#1391 白き竜の山
ご飯を食べ終えるとシルフィのティターニアがやって来た。
「シルフィがお城に来てほしいそうです」
「嫌とお伝えください」
「ちょっと待ってください…一生のお願いだそうですよ?」
「つまりいいお願いじゃないってことですね? というか絶対にベルゼブブ討伐に向かうみんなに激昂の言葉とかのお願いですよね?」
このタイミングでこんなお願いをしに来るということはもうこれしか考えられない。
「シルフィ? バレてますよ。力づくで連れて来いって…無理に決まっているじゃないですか。彼がどれだけ強くなっているか一番知っているのはシルフィでしょう? なんか駄々こね状態なので、早めにお出かけになったほうがいいと思います」
「それじゃあ、お言葉に甘えて光のドラゴニックマウンテンに行かせてもらいますね」
「光のドラゴニックマウンテンですか…いよいよ彼女の出陣ですか」
「そうだよ!」
さっきまで寒さに震えていたのに温かいご飯を食べたら、元気いっぱいやる気十分なリリーである。
「シルフィはお仕事で動けないので、代わりに私が頑張ってくださいとお伝えしておきますね?」
「ありがとう! 行ってきます!」
そんなわけでシルフィのお願いをすっとぼけて、俺たちは光のドラゴニックマウンテンに向かった。
俺たちが転移するとそこは真っ白の山が現れた。山が白く見えるのは雪ではなく、山の地面そのものが白いと言う神秘的な山だ。更にここでインフォが入り、この山の特徴が教えられた。
『光のドラゴニックマウンテンでは常に昼の状態となります』
「ほへ~…ここがリリーの故郷の山…」
「綺麗な場所で良かったな」
「うん! タクト! 早く行こう!」
「はいはい。それじゃあ、みんなを呼ぼうか」
俺が光のドラゴニックマウンテンの攻略に選んだメンバーはリリーとブラン、グレイ、スピカ、リースだ。光属性となるとやはりブランとスピカ、リースは外せないし、リリーのクエストにはやはりグレイを連れて行きたかった。
そんなわけで最初は山に向かう平坦な道から攻略スタートだ。俺はグレイにリースはスピカに乗り、勢いよくスタートするとロケットスタートを阻むように敵が一気に湧いた。最初は空から無数の閃光が俺たちに降り注ぎ、回避する。
セイントドラゴンLv73
召喚モンスター 討伐対象 アクティブ
まぁ、最初はそう来るよな。
「一気に行くぞ! 超連携!」
「うん! ドラゴンダイブ!」
「はい! 超連携!」
俺はルシファーとの決戦前に一度神槍ロンギヌスを使っておきたかったので、ここで取り出し、リースもブリューナクを構えて二人で超連携を発動されるとセイントドラゴンの大群をぶち抜いた。そこにリリーまで飛び込むとリリーがレガメファミリアと星天の神剣アルカディオンの二刀流で暴れる。
最近ハンマーを使っていたから久々の大剣の二刀流で少し不安だったが寧ろ動きがいい。得意武器を使う嬉しさが染み出ている気がする。
リリーが暴れてくれているので、セイントドラゴンたちはリリーを狙おうとするがそうなると外を回っている俺とリースたちがフリーとなる。俺たちが飛び込むと注意が俺たちに向き、次はリリーがフリーになり、暴れ回る結果となった。
本来なら数をかけて押さえつけたいんだろうが俺たちのスピードに追い付けない上に数を揃えてもレベル差があって対処不可能な状態だ。一生懸命ブレスを使って来るけど、俺とリースは槍でぶち抜いてしまって意味がない。
「ガウ!」
「新手か!」
グレイが反応して無数の光線を回避すると白いワイバーンの大群が乱入して来た。
レーザーワイバーンLv73
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
名前から判断すると光線スキル特化のワイバーンみたいだな。俺とグレイが迎え撃つと突撃を回避されてしまう。そしてレーザーワイバーンたちの全体が光ると拡散光線が俺たちに放たれた。このワイバーンたち、中々の速度と旋回性能を持っているな。
「主様! エインシールド!」
「タクトに何しているの!」
リースがエインシールドを展開して無数の拡散光線をガードしてくれるとリリーがレーザーワイバーンに襲い掛かるが攻撃が届かず、逆に光線を撃たれてしまう。
