#175 キャンプセットと男の天敵
翌日、学校で猿の事を考えていると委員長が来る。
「あ、誠吾くん。実は今日から私たちもフリーティアに到着するんだけど、どうしたらいいのかな?」
「え…どうしたらと言われても、宿屋を確保したりとかからするんじゃないか? というか帝国にいかないんだ?」
「あのイベントを見ちゃうとフリーティアに行きたくなるよ。実際にトリスタンさんや色んなプレイヤーがフリーティアに集まってくると思うよ」
「そうなんだ。それは助かるな」
「やっぱり何かしてるんだね? 昨日からずっと悩んでたでしょ?」
バレバレか…仕方無いよな。
「エリア解放イベントに挑戦してるんだ…凄いね。私も参加したいな」
「囮役を募集中だよ?」
「それは嫌!」
ですよねー。とはいえトリスタンさんたちが来てくれるのは本当に助かる。
問題はプレイヤーのバランスだよな。これはルインさんと佳代姉に相談してみよう。
学校が終わり、ゲームにログインする。
すると目の前にリリーとイオンがいた。
「タクトー! 戻ったよー!」
「これで戦えます! 行かせてください!」
確かに元に戻っていた。サラ姫様の言ったとおりだな。
そして必死なアピールは今までお店を頑張っていたからだろうな。ユウナさんたちからリリーたちの頑張りは聞いている。
しかし今回の敵を教えると固まる二人。
お店をやるか筋肉ゴリラと戦うか。俺なら前者を取る。
しかしストレスから解放しないといけないので、二人とルーナ、ひまりを連れて、フィールドに出る。そこで昨日覚えた時空魔法を使う。まずはワープゲート。使用するとインフォが流れ、行きたい場所を指定するように言ってくる。
俺が行ける場所はフリーティア前、リープリッヒ、ブルーメンの港町前、ヴェルドーレ村前、ヴェルドーレ村の畑、ファストの町前だった。どうやら一度行ったことがある村やお店、畑に行ける魔法みたいだ。
ファストの町はもう懐かしく感じるな。今でもモッチさんに料理をギルド経由で送っているが、どれだけ繁盛しているか気になるな。
そしてこの行きたい場所にゲートポイントの項目があった。
実際にこの場で使用してみると、地面に魔方陣が描かれ、消える。ワープゲートを確認するとシーク街道が追加されていた。なるほど、めっちゃ便利だな!
だがこのゲートポイント、設置できるのは3つまでらしい。自由に変更出来るが考えて使用しないとな。
ついでにポイントでゲットしたキャンプセットも使ってみるといきなりドームテントが現れた。やばい。テンション上がってきた。
中に入るとシートが引いてあって、ランタンに寝袋がある。思わず寝袋に入ってみる。あ〜、これいいわ。テントを張る苦労がないキャンプって最高だと思う。そしてやはりテントにはログアウト機能があった。
しかもどうやらこのキャンプセットはカスタマイズ機能があるみたいだ。つまり机などを好きに設置出来るらしい。セチアに色々作って貰わないとな。寝袋に包まりながらそう考えているとリリーが飛び込んでくる。しかし寝袋は偉大だ。ダメージはほぼない。
「何遊んでいるの? タクト? タクトだけずるい!」
「私たちが一生懸命戦っている時に何しているんですか…」
何と言われても寝袋を堪能している。なんて答えたら、イオンは怒るだろうな。
「キャンプセットの使い心地を試してたんだよ。中々に快適だ」
「その姿を見てれば一目瞭然です。早く出てください」
イオンに言われ、渋々外に出るとすかさずリリーが寝袋に入る。
「何これ!? あったかい〜」
「こ、こら! リリー」
リリーを叱るイオンだが、入りたそうにしているのがバレバレだ。
「イオンも使ってみたらどうだ? 使い心地を確認する必要があるだろう?」
「タクトさんが言うなら、少しだけ」
イオンが寝袋の性能を確認しているとリリーがイオンを転がす。
「きゃああ!? …リリー」
「ちょ、ちょっとした遊び心だよ。イオンちゃん。そんなに怒らないで」
「問答無用です! きゃあ!?」
寝袋のまま、リリーに襲いかかろうとしたイオンが倒れる。その流石に思わず、リリーと一緒に笑ってしまった。
「〜〜っ!! もう怒りました! 待ちなさい! リリー! タクトさん!」
「俺もか!? まずい…逃げるぞ! リリー!」
「うん! タクト!」
そんなことがあったが、色々確認出来たのはよかった。因みに追いかけっこでイオンに叶うはずもなく、二人でイオンに捕まるが走り回ったせいで、グレーウルフの大群に襲われることになった。
慌てて念のため空けておいた予備枠から黒鉄を召喚し、なんとか撃退した。なんとも馬鹿らしいことをしたが、こんな戦闘もあっていいと思った。
その後、二人を連れて獣魔ギルドに向かう。今日は悩んだ結果、闇と木の召喚石を試そうと思う。
獣魔ギルドに付くと早速魔石を作る。
最初は闇魔石からだ!さぁ、昨日と同じく成功してくれ!
