#1424 同族から最も嫌われている邪竜
俺たちの目の前に現れたのはどす黒い鱗に両肩と角に赤褐色の巨大な水晶がある四足歩行のドラゴンだった。羽はボロボロで身体がしっかりしているので、どちらかというと地面や血の池から現れた所を見ると水中戦が得意な邪竜みたいだな。識別してみる。
死臭邪竜デススメールドラゴンLv78
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
この姿で死臭を名乗ることに違和感を感じてしまう。結構ガチの戦闘タイプに見えたからだ。するとここでこの山では初めてドラゴンの声を聞くことになった。
『女のドラゴン! おいらと結婚してくれ!』
みんなが一斉にノワを見る。
「…ノワのことじゃない。きっと叢雲のこと」
「叢雲はメスだったのか?」
「ギーギー!」
叢雲は必死に首を振った。どうやらオスらしい。ということはこいつはノワに結婚してほしいと言ったことになる。死にたいのかな?俺の怒りのゲージが上がっているとノワがきっぱり言う。
「…はぁ。ノワはにぃと結婚しているから無理」
『な!? お、お前もおいらのことが臭いから付き会えてないって言うのか!』
「…にぃ。このドラゴン、人の話を聞かない」
「そうらしいな」
誰もそんなことは一言も言ってはいない。恐らく今までそういうことを言われて振られて来た影響が出ているんだろう。するとこのドラゴンの暴走は止まらない。
『殺す…おいらを臭いといった奴らは男も女も全員殺す! お前たちもおいらが作ったこの沼地に沈めてやる!』
この血の沼地はこいつが作ったらしい。しかも自分が求婚してフラれたドラゴンや自分と出会って臭いと言ったドラゴンたちを殺して作られたという設定っぽいな。人間にも勘違いや思い込みで暴走するタイプの人はいる。
こいつはそういうタイプのドラゴンらしい。戦闘や殺戮を楽しむ邪竜ではなく、邪な心に支配されて殺戮を行う邪悪なドラゴン。それが死臭邪竜デススメールドラゴンの本質だった。
一体どれだけのドラゴンを殺したらこんな血の池が出来るのか想像できない。確かなことはこいつは相当な数のドラゴンを殺したという事だな。
「なるほど。確かにこいつは邪竜だろうな」
「それは間違いないじゃろうな。力試しならまだ良いが恨みで同族殺しをするなど最低じゃ」
あれ?セフォネの言葉が結構俺にも刺さったぞ。怒りのままにプレイヤーキルしたことがあるせいかな?そう思っているとノワが言う。
「…にぃは邪竜の素質ある。ノワと相性ピッタリ」
「ノワはそれが言いたいだけじゃろうが」
『おいらを無視していちゃついているんじゃない! 出血毒!』
両肩の水晶から大量の出血毒が俺たちに向かって放たれた。これを俺たちは回避してお返しにノワと叢雲がドラゴンブレスで返す。
『血流壁! 凝固!』
血の池から血が壁となるとその血が固まり、固体化するとドラゴンブレスがぶち当たり壊れるが攻撃はデススメールドラゴンには届いていない。
「血の池が厄介だな。優牙。凍らせてくれ」
「ガ…ガウ! ワオーン!」
優牙は本当に臭いがきつそうだ。そんな状況でも優牙が氷獄を発動される。すると見事に血の池とデススメールドラゴンは凍ったがそれで終わるような相手ではない。氷獄を発動されるために血の池に接近した優牙が氷を割って飛び出して来た無数の血の手に襲われる。
これに対して優牙は判断が早く空間転移で離脱した。よほどあの池には入りたくないらしい。そう思っているとデススメールドラゴンの角が赤く発光するとデススメールドラゴンの氷と血の池の氷が溶けてしまう。
