#1390 ユウェルの大剣とゼウス特攻の鎧
俺はみんなを見送ってから夕飯を食べて、ゲームにログインする。
「「「「にゃーん。にゃーん。あ」」」」
リリーたちは俺が起きたことに気が付いて、一斉に部屋から出て行った。俺の腕の中ではイオンが怒りに震えている。
「タクトさん…とても惜しいですけど離してくれますか?」
「いいけど、ちゃんと着替えてから追いかけるんだぞ」
「はい!」
俺がイオンを解放すると一瞬で自分の部屋に行き、着替えて廊下を走っていく。
「あたなたち! 待ちなさい! 今日という今日は許しません!」
「わぁ~!? な、なんだ!?」
途中でユウェルとぶつかり、ユウェルがくるくる回転する。
「ごめんなさい! ユウェル!」
「どうしたんだ?」
「いつものリリーたちの遊びだよ」
「なるほどだぞ」
それだけでユウェルは何が起きたのか理解する。そして話をすぐに完成した武器に切り替えるとヘーパイストスも完成されたらしいので、一緒に見ることにしたのだが、二人の様子が変だ。
「わたしのほうが早く作ったんだぞ! タク!」
「いいえ! ボクのほうが遥かに早かったです!」
「遥かにだと!?」
「そうだったじゃないですか!」
張り合っている二人を見ながら微笑んでいるパンドラに話を聞いてみた。
「どちらが早く凄い武器を作れるか二人で勝負していたんだよ!」
「どうしてそんな流れになるんだか…ってユウェルが原因か」
「最初に勝負の話をしたのはユウェルお姉様だけど、お父さんもノリノリだったんだよ」
それは意外な話だな。俺がヘーパイストスを見ると手で頭をかいて、照れ臭そうに言う。
「いや~…鍛冶の神に覚醒してもなお鍛冶で勝負を挑まれるのが嬉しくてつい」
「ほぅ…嬉しいとな」
「はい。パンドラやユウェル、アルゲスたちがいてくれるお陰で一人の鍛冶だけじゃ味わえない鍛冶を味わえています。本当に感謝しかないですよ」
ヘーパイストスにもいい影響が出ていて嬉しい限りだ。案外現実の神話のヘーパイストスもサイクロプスたちを弟子にしたのは孤独からの解放や自分の鍛冶欲の向上を望んでいたからかも知れないな。
雑談はこの辺りにして二人の自信作を見せて貰おう。まずヘーパイストスから柄が火竜の装飾になっている真っ赤な刃の大太刀を見せて見せて貰った。
「これがウェルシュドラゴンの力が宿った大太刀か」
「名前はどうしますか?」
「赤燎で」
「即答。名前決めていたんですね」
そりゃあ、燎刃の武器で確定していたからね。もう決めてました。そんなわけで鑑定してみる。
龍大太刀赤燎:レア度10 大太刀 品質S+
重さ:100 耐久値:10000 攻撃力:9000
効果:神殺し、大物殺し、竜殺し、人間殺し、破魔、灰燼、万物切断、時空切断、魔力切断、万物破壊、武器破壊、防御無効、倍化、重圧、軍略、溶接、溶断、雷光刃、雷光、超電磁、重力場、紅炎、爆心、融解、神気、竜気、空振、熱風、衝撃放射、焼尽、炎熱支配、重力支配、荷重支配、後光、烈日、火山雷、火山弾、噴火、溶輪、溶波動、覇撃、王撃、核撃、煉獄、加護破壊、領域破壊、耐性無効、炎竜解放、終焉龍王の加護
刻印効果:無限のルーン、瞬間回復、魔力超回復
青生生魂と緋緋色金、グラビティサイトの合金に赤軍天竜ウェルシュドラゴンの力が宿った大太刀。倍化の筋力アップに加えて重力と荷重の操作を加えることで恐ろしい切れ味と破壊力を許する大太刀となった。
強さは十分。完全に破壊特化の武器となったな。燎刃が振るった時にどんなことになるか楽しみだ。
次はユウェルが作った大剣を見る。これも柄が地竜になっている大剣だ。刃の色は美しいエメラルドグリーン。それでありながら圧倒的な存在感も感じて美しさと威圧も感じる武器となっている。
「大剣にしたんだな」
