#1428 優牙VSジャガーノートドラゴン
最初に仕掛けたのはジャガーノートドラゴンだった。姿が消えると闇転移で優牙の真上から襲い掛かって来た。下は足があるから四足歩行の動物の一番隙が生じやすいのはやはり上ということになるだろう。ただジャガーノートドラゴンの爪は優牙の尻尾でガードされる。
そして優牙は毛針を放つとそれを察したジャガーノートドラゴンが闇転移で逃げると現れたところに優牙が襲い掛かったがその攻撃はジャガーノートドラゴンに止められて、弾き飛ばされるとお互いの姿が消えて空が再び爆心と氷爆の爆発に包まれる。
二匹が激しくぶつかっている中、ボロボロ状態のセフォネが帰って来た。
「こ…この…感じ…本当に…久々なの…じゃ…」
そういうとセフォネは倒れた。まぁ、本当に強くなってからこういうのは無くなったなからな。セフォネもまさかここまで強くなってから一方的に殺されまくる日が来るとは思っていなかっただろう。何せ俺が思っていなかったな。
「…にぃ、セフォネが死んじゃった」
「死んでおらんわ! 一体どれだけ殺されたと思っておるんじゃ!」
「…数え切れないくらい?」
ほぼワンパンだったからな。耐久値が怖いからわざわざ初期装備で挑んだからしょうがない。殺される前に変身マントを格納でしまったのは流石というしかない。なんだかんだで専用装備を大切にしているセフォネは微笑ましいね。
「それで戦闘はどうなっておるのじゃ?」
「今はお互いに実力の探り合いって感じみたいだな。そろそろ準備運動も終わる頃合いだろう。動くぞ」
俺がそういうとみんなが空を見る。みんな、俺が言うまでもなくこの一戦に注目する。この場にいる誰もが認めている。この一戦はこの世界でもトップクラスの対決になると。そして両者が遂に動く。
「グゥウウ…ガァ!」
「ギャオオオ!」
両者の爪が激突して両者の距離が開くと優牙が口に重力球を作り出し、ジャガーノートドラゴンは右手に核撃、左手に黒星を作り出してお互いに投げつけ、空で大爆発が発生する。
その大爆発を斬り裂くように血の刃が飛んで来ると優牙は身体を金剛装甲で防御すると真上に現れたジャガーノートドラゴンのドラゴンクローが優牙に決まるが優牙はびくともしなかった。そう思っていると本命の右手の覇撃が優牙の首にヒットして優牙はぶっ飛ばされた。
だが、ジャガーノートドラゴンの左手が無くなっていた。ぶっ飛ばされる直前に左手に優牙は噛みついていたのだ。ジャガーノートドラゴンは攻撃と速度特化のタイプだ。それ故に防御力は高くはなかった。
この結果を見たジャガーノートドラゴンは笑みを浮かべる。
「ギャオオオ!」
ジャガーノートドラゴンの左手から魔素が発生するとそれが伸びて優牙を捕まえると力任せて地面に叩きつけた。そしてドラゴンブレスが放たれるがこれを優牙は反射装甲で跳ね返した。これを受けてジャガーノートドラゴンは姿を消して攻撃を躱した。
そして今度は優牙の横から攻撃しようとしたが地面から隆起した巨大な氷が生えて来て、ジャガーノートドラゴンはそれを片腕で止めたが上に打ち上げる形となった。
「ワオーン!」
ここで優牙の天変地異が発動する。巨大な氷の竜巻がジャガーノートドラゴンに襲い掛かる。
「ギャオオオオオ!」
これに対してジャガーノートドラゴンはドラゴンノヴァで巨大竜巻を吹き飛ばしてしまった。そして失った左腕から魔素刃を展開して優牙に襲い掛かる。優牙も迎え撃つ形となるがジャガーノートドラゴンは腕の攻撃をフェイントにして優牙の顎を蹴り上げるとゼロ距離からドラゴンブレスと核撃をぶつけていた。
流石に防御が間に合わず、優牙はぶっ飛ばされる。しかしそんな状況で優牙は拡散光線の冷凍光線をジャガーノートドラゴンに放った。これをジャガーノートドラゴンは魔力切断で対処すると次の瞬間、優牙が突撃して来て、右腕が噛み千切られる。
しかしそれに動じることなくジャガーノートドラゴンはすぐさま優牙との距離を詰めるとこちらを向こうとした優牙の顔に蹴りを入れるとすぐさま上に回り込み、優牙を地面に落ち潰すとそれを何度も繰り返す。
だが、四回目で隆起した氷が襲い掛かって来て、動きが止まったが隆起した氷は両手の刃で切断すると両手の剣から覇撃を使って来た。これを見た優牙は避けると思いきや突撃していくと両手の剣が交差した所を狙い、噛みつくとそのまま噛み砕き、優牙の爪がジャガーノートドラゴンの届くと思いきや肘から生えた鮮血刃で優牙の爪を受けると弾いた瞬間、ジャガーノートドラゴンの胸にとんでもない力が集まると全てを破壊する破壊光線が胸から放たれ、優牙は装甲が剥がされて、ぶっ飛んでしまった。
