#1393 怒りに震える神竜
天から現れたドラゴンは西洋タイプの白いドラゴンで俺たちというかお月見イベントに参加したプレイヤーと因縁があるドラゴンだった。
神竜Lv85
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
お月見イベントで登場し、数多くのプレイヤーを消し飛ばしたドラゴンだ。一応討伐に成功したパーティーがいたらしいがこのレベルのドラゴンを倒すのにどれだけ苦労したのか本当に分からなくなるな。
「ギャオオオオオーーー!」
神竜が叫ぶと大気が震えて、俺たち全員にビリビリした感覚が襲い掛かる。
「タクト! このドラゴン! とっても怒っているよ!」
「あぁ…しかもグレートネイチャードラゴンクラスのドラゴンだ! みんな! 気を引き締めろ!」
「主? そう言われても封印の状態異常になっているのですが…」
ブランがそういった瞬間だった。俺たち、全員仲良くとんでもないダメージを受けて吹っ飛ばされる。やばい…スキルが封印されているせいで神竜の速さについていくことも補足することも出来なかった。
しかも神竜は綺麗に俺たちを分断する形で吹っ飛ばした。わざわざこうしたということは狙いのは当然俺だ。
「ギャオオオオオ―――!」
「がは!?」
神竜の渾身の覇撃が俺に放たれ、ロンギヌスでガードしたがガードの上から攻撃が入り、地面が砕けると俺は倒されてしまった。しかし料理バフで付与した蘇生効果が残されていたことで蘇生を果たす。すると目の前に神竜が現れて、ドラゴンクローを使って来た。これは後ろに下がりながらロンギヌスで完全にガードが間に合ったが吹っ飛ばされた。
「ギャオオオオオー!」
そして俺に向かって、ドラゴンブレスが放たれた。これをなんとか飛行して回避する。蘇生したことで封印が解除されていなかったら、どれだけ死んでいるか分からないぞ。それだけ神竜の強さは圧倒的だ。
何より自分の死をトリガーに神竜に有利な状況を作り上げた白竜を褒めないといけないだろう。しかも霊化と光化を使って、大ダメージをリリーとブランに与えるだけ与えたという仕事人のような働きをした。
「ギャオオオオオー!」
その白竜の働きに答えるためか白竜の仇打ちが分からないが俺への攻撃が止まらない。大ピンチではあるがある意味ではチャンスでもある。俺はエンゼルファミーユを取り出すと神竜から逃げながらエンゼルファミーユを動かして、ブランにリフレッシュを発動させることでブランの封印を解除した。
後はブランがみんなの封印を同じ方法で解除すればとにかく戦える状況にはなる。その間、生命力がギリギリでガンガン攻めて来る神竜を相手にすることになった俺は溜まったものじゃない。
「ギャオオオオオー!」
「雷は俺には効かねーよ!」
神竜が叫ぶと空から神雷が降り注いで来たがこれは俺には通用しない。逆に俺の体に神雷が宿り、攻撃が強化されたが俺の攻撃に対して神竜は星光刃を両腕から発生させてロンギヌスの突きを払って来た。そしてもう一つの腕で俺に追撃してくるが斬撃を躱した俺は距離を取る。
攻撃のチャンスではあったが一撃食らうとゲームオーバーの状況では無理できない。
「ギャオオオオオー!」
「インパクトカウンター!」
そんな俺の様子が分かっているのか神竜は俺との距離を縮めて来たが回復もしっかりしたブランが突撃に対してカウンターで弾き返した。その瞬間にスピカとリースが超連携で突撃すると神竜を貫通したが次の瞬間、神竜の姿が歪む。
『蜃気楼だ! 逃げろ! リース! スピカ!』
「ッ! きゃあああー!?」
リースは俺の声に反応して、盾を構えたが真上に現れた神竜の覇撃を受けて耐えられず地面に激突する。
「やらせない! リリーが相手だよ!」
「ギャオオオオオー!」
リリーが突撃するが神竜はリリーの攻撃を受けると神撃がリースとスピカに落ちた。リリーの攻撃よりもリースとスピカに攻撃の追撃判断をした。
「リースちゃん! スピカ! あ」
「ガウ…」
神撃をグレイが受けてダメージを最小限に抑えていた。自分の鎧を信じていないと出来ない判断だ。