闇魔石が魔方陣に吸い込まれると昨日と違いピンクの煙りが充満する。
な、なんだ?警戒度マックス。かなりヤバい気がするぞ!
ピンクの煙の中から現れたのはピンクのロングヘアーに黒い二本の角、コウモリの羽、先がハート型の黒い尻尾そしてビキニ水着…
いやビキニはないと絶海龍王様が言っていたからかなり危ういボンデージになるのか?
とにかく俺はその娘の正体を知っている。何故ならこの娘は男の天敵の悪魔だからだ。
その悪魔の名はサキュバスと言う。男に淫夢を見せ、性欲を貪る悪魔だ。男の理想の姿で現れると言われている。
ちょっと待て…ということはこの子が俺の理想?
なんてこった!俺はロリコンだったのか!
俺がショックを受けていると俺の理想の子が立ち上がる。
「じゃじゃーん! ボク、参上! ボクを呼んだのは君かな?」
俺はボクっ娘が理想だったのかー!?
「あ、ボクを見て興奮しちゃダメだよ。後ろの娘たちが怖いからね?」
後ろ?
「リリーたちは怖くないよ!」
「それよりも服を着なさい! 服を!」
「服? 着てるじゃん?」
「それは着ているとは言いません!」
イオン、必死だ。
「それって体を隠せってこと?」
「その通りです! わかったら、早くしてください!」
「わからないよ。どうして体を隠さないといけないのさ」
「ど、どうしてって…」
イオン絶句。なぜ体を服で隠すのか?一言でいうと恥ずかしいからだがそれを言ってしまうと敗けな気がする。
「恥ずかしいとかなら、ボクは見られて恥ずかしい体してないし、問題ないよ」
凄い…言い切った。
「そ…そういう問題ではなく…タ、タクトさんの教育上良くなく…」
イオン、お前はいつから俺の教育係か何かになったんだ?
「へ~、タクトって言うんだ! いい名前だね! それに…うん、ボクはどうやら運がいいみたいだ」
「運がいい?」
「強い召喚師に呼び出されたみたいだからね!」
「分かるのか?」
「あー! ボクたちをそこら辺の悪魔と一緒にしちゃダメだよ! 人間の強さぐらい見ただけですぐにわかるよ」
どうやら悪魔より上位の存在みたいだ。
「それは悪かったな。謝るよ」
「うん! 素直に間違いを謝るところもいいね! さて、そろそろボクの名前を貰えるかな?」
流石にサキュバスは予想外だ。どうするかな…よし、二つの言葉をくっ付けるか。
「リビナなんてどうだ?」
「む! 女の子っぽい名前だね! そこはかとないエロスも感じるし、気に入ったよ」
なぜわかった!?性的欲求を意味するリビドーとラテン語の女を意味するフェミナから名付けた。
サキュバス、恐るべしだ。さて、ステータスを確認する
名前 リビナ リリムLv1
生命力 16
魔力 28
筋力 5
防御力 5
俊敏性 20
器用値 20
スキル
素手Lv1 飛行Lv1 隠密Lv1 夜目Lv1 誘惑Lv1 幻術Lv1
魅了吸収Lv1 魔弾Lv1
あれ?サキュバスじゃない?
