#1506 サタンの世界征服計画
俺たちは昼食を食べ終えてから夜に食べる予約しておいたクリスマスケーキを貰いに行き、帰って来てからゲームにログインするとリリーたちと一緒にシルフィが俺の寝顔を見ていた。
「何しているのかな?」
「夫の可愛い寝顔をみんなでじっくり見ていたんですよ。ねぇ? 皆さん?」
「「「「ねー」」」」
仲がよろしいことで良かったよ。本当に今日で世界が終わるのか不思議に思えてしまう程の平和空間だ。まぁ、みんな意図して作っているんだろうけどさ。ここで俺が起き上がると午前中にシルフィたち各地の王族たちが動いていた話を聞くことにした。
「サタンの軍勢に対して世界各国の王族たちは共通の敵という意見で一致してエクスマキナのバトルシップおよびマザーシップの使用許可と武装の全使用許可が全会一致で承諾されました。ただ武器の使用は国や人命を考えて使用して欲しいとのことです」
「まぁ、そこは大切なところだよな。了解した。みんなにそう伝えておくよ」
これでエクスマキナを召喚出来る召喚師たちが各地でバトルシップを展開することが可能になった。これでこの最後の戦いはだいぶ楽になるはずだ。そう思っているとここでアテナが転移してきた。
「アテナ様!?」
「やっほー。ちょっとボクの契約者とお願いがあってね。お邪魔するよ」
「何かトラブルですか?」
「うん。どうやらサタンの軍勢がアトランティスを狙っているみたいなんだよね。だからポセイドンから君たちに救援要請をお願いされたんだけど、どうする?」
サタンがアトランティスを狙っている?ちょっと意味が分からないが救援要請が来たからにはほっとけないな。何せリアンの故郷だ。
「もちろん受けますよ。リアン。サフィと黒鉄と一緒に行けるか?」
「黒鉄さんもいいんですか?」
「あぁ。オリハルコンゴーレムとなった黒鉄にとっても故郷になるからな。リビナとセフォネも戻って来たから大丈夫だろう」
サキュバスとヴァンパイアの領地の攻撃はとりあえず止んでいる。ヴァンパイアはもう下手に手出し出来ないだろうし、サキュバスの領地はまた狙われる可能性はあるがヴァンパイア領地に回していた戦力も加わることが出来るから襲われてから救援で向かっても問題なしと判断した。
「それにしてもサタンがアトランティスを狙う理由はなんでしょうか?」
「まずアトランティスを攻め落とすことはクラーケンたちの悲願なんだよね。彼らの狙いはアトランティスで貰われている世界の卵。これを手に入れれたら、世界の海の王になれると彼らは信じているからアトランティスが狙われることは必然なんだよね」
「なるほど…でもそれはクラーケンたちの都合ですよね? サタンが手を貸す理由にはちょっと弱い気がします」
「そうだね。じゃあ、アトランティスにオリハルコンの武器製造工場があるとしたら、どうかな?」
「あぁ…それなら納得します」
オリハルコンの武器や防具を狙って来るなら納得だ。武器や防具の差で結構有利に立っているところはあるからな。それが無くなり、数で負けるとなると面倒臭いことにはなりそうだ。ただそれでもまだ釈然としないところがあるとアテナは話を続ける。
「後、これは重要な報告なんだけど、サタンが現世を冥界にしたことで現世にいる通常の神たちは力が大幅に減っている。冥界と関わりがある神なら問題ないんだけどね。ポセイドンたちは諸に影響受けちゃっているからアトランティスを落とすなら確かに絶好の機会ではあるんだよ」
「なるほど。アテナはサタンの狙いが神召喚などで召喚される神への抑止だけでこんなことをしたと思っているのかな?」
「思っているよ。実際に現世に天界の神々が降りれなくなったからね。でも君は何か引っかかっているみたいだね?」
「俺はサタンの軍勢の侵略も全部囮の作戦な気がしているんです」
俺はお昼の間に考えていたことをアテナに聞いてみることにした。
「アテナは何か知っていないか? この世界の冥界には何があるんだ? サタンが狙うほどの何かがあるはずなんだ。何故ならサタンは今、冥界への入り口を一つにして冥界への道を封鎖している状況だ。これをしたからには冥界にはサタンが狙う何かがあるとしか思えない」
「確かに言いたいことは分かるけど、ボクらの世界だとタルタロスは冥界の最下層になっていて、そこには古の神ティーターンと大地母神ガイアの世界があることしか聞いていないかな? 正直彼らが今更サタンに協力するとはとてもじゃないけど思えないし、寧ろ自分たちの世界にやってきたら敵対すると思うけどね」
知恵の女神であるアテナでもサタンの狙いが分からないか。俺が困っているとセチアが声を掛けて来た。
「タクト様。エリュシオン様が話があるそうです。どうやらタクト様の疑問に心当たりがあるそうです」
「本当か! すぐに呼んでくれ」
俺たちはみんなで島に向かうとそこでエリュシオンの召喚をすることにした。
「では、大精霊召喚! エリュシオン!」
俺たちの目の前にエリュシオンが召喚される。
『こうして話すのは随分久しいな』
「そうですね。ゆっくり話したいところですが時間がないので、話を聞かせてくれませんか?」
『うむ。サタンの狙いは恐らくこの星の核だ』
現実世界で言う所の地球の核を狙っているのか。しかし核を狙って何がしたいかがわからない。するとエリュシオンがこのゲームにおける星の核について教えてくれる。