「片手剣や大太刀、太刀、刀、盾とか色々考えたんだけど、タクとの戦闘を考えるともう一本神剣レベルの大剣が欲しかったから作ったんだ。神剣シュルシャガナとの相性もいいと思う」
結局ユウェルが好きな武器というより俺とのマリッジバーストを意識してしまったか。リリーたちもなんだかんだで選ぶ基準に俺が入っているんだよな。嬉しい所でもあり、もっと自由で合って欲しいと思ったり、結構複雑なところだ。
「タク! 名前を決めてくれ!」
「あぁ…決して壊れることが無い大剣で命を象徴する…この大剣の名前は不命なんてどうだ?」
不という漢字は他の漢字とくっついて、否定する漢字だ。なので基本的にはいいイメージがない漢字だが、否定が必ずしも悪いほうに行くとか限らない。悪い漢字を否定することでいい熟語になることがある。
今回名前を選ぶときに参考にしたのはスキルの名前にもある不屈や不死だ。決して屈しない不屈と死なない不死。ここから決しない武器であり、永遠の命を連想する名前として不命という名前を選んだ。
「おぉ! 良い名前だぞ! 今日からお前の名前は不命だ! よろしくな!」
自分の新たな武器に挨拶するユウェルの姿は好ましい限りだ。それじゃあ、鑑定しよう。
龍王大剣不命:レア度10 大剣 品質S+
重さ:150 耐久値:なし 攻撃力:10000
効果:竜特攻(究)、神殺し、大物殺し、不死殺し、万物切断、時空切断、魔力切断、海錬刃、、、、重圧、堅牢、瞬間再生、、魔力超回復、自動修復、、、重力場、、強行、竜気、英気、星気、、浄化、魔力吸収、次元震、海震、、、、重力支配、巨岩壁、多乱刃、海割れ、海没、氷柱、鉄砲水、流星群、惑星、苗木、巨木壁、石雷、列石結界、遮断結界、物質化、絶対防御、石波動、自然波動、覇撃、王撃、重力球、武器無効、加護破壊、領域破壊、耐性無効、土龍王解放、絶海龍王の加護
刻印効果:無限のルーン、破魔、巨大化
ドラゴンメタルとアダマンタイト、グラビティサイトの合金に絶海龍王アブソリュートドラゴンの力が宿った創造神すら想定していない大剣。絶海龍王アブソリュートドラゴンの力を完全に宿した大剣でその力は振り下ろされた一撃は大地の神のみならず冥界の神々まで恐れるほどの破壊力を有している。
これを見た俺は真っ先に刻印効果にある巨大化に注目した。
「ユウェル? もしかしてとんでもないことを考えてないか? 刻印効果に巨大化があるんだが?」
「な、なんのことかわからないぞ~?」
間違いないな。わざわざ刻印効果に破魔を入れているという事は魔王たちに俺が思いついた戦術を使う気が満々であることを意味している。流石に同情するが魔王が相手ならなにをしてもいいだろう。
因みにユウェルとヘーパイストスの鍛冶対決はヘーパイストスが勝っている。流石に竜石の素材のレベルが違うからね。その時点で正当な勝負じゃなかった。それじゃあ、次の依頼をしよう。
「ユウェルは土のドラゴニックマウンテンの素材でガンガン自分が作りたい武器を作ってくれ」
「え? イオンの武器はいいのか? タク?」
「イオンにはウロボロスグレイザーがあるからな。取り敢えずユウェルが作りたい物を優先していいよ」
「わかった! それじゃあ、早速行って来るぞ! 実はもうどの素材を何に使うか決めているんだ!」
そういうとユウェルはいなくなった。その姿を見てユウェルは俺によく似ていると思った。ただユウェルの一つの事に集中しすぎる姿がどれだけ危険か俺は身を持って知っている。バイトのし過ぎで倒れたからな。ユウェルに俺と同じ失敗をさせないためにちゃんと注意しないとな。今になってメルたちの気持ちを理解させられるとは思ってもみなかった。
「ボクたちはどうしますか?」
「ヘーパイストスたちには風魔軍竜の牙を使った短剣を作れるだけ作って欲しい。風魔軍竜の竜石は細剣で頼む」
