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Elysion Online ~ドラゴニュートと召喚師~  作者: とんし
キングコングの砦
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#167 人類と亜人種の歴史

リープリッヒに到着すると俺は三人にハチミツドリンクを出し、イクスを紹介する。


「彼女がエクスマキナのイクスです。イクス、挨拶してくれ」


「ご命令ですか?」


「そう。命令」


「イエス、マスター。エクスマキナのイクスです」


「こんにちは。可愛らしいお嬢ちゃん。僕はカイン。君の救世主さ」


何、ナンパしているの?この人。


「わたしの救世主はマスターです」


イクス、ナイス!ばっさりだ。


「あはは! 見事にフラれたね! とにかく伝説に聞くような子ではないようだね」


「そんなことをして試さないでください」


「ネフィは固いね。さて、僕らは君と話に来たんだ。まず君は僕たちの敵なのかな?」


遠慮なく聞いてくる人だな。


「マスターの敵がわたしの敵です」


「うむ。つまり現状は敵じゃないってことだね」


「その認識で結構です」


そこでネフィさんが聞く。


「私たちの歴史ではエクスマキナは人類の敵となっていますが、そのことは知っているんですよね?」


「はい。わたしたちは人類と亜人種とは敵対関係にありました」


「なぜ敵対したのですか?」


「攻撃を受けたからです」


そこでアウラさんが驚く。


「人類や亜人種から攻撃を受けたの!? それっていきなりだったのかしら?」


「この星に来たときに攻撃を受けました」


「そんな…いくらなんでも突然なんて」


そこでカインが言う。


「別に不思議なことじゃないよ。今と昔では事情が違う。記録ではエクスマキナが現れたのは3000年以上昔の話だ。その時代の人類や亜人種はあちこちで戦争をしていた時代だ。そこにいきなりエクスマキナが現れたら、攻撃してしまうのは当然と言えるよ」


「そうですね。ですがそれがきっかけで人類と亜人種が協力するようになるのは皮肉ですね」


「え? どういうことですか?」


「エクスマキナという未知の巨大な敵を前に初めて人類と亜人種は協力することになったとされているんだよ。もしエクスマキナがいなかったら、この国は存在していなかったかもしれないね」


敵を前にしないと協力し合えないか…確かに皮肉だな。


「それでエクスマキナはどうなったのかな? 君はどうして生きているんだい?」


「エクスマキナはエネルギー不足で活動を停止し、私は召喚師からの魔力で活動するエクスマキナとして作られました」


「結果はどうあれエクスマキナは召喚師との共存を望んだってことだね。それは君たちの一方的な意思なのかな? 僕の予想では召喚師が絡んでいると思うんだけど」


確かに一方的な共存では共存とは言えない。どういうことなんだろうか?


「その通りです。ダリウスという召喚師が私たちの前に裸で現れ、敵対の意思がないことを証明しました」


は、裸で現れた?大丈夫か?そいつ。


「聞いたことがない召喚師ですね…姉さんは知ってますか?」


「全く知らないわね」


裸で敵対の意思がないことを証明しても歴史に名を残さないのか…辛いな。


「僕は知っているよ」


よかったな!ダリウスさん!知ってる人がいたぞ。


「同一人物かわからないけど、3000年以上前に亜人種との共存を訴えていた人の中にダリウスという名前があったはずさ」


お!当たりっぽいな。


「ダリウスはわたしたちの総司令と話し、エクスマキナを絶滅の危機から救うためにわたしとこのカプセルを作成しました」


「なるほどね。概ねの事情は把握できたかな?」


「ですね。いかがしますか?」


「王様には僕から話をさせてもらうよ」


「わかりました」


二人の間で話が進んでいっている。結局大丈夫なんだろうか?


「あの結局イクスは大丈夫なんですか?」


「大丈夫じゃ無かったら、君はどうするつもりかな?」


「グラマス!?」


ネフィさんが驚くがイクスがもし処分などの対象になったらか…


「その時はギルドや国との縁を切って、誰もいない無人島でみんなで楽しく暮らしますよ」


バトルシップがあるし、あの島には食料も豊富だ。毒も無くなったみたいだし、そういうゲーム生活も悪くはない。


「あはは! いい回答だね! 僕もグラマスなんて放り投げて、自分の召喚獣たちとそうやって暮らしてみたいよ」


「グラマス…本気で言ってますね。それ」


「当然でしょ? だって、僕、召喚師だよ?」


召喚師ならみんなそんなことをしたいと言いたげだな。そこでアウラさんが言う。


「大丈夫よ。タクト君。ここはフリーティア。亜人種の自由権を認めている国よ。エクスマキナも絶滅したとは言っても亜人種。当然自由権があるわ」


そうなんだ。よかった。そこでネフィさんから驚きの発言が飛び出す。


「世界を危険にさらしたのは人類も亜人種にもある歴史です。エクスマキナのみが責められる筋合いはありませんからね」


「え!? 人類や亜人種もそんなことしたんですか!?」


俺の質問に三人が顔を合わせ、頷く。


「人類が作り出した魔法の中で禁呪と呼ばれる魔法が存在しているんだよ。使用するだけで世界を終わらせる魔法の極致。何を隠そう僕も使える」


さらりと恐ろしい発言したんですけど、この人!?