「流石グレイ! いっくよー!」
リリーが接近戦となっているので、大剣の連続攻撃が神竜に襲い掛かる。数発喰らった神竜が後ろに下がると腕を交差させる。防御の構えではない。何かするつもりのようだが、それを見て攻撃を止めるリリーではない。
「はぁあああー! ふぇ!?」
リリーが攻撃すると神竜の姿が幻となって消えると神竜の姿が四体に増えて、四体同時のドラゴンクローがリリーに炸裂して、地面に墜落する。一体に戻ると神竜は翼を広げて、リリーに神雨を降らせてきたがここで回復が終わった俺とブランによる神波動が神竜に放たれて、神竜は危険を感じて回避を選択した。
神竜が俺たちのほうを見るとリースとスピカ、グレイも回復をして合流している。これである程度振り出しに戻せた。ここからが本当の勝負だ。俺たちが神竜に挑み、リリーに回復の時間を与える。
ただ神竜の俺たちへの対応が凄かった。俺とグレイが突撃すると蜃気楼で躱すと現れた本体にリースとスピカが突撃すると残像でこれを回避し、カウンターでドラゴンテイルを決めるとそこにブランが突撃して来る。
これに対して爪でぶつかり合う。神竜は目から光線を放ち、ブランが躱したタイミングで蹴りでブランをぶっ飛ばした。そして俺とグレイが再び突撃すると光分身を使用して来た。これに対して俺たちは四体の神竜を倒したが全て分身で俺たちは迷彩スキルで透明になっていた神竜が現れると手に光球を作り出して俺たちに直接ぶつけてくると俺たちは大爆発とともに吹っ飛ばされる。
「主!? この!」
「追撃はさせません!」
「リリーが相手だよ!」
復活したリリーも戦闘に参加するが神竜は巧みに蜃気楼、残像、光分身、夢幻、迷彩スキルを使用して俺たちの接近戦に対してカウンターをして来た。これらのスキルを極めるとここまで厄介なのだと再認識してしまうな。
しかもただ躱すだけでなく攻める時はちゃんと攻めているし、畳みかけられるところは逃していない。本当に強いドラゴンだ。ただ流石にここまでいい様にあしらわれていると冷静になって来る。
『このドラゴン相手に突撃攻撃は厳しい。リリーは接近戦に集中してくれ。俺たちはリリーのフォローに回るぞ』
『しかし主』
『大丈夫だ。ブラン。やれるよな? リリー』
『う、うん! 任せて! タクト!』
今のところは神竜に上手くあしらわれていたがそろそろリリーのエンジンがかかって来る頃だと思ったので、リリーを信じてみる事にした。そしてここからリリーの反撃が始まる。
「はぁあああ! む! んぎぎ~! はぁ! えーい!」
リリーが攻撃したタイミングで残像で神竜は攻撃を躱してリリーにカウンターを決めようとしたがこれをリリーは止めると逆に弾いて反撃する。しかし今度は蜃気楼でリリーの攻撃が躱されると神竜のドラゴンクローが来たがこれもリリーは対応して見せた。
リリーは俺と接近戦が出来るほど、フェイントとかに強くなっている。何より神竜の巨体からの攻撃に対してリリーは反応出来ていた。それならリリーが簡単に接近戦で負ける事はない。流石に攻撃が重すぎて苦労はしているけどね。
ただリリーはここからが凄い。どんどん動きが良くなって、神竜がリリーの攻撃に対処出来なくなってきて、神竜にダメージを与えていく。神竜も驚いている事だろう。最初の時は大振り攻撃主体で突撃ばかりしていた子が急に深入りせずに神竜に対してフェイントまで使い出すものだから対処が遅れるのはしょうがないことだと思う。
しかし神竜もここにきてリリーの動きに対応し始めた。お互いに激しいぶつかり合うをする中、重い一撃をいつ当てるかの駆け引きが続く。
「凄い…リリーお姉様」
「集中力が上がったリリーお姉様は本当に凄いですよね? それまでに時間が掛かるのが難点ですが…やっぱり主の言葉が一番リリーお姉様には効くんでしょうか?」
「それは間違いではないかもしれないがどちらかというとリリーは多少攻撃を受けないとエンジンがかからないタイプと言った方が正しいだろうな」
故に弱い敵と戦っているとエンジンがかかりにくいのがリリーの弱点の一つと言える。
「このまま勝てるでしょうか?」