「シュー…シュー…ギャオオオオオ!」
ジャガーノートドラゴンが息を整えて両腕の刃を復活されて、襲い掛かるのを俺は確信する。
「この勝負、優牙の勝ちだな」
「何!? 妾には押されておるように見えるが?」
「確かにそうだな…でもこの戦いを支配しているのは優牙のほうだ」
ジャガーノートドラゴンのほうは先程の攻防で命の危険を感じたためか息が上がっている。対する優牙からはまだ余裕が見えた。
俺はそうは言ったがここからまだ戦闘は激化していく。ぶっ飛ばされた優牙にジャガーノートドラゴンが右腕の剣を巨大化されて襲い掛かったが次の瞬間、次元転移で姿が消えると次元の狭間にいる優牙に対してジャガーノートドラゴンは次元震でぶっ飛ばして来た。
恐らく戦闘の勘だけで優牙に攻撃を当てたな。本当に底知れない奴だ。対する優牙は吹っ飛ばされながら黒星を連射して攻撃がしたがジャガーノートドラゴンはこれをなんと手で弾いて見せた。恐らく物質化を使用して尚且つ筋力があるからこそ出来た荒業だ。
そしてジャガーノートドラゴンは優牙に接近して襲い掛かろうとしたが優牙はここで新スキルである回転激突を使用とすると優牙はその場で回転してジャガーノートドラゴンの爪を弾くとそのまま突撃した。そして優牙の体から氷雪刃が生えて、ジャガーノートドラゴンの身体中が貫かれる。
その結果を受けて、ジャガーノートドラゴンは距離を取るが体は凍っていく。それを見た優牙は氷牢を発動されて、完全に氷結されたがジャガーノートドラゴンは衝撃放射で氷を全て破壊して脱出に成功した。
今度のジャガーノートドラゴンは両手に核撃を作り出して優牙にぶつけるとお互い大爆発に巻き込まれる形となり、そのままジャガーノートドラゴンは近接戦に挑もうとしたが優牙の身体から氷雪刃が生えて、攻撃が止められると地面から隆起した氷が襲い掛かり、これを後ろに下がって回避した。
その結果、ジャガーノートドラゴンは真上から雪崩が落ちて来たが呑み込まれても雪を衝撃放射で吹き飛ばすと息を吸い込み、優牙の息を吸い込んでいる。そして獄炎と極寒ブレスが激突して爆ぜるとお互いに距離を詰め、爪が激突した瞬間にお互いの雷が激しくぶつかり合い、爪と尻尾で激しい接近戦の応酬となると優牙が噛みつこうとしたのを見て、お互いに距離が開く。
「シュー…シュー…ギャオオオオオ!」
ジャガーノートドラゴンはドラゴンフォースを発動されると更にドラゴンウイングを発動されて、背中に魔力で作られた漆黒の翼を展開した。
「ワオーン!」
対する優牙も魔素解放を使用としてとんでもない魔素が解放される。間違いなくここで勝負が決するな。両者が獰猛な笑みを浮かべるとお互いに襲い掛かる構えを取り、同時に動くと空中でぶつかり、今までよりも更に速く、更に力が増した激しい近接のぶつかり合いとなる。
繰り返される接近戦でジャガーノートドラゴンは優牙の氷雪刃を次々破壊して遂に全てを破壊すると氷で優牙の氷柱と毛針を全身に受けるが代わりに優牙の全身を斬り刻むことに成功する。
しかし優牙を斬り刻まれた状態で手を振りかざすとジャガーノートドラゴンに爪の一撃を放つ。これをジャガーノートドラゴンは右腕の剣で止めようとしたが耐えきれずに剣が折れるとジャガーノートドラゴンの身体を斜めに爪が斬り裂いた。
そしてジャガーノートドラゴンはぶっ飛ばされると自分の身体がまだあることを認識するがかなりの致命傷を受けたことを理解する。優牙も手ごたえを感じたので、止めを狙い接近して来る。
それを見たジャガーノートドラゴンは息を吸い込む、胸に魔力を集める。そしてドラゴンブレスと破壊光線を同時に放ってきた。これに対して優牙は口を開いて餓狼と暴食、粒子分解を発動されて突撃する。
優牙の口に吸収されるドラゴンブレスと破壊光線だったが全てを一気に吸収するには本人のとんでもない突撃速度と相まって不可能となり、優牙の口の中で爆発が発生した。しかし優牙は攻撃を受けてもお構いなしに突撃するとジャガーノートドラゴンを横向きに噛みついた。
「グゥウウ…ガウ!?」
「グギギ! ギャオオオオオオ!」
勝利を確信した優牙だったがジャガーノートドラゴンは魔素の手、両手の剣で優牙の牙を止めており、更には触手の鮮血刃で優牙の口の中を貫いており、吸血スキルを発動されていた。そしてその状態で黒雷と火山雷を発動されて、更にはドラゴンノヴァまで発動されようとする。なんという戦闘本能だろうか。
