#1435 クロム・クルアハとの死闘
今日で連続更新は終わりとなります。次回の更新は22日の23時更新を予定しております。変更があれば活動報告のほうで報告いたします。
それではお盆休みの最後の更新をお楽しみください。
俺たちとクロム・クルアハは再び激突する。お互いの爪が激突すると本来なら片腕のクロム・クルアハにこの後の俺たちの爪の攻撃に対処する手段はない。しかしそんな一般常識が通用する相手ではない。
『魔素刃!』
無くした腕から大量の魔素を出すと魔素が五つに別れると魔素の先に刃が展開されて、俺たちの横から襲い掛かって来た。俺は透過スキルが使われる感じがして回避を選択したが操られた魔素が俺たちを追尾して来る。
『…影創造! 剣!』
俺たちの影から無数の影の剣が作り出されると一斉に放たれた。しかしこれを魔素刃が全て弾き飛ばしてしまった。
『ぬん!』
ここでクロム・クルアハは魔方陣を展開した。あの魔方陣はスピカが使える星座魔法のサジッタか?クロム・クルアハの像はその周囲に十二の像があることが知られている。これは中央のクロム・クルアハは太陽で周囲の像は黄道十二星座を表しているらしい。
つまりクロム・クルアハがサジッタを使った時点でクロム・クルアハは全ての星座魔法を使える可能性が浮上した。これは相当まずい。最悪の場合、確殺スキルでゾディアックなんて使わたら、どうすればいいんだ?
いや、待てよ。今までずっと確殺スキルに振り回されて来たけど、俺たちが戦闘して来た敵の中でもしかしたら確殺スキルが通用しない奴がいるかも知れない。でも、どちらが優先されるか疑問だな。聞いた能力の説明通りなら確殺スキルが通用しないような気がするんだよね。
とにかく今はサジッタを阻止しようと動くが魔素の刃が俺たちの動きを妨害して来る。
『…悔しいけど、魔素同士の勝負だと負ける。セフォネ、お願い出来る?』
『任せよ! しかし血がないと対処できぬぞ?』
『任せろ! 痛みは我慢してくれ。二人共!』
『…ん!』
俺たちの両手の爪が肩を貫くと血が流れる。
『行くぞ! 血流支配! 鮮血刃!』
俺たちの流れた血が操作されて、魔素刃のぶつかると弾き飛ばした。魔素には質量がない。それに対して血は液体で質量がある。ここはスキルの優位性で俺たちが勝った。しかし弾かれても再び攻撃して来た。するとここで透過スキルで鮮血刃をすり抜けられた。
しかし一度使ってくれたなら爪で弾ける。だが、クロム・クルアハからすればこのやり取りで時間は稼げた。
『星座魔法! サジッタ!』
『…虚無壁! 影死針!』
『石化雷! 氷雷! 黒雷をくらえ!』
星の弓矢は虚無壁で消滅した。そして俺たちの反撃がクロム・クルアハに襲い掛かるが一瞬で姿が消えて攻撃が外れる。そして地面に現れると片手を構える。
『黒星!』
『…黒星!』
黒星同士が空で激突すると俺たちの目の前にクロム・クルアハが現れる。
『太陽風!』
『…影翼! 魔霧! にぃ! お願い!』
『任せろ!』
太陽風の輝きをノワがセフォネの影翼を俺たちの目を守るように展開してくれて、魔霧で太陽風をガードする。しかし視界が閉ざされたのは俺たちも同じだ。しかしノワは俺の事を信頼して目くらましを阻止してくれた。それなら答えない訳には行かない。
『ぬん! 怪力! 魔素刃!』
『ぐぅ!? あぁあああああ!』
『ぬぅ!?』
真上から振り下ろされた爪が俺たちに襲い掛かったが爪で受け止めたがとんでもないパワーで押し込まれる。そして俺たちの横から失った片腕から発生した魔素の先に展開された魔素刃が展開されていた。ここでクロム・クルアハをぶっ飛ばせなかったら、俺たちの負けだ。なので俺はまだ空いている腕を振り抜き、クロム・クルアハをぶっ飛ばした。
しかしクロム・クルアハの攻撃は止まらない。
『核撃! 核撃!』
『星核! 星核!』
空中で連続の核撃と星核がぶつかり大爆発が発生する。
『魔素刃!』
『星光刃!』
クロム・クルアハは地面に着地するとすぐさま蹴るとその爆発を貫くように失った腕から巨大な魔素刃を展開して俺たちに真っ直ぐ魔素刃だけで伸ばして来た。これに対して俺たちも同じ規模の星光刃を展開する。
このぶつかり合いはお互いに刃が砕けるという結果に終わったがお互いは既に拳を握っている。
『『星震!』』
お互いの星震が激突してお互いに吹っ飛ぶとクロム・クルアハは不満を口にする。