「了解しました。パンドラ、短剣の頼むよ」
「任せて! いっぱい作っちゃうよ! でもお父さん? 時間余っちゃうかも知れない」
本当に鍛冶のペースが急激に上がったな。というか俺は今まで結構ゆったり仕事をさせていたのかもしれない。まぁ、仕事している本人たちが納得できる物が完成していたならそれでいいか。そんなわけで次の依頼をすることにした。
「破壊竜の竜石を使った脇差と樹氷竜の竜石を使った槍をお願いしたい」
「りょーかい! それじゃあ、わたしが槍ね! お父さん」
「えぇ。ボクが脇差を担当します」
これで下に降りると和狐たちが疾翔龍王の鱗とテューポーンの鱗に追加で疾翔龍王の翼まで使った防具を完成させていた。翼はエメラルドで鎧は全体的に黒味が掛かった黄金で関節部はエメラルドになっている鎧だ。鑑定してみた。
モンスタードラグーンメイル:レア度10 鎧 品質S+
重さ:100 耐久値:8000 防御力:5000
効果:俊敏性アップ(究)、全属性耐性、神殺し、大物殺し、高飛翔、竜気、怪力、魔力吸収、瞬間再生、黄金障壁、大気壁、暴風壁、堅城、衝撃無効、超充電、避雷針、電磁場、電弧放電、爆風波、気圧支配、気流支配、電磁支配、自動修復、雷光、神速、超加速、爆速、空振、衝撃放射、暴旋風、凪、全滑走、超低周波、天変地異、環境無効、妨害無効、魔法無効、破壊無効、テューポーンの加護、疾翔龍王の加護
刻印効果:無限のルーン、時空支配、時間遅延
疾翔龍王の鱗とテューポーンの鱗、疾翔龍王の翼を使った竜騎士の鎧。天空神に対して圧倒的な性能を誇っており、あらゆる風と雷を無効化し、自分の力に変える力を有している。更に飛行速度に関して圧倒的なスピードと旋回性能を持っているがそれ故に常人では制御不可能な鎧。
これを見た俺は疾翔龍王ケレリタスドラゴンの圧倒的な速度の理由を理解した。
「爆速スキルなんてあったのか…道理でスピードの差があそこまで出る訳だよ…しかしこれを着て戦うことになるのか…」
「リリーお姉様たちとマリッジバーストして戦っている姿と差がありへんよ? だから我慢して着てください」
「あぁ…ただ練習はしておかないとな。凄く嫌な予感がする」
制御不能系ってこのゲームでいい思いで無いんだよな。
「「「「あはは~」」」」
「そこは笑って誤魔化さないでくれ」
ここでテューポーンと会話をする。
『これでゼウスと戦う準備が出来たのか?』
「いや、ゼウスと戦うのは結果がどうなるか分からないけど、ドラゴニックマウンテンの試練が終わってからという事になるよ。このままだとこれから光のドラゴニックマウンテン、明日の昼に闇のドラゴニックマウンテン、明日の夜に創星龍神との決戦ということになると思う。明後日の夜にルシファーとの決戦が予定されているからゼウスとの対決は遅くとも明後日の昼。予定通りに進むと創星龍神と契約した俺と最初にぶつかるのがゼウスになる予定だよ」
『ククク…それはなんとも面白いことを考えたものだな。忌々しいあいつがどんな顔をするか今から実に楽しみだ』
テューポーンもいい性格しているよ。それじゃあ、次に和狐たちに新たな防具を依頼というか相談して決定する。
「それじゃあ、ユウェルたちに相談した上でダーレーと狐子、ヒクス、ミールの神鎧を作ってくれ」
「「「「はい!」」」」
こうして依頼は終了。次にご飯を食べようとしたがリリーたちが凍っていた。
「加護無効に耐性無効まで使うか?」
「当然使います」
そう断言するイオンの顔は晴れやかな顔をしていた。逆にリリーたちは凍結を解除してから身体が温まるまで鼻水を流しながら震えているのだった。しかしこんな目にあってもリリーたちによるイオン弄りはきっと無くなることがないんだろうな。




