#1443 ルキフグスの魔王軍挟撃作戦
ここはルシファーの城。俺が闇のドラゴニックマウンテンの攻略に向かっている頃、ルシファーの城にルキフグスがやって来ていた。
「人間の侵攻が始まったようですね」
「えぇ…サタンが心配でもしてましたか？」
「心配と言うか私に戦闘指揮を命じられました」
「ふふ。それは心配しているからですよ。それではあなたに任せていいんですね？」
「お任せください。ルシファー様」
こうして梅雨イベント以来となる地獄の宰相が動き出した。彼が最初に声を掛けたのはルシファーの領域に最も近く、強い魔王であるベリアルだった。
「俺様にルシファーの領域にいけとお前は言いたいだけだな？」
「簡単に言うとそういうことになりますね」
「断ったら、どうする？」
「あなたは断りませんよ。何せ今回の敵軍には上位のフリーティアの召喚師たちとフリーティア軍が参加しております。彼らがピンチになると間違いなくあなたのお気に入りの彼が出て来るはずですよ」
「確かにあいつと戦えるなら願ったり叶ったりだな。お前がそこまで言うなら間違いなくあいつは来るだろうし…いいだろう。軍を動かしてやるよ。ただしあいつの相手は俺がする。それが条件だ」
こうしてベリアルと他の魔王たちがルキフグスに賛同して集結した。そしてルキフグスから作戦説明を受ける。
「現在人間の軍はルシファー様の領域に侵攻を開始しました。ルートはラーヴァナ様の領域からですね。幸い彼らはラーヴァナ様の左右の領地であるベリアル様とアガリアレプト様には手を出しておりません。なので今回はこの左右の領地からルシファー様の領地に侵入した敵軍の挟撃作戦を実行します」
これが俺たちのミス。作戦の時間が無いが故に周辺の攻略よりもルシファー領域の攻略を優先してしまった作戦ミスだった。
アーレイから連絡を受けた俺はラーヴァナ領域とシルファー領域の領域の境目にやって来た。するといきなり悪魔たちに襲われる。転移魔法陣で敵がやって来ることはバレバレだろうからな。ただし俺への攻撃はイオン、恋火、燎刃、千影が止めてくれた。
「タクトさんを狙うなんていい度胸ですね」
「新しい力、試させてもらいます！」
「タクト殿には指一本触れさせません！」
「お館様に手を出させるわけないであります！」
四人がそういうと相手の攻撃を弾いて一刀両断すると大量の敵が空と地上から群がって来た。しかしそんな大群が一瞬で消し飛んだ。今回の転移は全員で来たからな。流石に今の俺たち全員を相手に数で押せばなんとかなるなんてレベルでは無くなっている。
「ギルマス！ 助かった…おい！ みんな！ ここに集まれ！」
俺のギルドメンバーの一人が俺がやって来たことを察して、味方を俺のところに集めてくれる。これで俺たちからすると味方を守りやすくなった。
「人を乗せれるグレイたちは味方を俺たちのところに連れて来てくれ。リリーたちは味方を襲っている敵の排除。残りは火力で敵を一掃してくれ」
「わかった！ タクト！」
「ガウ！」
リリーたちはやっぱり襲われている人間を助けるのに向いているし、グレイたちは味方を助ける動きは手馴れている。逆に大型の召喚獣はそういうの向いてないから火力で敵の数を減らすのがやっぱりいい。
リリーたちが動くと一瞬で敵の数が減る。流石に戦力差が違うな。さて、これで話が聞ける。
「敵襲を受けたことは聞いたけど、どういう状況か教えてくれる？」
「はい！ まずここは前戦の部隊に補給物資を送るために作られた補給基地です。敵軍は左右から押し寄せてきて、現在の状況になってます」
