#155 裏工作と動き出すアスタロト
俺が撤退を開始してしばらくすると、後ろで戦闘の音が聞こえた。どうやら向こうサイドのプレイヤーが参戦したみたいだ。なら俺の役目は一旦終わりだな。リターンで古の湖に戻ることにした。
古の湖に戻ると全員が叫ぶ。
『ずるい!』
開口一番がこれだ。
「なんのことかわからないな。俺たちはボスを誘導しただけだぞ? 死に戻りのリスクが高い任務を遂行した隊長にずるい呼ばわりは心外だ」
『ぐ…』
はい。俺の勝ち。とりあえずここまでくれば大丈夫だろう。俺はリリーたちを回復させているとルインさんたちが来る。
「無事に帰ってきましたよ」
「それはよかったけど、ポイントを独り占めして帰ってきたの間違いでしょ。まぁ、向こうの人たちが慌ててる様子を見れて私たちは愉快だったけどね」
ルインさんもなかなかの性格だよな…とりあえず休憩をする。そこで今後の展開を話し合う。
「タクト君はこれから敵はどんどん強くなると思うわけね?」
「はい。流石に40の軍団が出てくるとは思えませんけどね」
「まぁ、時間的に無理よね…」
とてもじゃないが相手出来ないだろ。軍団の数にも因るだろうけどね。そこで俺はルインさんにとある作戦の説明をする。
「実は向こうサイドに俺の友達がいまして、こちらの作戦を仲間になってくれそうな人たちに流してもらおうと思うのですが、許可を貰えませんか?」
「このタイミングで?」
「はい。満月さんたちの情報でこちらの作戦のほうがしっかりしていると確信を持てましたし、もし情報が向こうのリーダーの人たちに渡っても時間的に手遅れだと思います」
「…確かに戦力が多いに超したことはないわね。連携の問題の発生は…大丈夫ね。わかったわ。みんなには私から話しておくから、タクト君は友達に連絡をお願い」
「イエス、マアム!」
「それはやめて!」
ルインさんはどうやら掛け声が嫌いらしい。アーレイにコミュニケーションで連絡をした。
『攻略法知っているってマジかよ!? 掲示板にそんな情報なかったぞ!?』
「俺たちは決別しているからな。で。どうするよ? こっちにくればポイントたくさん、生存率も高いぜ?」
『ふ…行くに決まっているだろ? で、俺は何をすればいいんだ?』
こいつ、意外に察しがいいんだよな。
「この情報で仲間になってくれそうなパーティーに声をかけて欲しい」
『了解。それにしてもこのタイミングで情報流すとか、えげつなくないか?』
「それは褒め言葉だ。じゃあ、頑張って仲間を集めてくれ。超期待しているから」
『プレッシャーを与えるなよ。まぁ、期待に応えてやるけど、次からはもっと早くに情報渡せよ』
「それはお前次第だ。頑張れよ」
これで裏工作は完了だ。後はアーレイの出来次第だな。
裏工作が終わり、休憩しているとユグさんが聞いてくる。
「アスタロトってどんな悪魔なの? 私、詳しく知らないんだよね。ゲームで知ってはいるけど」
まぁ、そういう人が大半かもな。ルインさんが説明する。
「色々な宗教や物語で出てくるから一概には言えないけど、アスタロトはソロモンの72柱の1柱で竜に跨がり、右手に毒蛇を持った天使の姿と言われるわね」
「なんというか…設定を詰め込まれているんだね…というか悪魔なのに天使なの?」
「それは元々が女神だった話があるのよ。しかも天使の堕天について語った悪魔でもあるそうよ」
へー。それは知らなかったな。
「確か過去、未来を見通す力があるんですよね?」
「えぇ。もし本当にそんな力があったら、こちらの作戦はばれてるから詰んでるわね」
そこなんだよなー。まぁ、流石にその力はないだろう。ネビロスにもなかったからな。問題は天使の姿、毒蛇は持ってないが毒はある。じゃあ、ドラゴンはどこだ?って話だ。
「敵としてドラゴンが出てくると思いますか?」
「壁画にも書かれていたし、何かしら関係はしてくるでしょうね…とにかくぶっつけ本番である以上、色々想定して動くしかないわ。タクト君はこれからどうするつもり?」
「出番が来るまでじっとしてますよ。リキュールも貸さないといけないですからね」
「そうしてくれると助かるわ」
それから一時間ほど休憩しているとメルたちが来た。待機中のメンバーは交代で休憩している。そこに偵察に向かっていた火影さんが帰ってきて、ルインさんに報告をする。
「お疲れ様。ボスと向こうの様子はどう?」
「ボスはデーモンが全滅し、謎のデーモンを召喚されたようでござる。剣を所持していて、相当難敵の様子だったでござるよ。タクト殿はいいタイミングで撤退したでござるな」
結構悩んだんだけどな。結果的に正解だったみたいでよかった。
「その様子だと向こうに被害が出たのかしら?」
「少し出た程度だと思うでござる。どうやら向こうはキングコングがいたピラミッドでアスタロトを迎え討つつもりのようでござるよ。ボスを誘導するための部隊を各所に設置したようでござるが、ポイントが欲しいプレイヤーは敵に向かって行ってしまうので」
「そいつらに被害が出たわけね」
なるほどな。しかしピラミッドは確かに迎撃に向いている場所だよな。でかい敵だし、攻撃されたらピラミッドを盾にすればいい。
俺が感心していると突如爆発音と凄まじい衝撃が森から届く。突然の衝撃でリサとミライがバランスを崩したので、支える。
「大丈夫か?」
「「う…うん…」」
流石双子…反応が一緒だな。そこで背後から視線。
「「「「むー!」」」」
リリーたちがむくれていた。そしてメルもむくれている。
「私もバランス崩れたんだけど? それにいつまで支えているのかな?」
無茶言うな。二人が限界だろ!とりあえず二人を離す。すると足音と音がする度に地面から衝撃が響く。アスタロトを見るとゆっくりと動き出していた。
ということはさっきの攻撃はアスタロトの攻撃か。どのくらいのプレイヤーが犠牲になったのか…そしてアスタロトだがこっちに向かっていない。どうやらキングコングが出た方向に向かっている。
ただ迎撃に適しているから選んだのか。それとも俺たちと同じで何か作戦があるのか。お手並み拝見だな。
俺がそう考えているとトリスタンさんが来た。
「とりあえず情報を調べてくるわ。タクト君。リキュールちゃんを貸して」
「拙者も共に参る。斥候は忍者の務め故。出来れば拙者にも馬を貸して貰いたいでござる」
俺が総司令官を見る。
「二人なら適任よ。まずは情報がないと判断出来ないわ」
「ですね…ではパーティー申請出します」
俺がパーティー申請を出して二人が受諾。早速リキュールとダーレーを呼び出す。
「これがこのゲームの馬! やはり超リアルだな! …でござる」
あ、間違えたな。
「じゃあ、リキュールちゃんは借りるわね」
「拙者もお借りするでござる!」
「返してくださいね」
俺がそう言うが二人は返事無しで行ってしまった。ちゃんと返してくれるか心配だ。
裏工作というほどのものじゃないですけど、アーレイの参加はこういう形にしました。