「亜人種の上位種はその領域に立っています。今のタクトさんならわかりますよね? ドラゴニュートの眠れる力の大きさが」


あ〜、あのドラゴンの更に上の領域があるなら世界を壊せても不思議じゃない気がする。


「折角だし、ドラゴニュートたちのことも話そうか。彼には聞く権利があるだろうからさ」


「そうですね。タクトさんは疑問に思いませんでしたか? このフリーティアにドラゴニュートやエルフがいないことに」


え?それは気にはなっていたけど、何かあるのか?


「確かに変だとは思いましたが、友好関係にないとかそんなものだと思ってました」


「確かに今は友好関係にはないね。でも建国した当時はここにはドラゴニュートやエルフ、天使、悪魔もみんな暮らしていた時代があったんだよ」


凄くカオスな空間だと思うのが、仲良く暮らせていたならいいことだな。


「当然いざこざはあったけど、そこは建国王が治めていて、そんな彼の姿は亜人種たちから崇拝されていたんだよ」


「ですが、誰もずっと生きてはいけません。彼の死後はトラブルの連続でした。ドラゴニュートは人から誇りを傷つけられ、この国から去り、国のために工場を作るとエルフたちと決別しました。天使と悪魔は互いの憎しみが解消されず、この国を去った歴史があります」


ドラゴニュートが国を去るほど誇りを傷つけたってどんだけだ。でも工場とか見たことがないな。


「俺が知っている範囲では工場なんてありませんでしたけど」


「エルフと再び友好を結ぶために取り壊したんですよ。ドライアドがいるのはその成果です」


あ、そういうことね。エルフがいないのにドライアドがいるのが気になっていたんだよな。


「大変なのよ? ドワーフは工場を求めているから作らないなら国に帰るとか言っちゃうし」


あー、ということはドワーフとエルフは友好的じゃないんだな。


「人も亜人種も結局は戦いの歴史を持っているんだよ。同じ種族同士争い合い、別の種族同士でも争い合う。だからエクスマキナも大丈夫さ。獣魔ギルドのトップとして保証するよ」


世界を滅ぼせるほどの人の言葉だと安心感が違うな。


「とはいえ早期に相談してくれて助かったのは事実だね」


「ですね。もしタクトさんが隠していて、誰かに見つかれば大混乱で国も私たちも動けませんでした」


「いい判断したわね。タクト君」


怖っ!?もし相談しなかったら、どうなっていたんだろう…うん、怖いから想像するのはやめよう。


「ことがことだけに王様に謁見することになると思う。その時は僕から連絡しよう。これ、僕の連絡先ね」


あ、さらりとフレコ渡された。


「ありがとうございます」


「いいって。あ、ドリンクのおかわりある?」


どうやらハチミツドリンクを気に入って貰えたみたいだ。


「ありますよ。お二人はどうしますか?」


「いただくわ」


「いただきますけど、色々台無しです。グラマス」


「仕方ないでしょ? 二人と違ってなかなか外に出られないんだよ? グラマスにも自由権はあるべきだと思う!」


「ダメです。仕事してください」


ネフィさん、容赦ねー。何はともあれ、イクスがなんとかなりそうでよかった。しかしただでお願いというわけには行かなかった。


「代わりに彼女のメイド衣装は僕がお金を出そう」


「グラマス? タクト君のところの亜人種は私の管轄です。手出ししてないでくれますか?」


アウラさん、管轄ってなんですか?しかし彼らに残念な報告だ。


「すみません。イクスにお金はいらないんですよ」


『どういうこと?』


「イクスは俺のイメージした衣装に服装を変えれるんですよ」


「「な、なんだってぇええええ!」」


エクスマキナの爆弾発言より驚いていないか?


「大事件だわ…それって、今まで不可能だったどんな衣装にも着せ替えできるってことよね?」


「まぁ、そうなりますかね」


「ちょっと待って! 急いで彼女のデザイン書いてくる」


「甘いね…アウラ。タクト君、これを」


カインさんが紙を取り出し、俺に見せる。そこにはメイド服の原点とも言えるヴィクトリアンメイドが書かれていた。意外だ。もっとやばい衣装が来ると思った。


「見たね? では彼女に着せ替えを頼む!」


「ちょっと! 何考えているんですか! 彼女にはフリルたっぷりのメイド衣装が似合うに決まっているでしょう!」


「分かっていないのは君のほうさ。原点こそ王道にして至高なものだよ。僕の言い分が正しいことは彼女が証明してくれるはずさ!」


というわけで強引にイクスの店番の服はヴィクトリアンメイドに決まった。ヴィクトリアンメイドのイクスを見たカインさんは…


「彼女こそこの世界の宝だ。僕は彼女を全身全霊で守ることをここに誓おう」


なぜか敬礼して誓ってくれた。

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動物保護をしている少年は異世界で虐げられている亜人を救います
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