#1511 午後の聖戦イベント、桜花防衛戦前半
ここは桜花。桜花でも複数の場所にサタンの塔が立っていた。場所は首都である桜花の他にお月見イベントでお世話になった平安京。三重県にある伊勢神宮、島根県にある出雲大社だ。
ここには俺の召喚獣では燎刃、グレイ、虎徹、アラネア、狐子、千影が派遣されている。桜花で主に狙われている場所は、首都である桜花はまず当然であり、同じく人口が多く妖怪と関わりが深い平安京もまず狙われる。そして伊勢神宮には天照大御神がおり、島根県にある出雲大社はスサノオ狙いと言うより黄泉の国の入り口がある関係で狙われているという形だ。
そして敵軍の編成は、午前の戦いのデータから桜花と中央大陸とで大きな違いがあることが判明している。まず都の桜花には国の為に散っていった落ち武者ゾンビが大量に現れていた。ゾンビなのにちゃんと剣術を使って来るので、結構厄介な敵だ。
平安京には鬼を中心にした妖怪軍。これはもう土地柄狙われるよな。伊勢神宮には悪魔を中心にしたサタン軍。天照大御神の命を狙うなら本隊は確かにここにぶつけて来るな。
そして出雲大社には俺たちが黄泉で散々お世話になった黄泉醜女たちや怨霊たちが現れていたらしい。このことを踏まえて俺は燎刃を出雲大社、グレイを伊勢神宮、虎徹を桜花、アラネアと狐子、千影を平安京に送った。
この結果、各地でみんなが暴れる事となる。まず出雲大社にいる燎刃から見て行こう。
「来ましたか…マーズ!」
空で索敵していた燎刃は敵を見つけるといきなりマーズをぶっ放した。これで敵は消し飛ぶが呪滅コンボが発動する。しかし創星龍神の加護がその発動を許さない。その後も遠距離攻撃で次々敵を葬っていく。
黄泉醜女たちや怨霊たちは接近されると厄介ではあるが遠距離攻撃とか持っていないんだよね。だから暗殺者のような動きが必要となるんだけど、燎刃が相手じゃそれは無理だ。しかし燎刃も敵の全てを消し飛ばすことは出来ない。結果として接近戦をすることになる。
「物質化! はぁあああ! せぁあああ!」
燎刃は物質化を発動させると緋桜をぶん回し、これに触れた霊体たちは斬られて紅炎の効果で激しく燃える。熱さで発狂する霊体たちに遠心力が乗った緋桜の本命の斬撃が放たれ消し飛ぶ。その後も戦闘を続けるが正直言ってまるで相手になっていない。
大太刀を振り回す燎刃に素手で接近しないといけない黄泉醜女たちからすると無茶言うなっていう気持ちにはなるよな。身体を張って斬撃が止まるならその価値があるが、触れた瞬間にぶっ飛ばされて燃えて死ぬだけなんだから色々終わり過ぎている。
この状況化で海上に出現していたネケッセマルムトゥリムが輝く。次の瞬間、海上から俺たちがよく知る八岐大蛟が現れた。この八岐大蛟にもサタンの仮面が装着されていることから恐らく精神誘導か何かで操られているのだろう。
「「「「シャー!」」」」
「まずい!」
八岐大蛟は大津波を発生させて出雲大社に迫る。こんな攻撃が直撃したら出雲大社は大破するし、この周囲にある町や村は壊滅的な打撃を負う。しかし俺たちは昔のように八岐大蛟に手も足も出ない弱者じゃない。それを燎刃が俺たちに変わって証明してくれる。
「龍王大太刀緋桜! 今こそその力を使う時です! 火龍王解放!」
終焉龍王アポカリプスドラゴンが出現して、大津波に向かっていく。両者がぶつかり合うと水蒸気爆発が発生して、大津波が爆発の衝撃で吹き飛ぶ。
これによって八岐大蛟も吹き飛ぶが水蒸気の中から燃え上がる火炎を見つけると態勢を整えた。
「「「「シャー!」」」」
「「「「ギャオオオオオ!」」」」
水蒸気から現れた終焉龍王アポカリプスドラゴンと八岐大蛟の両者が海で激突すると、八岐大蛟が炎上したことで日本海が沸騰して水蒸気を発生させながらどんどん水位が下がっていく。最終的には干上がってしまった。
水が無くなり、燃え上がる自分の体を消火する術が無くなった八岐大蛟は生命力が無くなると倒れてしまった。更に八岐大蛟に炸裂した攻撃はネケッセマルムトゥリムにも炸裂しており、一撃で破壊した。この威力を見た燎刃は呟く。