恐らく液体の温度を高熱に上げる沸騰スキル。これは火属性や水属性の敵が所有することが知られている。本来は高温にした液体を相手にぶつけて火傷の状態異常にする使われ方がされているが氷を溶かす事においては一番効果的なスキルかもしれない。
「血を操る敵に負けるわけにはいかないのじゃ! いでよ! 血竜!」
血竜が血の池から現れるとデススメールドラゴンに噛みつこうとしたが腕の一振りで消し飛ばされるとデススメールドラゴンは息を吸い込む。
『悪臭ブレス!』
黄色い気体のブレスが俺たちが向かって放たれた。見た目がアニメとかで描かれるおならなんだよな。最低です。
「ギー!」
叢雲が暴旋風で吹き飛ばすとそのまま無数の竜巻がデススメールドラゴンに襲い掛かる。これをデススメールドラゴンは腕を防御に構えて受け止める判断をした。そちらがそう来るならこちらは遠距離攻撃で畳みかける。
『死臭弾! 多連射!』
死臭弾が使用されるが問題はその場所だ。なんと背中にある藤壺が無数に発射された。攻撃に集中していて、防御しながらの反撃を予期していなかった俺たちは逃げ遅れて、死臭弾を受けてしまう。
「「「臭~い!? ッ!?」」」
『臭いっておいらのことかー! 覇撃!』
臭いの臭さで鼻を押さえたことで攻撃のアクションが取れず、デススメールドラゴンの覇撃を俺たちは受けて吹っ飛ばされる。
俺は血の池にある枯れ木に着地してノワとセフォネを捕まえて、落下を阻止した。優牙と叢雲は自力で踏ん張り生えたがまだデススメールドラゴンの攻撃は続く。セフォネと同じ血竜が血の池が現れると俺たちに襲い掛かって来て、俺は跳躍して空に逃げる。
「うぅ…もう嫌じゃ~…」
「…激しく同意」
「でも、こいつを倒さないとノワの故郷にも邪冥龍王にも挑めない。嫌でもこいつを倒さないとな」
「そ…そうじゃな。そもそも妾はそのためにここにおるんじゃった」
セフォネがそういうとやる気を取り戻し、そのセフォネの様子を見たノワは溜息を吐きながら目付きが変わる。ノワからすると恐らく故郷のことは重要視していない。ノワはそういうタイプじゃないからな。ただ自分のために頑張ろうとするセフォネの様子を見て、やる気を出さないノワではない。
ただここで優牙に異変が発生する。優牙がふらつく。
「優牙!?」
「ガ…ガウ…」
優牙は相当辛そうだ。というか今にも意識が飛びそうな状況に見える。これは早めに勝負を決めないとやばい。幸いダメージは与えている。仕掛けるなら今だな。そして改めて認識しよう。こいつは強い。
『優牙。辛い事は承知で頼む。もう一度血の池を凍らせてくれ。そこで勝負を仕掛ける』
「ガ…ガウ! ワオーン!」
優牙が血の池に接近すると氷獄を発動される。するとここで優牙が倒れ込んでしまった。当然ここで氷の地面をまた突き破って血の手が優牙に襲い掛かる。
「させぬ! 血流支配! ぬぅうう! 叢雲! 優牙を頼むのじゃ!」
「ギー!」
セフォネが血の手の動きを抑えている間に叢雲が助けに入った。そして次はノワが仕掛ける。
『おいらの嫁!』
「召喚! 来い! 月輝夜!」
「グォオオオオオ!」
月輝夜が氷の地面に着地する。しかし氷の地面だと月輝夜は動きづらそうだが、優牙が意識を失っている状況を伝えると月輝夜は叢雲が捕まえている優牙を見ると怒りの目をデススメールドラゴンに向けて、酒呑童子の金砕棒を構える。
「行くぞ。月輝夜! シフトチェンジ!」
ノワと月輝夜の位置が入れ替わる。