この話で俺はルシファー領域の左右がまだ攻略しておらず、そこから襲撃を受けたことを理解した。ただ俺たちも馬鹿ではない。ちゃんと他の魔王たちから襲われる可能性は考えて、挟撃対策の部隊を編制していたはずだ。
それでも本隊と補給部隊が襲われたということは対策のために配置した部隊は全滅したか敗走したんだろう。相手がベリアルでも上位の人たちなら簡単に遅れを取るとは思えないが問題は時間帯だな。
冬休みで休みがあるのは学生だけだ。社会人はこの間も仕事している。だからどうしても戦力は下がるんだよね。だからルシファー戦は夜に設定しているんだけど、この時間の襲撃はどうしようもないな。寧ろ手薄の時間に襲撃して来た相手が偉い。
「俺はアーレイから連絡を受けて来たんだが、本隊はルシファー領域にいるってことでいいんだよな？」
「はい。あの…どうしますか？」
「まずはここの敵をなんとかしよう。補給路を潰されるのは痛いからな」
「助かります」
「お互い様さ。といってももう随分数が減っているけどな」
敵の中にはグレーターデーモンやロードガーゴイル、ゴッドオーガも参加しており、完全武装した魔人や魔将もたくさん参加している。それに加えてデモンズドラゴンに乗った悪魔など部隊としては相当な軍勢なんだけど、リリーたちが問答無用でボコっている。
というのも敵軍全体がリリーたちの攻撃を止めれていないんだよな。これはもう武器の差とレベル差によるステータスの差が完全に出ている。みんなが攻撃するだけで敵が粉々になって吹っ飛んで行っているよ。
なんか可哀想に思えて来たぞ。ゴッドオーガなんか全力のデモンクラッシャーを燎刃に放っていたが片手で受け止められるとそのまま手を掴まれて、投げ飛ばされると言う悪夢の光景が見えた。
そりゃあ、ゴッドオーガも驚愕の顔を浮かべるよな。ゴッドオーガから見たら、俺たち人間はカブトムシぐらいにしか見えていないはずだ。それが自分の渾身の攻撃を受け止めて、投げ飛ばして来るんだから嘘でしょ！？って思うわな。
他にもグレーターデーモンの鎖付きモーニングスターを投げつけてきたが明らかにひ弱そうなイオンが蹴り飛ばしていたり、現時点では新しい武器の性能チェックまでほど遠いな。そう思っていると面白い敵が遠目で見えた。
「へぇ。ベヒモスの亜種が五体か。デモンズベヒモス。レベルは75。亜種だからレベル高いな」
「サフィさん！ 行きますよ！ 新しい鞍のテストです！」
「ぼえ～！」
俺が動こうとしたのを察知したリアンがいち早くサフィと共に仕掛けた。二人は超連携を発動されるとサフィは重力場を発生させた状態で突撃していく。これに対して狙われたベヒモスは足を地面で叩くと大地壁を展開して更に多重障壁まで展開した。
しかしそれで防げるほど、今のサフィの突撃は甘くなかった。大地壁は触れることなく重力場で崩壊、多重障壁も重力場に耐えられず、崩壊するとサフィの突撃がデモンズベヒモスに決まろうとした。
「バオーン！」
「ボエー！」
その瞬間にデモンズベヒモスは鼻で覇撃を放ってきたがサフィはそれを受けてもなお止まることはなくデモンズベヒモスの堅固な鱗をぶち抜いた結果、デモンズベヒモスの上半身が消し飛び、足だけが残った。重力場と防御無効の組み合わせがえぐいな。
しかしこれでデモンズベヒモスたちは後ろを向いているサフィたちに狙いを定めることになる。やはり装備から見ても戦闘経験はかなりある訓練された部隊だな。
ただここでデモンズベヒモスたちの背後にディアンとストラ、クリュスが現れ、噛みついてデモンズベヒモスたちの動きを止める。本来なら力付くでなんとかされてしまう攻撃だが、ドラゴニックマウンテンでのステータス上昇がえぐかったので、噛みつきを止められない。
