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#156 アスタロトの竜

俺たちは全員、全回復の状態で作戦に備える。ルインさんたちはもう1つの拠点の準備に奔走している。カタパルトの最終調整で大忙しだ。


ちょうどルインさんが情報の確認でこちらに来ると火影とダーレーが帰ってくる。


「緊急報告! アスタロトの攻撃で拙者たちが設置した罠が壊されていたでござる!」


っ!? さっきの攻撃の狙いは罠の破壊だったのか!?


「被害は!? みんな無事なの!?」


「幸い、狙われたのはアスタロトから一番近い罠で廃棄している罠でござる。全員無事でござるよ」


「そう。ならよかったわ」


いや、安心するのは早い。罠が狙われたということは迎撃ポイントにいる全員がいつ狙われてもおかしくない状態だということだ。


どうする?このままじゃあ作戦が成立しない。なんとかしないと…相手は悪魔だ。ロボじゃない。ならあの手が通用するかも知れないな。


「何か策を考えねばみなが危険でござるよ」


「俺に考えがあります。向こうが罠を狙うならそれを逆手に取りましょう」


俺は考えた作戦を二人に説明する。


「それしかないわね…今更迎撃ポイントを変更することなんてできないし…タクト君、お願い出来る?」


「はい」


「火影はこのことをみんなに伝えて」


「承知でござる。それとボスは向こうの作戦により、ピラミッドに誘導されているでござる。なお、トリスタン殿は誘導する機会を窺うとのこと」


「そう…何か作戦があるのかしら?」


どうだろう?少なくとも俺には迎撃に適している場所としか言えない。そこで俺は不意に嫌な予感を感じた。わざわざ迎撃をしやすい場所を用意するか?


このゲームならむしろそれを逆手に…


「俺は嫌な予感がするんですが、それは本当に誘導されているのか?」


「タクト君は誘導ではないと思ってるの?」


「はい。ピラミッドといえばお墓のイメージがあるじゃないですか? そういうところを考えると悪魔と関係がある気がするんです」


「確かに一理あるわね…」


二人で考えるがこれはあくまで推論だ。でも無視するわけにはいかないな。


「…俺は筏の準備をします。急いだほうが良さそうですから」


「同感。私は予定通り、カタパルトのほうの指揮を取るわ。トリスタンとの連絡を頼んでいいかしら?」


「わかりました」


俺はトリスタンさんに俺たちの考えを伝えた。恐らくピラミッドで何かの動きがある。そこから誘導を開始してくれるように頼んだ。


リキュールなら先回りして、休憩も取れるだろう。


俺が連絡を終えると森から攻略組パーティーが何人か現れる。その中にアーレイの姿があった。


「結構連れてきたな」


「これが俺の人徳だ!」


そんなことを言うアーレイだが、それぞれのパーティーのリーダーが口を挟む。


「お前はここの情報を伝えただけだろ? 死なずにポイントを稼げると聞かされたら協力しないわけないだろ?」


「向こうの作戦よりこちらのほうがしっかり立てていたからな。その上俺たちの役回りははっきりしていて、得しかない話だ」


「あちらの作戦をご存じで?」


俺が聞くと全員が苦笑いだ。


「作戦というか…なぁ?」


「あれは作戦とは言わないだろ?」


「ボスに攻撃を当てることが出来ると思ったから賛同したが、どうせならポイントがっぽり稼ぎたいもんだ」


どうやら迎撃に適しているからピラミッドに誘導しているだけみたいだ。


「分かりました。損はさせるつもりはありません。作戦の詳細について、改めて説明いたします」


俺が説明すると全員が作戦に賛同してくれた。これで戦力も更に増した。後は準備を整え、ボスが来るのを待つだけだ。


ーーーーーーーーピラミッドーーーーーーーーー


ピラミッドには俺たちと決別したプレイヤーが集まっていた。彼らはずっとバーサークキングコングを倒そうとしたが倒せず、今回のアスタロト討伐を狙っていた。


「現在ボスを無事に誘導中!」


「よし! 生産職の奴等が何を企んでいるか知らないがここならボスの顔を狙えるはずだ!」


「防衛にも適してるしな。ここらで大量ポイントゲットしようぜ!」


『おぉ!』


「間も無くアスタロトが攻撃範囲に入るぞ!」


「よし! 一斉に攻撃するぞ!」


プレイヤーたちが一斉に攻撃するが全く効果が無い。アスタロトはそのままピラミッドに接近するとピラミッドに手を翳す。ピラミッドを中心に巨大な魔方陣が展開される。


「な、なんだ!?」


「何をするつも」


次の瞬間、彼らはピラミッドと共に魔法陣から吹き出す闇に喰われた。そしてプレイヤーとピラミッドを飲み込んだ闇は魔法陣に戻り、魔法陣から歪な巨大なドラゴンが出現した。


アスタロトドラゴン?

? ? ?


それを遠くの木の上から確認していた者がいた。トリスタンだ。


「タクト君、今向こうのやつらが全滅して、ドラゴンが現れたわ。名前はアスタロトドラゴンよ」


『嫌な予感って当たるものですね…ルインさんから誘導の指示です』


「了解よ」


トリスタンは木から降りるとリキュールに乗る。


「さぁ、行きましょうか! リキュールちゃん!」


「ヒヒーン!」


トリスタンとリキュールのコンビが誘導を開始した。トリスタンはリキュールを走らせながら弓矢を構え、武技を使用する。


「ストライクシュート!」


1本の矢がアスタロトが乗っているアスタロトドラゴンの目に命中する。トリスタンはすかさずリキュールをUターンさせる。


後ろを見て、アスタロトとアスタロトドラゴンが自分をタゲ(ターゲット)しているのを確認する。


計画通り、2体はトリスタンを追いかけて来ていた。しかし予想以上にアスタロトドラゴンが速かった。


アスタロトドラゴンの口から火球が放たれる。


「しまっ」


いきなりの攻撃に反応が遅れたトリスタンだったが、リキュールが大樹を盾に火球を躱した。


トリスタンは驚く。今まで色々なゲームで馬に乗ってきたが、乗り手を守るために自分で行動する馬は初めてだった。


「本当に優秀ね。リキュールちゃん…でもこれなら…リキュールちゃん! 回避をお願い! 私は攻撃に集中するわ!」


トリスタンは召喚主ではない。だから言うことを聞くかわからないんだがリキュールは頷く。


そしてトリスタンは攻撃を続ける。アスタロトドラゴンも反撃するがリキュールの大樹を盾にする戦法で見事に攻撃を躱している。


「…ダメ。本気で惚れちゃいそう」


タクトが預かり知らぬところで変な恋が生まれようとしていた。トリスタンとリキュールはアスタロトドラゴンに攻撃を加えながら、無事に誘導ポイントに到達する。


そこからプレイヤーたちの反撃が開始された。

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