#17 初進化と義理の姉妹
早速グレイの進化先を見てみよう。どうやら四つあるようだ。それぞれ説明が書かれているので、見ていこう。
レッドウルフ
温暖な地域に住む赤毛の狼。主な攻撃手段は噛みつき。火属性が付加された噛みつき攻撃が可能。他のウルフより筋力は高いが、防御力、俊敏性が低いのが特徴。
おぉ! 火の噛みつきは見てみたいな。だが攻撃力が上がり、防御とスピードが下がるのか……。諸刃の剣だな……こりゃ。次を見てみよう。
ホワイトウルフ
寒冷な地域に住む白毛の狼。主な攻撃手段は噛みつき。水属性が付加された噛みつき攻撃が可能。他のウルフより防御力は高いが、筋力が低いのが特徴。
水属性は持ってないから魅力的だな。だが問題は防御力が上がり、攻撃力が下がる点か。これだと壁役のイメージを持つが……狼だからな。そこまで防御力は上がらないだろう。さて、次はどんなのかな?
ブラックウルフ
夜行性の狼。攻撃手段は噛みつきのみ。しかし他のウルフと比べ、夜は無類の強さを誇る。ステータスはグレーウルフよりやや劣る。
属性攻撃を持たないが夜特化の狼か……恐らくフクロウと同じ、奇襲や隠密スキルを覚えるんだろうな。さて、次がラスト。本命です。なぜならグレイの名前の由来だからだ。
グレーウルフ
平野に住む狼。攻撃手段は噛みつき。牙を硬化して噛みつくことが可能。最もオーソドックスなウルフ。
一番無難なのがグレーウルフらしい。グレイの名前の由来だし、まだ序盤ならオーソドックスにいって問題ないだろう。というわけでグレーウルフに進化させてみた。
グレイの体が灰色に輝き、進化する。光が収まると少し大きくなったグレイの姿があった。
『グレイがグレーウルフに進化しました』
進化が完了したインフォも流れる。では、早速ステータスを確認してみよう。
名前 グレイ ウルフLv8→グレーウルフLv1
生命力 20→25
魔力 2→10
筋力 24→30
防御力 12→16
俊敏性 24→30
器用値 12→18
スキル
噛みつきLv5 気配察知Lv5 夜目Lv4 危険察知Lv1 硬化の牙Lv1
うん。強くなったね! 新スキルは危険察知と硬化の牙。硬化の牙はさっき説明で書かれていた通り、武技のようなものだろう。
危険察知はなんだろう? 気配察知と分けている点を見ると何か理由があるのだろう。単純に考えると気配察知はモンスターで危険察知はトラップなどを察知するスキルだろうか? だとするとありがたい。ピラニアトラップを事前に分かっていると色々助かるからな。
これで進化は終了。狩りを続行としたいところだったがどうやらここでタイムアップみたいだ。町に戻ると宿屋でご飯を食べる。一応モッチさんに聞いたところ虎徹とコノハも同じ部屋でいいらしい。俺達は部屋に行き、ベッドでログアウトする。
なぜかリリー、グレイ、虎徹、コノハと一緒に寝ることになり、ベッドの中はごちゃごちゃになったが暖かった。
ゲームからログアウトし、現実のベッドで目が覚める。時間を確認すると二十三時手前……危なかった。俺は予想以上にゲームにハマっているようだ。俺は急いでPCを立ち上げ、ビデオチャットの準備をする。
これはバイトのしすぎで倒れた際に義理の姉妹達から約束させられたものの一つ。毎日ではないが休みの日は二十三時にビデオチャットをするというものだ。これなら俺がバイトしていないか一目瞭然ということらしい。信用がないな。
相手が先にいたようなので、ビデオチャットを始めると見慣れた三姉妹の顔がPCに映った。
「兄ちゃん、やっと来た~」
「兄様……遅い」
兄ちゃんと俺を呼ぶのが義理の双子の姉妹で姉の理恋。兄様と呼んでいるのが妹の未希。自慢の美少女である!