『楽しいが気に入らんな。まだそんなものではないだろう! もっと本気を見せてみろ! さもなくば死ぬぞ! 闘気解放!』
クロム・クルアハからとんでもない闘気が放たれて、闇のドラゴニックマウンテンが震える。状態で言っているようには聞こえないな。本来ならここは切り札を使う所だろう。しかしこの後に控えている戦闘の事を考えると容易には使えない。
『…にぃ?』
『二人共、賭けに出ていいか?』
『よいぞ』
『…ん』
即答ですよ。少しは止めてほしい。
『…悪い賭けなら止めるけど、ここでにぃが覚悟を決めた賭けならノワは従う』
『そういうことじゃな』
本当に二人はいい奥さんになると思うよ。料理は苦手だけど。
『…一言余計。…それにノワは一応料理している』
『ぬ…妾は…そうじゃ! 適材適所というやつじゃ!』
どこかで聞いたことばを適当に使ったな。まぁ、いいや。覚悟は決まった。俺たちは拳を握りしめた。
『…ドラゴンフォース!』
『お主たちの力をくれ!』
「ガウ!」
「ギー!」
『ブラッティブースト!』
俺たちはドラゴンフォースを発動されると戦闘を見ていた優牙と叢雲が自分たちの身体を傷付けて俺たちに血を提供してくれた。そしてブラッティブーストが発動する。しかし当然切り札を温存した俺たちの態度にクロム・クルアハは怒りを露わにする。
『それが答えか…いいだろう! その選択をしたことを後悔するがいい! ドラゴンフォース!』
クロム・クルアハがとんでもない速度で突っ込んで来た。俺たちは遠距離攻撃を放つがクロム・クルアハは闘気装甲も加わり、ダメージを最小限に抑えた特攻だ。そして片腕の拳に黒いドラゴンが宿る。
『神技! 死滅黒龍拳!』
『変身!』
俺たちの胸にクロム・クルアハの拳が貫いた。
『終わりだ』
『いいや。俺たちの勝ちだ』
『ッ!?』
返事を返した俺にクロム・クルアハは驚愕しているとクロム・クルアハは左右からドラゴンの首が噛みついた。そのドラゴンをクロム・クルアハはよく知っていた。何せ自分と同時で闇のドラゴンで神の領域に到達したドラゴンだからだ。
『アジ・ダハーカ!』
『魔神波動!』
アジ・ダハーカとなった俺たちは噛みついて拘束したクロム・クルアハを吹き飛ばした。しかしクロム・クルアハは一回転すると地面に着地して歓喜の声を挙げる。
『はー! はっはっは! 考えたものだな! 人間! まさかアジ・ダハーカに変身するとは思っていなかったぞ!』
アジ・ダハーカはこのゲームの設定ではこの星に生きている生命では殺せないことになっている。それに対して確殺スキルは確実にスキルが当たった者を倒すスキルだ。どちらが優先されるかの賭けだったけど、流石にアジ・ダハーカの設定のほうが有利に動くことになった。
一応ちょっとした確信はあったんだけどね。話した通り確殺スキルは各神話の冥府神が所持しているスキルだ。これでアジ・ダハーカを殺せたら、各神話の冥府神全員がアジ・ダハーカを殺せることになってしまう。流石にそんな設定にはしないだろうという判断だ。
『まさかこんな形でアジ・ダハーカと戦うことになるとはな!』
クロム・クルアハが俺たちに襲い掛かってくると俺たちはノーガードで攻撃を受けるとカウンターを決める。完全に形勢逆転した。クロム・クルアハではアジ・ダハーカは殺せないことがもう確定している。それなら不死身の力を存分に使えば俺たちの勝ちは揺るがないものとなる。
『ははは! あはははは!』
クロム・クルアハもそれに気が付いているはずだが、攻撃を止めるような行動は見られない。寧ろがんがん攻めて来る。俺たちに接近しては俺たちの首を拳で吹き飛ばしたり、身体を貫いたりを繰り返すとドラゴンテイルでぶっ飛ばしてきた。
『冥府鎖!』
俺たちが冥府鎖に拘束されると星座魔法のゾディアックの発動に入る。しかし俺たちを拘束していた冥府鎖はノワとセフォネが操作している首に噛み千切られてると魔方陣が破壊される。
『無駄だ。ドラゴンの魔法使いの中でアジ・ダハーカが頂点に君臨していることはお前も知っているんじゃないのか? 流星群!』
『あぁ! 知ってるとも! しかしどれだけ姿を真似てもお前たちはアジ・ダハーカではない! お前たちはお前たちだ。ならば勝負に出るのは当然! 我こそはドラゴンの戦神なり! 無限に戦い続けるのみよ!』
