#1510 午後の聖戦イベント、パラディンロード防衛戦
午後一時の戦いで、アトランティスの他に激戦となったところはパラディンロードだった。パラディンロードが激戦となった原因はサタン軍の多さもあるが、それ以上にパラディンロードを苦しめたのがレギオンだ。レギオンたちがランスロットたちに化けることで兵士たちの連携が失われていた。
どれだけやばい状況だったかと言うと、本物のランスロットが自軍の兵士に襲われたくらいだ。もちろんランスロットだけじゃない。他の円卓メンバーもそうだし、通常の兵士たちの間でも乱闘が発生する状況だ。
いくらマーリンでも完璧に変装して来るレギオンたちに対して対策の取りようが無かった。一応マーリンならレギオンを判別するくらいの力量は持っているんだけど、マーリンは魔法使いだ。最前線に出てこいつがレギオンだと指示することは出来ない。
そんなことをしていたら、魔法使いの天敵である弓矢や銃、騎兵による突撃の餌食になってしまう。軍師ポジションのマーリンがやられるとなるとパラディンロード全体の指揮が大変なことになる。なのでマーリンは俺に連絡を取ってレギオンたちを相手取った。
そして戦闘が始まるとパラディンロードの騎士たちの動きが悪い。午前の戦いで既にレギオンと遭遇していたことで、兵士たちはいつ味方から攻撃されるのか分からず、疑心暗鬼に陥っていたせいだ。いくらマーリンが対策を講じたと説明しても、それなら安心だとは簡単に理解出来ないだろう。
本当にサタン軍というか悪魔たちは心理戦が上手だと思うよ。人間の心を誰よりも理解しているのは悪魔たちなのかも知れないな。そしてパラディンロードの騎士たちがグレーターデーモン、デーモンロード、新たに現れたキングデーモンを中心にしたサタン軍と激突する。
「…レギオンたちがまた来たよ。アーサー」
「いよいよか。さて、彼の召喚獣が我々にどう影響を与えてくれるのか見せて貰おう」
城から様子を見ているアーサーたちにそう言われたからには見せてあげようじゃないか。俺が誇るレギオンキラーでありながら英雄キラーであるリオーネの力をね。
一人の騎士が味方の騎士に向かって剣を振り下ろそうとした時だった。その騎士は背後から凶悪な爪によって貫かれ、即死する。リオーネによって仲間を殺された光景に見える騎士たちからは怒りの感情が見えるが、倒された騎士がレギオンに戻って消滅した所を見て怒りが静まる。
魂探知を持つリオーネはレギオンと人間を正確に判別できる。そして、パラディンロードの騎士たちに変身することでレギオンたちは英雄の性質を持ってしまう。そうなるとリオーネの英雄殺しスキルまでレギオンたちに適応される。
しかもリオーネはサタン軍とパラディンロードの兵士たちのぶつかり合いの状況下であっても、通常時の黒猫の姿なら戦場を縦横無尽に動き回れる。逆に敵側からすると戦場にいる一匹の黒猫を見つけるのは非常に困難だ。
ましてや見つけて倒そうと突撃したらパラディンロードの騎士たちがいるところに突撃することになるし、そんな突撃がリオーネに通用するはずもない。そしてリオーネはレギオンを見つけては一撃で葬っていく。普通の騎士たちは即死無効とか持っていないからな。
こうなるとレギオンたちもリオーネを倒す為に強い騎士たちに変身するしか無くなる。
「英雄技! ローエングリン!」
その結果、リオーネに円盤型の高速回転する水が飛んで来て、リオーネはこれを躱すとパーシヴァルに襲われる。ローエングリンはパーシヴァルの息子の名前で白鳥の騎士として伝説では登場している。このゲームでは登場しないので、パーシヴァルの技名になっているんだね。
リオーネが躱した斬撃は騎士たちの胴体を真っ二つにすると、フライングディスクのように空中で戻ってきて再びリオーネを狙って来た。気〇斬のパクリかな?