「えぇーっと、海が無くなるとは思いませんでしたけど、大丈夫ですよね? 大津波と八岐大蛟の被害を抑えたことを考えるとたぶん大丈夫のはず…そういうことにしておきましょう!」
流石に海全てを干上がせるには至っていないので、すぐに水は戻って来るはずだ。もちろん水位は下がるだろうし、これだけの水が一気に水蒸気になったということはこれによって発生する雲が大量の水蒸気を含んだ雲になって、いつか集中豪雨のような災害を起こす事になるだろう。
それよりもいきなり熱湯にされた挙句、水が干上がってしまった魚たちが可哀想すぎる。こんなことが現実で起きたら漁業の復活にどれだけ影響するか俺には想像できないことだ。
燎刃の戦闘は例外として他の所ではみんな苦戦することになる。伊勢神宮では悪魔たちと人間の巫女や神主たちが剣や薙刀、弓矢で戦闘をしている。彼らの武器には緋緋色金が使わているため悪魔たちには特攻であり、桜花全ての神職たちが大集結していることから激戦地となった。
基本的には戦い方は何百、何千の結界で伊勢神宮を守りつつ、弓矢と槍で結界の外にいる敵を倒す戦術だ。しかも伊勢神宮に辿り着くための山の森には護符や霊符による罠が展開されていた。ここは耐えれば勝ちの姿勢だが、サタン軍もそれを簡単に許してくれる相手ではない。
十二体のアバドンとゴッドオーガたちが次々罠を破壊していき、伊勢神宮に迫る。流石にこれらの敵が結界に取りついたら、破壊されるのも時間の問題だ。なので取りつかれる前に仕掛ける必要がある。
「こんな巨大な化け物に我々は勝てるのか?」
「勝てますよ」
「「「「天照大御神!」」」」
「どうやら間に合ったようです」
サタン軍の前に次々光の柱が出現すると大口真神の軍団が出現した。その先頭にはグレイの姿があった。すると俺がここにいないのでグレイは念話で悪魔たちに警告する。
『そこまでだ。悪魔ども。これ以上先に進むことは我が主と天照大御神様が許さない。命が惜しければさっさと引け』
「「「「グォオオオオ!」」」」
『…理性を失った馬鹿者どもめ。獣の神である我にそう言われたら、終わりぞ?』
『仕方あるまい。我らが王よ。相手は戦うつもりのようだがどうする?』
グレイは隣の大口真神にそう聞かれる。グレイを王と呼んだということは、この場にいる大口真神たちは全員グレイの配下ということになる。これは天照大御神の作戦だ。天照大御神は大口真神に援軍として駆けつけるよう書いた手紙をグレイに渡し、グレイは走り回って配下に力を見せつける事で味方につけたのだ。
『無論我らの爪と牙で浄化させてくれるまで! 行くぞ! まずは敵の視界を潰す! 神霧!』
『『『『神霧!』』』』
大口真神たちが一斉に神霧を発生させるとサタン軍は一瞬で霧に包まれた。この結果、グレイ指示の元、大口真神たちによる奇襲攻撃が実行される。雑魚は瞬殺だが、やはり体の大きな敵に対してはこの奇襲はそこまで有効的な戦術とはならなかった。
爪が相手の肉を引き裂き切らずに止まると捕まることになるし、噛みついても噛み千切らないと捕まってしまう。これはレベル差が影響して出ていることなので正直どうしようもない。かといって遠距離戦をすれば勝てる敵かと聞かれると勝てないんだよな。
これが一対一ならグレイは誰と戦っても恐らく勝つんだが、集団戦となると簡単にはいかない。最初のグレイの主な動きは味方の救援となった。自分たちの攻撃が敵にどれだけ通用するのかまず理解しないといけないからな。それでミスした味方を助けるのがグレイの初動となった。
『すみません…失敗した』
『理解したな? 奴らの肉を引き裂くのは容易じゃない。再生能力も高い。だが攻撃が通用しない訳じゃない。でか物一体に複数で、尚且つ同時ではなく連続攻撃で襲い掛かれば確実に生命力を削れる。そしてその戦闘は我々が一番得意としている方法だ』
『『『『違いない。群狼!』』』』
大口真神と狼の大群が連携して悪魔たちに襲い掛かる。これに対してゴッドオーガたちも本気となり悪魔たちは力任せに攻撃を繰り返して来た。攻撃が外れても攻撃で発生した爆風や衝撃波は無駄にはならない。確実に霧を吹き飛ばし、大口真神たちの姿を捉えることが出来た。