「グゥウウウウ! ガァアアアアア!」
「ギャオオオオオ!」
そして決着の時だ。ジャガーノートドラゴンのドラゴンノヴァが発動した瞬間に優牙はジャガーノートドラゴンを噛み砕いた。今までの戦闘が嘘のように静寂が支配すると勝者が勝鬨を挙げる。
「…ワオーン!」
勝者は俺の予想通り優牙だった。ただその優牙もかなりのダメージを受けている。ここまで優牙を追い詰めれる存在は早々いないだろう。本人もそれを理解しているのか勝鬨を挙げるまで消えゆくジャガーノートドラゴンを見つめていた。俺にはその様子がいい勝負だったと言っているように見えたよ。
そして元の状態に戻り戻って来た優牙に最初に声を掛けたのかノワだった。
「…ありがと。優牙」
「ガウ!? ガウ」
素直なノワのお礼が意外だったのか驚いた様子を見せた優牙だったが誇らしげに返事を返すとセフォネがちょっかいを出す。
「む? なんじゃ? ノワ? 照れておるのか? 可愛い所があるではないか。そうじゃ! 妾にも礼を言うといいぞ!」
「…セフォネには絶対に言わない」
「なんでじゃ!? あんなに死んだんじゃぞ!」
ノワをからかったからだよ。まぁ、セフォネには頑張ったご褒美に俺の血を挙げました。こうでもしないとあんな損な役回りをセフォネはしてくれないからね。これはしょうがない。
俺たちは闇のドラゴニュートの村に戻ると結果報告をして、みんなが笑顔に包まれた。
「良かったな。ノワ」
「…ん。にぃと優牙のおかげ。ご褒美にキスしてあげる」
「妾はいらんぞ」
「…絶対にしないから安心して」
そんなやり取りをしているといよいよ報酬タイムだ。闇のドラゴニュートの武器はやはり魔剣などが中心となっている。ノワと言えば鎌だが、俺のことを考えて魔剣を選んでも不思議ではない。そう思っているとノワが選んだ武器は意外な物だった。
影魔竜人族の魔導書:レア度10 専用装備 品質S+
重さ:10 耐久値:100 魔力:100
効果:闇のドラゴニュート全ステータス+50、影創造、無詠唱、複合詠唱、闇属性魔法効果アップ(究)、ドラゴニュートの魔力アップ(究)、魔力吸収、魔力超回復、恐怖の魔眼、暗転、死滅光線、冥波動、暗黒渦、影死針、闇転移、魔竜解放、邪冥龍王の加護
魔竜の紋章が本の表紙になっている闇のドラゴニュート専用の魔導書。表紙を敵が見ると恐怖状態にして、予期せぬ方向から相手を攻撃したり、相手を捕まえることに特化している。魔竜解放を使用すると特殊な影の竜魔法が解放される竜魔法に特化した専用装備。
まさかの魔竜解放で竜魔法が解放される魔導書を選んだのだった。一応確認する。
「いいのか? 自分が覚えている竜魔法の可能性もあるし、これから覚える可能性もあるんだぞ?」
「…ノワは魔竜じゃないから魔竜の竜魔法は使えないからたぶん大丈夫」
俺にはいまいち理解出来ないがノワの中で確信めいたことがあるならそれでいいか。本人が欲しい物を手に入れるのが一番いいしな。そんなわけでこれをゲットすると俺たちは村で休まれて貰えることになった。
食材は流石に可哀想なので俺から村人たちの分を少しだけ出すとお礼に薬草入りの水風呂に入れて貰える。冬の時期に水風呂は流石にどうかと思うが薬草には臭い消しの効果があったので、俺たちは入る一択だった。勧められたということは臭いということだからな。
因みに混浴ではありませんでした。そこらへんのガードはノワより高かったよ。これで俺たちは精神的には全回復出来た。そして村を後にする時が来た。
「ここより上は邪冥龍王様に挑む資格が本当に乗るのか実力が試される領域じゃ。厳しい戦いが待っておるはずじゃが、あの魔竜を倒してくれたお主たちが邪冥龍王様に挑めることを村人全員で祈っておるよ」
「ありがとうございます。それじゃあ、みんな行こうか」
俺たちが村を後にすると村人が村長に聞く。
「村長。あの子、無限の力を持っていませんでしたか? もしかしてあの子の力は」
「わしらには関係がない話じゃよ。ただ一つだけ言えることはあの子がどんな存在か決めるのはあの子自身と仲間である彼らじゃということじゃ。わしらは見守ろうではないか。無限のドラゴンが善となる日が来るかどうかをな」
そういうと俺たちを見守り、見えなくなると彼らは自分たちの生活を元の状態に戻す為に動き始めるのだった。