そしてパーシヴァルはリオーネをローエングリンと挟み込む形となる。
「バスターカリバー!」
「シャー!」
リオーネは巨大化すると尻尾でローエングリンを弾き飛ばして爪で斬撃を止めて見せた。
「ふ…せあああああ!」
この動きに対してパーシヴァルは一度距離を取って手に持っていた毒槍をリオーネに向かって投げた。この毒槍はパーシヴァルが倒した毒槍を持つ水の怪物アダンクが持っていた槍だね。そしてパーシヴァルは投げ槍の達人として知られている。
パーシヴァルは完璧に決まったと余裕ぶっこいているが、リオーネは前ジャンプで槍を躱した。そりゃあ、対して隙を作っていないんだからそんな攻撃当たるはずがない。そして真上から迫って来るリオーネの爪を受ける事になった偽物のパーシヴァルは、剣だけでは防ぎきれずに地面に押しつぶされる結果となった。
すると今度はランスロットがリオーネに挑んで来た。ランスロットの必殺技を躱したリオーネは、ランスロットに接近すると爪を左右で振りまくる。この動きに対して偽物のランスロットは必死に防いだが、テクニックタイプのランスロットではリオーネのごり押しをガードしきれずに、ボコボコにされる。
次にガウェインが炎の斬撃をリオーネの腹に決めて来た、がリオーネは攻撃を受けながら覇撃を使用してガウェインを一撃でノックダウンさせた。この偽物の自分たちが惨敗する姿を見て気持ち良くないのは本人たちだ。
「あんなに弱くないと思いたいが」
「あのキャスパリーグと戦いたいかと聞かれると遠慮したいな」
「あ、見て下さい。パーシヴァル、ガウェイン。マーリン殿が食べられました」
「マーリンの幻術が通用しないのか…本当に厄介なキャスパリーグだな」
マーリンは夢魔故に幻術が得意の魔法使いだ。しかしこれも魂探知があると本物のマーリンの場所がバレバレになってしまうので、キャスパリーグはマーリンの天敵と言えた。魔法使いの英雄は大変だね。
ここで戦いに参加していた魔神たちがリオーネの討伐に動いて来た。
「魔神技! デモンクラッシャー!」
「魔神技! デモングランドクラック!」
魔神二人がリオーネに魔神技を叩き込んで来たがリオーネはしっかりガードしている。すると二人の魔神に無数の毛針が放たれ、至近距離にいたことで防御が間に合わず串刺しにされる。そしてリオーネの猫パンチで防具を壊されながらぶっ飛ばされた。
「「「「魔神化! デモンフォース!」」」」
ここで魔神たちも本気を出して来た。これは午前には無かった動きだ。いよいよサタン軍も本気になって来たって事だろう。しかしこれに対してリオーネは臨戦態勢となる。やっと面白くなってきたって感じだな。
『キャスパリーグの戦いに巻き込まれないように各自気を付けるように。巻き込まれると死ぬよ』
『『『『見ればわかります!』』』』
その後も戦闘は続いたが、マーリンがレギオンの掃討を確認したところでパラディンロード側が一気に攻勢に出た。これに対してサタン軍はパラディンロードを空中からの攻略にシフトした。普通の騎士たちは空飛べないからね。
これに対してパラディンロードは新たに編成していた竜騎士、竜騎兵、ペガサスナイトの部隊を展開して応戦する。しかし数が少なかった。これはもう育成するのに時間が掛かるからどうしようもない所ではある。
しかしこれにもマーリンから対策をお願いされていたので大丈夫だ。パラディンロードを攻撃しようとしていた悪魔たちがパラディンロードの城から放たれた無数の光線に貫かれて倒されると、更にドラゴンブレスでガーゴイルたちが爆散する。
パラディンロードの城の庭から現れたのはジークだ。アーサー王の国をまさかグウィバードラゴンが守る未来が来るとはマーリンも予想出来ないだろう。
ジークの参戦で空中にいる悪魔部隊は一気に倒される。こうなると後は地上部隊がどうなるかだ。それをサタン軍も理解しているのかアバドンたちが大噴火で現れる。その内一体はまさかのパラディンロードの中心部に現れた。
「アーサー!」
「分かっている!」
このアバドンに対してアーサー王が戦いを挑み、他の戦場に現れたアバドンたちにはいち早くプレイヤーたちが反応して戦いを挑む。この中にはメルの姿もあった。
「武装創造。降り注げ! 聖剣たちよ!」
メルは聖剣の欠片から作製した聖剣を武装創造で作り出して空からアバドンに対して降らせて倒した。武装創造を使えるということは、メルもまた創造神と契約したことになる。メルが契約した創造神の名はイザナミだ。
メルは死んでも我が子を産んだイザナミのことが好きで、イザナミとイザナギどちらの気持ちもわかるが故に二人の神話が好きなんだそうだ。桜花の神を選ぶ理由はみんな結構好きだからというのが多いね。因みにイザナミとの契約は生物創造、霊体創造の物量勝負をされて大変だったらしい。勝てると思ったら逆鱗を使われ、激おこ状態のイザナミは本気で怖かったとメルは語ってくれた。
その苦労の果てに手に入れた力は強大だ。このゲームでのイザナミは創造神であり、また冥府神でもある。つまり創造神でありながら回避不能の即死スキル持ちであるのがイザナミという神だ。それが武装創造で空から降って来ることを考えると、敵からすれば恐ろしい限りだろう。
もちろんメルだけの活躍ではなく、他の騎士プレイヤーたちもそれぞれアバドンと魔神たちを自力で倒し、アーサーもアバドンを聖槍ロンゴミニアドでぶち抜いて倒したところで勝負あった。
他の戦場でも魔神たちや悪魔たちが解放スキルを使用して来た状況とはなったが、上位のプレイヤーたちがそれぞれ抑え込んだことで防衛成功となった。そしていよいよ午後三時からルキフグスことルキフゲ・ロフォカレとパンデモニウムの攻略戦が開始される。