そんな激しい戦闘が続き両軍共に疲労していく中、ここでアバドンたちの魔素が一斉に膨れ上がった。そして魔素の嵐の中から魔神化したアバドンたちが現れる。魔神化したアバドンは背中から六つの虫の足が生えて、針がある尻尾は三つに増えた。
『それがお前たちの真の姿か。ゴッドブレス!』
グレイがゴッドブレスを放つと一体のアバドンが全ての足から魔力を放出すると魔神バリアが展開されて、ゴッドブレスが防がれてしまった。これを見たグレイは、本気となったアバドンには今の自分でも本気で戦わないと負けると認識した。
グレイがじっと相手を見ていると虫の足に魔素が集まり出す。これを見たグレイは仲間に逃げる指示を出す。全員が散ると一体のアバドンから六つ冥波動が同時発射された。そして逃げたグレイたちには黒星が次々放たれる。
必死に回避するグレイたちだったがその攻撃は山を破壊して、攻撃が次々伊勢神宮の結界に炸裂していく。それを見たグレイは笑う。
『いいのか? そんなに自然を破壊して』
グレイの声を聞いたアバドンが動きを止めるとグレイは言う。
『お前たちは知らないだろうな。この地には恐ろしい山の神がいるんだよ』
グレイがそういうと壊れた山の地面から大量の緑の光が発生し、山の巨人を作り出した。そして現れたのはダイダラボッチだ。
『おらたちの山を壊したのはお前たちだな? 許さないぞー!』
山をぶっ壊されてダイダラボッチはお怒りだ。しかしアバドンたちは余裕を見せる。神は地上では十分に力を発揮できないからな。余裕を見せるのは当然だが、彼らはダイダラボッチという山の神がどういう神で実力がどれほどのものか知らなかった。
『神技! 島蹴り!』
ダイダラボッチがそういうと地面に足を突き刺すと桜花の大地が砕けて島サイズの岩が悪魔たちがいた場所に光速で飛んでいき、全員仲良く島に潰される結果となった。
これはダイダラボッチが蹴っ飛ばした地面が琵琶湖となって、飛んで行った岩が淡路島になったという伝説から来ている必殺技だ。この伝説から見ても分かるが、ダイダラボッチはアテナたちに負けないくらいの力を持っている神なのだ。
岩を破壊して起き上がるアバドンたちは驚いた顔を見せる。何せ普通に神技を使って来たからな。しかし冥界にしたことで神にデバフが入るというシステムにはいくつか例外がある。その一つが冥界神であること。これは当然デバフは受けない。しかしこの例外にはダイダラボッチは当てはまらない。
ダイダラボッチが当てはまるのはもう一つのほうだ。それが闇属性を持っている神ならこの例外に該当する。ダイダラボッチは山の神であるが故に土属性を持っているが伝説によってはダイダラボッチは鬼や妖怪、巨人になることがある。よってこのゲームではダイダラボッチは闇属性も持っているのだ。
ここで一体のアバドンがダイダラボッチに戦いを挑んだ。両者の拳が光と闇の光を放つ。
『神技! ゴッドクラッシャーんだ!』
アバドンのデモンクラッシャーとぶつかり合うとアバドンのほうが吹っ飛んだ。筋力ではダイダラボッチのほうが上らしい。それを見たアバドンたちは武器を取り出した。素手で勝てないなら武器を使うまでと言いたいらしい。
戦闘が再び始まろうとした時だ。アバドンたちが見ている横から再び島サイズの岩が光速で飛んできた。グレイが見ると別のダイダラボッチがいた。そして次々ダイダラボッチたちが現れる。桜花の山をいくつも破壊されてダイダラボッチたちは相当お怒りらしい。これはグレイたちにとっては予期せぬ援軍だ。
基本的にダイダラボッチは動かない神だ。サタンの軍勢が桜花に侵略してきたと聞いても山が無事なら戦う必要はないと判断する。逆に山や自然を壊されると怒るのがダイダラボッチという神だった。今回はアバドンたちが暴れ過ぎた故にダイダラボッチたちの怒りを買った形だ。
『共闘するということで良いか? 山の神よ』
『あいつらを倒せるなら何でもいいだ』
『では、決まりだな。共に桜花を守ろうぞ』
『んだ!』
ここに大口真神とダイダラボッチの同盟が誕生した。これで戦場の流れが一気に変わったが、魔神化したアバドンたちの力はグレイとダイダラボッチでも倒しきれないほどに強かった。そして本気の彼らの能力も次々判明する。
