#1517 夜の聖戦イベント、ワントワーク防衛戦
ここはワントワーク。ここに侵攻してきている魔王の名前は怠惰魔神ベルフェゴール。ルークたちが倒した魔神だ。特徴的なのは乗り物で車椅子に乗っている所と牛柄の服を着ている老人というところだ。一応頭には曲がった角が二本あり、尻尾が牛となっている。
ベルフェゴールが指揮するのはフェニックスと巨大な炎の牛に騎乗している牛魔神の部隊だ。かなり強力な部隊だが、指揮している魔神に問題がある。
「ワントワークとかいう人間の町を落とすように言われておるからお前たち、勝手に落とせ。儂はいつものように寝ておるからの」
これが怠惰を司っている所以だな。因みに暗黒大陸でもルークたちが攻撃するまで鼻提灯を作りながら寝ていたらしい。来ている服がお茶目なのに面倒くさがりという魔神というか魔王の中でもかなりギャップが激しい類の魔王だろう。
ただその能力は厄介極まりないものとなっている。その力はこの戦闘で見る事にはなるはずだ。何せワントワークを守っているのは白夜、蒼穹、コーラル、夕凪の四神を選んでいる。更にここを守っているのはルークとチロルのコンビも参加しており、盤石の防衛態勢だ。そんな部隊が激突する。最初にぶつかったのはもちろん空の部隊だ。
無数のフェニックスを相手にチロルとチロルの飛行出来る召喚獣たちに加えて蒼穹とコーラルが迎え撃つ。この勝負で重要となるのはもちろん不死鳥であるフェニックスを倒す為に必須の不死殺しだ。残念ながら蒼穹にはこのスキルが無い。なのでここで重要となるのはやはりチロルたちを初めとした不死殺しの武器を持つプレイヤーたちだ。
戦闘の初めはフェニックスたちは溶ブレスを放ち、こちらは多種多様なブレスを放ったことで空で爆発が発生する。その爆発の中をフェニックスたちは突撃して来た。そして一気に接近戦となる。この結果、不死殺しの武器がフェニックスに決まることになるのだが、代わりにフェニックスたちは焼尽をばら撒いて爆発させる。
これで怯んだみんなは次の瞬間、フェニックスたちの自爆に巻き込まれてしまった。これは我が身すら武器として扱う自爆特攻作戦だな。以前の戦いで不死殺しの武器を使われることを分かった彼らは対策を考えることなく、相手に最大のダメージを与える方法を採用したようだ。
いくら無限にフェニックスが増えるとしてもフェニックス個々が死ぬことに変わりはない。なのでこの作戦にチロルは苛立ちを見せた。
「こんな酷い作戦…許せない!」
しかし言葉とは裏腹に次々自爆されて、ダメージが全体的に蓄積されている。結果、部隊は後退さぜる追えない中、地上部隊とワントワークにフェニックスたちが襲い掛かる。
「ピィ―!」
ここでコーラルが神格覚醒を発動されると手にはヴァサヴィ・シャクティを装備した姿で降臨する。次の瞬間、コーラルはフェニックスたちを串刺しにしながら次々体当たりにしていくことでフェニックスたちを遠ざけた。ヴァサヴィ・シャクティにも不死殺しの効果があるからフェニックスは倒せる。しかしここでもやはりフェニックスたちは自爆を選択したがそれをすると分かればコーラルも対策を取る。
コーラルは自爆するフェニックスたちからヴァサヴィ・シャクティを抜くと地面に向けて蹴り飛ばすとフェニックスたちだけ自爆してしまった。当然被害はない。自爆スキルには自爆するまでの時間と自爆スキルを使用した明確な身体の変化がある。そして自爆スキルの最大の弱点はスキルのキャンセルが出来ないことだ。これはスキルを封印しても解消されないらしい。一度スキルを使ったからその後にスキルを封印してもスキルを使用済み状態になるのではないかとサバ缶さんたちは分析している。