『お前たちは恐らく創造神が世界を作り出して、世界の全てを管理していると思っているようだが、そうではない。確かに世界のルールを決めるのは創造神に違いはないのだが、世界の全ての時間で発生している世界のルールを全て創造神が創造し続けることは不可能だったのだ。そこで世界を動かすシステムを創造することにした。その一つが星の核だ』
これは面白い解釈が来たな。創造神は世界のルール。恐らく物理法則などを作ることが出来たけど、その物理法則に対してずっと創造の力を使い続けるのは確かに力の浪費に他ならない。だから創造神は自分の力がずっと使わなくていいようなシステムを創造したと言いたいわけだな。
その物理法則を発生させる装置が星の核らしい。確かに星の核は引力や重力を発生させており、星を形成するための最重要な場所であることは事実だ。サタンの狙いが世界というかこの星の支配なら星の核を狙うのは自然の流れと言えるな。
『星の核を支配出来ればこの星の環境全てを支配することが可能になったと言える。恐らくこの情報は異星の魔神から聞いたのだろうな。星を支配する方法を』
あぁ…ここでアザトースたちが出て来るのね。確かにサタンがアザトースと手を組む利点がいまいち見えなかったけど、アザトースたちと情報と引き換えに手を組むような話をしていたなら納得がいく。しかしそれを行うのは簡単なことではないらしい。
何せ星の核に行くためには各地の冥界の最下層に行き、星の核に行くための装置を全て起動させる必要があるそうだ。だからサタンは各地の冥界を襲撃したわけだな。
ここで俺たちは星の核を支配したなら早く仕掛ければいいのにと思ったわけだが、星の核の力は絶大で完全に支配してコントロールするためにはサタンといえどもそれなりの時間を有するとのことだ。
「もっと早くに情報が欲しかったけど、後手に回った時点で防ぎようがない作戦だな。とはいえゼウスとか絶対に知っていただろうに」
「まぁ、お父様や創造神たちはこのことを知っていただろうね…タクトが絶世の美女だったらワンチャンあったかもね」
ゼウスなら確かに教えてくれそうだな。まさかこのタイミングで男であることをディスられるとは思わなかった。
「とにかく俺たちは星の核を支配したサタンと戦う事はほぼ確定した。問題はそれで何が出来てどう倒すかだな」
『星の核は星の記憶を司る場所でもある。エネルギーも絶大で現世を冥界にしたとなるとお主たちが倒した魔王たちが現世に復活させて来ることは確定と言ってよい』
七大魔王たちが復活はほぼ確定か。まぁ、最終決戦ならそういう流れになることはゲームあるあると言えるな。サタンが完全に星の核を支配するまでに時間が掛かるらしいが夜にはほぼ間違いなく仕掛けて来るだろうし、状況から見ると俺たちがルキフグス攻略に戦力を集中させたタイミングは狙われやすいだろう。とにかくこの情報は急いでみんなに伝えないとね。
そして肝心のサタンの攻略方法だ。これについては俺がすでに考えてはいたがどうやら俺の考えた通りに話が進む形ではないらしい。
「ロンギヌスを使えばなんとかなりそうな気はしているんだが」
『確かにロンギヌスやミカエルの秤はサタンには有効な武器ではある。しかし星の核と繋がったサタンはこの星を支配する神そのものだ。条件を同じにしたところでサタンに流れる絶大な力を止める事には繋がらぬ』
「つまりサタンをどうにかするためにはその星の核との繋がりを断つ必要がある訳か…そんなのどうやって断てって言うんだよ。時空切断や魔力切断とかで斬れるのか?」
『…』
俺の愚痴にエリュシオンは反応しない。その違和感を感じてエリュシオンを見るが無言で俺を見るだけだ。まるでヒントはもう与えた。サタンの攻略法を俺たちは既に持っているから自分はこれ以上口出ししないと言っているようだ。
俺はエリュシオンが言った事を思い返す。星の核と繋がったサタンはこの星を支配する神。その言葉を思い返して俺はあるアイテムの存在を思い出した。
「そうか…この星を支配する神となったサタンならこの星の神で無くせば星の核との繋がりを断てることがもしかしたら可能なのか?」
確かに俺の手の中にはそれが可能なアイテムがある。それがアザトースオーブの呪いを封印した呪霊玉。神に対する切り札っぽかったけど、まさかサタンに使う事になるとはな。なんかアザトースがサタンに何か嫌がらせするために残した感じに見えるけど、あちらさんが勝手に喧嘩してくれるならこっちとしては好都合だ。
しかしここでイクスが一つ疑念を話す。
「理論的には可能だと思いますがサタンにアザトースの呪いを使って大丈夫でしょうか?」
「異星の存在になったサタンがどうなるかは分からないが強くなってもロンギヌスが有効なら倒す事は十分可能だ。怖いし、賭けにはなるけど他に手が無いならそれに賭けるしかない」
「大丈夫だよ! タクト! リリーたちと一緒ならタクトは最強だから!」
「そうだな」
リリーの頭を撫でる。本当にリリーにはずっと精神的に支えられて来た気がする。これで大まかだがサタン攻略のための流れを再認識出来た。後は出たとこ勝負だ。
それじゃあ、月輝夜たちの成長と装備の確認をしてから午後の戦いに向かうとしよう。佳代姉たちの話によるとパラディンロードでレギオンの出現も確認された。午後から更に戦闘は激化していくことになるだろう。それでもこの戦争は俺たちが勝たせて貰うぜ。父さん。