『…確かに俺たちは俺たちだな。それなら勝つ可能性は確かにあるだろう。それでも俺たちがこの勝負に勝つ!』
『いいや! 勝つのは我だ!』
これこそ勝負の世界。どんな状況でも勝負から逃げ出すことは許されない。逃げ出したその瞬間に負けは確定するからだ。
俺たちとクロム・クルアハは全力バトルが続く。クロム・クルアハの強さは俺たちの想像を遥かに超えていた。俺たちは禁呪の発動に入ると当然クロム・クルアハは魔法破壊で魔方陣を破壊して来たがこれはアジ・ダハーカが持つ魔術再生で破壊されても詠唱状態で魔方陣を復活することが出来た。
こうなるとクロム・クルアハはひたすら攻撃して来たが俺たちは詠唱を続けて禁呪が発動する。
『『『禁呪! アブソリュート・ゼロ!』』』
世界が絶対零度で凍り付く。本来なら一撃必殺級の大技だが、凍りついたクロム・クルアハの目が赤く輝くと世界が震える。
『全気放射!』
クロム・クルアハが宿している気が一気に全身から放射されると氷を全て破壊してしまった。それだけ圧倒的な気を複数持っているということだ。そして絶対零度というのは世界からあらゆるエネルギーが吸収されたことでエネルギーが無い状態になる。逆にいうと絶対零度の世界にエネルギーが発生すると絶対零度は破られる。
その後も俺たちは殺されながらも禁呪を連続使用したがその全てで力で破られる結果となった。風魔法の禁呪デスストームはクロム・クルアハの咆哮だけで吹き飛ばされてしまったし、グラビティコプラスは重力支配で重力を自分の手に集めてコントロールすると集束した重力球を投げつけられてしまった。
神聖魔法の禁呪であるハルマゲドンとテンペストが流石にダメージを受けたがそれでも攻撃を受けながらひたすら攻撃を続けて来た。その顔は歓喜を浮かべていた。それを見た俺は一体どれだけの間、遊び相手がいなかったんだろうという疑問が出て来た。
俺がそんなことを思っているとクロム・クルアハはクロウ・クルワッハに戻ってしまう。それでもクロウ・クルワッハは俺たちに真っ向勝負をして来た。
激しい戦闘で俺たちは何度も致命傷を負いながら蘇生し続けてクロウ・クルワッハにダメージを与え続けて遂にクロウ・クルワッハの顔面にドラゴンクローが決まるとクロウ・クルワッハは地面に膝をついた。そして光に包まれる。その顔には充実感が浮かんでいた。
『よくぞ我と戦い続けて勝利した。実に面白い戦いだった。クロウ・クルワッハがお前を強者だと認めよう。誇るがいい。しかしお前たちの本気の姿を見れなかったのは無念だな…まぁ、最初にそれを味わうのは我らが王に譲るとしよう』
そういうクロウ・クルワッハだが、ここで良い事を思いついたような顔すると俺たちに不敵な笑みを浮かべて、言って来る。
『そういえばお前たちは我の住処を知っているんだったな。ならばこの試練を見事に乗り越えたら、我の住処に来い。その時は全力のお前たちと戦わせて貰おう。はーはっはっは!』
そういうとクロウ・クルワッハは消滅した。
『…そんなことを言われたら、絶対住処にはいかない』
『そうだよな…流石にクロウ・クルワッハともう一回戦うのは俺は嫌だ。結局何回死んだ? どれだけ化け物なんだよ』
『妾も二人の意見に賛成じゃ』
俺たちはクロウ・クルワッハの化け物さにげんなりしていると竜化とマリッジバーストを解除して休憩していると徐々にクロウ・クルワッハに勝利した実感が出て来た。月輝夜はリタイアしてしまったけど、月輝夜が頑張りがあってこその勝利だったと思う。
流石に片腕と片翼の喪失はかなり大きそうに見えたからな。折角のラッシュ技も片腕だと威力半減だった。翼は純粋にクロウ・クルワッハの機動力に影響が出ていた。それでもクロウ・クルワッハは空中を蹴るなどしてカバーしていたけど、翼があったらもっと苦戦していたはずだ。
「月輝夜のためにも邪冥龍王様に勝たないとな」
「…にぃ。そのことなんだけど」
「血醒と超覚醒を使うのが怖いんだろう? 今のノワなら大丈夫さ。俺たちも一緒にいるしな」
「…ん。ありがと。にぃ」
ノワの覚悟も決まったみたいだ。この切り札の発動が邪冥龍王ディサピアードラゴンとの勝敗を分けるのは間違いない。
「さぁて! 泣いても笑ってもこれがドラゴニックマウンテンでの最後の戦いだ。手加減なんて出来る相手じゃない。全力でぶつかって勝つぞ!」
「「おぉー!」」
俺たちは気合いを入れると最後の山登りを始めるのだった。