というか三体ともデモンズベヒモスたちを噛み付いた状態で浮き上がらせてしまった。空を飛べないベヒモスはもう逃げる手段がない。攻撃しようにも肝心の鼻は噛みつかれて終わっており、一生懸命蹴りを放つが届くはずもない。悲しいな。
「こんな巨体なデモンズベヒモスを浮かせるだと！？ 化け物め！」
「流星一文字！ お館様に勝利を与えることが出来るなら化け物で結構であります」
「ホー！」
「一閃！ 優しいわね。私は優しくしてあげないわ。ナインテイル！」
デモンズベヒモスたちを操縦していた魔将の首が綺麗に飛ぶと別のところではコノハが自分の槍で突撃して魔将の首をぶち抜いており、狐子が首を斬ると身体を尻尾で串刺しにしていた。ドラゴニックマウンテンに参加出来なかった組のフラストレーションを感じるな。
そして残っているデモンズベヒモスにはセチアが召喚したフォレストガーディアンが捕まえていた。これだけだったら、大したことないがセチアとミールが樹海支配でフォレストガーディアンから木の根をデモンズベヒモスに伸ばして完全に拘束しようとしていた。
「ヒ！？ っ！？ なんだ！？ 身体が！？ 動かない！？」
「金縛。逃がす訳ないじゃ～ん。ボクの鞭で叩かれて死ぬか？ 木の根で絞め殺されるか？ 選ばせてあげるよ」
「いた！？ おい！ ふざけるな！ もう叩いてる！ おい！ やめろ！ ぐえ！？」
「自分の相棒を見捨てる君に選択肢なんてあるわけないでしょ？ 魅了でなんて殺してあげない。たっぷり後悔するようにゆっくり絞め殺してあげるよ。さようなら」
あーあー。完全に弱い者いじめだよ。俺が呆れていると俺に対して迷彩スキルで魔将たちが奇襲して来た。
「「「「貰った！」」」」
神魔毒を塗った暗殺の武器。いい武器持ってるね。しかしそれで暗殺が成功するようならとっくに他の悪魔たちが成功させているんだよな。
「シャー！」
「そんな見え見えな暗殺が通用するかよ！」
「うちらがタクトはんの傍にいる限り暗殺なんてさせまへん」
夕凪の蛇が噛みつき、ダーレーが魔将の頭を掴んで地面に叩きつけると和狐が白蔵主の錫杖でナイフを受け止めるとそのまま弾いて白蔵主の錫杖で魔将の頭に白蔵主の錫杖が直撃した。
すると魔将が手に爆弾を取り出した。まぁ、普通の爆弾ではないだろうな。しかし投げることは叶わない。
「…影封陣。…にぃに手を出したら、どうなるか教えてあげる。…影召喚。…こいつらを連れてって」
ノワが動きを封じるとチビノワたちが彼らを連行していく。その間に爆弾の導火線は燃えていく。つまり彼らは遠くで爆発して、自らの毒ガスで死んだ。
迷彩で姿を消しても気や影でバレてしまうのが迷彩スキルの弱点なんだよな。空虚だったら、気は消せるけど、影は消えない感じだ。
これでまだ俺の近くにはセチア、イクスとルーナ、ミールが控えている。みんなを掻い潜って俺に攻撃を当てるのは相当難しいだろう。少なくとも俺には無理だ。まずイクスがいるだけで見つからないことは不可能だからな。実力で突破するしかない。
こうして取り敢えず補給基地に奇襲して来た敵は全滅させた。後は前線にいる味方の救援だが、ここで俺は考えて部隊を分ける事にした。
「セチア、和狐、黒鉄、ミール、夕凪、スキアーはここで残ってみんなを守ってくれるか？」
「わかりました。お任せください」
「あ、あの！ 敵はまたここに来るんでしょうか？」
「俺なら俺たちがいなくなったタイミングで再度仕掛けるな。名持の悪魔がいなかったからほぼ間違いないと思う。だけど心配しなくていい。俺の召喚獣はみんな強いからな」
俺がそういうとセチアたちも笑顔になる。こうして俺たちは部隊を分けて俺たちはアーレイたちがいる前線に向かった。