「無理だな…本人は自覚ないかも知れないが極限状態での戦闘は長続きする物じゃない。ダメージは受けなくとも確実にリリーは疲労し続けている状態だ。恐らく神竜はリリーの集中力が切れるタイミングを狙っている」
神竜の攻撃の重さと派手さに目が行きがちだが非常に冷静に戦っているように見える。まるでこのまま戦闘が続けば自分の勝ちが確定していると確信しているようだ。その予定をぶち壊すのが俺たちの役割で俺たちの動きを警戒しているから神竜は切り札を使っていない。
俺たちが仕掛けたタイミングがこの勝負での勝敗を大きく決めることになるだろう。故にこちらも作戦を考えないといけない。そこで俺はあることを提案した。
「え!? 五人同時の超連携ですか!?」
「槍主体の超連携だからたぶんいけるはずだ。他の人たちは出来る事を証明しているしな」
通常のプレイヤーだと結構超連携は重要なスキルとなっている。人数さえ揃えば簡単に火力が出せるスキルだからね。その分、隙が生じやすいのが欠点だが、装備している武器やスキルで技が変化するところが研究のし甲斐があって、楽しいところだ。
俺はみんなにリスクを説明した上で作戦を立てて、リリーの戦闘を見ながら仕掛けるタイミングを計る。
「はっ! 部位竜化! グランドサザンクロス!」
リリーが神竜のドラゴンクローを自分の尻尾を巨大化させて、リリーの尻尾が神竜の腕に巻き付くとドラゴンクローを止めた。そしてこのタイミングで至近距離でのグランドサザンクロスが放たれる。これを片腕でガードに動いたが流石に止めらない。
「「「超連携!」」」
俺とブラン、リース、スピカの四人で超連携が発動する。スピカに乗ったリースを中心に左右を俺とブランが隣り合う形で突撃すると一つの巨大な星光の槍となって、神竜に襲い掛かる。さぁ、俺たちの仕掛けが決まるかどうか勝負だ。
俺たちの超連携を見た神竜は直前で光化を使用して回避に成功する。そして超連携の俺たちに渾身の一撃の覇撃を使用して来た。
「ドラゴンダイブ! う!?」
リリーが神竜の動きに反応してドラゴンダイブで神竜を止めようとしたがここで神竜はリリーの突撃を片手で止めてしまった。その間に俺たちは超連携を止められずに通り抜けていく。そして神竜の狙いは捕まえたリリーだ。
「えへへ~。リリーたちの勝ちだよ」
リリーがそういうと神竜の横に空間歪曲が発生するとそこから超連携中の俺たちが現れて、神竜に超連携が炸裂する。通り抜けた俺たちに空間歪曲を使ってくれたのはグレイだ。俺はグレイにこの大役を任せて、超連携から外して四人の超連携に切り替えた。全ては超連携を確実に決めるためだ。
ただこの瞬間に神竜の謎のスキルを使用して身体が白く発光した。ただそれでも俺たちの超連携が炸裂する。俺たちの超連携は神竜の身体をぶち抜くほどの威力を誇っており、ここでグレイが仲間たちともにリリーの救出と追い打ちを担当した。
これで勝負ありだと思ったが神竜が光の粒子になると奇跡の効果で蘇生して来た。
「そんな…グレイさんには魔狼神王の鉤爪に付与されている不死殺しがあるはずなのにどうして」
「最後に使ったスキルのせいだろうな…武器無効が使えるとも思えないし…何かしらの不死殺しをすり抜けるスキルだろう」
神竜が使ったスキルの名前は保管。自分のスキルを一つだけあらゆる効果から無効化することで守ることがスキルだ。これで不死殺しから奇跡スキルを守ることに成功して、奇跡による蘇生を成し遂げた。
「ギャオオオオオー!」
ここで神竜は神威解放とドラゴンフォースを使用して来た。自分を一度殺した相手に手加減無しと言ったところだな。
「タクト!」
リリーはやる気をみせるがさっきの勝負でリリーの集中力が切れている。マリッジバーストを使えば問題はないがここで使うべきスキルじゃない。
「まだまだ序盤なんだけどな…流石にこのレベルのドラゴン相手に切り札は切らないと勝てないか…グレイ? 任せていいか?」
「ガウ!」
「そうか…なら遠慮はいらない! 勝ってこい! グレイ!」
「ワオーン!」
グレイが神格覚醒を使用して大口真神となる。ここに狼の神と竜の神が睨み合う形となるだった。




