#1437 邪冥龍王ディサピアードラゴン戦、中編
ドラゴンの姿になった俺たちは接近戦を挑む。今度はノワが影創造でディサピアードラゴンの影創造と張り合うとお互いの爪が激突する。
『覇撃!』
『王撃!』
この撃ち合いは王撃のほうが威力が上回り、俺たちが吹っ飛ばされる結果となった。しかし俺たちも吹っ飛ばされながら次の攻撃の準備を終えている。それを見たディサピアードラゴンも攻撃を構える。
『魔神波動なのじゃ!』
『冥波動! ぬぅ!』
今度は逆に俺たちの魔神波動が冥波動を威力で押し勝つ。これを見た俺たちは吹っ飛んだことを考えて接近戦は無理と判断して息を吸い込むとディサピアードラゴンも息を吸い込む。
『『ドラゴンブレス!』』
この勝負は互角となった。
『儂の冥波動に押し勝ち、ドラゴンブレスを互角にまで成長したか! ようやく楽しくなってきたではないか! 黒星! 黒星!』
『星核! 星核!』
黒星と星核が空中で激突して、大爆発が発生した。すると爆煙がディサピアードラゴンの方向に流れる。
『ぬぅううう! 重力球!』
『斥力支配なのじゃ! ぬぅえいいいい!』
ディサピアードラゴンが放った重力球を斥力で押し返すとディサピアードラゴンは尻尾で弾いて見せた。そして俺たちが接近戦を挑むと応戦してきた。
『『影創造! 冥府鎖!』』
影の刃同士が激しく激突し、出現した冥府鎖はお互いに縛り合うのを阻止しつつ、相手を縛ろうと動いた結果、どちらも拘束を防ぐと言う結果となった。こうとなると単純の殴り合いが重要となるがこちらも互角の勝負をしていた。
ディサピアードラゴンは明らかに体術を取得していた。しかも柔道や合気道系統の体術だったので、下手に俺は攻め込めなかった。下手に踏み込むとその瞬間、負けてしまう危機感をひしひし感じた。その結果接近戦でのスキルの撃ち合いとなる。
『…炎ブレス!』
『獄炎!』
『…石化雷!』
『氷雷!』
俺たちが炎ブレスを放つとそれを躱されて、反撃の獄炎が来たが俺たちも負けじと躱す。そしてお互いに雷スキルを撃ち合うと再び接近戦をして拳がぶつかる度に爆発が発生する。
ディサピアードラゴンは恐らく全龍王の中で器用値が一番高いことは間違いないと思う。この状況で即死の魔眼も警戒しないといけないのだから本当に戦闘のやり辛い。
『暗黒渦!』
『…暗黒渦!』
ここでお互いが暗黒渦に捕まるとお互いが翼を羽ばたかせて風で吹き飛ばした。するとここでディサピアードラゴンが仕掛けて来た。
『そんなものではあるまい? 来ないのならこちらからゆくぞ? 無波動!』
ディサピアードラゴンが無波動を放ってきたことで俺たちはその大きさ見て回避を選択した。するとここでディサピアードラゴンが接近戦をして来た。俺は拳を止めたがその瞬間に腕を掴まれて、ディサピアードラゴンは俺たちの腕を掴んだ状態で回転して、遠心力を利用して投げられてしまう。
『冥撃!』
『…虚無壁!』
真上から落ちていた冥撃はノワが虚無壁でガードした。しかしそこを狙われてしまう。
『これで防御手段はないのぅ。無波動!』
『金縛り!』
ゼロ距離からの無波動を狙われたが金縛りで一瞬だけディサピアードラゴンの動きを止めた。
『む!? ぬん!』
『は! セフォネ!』
『鮮血の魔眼なのじゃ!』
『ぬぅ!? ぬん!』
無波動が放たれるが俺はその手を手で弾いて無波動のコースを外すとスキルのクールタイム時間を利用して、先手で鮮血の魔眼を発動された。これによりディサピアードラゴンの目から鮮血が飛び散った。しかしこれでディサピアードラゴンは怯む事なく魔拳が放たれ、俺たちは防御スキルを発動させながら吹っ飛ばされる。
『血晶をくらえ!』
『ぬぅ!? 強化復活!』
『氷山!』
『ぬん! おぉおおお!』
血を流している目が血晶で更に貫かれるとディサピアードラゴンは自分の目を爪が抉ると強化復活で目を元に戻した。しかしそれで時間が出来たので、俺たちは氷山を投げつけた。すると俺を手で付け止めると逆に投げ返して来た。