まずアバドンが使う魔神魔法『ディハイドレイーション』。これは意味的には脱水。つまり体の水分を奪う魔法だ。ダイダラボッチも喉の渇きには勝てずにこれを使われると急いで水分補給する必要があった。これのせいでダイダラボッチが戦場からいなくなって戦況のバランスが崩れてしまったりしたが、グレイがしっかりフォローしてアバドンたちを伊勢神宮には行かせない。
すると今度は尻尾を地面に突き刺すと周囲の草木が枯れる。干害だ。それだけでは飽き足らず、周囲の岩や地面が砂となり、砂漠化していく。
『何しているだぁ! お前たち!』
怒ったダイダラボッチたちが突撃して来るとアバドンたちは虫の足を伸ばしてダイダラボッチたちの体に触れ、弱化毒と永遠毒を注ぎ込んだ。それに対してダイダラボッチは拳でアバドンをぶっ飛ばす。アバドンは回転して地面に引きずりながらも着地すると背中から魔狼神王の鉤爪がぶち抜いた。
グレイの存在に気が付いたアバドンは尻尾を動かそうとしたが尻尾が動くことは無く、切断されて地面に転がる。
『念動力で動かそうとしても無駄だ。我のほうが与えるのが早かった。死ね』
グレイは一瞬の隙を見逃すことなく一体倒したが、毒を受けたダイダラボッチは悶え苦しみつつも我慢して起き上がる。
『はぁ…はぁ…おらはもう助からねけども。お前たちだけは倒して見るぞ!』
『それでこそ桜花の神よ! 我も全力を持ってこいつらを倒して見せようぞ!』
両者の戦闘は激しく桜花の地形を次々変化させてしまった。その裏で悪魔や魔神たちは伊勢神宮に迫っていた。しかしここで大口真神たちによる餓狼スキルが悪魔たちの数を一気に減らす事になった。
それでも一部の魔神たちはグレイたちの戦場を超えて伊勢神宮に迫った。
「「「「日輪!」」」」
魔神たちに日輪による光が降り注ぎ、消滅する。伊勢神宮の空には子供の天照大御神と言うべき女神たちが集まっていた。
彼女たちの名前は稚日女尊と言う。有名な話だと天照大御神が引きこもるきっかけとなった神だ。この時に稚日女尊は亡くなってしまっているのだが、このゲームだと稚日女尊は天照大御神のお世話係的な立ち位置らしい。
神話によっては天照大御神の子供の頃の名前とされたり、天照大御神の妹にされたりする神でこのゲームでは実力は結構高い。何せ力がまだ未熟な太陽神のポジションだからな。そんな彼女たちと魔神たちが激突する。
「子供だからといって手加減しねーからな! 魔神波動!」
「反射鏡!」
「ちっ!」
「光速激突! 神波動!」
反射鏡で魔神波動を跳ね返して、その攻撃を躱したところに体当たりしてゼロ距離からの神波動を浴びせた。名無しの魔神よりは明らかに稚日女尊たちのほうが強かった。更に神職たちの弓矢の援護もあるから魔神たちは伊勢神宮の結界を何枚か破壊するだけの戦果に終わる。結界が壊されたら、また張り直せばいいので実質被害なしだ。
そしてグレイたちの戦場ではグレイが中心となってアバドンたちを倒していった。大口真神たちによる毛針を防御したアバドンたちがウザがって武器を大振りしたり、衝撃放射や熱波を発動したタイミングでグレイは接近して魔狼神王の鉤爪でアバドンの体を貫き押し倒した。
しかしそうなるとアバドンの尻尾や虫の足に襲われることになるが神鎧グレイリリコスアーマーが攻撃を防いでくれるお陰で、グレイはカウンターを無視してゼロ距離から光球をぶつけて倒した。
この結果、この戦場は防衛には成功したがダイダラボッチたちと何体かの大口真神が倒されるという結果となった。消えて行く彼らをグレイたちは見送る。
『お前さん、ここの大口真神じゃないだな?』
『左様。我は召喚獣だ。この武器も防具も我が召喚師とその仲間たちが我の為に作ってくれたものだ』
『いい仲間を持っているだなぁ…仲間も大変だろうにこの国のために戦ってくれてありがとだぁ…』
『それはお互い様だ。この国のために戦ってくれたことを感謝する。桜花の偉大な山の神たちよ。そして我が同胞たちよ。後の事は任せて安らかに眠ってくれ』
グレイがそういうとみんな穏やかな顔で消滅していくのだった。




