#1394 怒れるグレイ対怒れる神竜
グレイが本気になったのを見ると空気が一層ピリピリし、グレイと力を解放した神竜が睨み合う。
「ギャオオオオオー!」
「ガァアアアアアー!」
二匹が叫ぶと空気が震えてるとお互いに姿が消えて、空で爪が激突する。そしてお互いの神雷が激しくぶつかり合うとここでグレイは地面、神竜は空に吹っ飛ぶ結果となった。グレイが魔狼神王の鉤爪を装備していなかったら、負けていたな。
「ギャオオオオオー!」
「ガァアアアアアー!」
お互いに叫ぶと天変地異が発動し、お互いの天変地異が激突する。これはグレイが押される結果となったがなんとか耐えると神竜が空からグレイに向かって踏みつぶそうと仕掛けて来た。これに対してグレイは神竜の足に噛みついて、放置投げる。
「ガァアアアー!」
そしてグレイから無数の毛針が放たれると神竜は態勢を整えると地面を蹴り、空に逃げる。グレイは追撃するが神竜が羽を羽ばたかせると暴風壁で毛針は弾き飛ばされる。そして暴風壁に隠れて、拡散光線が飛んできた。これに対してグレイは前に出ると暴食スキルを発動させて、暴風壁が口の中に吸い込むとそのまま神竜に噛みつこうとしたがこれは躱され、顔を蹴り飛ばされると神竜は息を吸い込む。
「ギャオオオオオーー!」
ドラゴンブレスが放たれ、グレイは回避したが放たれたドラゴンブレスが地面に直撃すると大爆発が発生した。あれがお月見イベントで数々のプレイヤーを消し飛ばしたドラゴンブレスか。確かに威力は通常のドラゴンブレスより遥かに高いがそれはスキルのレベル差と神竜に発生しているバフのせいだろうな。
ドラゴンブレスを回避したグレイは接近し、神竜はグレイが爪を構えている姿を見て、ドラゴンクローを構える。それを見たグレイは前足を引くと空を踏み込み、振るわれたドラゴンクローに対して身体をずらすとドラゴンクローは神鎧グレイリリコスアーマーに触れながら流されてしまう。これは上手い。
そしてグレイは神竜の胴体に噛みついた。口の大きさでは神竜よりグレイのほうが上だ。というかこのゲームのドラゴンって噛みつくのが結構苦手なんだよね。もちろん種類に寄るが基本的に身体全体から見るとドラゴンの顔って結構小さいのだ。だから自分と同じ大きさの敵に対して毒とか噛みついて投げ飛ばすなど噛みつくことで有効な場合でしか基本的に噛みつきは使わない。
「ギャオオオオオー!? ギャオ! ギャオ! グゥウウ…ギャオオオー!」
グレイが噛みついたことで神竜はグレイの顔を手で殴りつけたがグレイは離さず、噛みつき続けると神竜は力を溜めて、覇撃でグレイをぶっ飛ばすことで解放される。
しかしグレイは攻めてを緩めず、ここでゴッドブレスを放つと神竜は蜃気楼でこれを躱す。だが、それを読んでいたグレイが蜃気楼で逃げた神竜の背後に空間転移で現れると魔狼神王の鉤爪が振るわれる。
これに対して残像で神竜は回避したが次の瞬間、神竜の羽が魔狼神王の鉤爪によって斬り裂かれた。グレイも負けじと残像を使って神竜の動きに完全に合わせて見せたのだった。
片翼が無くなったことで神竜は墜落していく。その神竜の姿を見たグレイは仲間を呼び出し、追撃に出るが神竜は無数の自分の幻を作り出してグレイの追撃を阻止しようと企む。これを見たグレイは神霧を発生させる。
霧の中でグレイの仲間たちが次々幻を消す中、グレイは霧の中で見えない何かが動いているのを補足した。迷彩スキルで隠れることを完全にグレイは読んでいたな。
グレイはここで逆鱗を発動させると神竜に噛みつき、そのまま地面に叩きつけると神竜の身体が地面から生えた隆起した岩に貫かれると更に木々が生えて、神竜を縛り上げた。
「ギャオ~…ギャオオオオオー!」
この状況を打開する度に神竜はドラゴンノヴァを発動させる。これに対してグレイは噛みついたまま神竜を逃がさない。結果、グレイはドラゴンノヴァの直撃を受けてしまった。ドラゴンノヴァの爆発が無くなるとグレイは顔を上げて、魔狼神王の鉤爪で神龍の胸を貫くと神竜が光となって、消えて行く。
「ワオーン!」
グレイの勝利の雄叫びが響き渡る。それを見ていた俺たちは感想を言う。
「凄ーい! グレイ! 圧勝だよ! でも、なんか複雑…」
勝ちに喜んだリリーだったが急に気持ちが沈んでしまう。これはもうこの対決ではそういう気持ちになるのはしょうがないだろうな。
「神になったドラゴンが負けたからか?」
「うん…もちろんグレイの勝ちは嬉しいんだよ? タクト? 本当に嬉しい…あう」
混乱しているリリーの頭を撫でて落ち着かせる。
「分かっているよ。仲間と自分の同族や尊敬する人が戦うことになるってことはそういう気持ちになるってことだよ。リリーの気持ちはどちらも正しいから安心してくれ。そういう時はいい勝負をしていたとお互いを称えてあげればいいと思うよ」
「タクト…うん! そうする!」
いつもの元気なリリーに戻って良かった。それを見たブランが今度は感想を言う。
「それにしてもグレイの様子が変でしたね? なんというか物凄い殺気でした」
「ヒヒーン」
ブランの疑問にスピカは俺を角でつついて来る。それでみんなが察した。
「もしかして主様が倒されて、グレイさんも怒っていたってことですか?」
「そういうことみたいだな」
「グレイはリリーには負けるけど、タクトのことが大好きだからね!」
リリーの言葉にみんなが苦笑いを浮かべるとグレイが元に戻り、帰って来ると俺はグレイの頭を撫でる。
「俺の為に怒ってくれてありがとな。グレイ」
「ガウ~」
目を細めるグレイだが、撫で終わると様子が変だ。伏せをしてちょっと落ち込んでいる。そんなグレイの姿を見て、俺はグレイが心配していることに気が付いた。
「安心してくれ。グレイ。切り札だけがグレイの全てじゃないだろ? 通常の状態でもグレイは十分強いし、ここからは俺も武器を旭光近衛に変えるからさ。一緒にガンガン行こうぜ」
「ガウ!」
グレイが元気になって良かった。するとブランが聞いて来る。
「もうロンギヌスはいいんですか? 主?」
「あぁ。神竜の攻撃を二度受けて耐えてくれたし、攻撃の手ごたえも武器としての信頼も十分得れた。これならもう十分だろう」
「そうですか」
そういうブランは結構嬉しそうだ。みんなにそれを突かれると自分と深く関わったクエストで手に入った武器だから嬉しいらしい。完全なロンギヌスでは無しに不安もきっと合ったんだと思うな。それなのにロンギヌスのことを信用していなかったのはブランに結構ダメージを与えていたのかもしれない。ここで反省すべきところだな。
さて、なんとか神竜を倒せて、恐らくこのエリアの突破はほぼ確実とみて良さそうだ。次からいよいよ本格的な山登りが始まる。みんなを回復させてしっかり準備が完了してから攻略を再開することにしよう。