それを躱すと氷山の後ろからディサピアードラゴンが現れて、即死の魔眼が発動されて俺たちが視線を素指すとその隙にドラゴンブレスが俺たちに炸裂する。
俺たちが起き上がるとディサピアードラゴンは両手を上に掲げて巨大な暗黒の球体を空に作り出していた。これは黒星の上位スキル!?俺たちは逃げようとしたが体が動かない。これは影封陣か。やられた。
『凶星!』
『星核!』
俺たちは星核を地面にぶつけて閃光で影を消すことで体を動かせようになったが回避が間に合わない。これに耐えるためにはもう賭けに出るしかない。
『ノワ! セフォネ! 使うぞ!』
『…ん! 覚悟は出来てる。使って! にぃ!』
『うむ! 妾も付き合う覚悟は出来ておる! やれ! タクト!』
『超覚醒! 血醒!』
俺がスキルを発動した瞬間、俺たちの視界が暗転する。そして俺たちの体の方では俺たちから血が迸ると血が俺たちを包み込み、球体となるとそこに凶星が激突して爆発するが血の球体はびくともすることはなかった。
『ようやく使ったか…さて、無限の小僧に呑み込まれるか。それでも逆に噛みつくか。お主たちの進化、儂が見届けてやるわい』
そういうと血の球体からワインレッドの体を持つ蛇が現れて、ディサピアードラゴンを威嚇するのだった。
その頃、ノワの体を貫通して暗黒の蛇が現れた。
「…ウロボロスドラゴン」
『礼を言うぞ。小娘。本当にお前たち人間は最高だな! いつも我の思い通りに動いてくれる! お前たちが我の力を解放し、我の血まで呼び覚ましてくれたことで我は復活を果たした!』
「…ふふ」
『ん? 何を笑っている? 気でも狂ったか? 小娘?』
「…違う。ノワの血ににぃと同じ人間の血があることを再認識出来て嬉しくなっただけ」
ノワだけでなくリリーたちがこの問題を抱えていた。自分たちはドラゴンなのか?それとも人間なのか?という純粋な疑問だ。その答えはドラゴンでもあり、人間でもあるというものになるのだが、それを証明出来るかと言われると難しい。
これを自分の内に眠っていた最強格のドラゴンから言われると確実な証明とまではいかないが説得力はあるだろう。
『ふん。変な奴だが、それが最後の言葉でいいな? 我に食べられて死ぬがいい!』
ノワに血の鱗を持つウロボロスドラゴンが口を開けて迫って来るとノワは食べられてしまう。
『馬鹿な娘だ。所詮人間の血が混じったドラゴンの力などこの程度のものだな! ははは!』
「…ノワはあなたに倒されない」
『は?』
ウロボロスドラゴンの体内からノワの声が聞こえて来た。
『どうして生きている!? 小娘!?』
「…にぃは凄い。にぃはこのドラゴニックマウンテンであなたと敵対する可能性まで考えてた」
そりゃあ、闇のドラゴニックマウンテンならウロボロスドラゴンの登場を警戒するのは当然だろう。そしてウロボロスドラゴンの対抗策で選んだのがセフォネだった。ノワは自分のマリッジリングを握りしめた。
「…この指輪からにぃとセフォネとの繋がりと強くなった力を感じる。だからノワはあなたには絶対に倒されない!」
『っ!? こ、この力は!?』
『…生体創造!』
ウロボロスドラゴンの体内から閃光が放たれるとウロボロスドラゴンはその力に驚愕する。何せその力は自分の本体を負けに追い込んだ力なのだから驚愕して当然だろう。ノワが言う。
「…にぃが言ってた。無限の力は確かに最強レベルに強い力だけど最強じゃない。その証明はあなたの本体がしてる」
無限の力が最強ならばウロボロスドラゴンがエデンに封印されているわけだから無限の存在でもこの世界では負けがあり得る。そしてウロボロスドラゴンが負けたのは恐ろしくエデンの創造神だ。しかし創造の力が無限に絶対に勝てるとは思えない。だからこの両者の力は純粋に強い方が勝つようになっているんだろう。