「あ、ボクのこと。サキュバスだと思った? 残念でした。ボクは幼児体型だからリリムなんだよ。目指せ、大人の女性だね!」
自分で幼児体型言うなー!
しかしスキルを見ると強いかどうかわからないな。魔石召喚で召喚した亜人種では最初からの飛行持ちは初だが…
とにかく実力を見せて貰おう。
「ボク、男の人と戦わないと強くないよ?」
「なら俺と戦うか」
「え? いいの? 青髪の娘、泣いちゃうよ?」
「誰が泣くんですか!」
イオン、弄られてるな。とにかくリビナと戦ってみる。
決闘が始まるとガラスの剣を構える。
すると急に体が熱くなる。な、なんだこりゃ。動けないぞ。
「ダメだよ。ボクを見たりしたら魅了しちゃうよ」
ぐ…視認しただけで強制的に魅了するのが誘惑スキルか!
「あはは! まだまだいくよ」
今度は力が急激に抜けていく。ステータスたちを見ると生命力と魔力が急激に減っていく。
魅了状態の敵から生命力と魔力を奪うのが魅了吸収だな。
確かに男相手なら強いと言うはずだ。反則コンボだろ!?
「タクト!?」
「タクトさん!?」
リリーたちの声が聞こえるが熱さは収まらない。参ったな…これは。
リビナの手に魔力が集まる。あれが魔弾か。
「バイバイ、タクト」
魔弾を放とうとした瞬間だった。俺は目を閉じ、自分の足を剣で刺す。
目で見ることで動けなくなるなら閉じればいい。魅了で動けないなら、痛みで打ち消せばいい。それで無理なら俺の負けだが、熱さが無くなる。賭けに勝ったな。目を閉じたまま、リビナの首に剣を突きつける。
「油断大敵だったな」
「あはは…みたいだね。負けました。まさか痛みでボクの誘惑を強制解除するとは思わなかったよ。しかも目を閉じたまま、ボクの首を狙うなんてね」
「解除出来るか賭けだったけどな…これでもリリーたちの師匠なんだ。情けない姿は見せられないんだよ」
「予想以上の男だね。うん、改めてよろしく!」
「こちらこそ」
こうしてリビナとの決闘が終わった。
あ、危なかった…間違いない。リビナは俺の天敵だ!
名前 黒鉄 ロックゴーレムLv9→Lv10
生命力 53→55
魔力 0
筋力 61→63
防御力 61→63
俊敏性 21
器用値 10
スキル
素手Lv11→Lv12 防御Lv20 挑発Lv15→Lv16 物理耐性Lv19 採掘Lv6 投擲Lv3
名前 ひまり ホークLv5→Lv7
生命力 25→28
魔力 25→26
筋力 32→34
防御力 18→20
俊敏性 30→32
器用値 20→21
スキル
飛行Lv10→Lv12 強襲Lv7→Lv8 鉤爪Lv7→Lv8 風魔法Lv6→Lv7
名前 ルーナ フェアリーLv8→Lv9
生命力 26→27
魔力 49→51
筋力 17→18
防御力 21
俊敏性 44→46
器用値 32
スキル
飛行Lv10→Lv12 竪琴Lv1 舞踊Lv8 魅了鱗粉Lv3 風魔法Lv5→Lv6 木魔法Lv5→Lv6
幻術Lv2
名前 リビナ リリムLv1→Lv3
生命力 16→18
魔力 28→32
筋力 5→6
防御力 5
俊敏性 20→22
器用値 20→22
スキル
素手Lv1 飛行Lv1→Lv3 隠密Lv1 夜目Lv1 誘惑Lv1→Lv2 幻術Lv1
魅了吸収Lv1→Lv2 魔弾Lv1→Lv2
初めての夢魔種、ボクっ子リビナ登場回でした。タイトルと本文にある通り、対男最強の亜人種の一角です。人はもちろん、性欲がある男のモンスターには絶大の能力を発揮するキャラです。
ボクっ子にしたのは、サキュバスでボクっ子のイメージがなかったからなのですが…予想外にハマったキャラになります。