すみません、兄バカで。しかも義理で……だが可愛いのは本当だ。
理恋はストレートのロングヘアで性格は最近、ツンとして生意気になってきている。
未希はショートヘアで性格は大人しく無口らしい。俺に対してはよく甘えてくるので、あまり無口のイメージはない。
そして最後の三人目は我らの姉だ。
「はいはい。二人共、せい君を責めないの。時間にはちゃんと間に合っているんだからね」
俺からすると義理の姉で理恋と未希の実の姉である佳代。俺は佳代姉と呼んでいる。
「佳代おねーちゃんは兄ちゃんに甘いよ!」
「姉様……甘い」
「そうかな?」
佳代姉も美人だ。性格はしっかりしているが頑固で俺達に対しては世話焼き癖がある。今年から大学生で偏差値が高い大学に自宅から車で通っている。
理恋と未希曰く、安全運転を意識しすぎで逆に怖いらしい。一体何があったのやらだ。
今は仲がいいが、出会った最初の頃の俺達の関係は最悪だった。まぁ、いきなり女だらけのところに男が加わるのだ。良い関係が築けるはずがない。それはもう大変だった。
理恋は噛みついて来てばかりいたし、未希は会話せずに俺を避け、佳代姉は別に仲良くする必要なんてないでしょ? という感じだった。
俺も当時はまだやさぐれていたので、そっちがそうなら俺も仲良くする必要ないと思っていた時期があった。
今の関係になったきっかけが中学一年生の夏。地元の夏祭りでのことだ。仲が悪かった俺達は当然、別々で夏祭りに行くことになったのだが、そこで佳代姉達は強引なナンパにあったのだ。
両親を亡くした悲しみを知っているからか、それを偶然目撃した俺は佳代姉を助けることにしたのだ。
佳代姉達を逃がした俺はナンパ男達を撃退し、それから今の関係になり、俺も今の俺になった。これが俺達の関係だ。
「悪いな。俺もギリギリになるとは思ってなかった」
俺がそういうと三人の目付きが鋭くなる。
「兄ちゃん、何かしていたの?」
「まさかとは思うけど、バイトなんてしてないよね?」
「兄様……」
信用ないな……俺。だがゲームで焼肉のバイトをしている……あれはセーフだと思いたい。
「してないよ。というか学校からもバイト禁止令が出たから出来ないって」
「そうなんだ……うん。学校はいい判断したね」
「そうでもしないと兄ちゃん、またバイトするからね」
「バイトはダメ」
「わかってるって……」
姉妹達から集中攻撃である。まぁ、これは俺が悪いので、甘んじて受けよう。
「でも兄ちゃん、何かしていたんだよね?」
「あぁ。友達から薦められて、最新のVRゲームをしているんだよ」
「「「VRゲーム!?」」」
俺の言葉に姉妹達が驚く。まぁ、俺自身やるとは思っていなかったからな。しかも結構ハマってるし……。
「最新のVRゲームってタイトルとかわかる?」
「あぁ、エリュシオン・オンラインってやつだよ」
「「「えー!?」」」
また驚かれる。なぜだ。
「今、やっているってことは初回限定版を手に入れられたの?」
「うん。そうだよ」
バイトの繋がりでお金かかってないが言いふらすことじゃないから。黙っておくことにしよう。
「「「ずるい!」」」
さっきから同じリアクションばかりだ。流石姉妹である。
「ずるいって言われてもな。というか三人共ゲームしていたのか?」
「エリュシオン・オンラインは初回限定版が手に入らなかったけど、他のVRゲームならしているよ。VRゲームも三人でプレイしているの。私が保護者でね」
現在の法律では高校生未満の学生がVRゲームをする際は高校生以上の人と一緒にプレイすることが義務付けられている。これに対しては色々な反対意見もある。誰もが保護者を用意出来るわけではないからね。
ただこのルールが設けられるほど、VRゲームというのは危険視されているということだろう。
「へー。全然知らなかったな」
「兄ちゃんより全然強いんだからね!」
「楽勝に勝っちゃうの」
義妹達から勝利宣言された。まぁ、俺はVRゲームほぼ初心者だからな。知らない間にゲーマーになっている姉妹には勝ち目がないかもしれない。
「色々聞かせてくれないかな?」
佳代姉に聞かれ、俺は今までのことを話すことにした。