歓喜。しかしエアティスは不満なようだ。
「まさか夢魔種まで仲間にしているとはな。だが、そのような雑魚では話にならん」
「雑魚ってボクの事かな? こう見えて、男性相手なら強いよ?」
「ふん。代えるなら今のうちだぞ?」
あらら。この人、相当自信有りそうだけど、俺ならリビナ相手にそんなことは言えないな。
「変えません。リビナ、武器はいらないな?」
「当然。あの人の自信をポッキリ折ってあげるよ」
そして戦いが始まった。
「ゆくぞ! ペネトレイ!?」
槍の武技を使おうとしたエアティスはもろにリビナを見てしまい、魅了の状態異常になり、膝をつく。
「お、おのれ…我が忠誠を誓う姫様の淫夢を見せるか! だがこの程度で我は負けん!」
頑張っているが鼻血出てるよ?
「わぁ! 凄いね。騎士様! で、も。ポロリもあるよ」
エアティスは目を見開き、倒れた。可哀想に…でも倒れている彼の姿は喜びに満ちていた。
「勝負あり! 勝者、リビナ!」
「やったね! 大勝利! これでタクトの膝枕の権利ゲット!」
なんだそれは?俺は何も言っていないがどうやらリリーたちの間でそういう話になってるのか…まぁ、ご褒美にそれくらいならしてあげるけどね。
エアティスの方には仲間のホークマンの騎士たちが集まっていた。
「エアティス隊長! しっかりしてください!」
「いつも報告は大切にするように言ってるじゃないですか!」
「何を見たのか報告してください! 隊長」
エアティスが話す。
「瑞々(みずみず)しく…実った…桃…」
エアティスが力尽きた。
『隊長~!!』
仲がいい騎士団だな。その一方でサラ姫様はおかんむりだった。
「最悪です」
「いやー、あれは相手が悪かっただろ…それにしてもあれほど強いとは…是非戦ってみたいもんだ」
「ですね」
するとサラ姫様は剣を抜く。
「じょ、冗談だろ? 姫さん」
「そうですよ。軽い冗談です」
「…この練習の後、全員を集めなさい。私が騎士とはどういうものか教えてあげます」
リビナの戦闘は色んな意味でフリーティア騎士団に傷を残したのだった。
第二試合
フリーティア騎士団からは薔薇を口に加えた痛いイケメンが出てきた。はっきり言おう。全然強そうじゃない。
「ふふふ。僕は辺境警備騎士団一番隊隊長ロベール! フリーティア騎士団一のイケメンにして、美剣のロベールと呼ばれている。美しい青髪のお嬢さん、いざ尋常に勝負を! 僕が手取り足取り、剣術を教えてあげよう」
何、ナンパしているんだ?こいつ。俺がボコろうとしたがその必要はなかった。
「タクトさんに教わってるので、結構です」
ばっさりフラれたな。イケメンが固まってしまった。周りの騎士たちも笑いを堪えている。
間違いないな…こいつ、何か事情があって選ばれたな。
「き、貴様! 貴族であるこの僕の誘いを断るとは!」
貴族ということはいいとこのボンボンか…なるほど。なんとなく話が読めた。
何かぎゃあぎゃあ言っているがこちらも誰か選ばないとな…でも相手は決まってるんだよな。
「恋火、行けるか?」
「ひゃ!? ひゃい! 行けまふ!」
ガチガチに固まってるな…大丈夫だろうか?
「恋火、おきばりやす」
「あ…が、頑張ります!」
おや?和狐の応援で少し緊張が解けたかな?
「ふん! セリアンビーストか…まぁいい。血醒を使えぬセリアンビーストなど恐れるに足りん!」
「よ…よろしくお願いします!」
どうやらロベールの声は恋火に届いていないようだ。
「第二試合、ロベール対恋火。始め!」
「美しく! ボンナバン!」
細剣の突進技で一瞬で距離をつめてくるロベールに対して恋火が居合いの構えのままだ。
「あ!? ぬ…抜打!」
固くなって反応が遅れた恋火はとっさに目を瞑ったまま、抜打を放つ。鈍器で殴ったような音が会場に流れた。
「あ…あれ?」
最初に声を出したのは恋火。ボンナバンで距離を詰めたロベールに対して、恋火は一歩踏み出し、抜打を使った。
結果、互いに技の間合いがずれ、ボンナバンで加速したロベールの股間に鞘の抜打が炸裂した。あれは男として致命傷だぞ。
恋火が恐る恐る横にズレるとロベールは膝をつき、倒れた。ピクピク痙攣していたが、やがて動かなくなった。
「勝者、恋火!」
「え? え? え? 勝っちゃいました?」
本人が状況を飲み込めていないのが、微笑ましいな。
「恋火! かっこよかったで!」
「あ…か、勝っちゃいました!」
なんか和狐と恋火を見ていると微笑ましくなっちゃうな。対するフリーティアサイドはというとサラ姫様がご立腹だった。
「全く…ただの一発の抜打で倒れるとはだらしない」
「ただの抜打じゃ無かったんですけどね…」
「あいつは最近調子乗って色々やってたみたいだから、更正させるために試合をさせたが更正どころか致命傷になっちまったな…見てるこっちまで痛くなる」
「? 何を押さえているんですか?」
「「なんでもありません。そのままの姫様でいてください」」
二人は純粋なままのサラ姫様の姿を強く望んだ。
「では、次は私の番ですね」
「嬉しそうだな」
「望んだ相手と戦えるんです。嬉しいに決まってるじゃないですか」
「違いねーな。それにしても律儀なやつだ。わざわざ俺たちの要望に答える必要はなかっただろうによ」
ガルーが言うとサラ姫様が断言する。
「恐らくその必要があったんですよ」
「ん? どういうことだ? 姫さん」
「簡単なことです。私たちが彼らと戦うことを希望したように彼らもまた私たちとの勝負を望んだんでしょう」
「なるほどな」
「姫様の言う通りでしょうね。では行って参ります。姫様」
フリーティア騎士団最強の三人との練習試合が始まった。
レベルアップはイベント後に書きます。
完全なギャグ回でしたので、少しフォローしておきます。エアティスはフリーティアの空を守っている騎士団の一番偉い隊長なので、本来は結構強いです。相手がリビナだったのが、災いしました。
ロベールは貴族のボンボンなので訓練は受けていますがそれだけのキャラです。こんなことにならなくても通常の恋火なら瞬殺するほどの雑魚キャラです。
エアティスは4章で活躍予定です。