なので自爆スキルを使用した側は自爆した瞬間に効果範囲に敵を入れないといけないし、逆に効果範囲外に逃げられると無駄打ちになる。そこをコーラルはちゃんと理解した上で対策を講じたわけだ。これを見たチロルたちは冷静になり、諸葛亮たちに回復して貰って再び戦場に戻るとフェニックスたちを倒していく。
自分たちの自爆が無駄死になることを理解したフェニックスたちは今度はちゃんとした飛行戦をしてきたがそうなるとヴァサヴィ・シャクティを持つコーラルが見事に暴れ回る。蒼穹がダメージを与えて、コーラルがとどめを刺すと言う連携が完成している。ステータスやスキルでは蒼穹のほうが上だからな。お互いに敵を効率よく倒す方法を考えた結果がこの連携なのだろう。
空中でド派手な戦闘が起きている状況でいよいよ地上部隊同士も激突する。ここにはルークたちの他にワントワークの部隊と蜀と呉の部隊が参戦している。
「皆の者! かかれ! 雲長と翼徳の仇だ! あいつらを決して許すな!」
「はぁあああー! 孫策お兄様をよくも!」
ルキフグスとの戦いで蜀と呉の部隊は大切な英雄を失ってしまった。この戦いはその無念を晴らすための戦いとなってしまったが憎しみに囚われた突撃は脆い。ましてや実力差があったなら尚更だ。劉備や孫尚香が牛魔神に攻撃してもびくともしていない。逆に斧の一撃で吹っ飛ばされる有様だ。
二人共有名な英雄ではあるが一騎当千の武将ではないからな。趙雲と馬超、程普と甘寧が二人の守りに入って牛魔神と敵対したがこのレベルの英雄でも簡単には牛魔神たちは倒せなかった。時間を欠ければ倒せはしたがその間に他の牛魔神たちは横をすり抜けてしまっている。
するとここで四人の横を牛魔神たちが飛んで行った。そして白い影が通り抜けると倒れた牛魔神に飛び乗り、首を噛み千切った。白夜と白夜が呼び出した群虎だ。
「ガウ!」
「「「「ガァアアアー!」」」」
白夜が先陣を切ると他の獣の召喚獣たちが次々牛魔神たちに飛び掛かり、群れで牛魔神を倒していく。
「ありがたい」
「俺たちも続くぞ!」
趙雲と馬超も続く。二人の様子から見ても今の蜀と呉はまともに戦える状態ではない。彼らを指揮する劉備と孫権が大切な人を失って失意の中、大切な人の命を奪った敵を前にして怒りをぶつけている状態だ。こんな状況では諸葛亮や呂蒙の言う事はお互いの王の耳には届かない。
一番悔しいの軍師の立場であるこの二人だろうな。いい作戦はきっと頭の中にはあるはずだが、その提案をしても王に届くことが無く、兵士が無駄に死んでいく。軍師としてこんな辛い事はない。
そんな戦場のせいか一度は押し返したワントワーク軍だったが再び押され始めた。実力差もあるが牛魔神たちが強引に前に出てきたせいで町を襲わせる訳には行かないみんなが対処に回ったことで部隊の勢いが無くなってしまったのが原因だ。
そんな中、ルークは召喚獣たちを連れて、ベルフェゴールを補足した。そしてチロルのフェンリルがベルフェゴールに噛み付こうとした時だった。ついにベルフェゴールが動いた。
「怠惰」
次の瞬間、フェンリルの動きが止まった。まるで今、自分が何をしようとしていたのか忘れてしまったかのようだ。そして至近距離から魔神波動を受けてぶっ飛ばされる。
これが怠惰の能力だ。怠惰を使用された敵は全ての攻撃命令をキャンセルさせられる。使われたチロルたちによると一種のど忘れや記憶喪失状態になるイメージらしい。今のフェンリルを例に出すとベルフェゴールを噛み付こうとしたことを忘れてしまったわけだ。そして何しようとしていたか敵の目の前で思い出そうとした結果、攻撃が直撃した流れとなる。