「反射鏡!」
「「「「ギャオオオーーー!」」」」
「わぁ!?」
「全反射!」
反射鏡で光線を弾いたリリーだったが別方向から放たれたセイントドラゴンたちのブレスが迫る。これに対してブランが守りに入って、神盾アイギスでブレスを跳ね貸したが下からも光線が追加で放たれて全ての方位をカバー出来ずに二人は攻撃をくらってしまう。
反射鏡も盾も一方向しかカバー出来ない弱点を上手く付かれた形だ。
「ぶるぶるぶる! リリーを怒らせちゃったね! 覚悟ー!」
「イオンお姉様の苦労が分かります…ほっとくわけにもいきませんね」
「主様? どうしますか?」
「リースとスピカはレーザーワイバーンを頼む。倒してくれるならそれが一番いいが無理にする必要はない。一番狙いやすいセイントドラゴンから倒してレーザーワイバーンは最後でいい。俺とグレイは下に会現れた追加の敵を叩いて来る」
下を見るといつの間にか霧が発生しており、敵の姿を視認できないが敵の数は複数でまだ最初の段階だからそこまで強くないだろう。
「分かりました。追いかけまして攻撃を封じてきます」
「あぁ。頼む。いくぞ。グレイ」
「ガウ!」
リースも俺の作戦をちゃんと理解してくれて嬉しい限りだ。俺とグレイが地面に向かうと特大のレーザーが放たれて、グレイはそれを回避して地面に着地すると一気に敵との距離を詰めて、敵が地面に逃げるより早く魔狼神王の鉤爪で斬り刺した。霧の中での戦闘はグレイも得意なのだよ。そして敵の正体も判明する。
レーザーワームLv73
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
真っ白い巨大ミミズだった。地面に潜られると俺たちが攻撃する手段は数限られてしまうところが厄介だが、問題ない。俺はエンゼルファミーユを展開する。
「炙り出すぞ。グレイ」
「ガウ!」
『『『『『ヴォルケーノ』』』』』
地面が噴火して巨体のレーザーワームたちが地面から外に打ち上がる。それを見たグレイは俺を乗せたまま飛び出し、魔狼神王の鉤爪で次々斬り裂いた。これを繰り返していると当然反撃にもあう。
しかし地面から奇襲を仕掛けてきたレーザーワームの攻撃をグレイが回避するとレーザーワームの巨大な口に光が集まる。これに対して俺は神槍ロンギヌスを構える。
「粒子分解!」
グレイが飛び出し、レーザーワームからガンマレイバーストが放たれたが神槍ロンギヌスはアメジストの輝きを放つとガンマレイバーストの光の粒子を分解してそのままレーザーワームの口をぶち抜いた。
その後は反撃はときどきくらうもグレイが全滅させて霧が消えた。そして上ではリリーとブランがセイントドラゴンたちを全滅させており、レーザーワイバーンとの対決に参戦していたがリリーとブランが追い付けていない。二人より速いことは確定だな。
ただリースとスピカが相手だとスピードも旋回性能も負けているようだ。確実に一体ずつ仕留めていくリースとスピカをリリーとブランが援護して全滅させた。
「神槍ロンギヌスをどうでしたか? 主?」
「美しさを感じながらのその中から物凄い殺気を感じた…流石神も魔神も堕天使も天使も悪魔も殺す武器だな。普通の武器とはやっぱり違うな」
「そうですか…どうしますか? 主」
「もう少し使わせてくれ。槍が細いとどうにもまだ信じ切れていない感じがする」
パラス・アテナの槍のようなスピアタイプの槍に馴れているとどうにも細い槍は壊れてしまうじゃないかと心配になってしまう。ブリューナクとか使って来たから問題ないと思っていたがさっきの戦闘で調整の必要性を感じてしまった。
「主らしい理由ですね」
「全く…タクトは心配性なんだから」
「リリーはもう少し色々なことを心配しような? ブランが困っていたぞ」
「そんなことないよ! ねぇ? ブランちゃん?」
ブランが顔を背けるとそんなブランの様子をみたリースが笑ってしまった。ブランのこういう姿は珍しいからな。
「どうして顔を背けるの! ブランちゃん! 後、どうしてリースちゃんは笑ったの!」
噛みつくリリーを宥めてから俺たちは先に進んだ。