つまりここで問題となるのはノワとセフォネの力のバランスという事になる。ヴァンパイアはエクスマキナ、魔神と同格の最強種族と言うのがこのゲームの設定だ。なのでノワにどれだけ力があるかは分からないがヴァンパイアを超える事はない。それがゲームの設定だ。
「…創造の力は無限を有限に変える」
それこそ生体創造スキルの効果だ。生体創造は生物の体を創造の赴くままに変化させる。自分の腕をモンスターの頭に変化させることなどが可能になることから部位竜化などの上位スキルと言っていいスキルだろう。
そして生物の体を変化させることが出来るということはノワが言うように無限の存在を有限の存在に変えることが可能であることを意味している。これによりウロボロスドラゴンの無限属性を封じられた。
「…今のノワの中にはにぃとセフォネがいる。だから!」
ノワが自分の手に影の鎌を作り出すとウロボロスドラゴンの体内から皮膚に向かって飛び出す。
「…あなたはノワに勝てない! …あなたのその力はノワがみんなのために使わせて貰う!」
ウロボロスドラゴンの体が斬り裂かれて、ノワは外に脱出するとウロボロスドラゴンの体が崩壊していく。
『こんなことがあってたまるか!? 俺様の計画は完璧だったはずだ! どうしてこんな奴らに負ける!? なぜ貴様は俺様の物にならないんだ!』
「…負けた理由は一人のあなたじゃ、きっと一生わからない。…ノワがあなたの物にならない理由は一つだけ。…ノワはにぃのものだからあなたのものにはどんなことがあっても絶対になることはない」
『く、くそったれーーー!』
そう叫びながらウロボロスドラゴンは再びノワに噛みつこうとしたがその前に身体が持たずに血となって消えた。そして世界が光に包まれると俺とセフォネがノワの隣に現れた。
「よく頑張ったな。ノワ」
「うむ! 流石ノワじゃ!」
「二人のお陰…ありがとう」
ノワがそういう間にも力がどんどん増幅されていく。
「行くか」
「…ん。お年寄りをいつまでも待たせるのはまずい」
「そうじゃな。見せてやろうではないか! 妾たちの真の力をな!」
現実世界でディサピアードラゴンを威嚇していた血のウロボロスドラゴンは絶叫すると身体が崩壊して血が地面に流れると血の球体が閃光が放たれる。
『噛みついたか…見事だ! さぁ! 儂にお前たちの本気の姿を見せてみよ!』
ディサピアードラゴンがそういうと血の球体が弾けて新たなドラゴンが出現した。そのドラゴンは元々のドラゴンの姿にDNAの構造をした触手が新たなに八つ背中から生えているドラゴンだった。そのドラゴンの目にしてディサピアードラゴンは笑む。
『これだ! 儂はこれを待っていた! 今こそ儂の本気の姿を見せようぞ! 神格解放!』
ディサピアードラゴンが暗黒の光に包まれるとその中から双頭のドラゴンが現れた。その双頭のドラゴンの背中から骸骨のドラゴンが八つ存在しており、こちらと睨み合ったところで識別する。
虚無龍神王ヴォイドゴッドドラゴン?
? ? ?
識別されたことを認識したのかヴォイドゴッドドラゴンが宣言してくる。
『我、全てのドラゴンに安寧の死をもたらししドラゴンなり。無限と創造の力を覚醒せし新たなドラゴンよ。我が消滅の力に臆せぬならばかかって来るがいい』
どうやらドラゴンの世界での死の終着点は消滅らしいな。ドラゴンゾンビもいるし恐らく冥界もあるから色々な設定はあるのだろうがこのドラゴンの名前から判断すると冥界にいったドラゴンの終着点が消滅であることは間違いなさそうだ。これはノワたちには残酷な事実になってしまったな。
『…大丈夫。ノワはにぃの前から消えたりしない』
『もちろん妾もじゃ。このドラゴンを倒して証明しようではないか! 妾たちを消すことなど誰にも出来はしないとな!』
『…あぁ。そうだな! いくぞ! ノワ! セフォネ! これで決着を付ける!』
『来い!』
真の力に覚醒した俺たちのドラゴンと真の力を発動されたヴォイドゴッドドラゴンがついに雌雄を決するために激突しようとしているのだった。