『誰だ!? お前!?』
「グォオオオオオ!」
『ぐえ!?』
月輝夜の酒呑童子の金砕棒によるオーバークラッシュがデススメールドラゴンの顔面に炸裂した。そして
月輝夜はそのまま連続で殴り続ける。すると氷の地面を破って血の手が現れると月輝夜は魔素解放を使用して魔素の手で血の手を受け止めた。
『調子に乗るな! 悪臭!』
今度は身体中から黄色い気体が発生する。接近戦をしている月輝夜は逃げる手段はない。というか月輝夜は逃げるつもりが無かった。
『ぐへへ~。これでおいらに手出しは出来ないだ…ろ?』
デススメールドラゴンの目に逆鱗状態の月輝夜の姿が見えると血の手は月輝夜の魔素の手に握り潰されてしまう。そしてデススメールドラゴンは酒呑童子の金砕棒で殴られまくる。
『な、なんで!? お前、臭くないのか!?』
「グォオオオオオ!」
月輝夜が叫ぶ。臭いに決まっているが怒りでそれどころではないと叫んでいるようだ。デススメールドラゴンにとっては恐らく臭いを放って殴り合って来る敵には出会ったことが無いな。四足歩行で空も止めないとなると逃げ道がない。
『ち、ちくしょー! ドラゴンテイル!』
デススメールドラゴンはドラゴンテイルで氷の地面を割る。水中に逃げるつもりだが、月輝夜がデススメールドラゴンの頭を片手で捕まえる。そして魔素の手が拳を握り、必殺技の体勢になる。
『や、やめて』
「グォオオオオオ!」
オーガラッシュでボコボコに殴られて、片手のデモンクラッシャーでぶっ飛ばす。
『お、終わった…へ?』
助かったと思ったデススメールドラゴンだが、伸びた魔素の手がデススメールドラゴンを掴んでいた。そして引き戻されると月輝夜は氷の地面に足を踏み込み、捨て身の一撃を発動されると酒呑童子の金砕棒を構えて覇撃でぶっ飛ばした。
『も、もう許して…』
完全にデススメールドラゴンのメンタルが終わったが残念ながら俺たちの誰も許す気はなかった。ここだけみると一方的な暴力でいじめられた可哀想な奴だが、こいつはそれをされるだけのことをした。しかも本人はそれを自覚している。それなら許されないことぐらいは理解できるはずだ。
「…冥府鎖。許さない。竜魔法! ヴェンジフルドラゴンストリーム!」
「あれだけ嫌がらせをしたんじゃ。許されるわけないじゃろうが! 吸血鬼魔法! オリジンストリーム!」
「優牙を苦しめ、俺の目の前でノワを取ろうとしたんだ。お前がどれだけ罪深いかあの世で教えて貰うんだな。禁呪! ハイパーノヴァ!」
「ギー!」
俺たちの怒りの攻撃がデススメールドラゴンに炸裂すると大爆発し、消し飛ぶのだった。
「はぁ…厄介な敵だったな」
「…うん。慰めになるか分からないけど、仇は取った」
ノワは氷の地面を触ってそう言った。やっぱりノワは仲間思いだよね。俺がにやついているとそれに気が付いたノワは顔をそむけてしまう。そういうところも可愛い。ここで月輝夜が寄って来る。
「お疲れ様。月輝夜。月輝夜?」
「グォオオオオオン!?」
月輝夜は涙目で絶叫すると倒れてしまった。
「臭いの物凄く我慢していたんだな…」
「…月輝夜。あなたのことは忘れない」
「うむ…お主は英雄じゃった…」
「いや、死んでないからな? 月輝夜も優牙も」
俺がそういうと氷の地面が次々崩壊し出した。流石に暴れ過ぎた。
「急いでここから離れるぞ!」
「うむ! それは物凄く賛成じゃ!」
「…早く行く」
「戻れ! 月輝夜! 行こう!」
俺たちはこうして龍の血の池フィールドを突破に成功するのだった。