しかし怠惰は一人を対象に発動するスキルだ。続く他の召喚獣たちの攻撃は通る。だが、当然この魔神の強さは怠惰だけではない。座っている車椅子の後ろが開くと球体が展開されて、球体から雷が発生する。更には車椅子の手すりからチャクラムが連射されると車椅子の側部から機械の腕が現れて、召喚獣を掴むと地面に叩きつけて、拳を握ると地面に叩きつけた召喚獣に拳を叩き込んだ。
ここまでベルフェゴール本人は動いていない。これこそがベルフェゴールの真骨頂。自分は動かず自動攻撃と自動防御スキルで敵を倒してしまうのだ。逆に言うとベルフェゴールが座っている車椅子がとんでもない性能をしていることを意味している。
本当にどんな技術で作ったのか分からないが獄炎や魔導砲、追尾弾、ドイル付きの腕、拡散光線、魔神バリア、時空断層といったスキルがあの車椅子には搭載されており、脱出スキルを使った回避性能も高いのだ。
これを作ったのがベルフェゴールならベルフェゴールは完全に技術特化の魔神と言える。とにかくベルフェゴールを倒すにはまず車椅子から降ろさないことには始まらない。
ルークがベルフェゴール討伐に動いている中、後ろでは町に迫っていた牛魔神たちが突然発生した地割れの中に落ちると地割れが元に戻り、大地によって押し潰されてしまう。更に空からフェニックスたちが町に火山弾を放ったが遮断結界で止められた。
町の入り口の地面から現れたのは夕凪だ。出現した夕凪はフェニックスたちに大瀑布を発動されて、大量の水で押し流して墜落される。当然フェニックスたちは泳げないので、脱出を試みるが水の腕に掴まって逃げられない。夕凪の物質化だね。
結果、フェニックスたちは溺死する。可哀想にね。これは以前のゾンビイベントと同じ攻略法だ。どれだけ蘇生しても水中適正がないと水の中で永遠に死と蘇生を繰り返すことになる。
さて、これで再び戦場の流れが変化した。夕凪の登場で地上では土石流と地割れ、大地支配、樹海支配、苗木スキルで牛魔神たちは侵攻を止められ、足を止めると空から流星群と彗星、神撃、石化雷が降って来る。
そして夕凪からは神ブレスや水爆が放たれ、牛魔神たちは個々で逃げ回ることになった。こうなると英雄たちは動きやすい。一体一体狙いやすいからね。しかも夕凪の攻撃を躱しながら英雄たちの対処をしないといけないところを考えると中々に厳しい。
「フリーティアの英雄の召喚獣はどれも凄まじいですな」
「えぇ…ここに四神を派遣してくれた彼には感謝しないといけませんね。正直まともに戦える状況ではありませんでしたから」
「同感です…む。いよいよですか」
「そのようですね」
諸葛亮や呂蒙が町から紫の柱を確認した。ルークがベルフェゴールの車椅子を破壊して、ベルフェゴールが本気の姿になった。本気なったベルフェゴールは老いた姿がみるみる若々しく生まれ変わると黄金の鎧が装備され、金髪の髪の毛が当然生えると悪魔の翼を広げる。そして顔には化粧がされたやんちゃそうな魔神が降臨した。
「疫災! またお前か? 小僧。そんなに女を魅了した俺様が憎いかよ」
「男なら当然だろ? お前だけはどれだけ倒しても気が済まない!」
本気となったベルフェゴールの真の名は好色魔神ペオルとなっている。ペオルはバアル・ペオルという神から来ている名前だ。この神は何度も登場しているモーセに率いられたイスラエルの民たちが山で崇拝してしまった牛が起源となっている神だ。
その力は当然魅了や精神誘導となっている。疫災の力は神が使った力のはずだが、ペオルも使えるようだ。これを受けたエルフたちは薬を飲んで感染症を解除する。流石にもう対策を知り着くているな。
ここからはもう消耗戦だ。ルークも他のみんなもどれだけ敵を倒しても湧いて来る状況となる。その結果、街が危なくなるたびに白夜と蒼穹、夕凪が本気を出し、押し寄せる敵を蹴散らしては魔神ペオルを倒すのだった。




