#1388 絶海龍王アブソリュートドラゴン戦、後編
俺たちは勝負を決める為にインフィニットエクスカリバーとウロボロスグレイザーを取り出す。これを見たゴッドアビスドラゴンは訝しむ視線をウロボロスグレイザーに向ける。
『無限属性の剣がもう一本だと? ん? この気配は…は、はは! あははははは! この気配、間違いない! 無限の小僧か! 俺様を倒す為にそんな奴と手を組むとはな! いいぞ! それでこそ人間らしい!』
『聖剣解放! 伝説解放!』
『魔竜解放!』
ウロボロスグレイザー(魔竜解放):レア度10 片手剣 品質S+
重さ:50 耐久値:なし 攻撃力:12000
効果:竜技【ウロボロスストリーム】、神殺し、英雄殺し、不死殺し、無詠唱、竜気、英気、重圧、無限魔力、無限詠唱、無波動、時空切断、魔力切断、万物切断、虚無壁、次元震、無限乱刃、無限連撃、無限のルーン、奪取、斥力場、重力場、荷重支配、魔素支配、重力支配、精神誘導、無限復活、不死身、魔素化、天候無効、支配無効、耐性無効、物理無効、魔素解放、魔剣解放、無限竜の加護
制限時間:5分
アダマントとダマスカス鋼の合金にウロボロス結晶を加えて作られた剣。無限属性の剣でウロボロスドラゴンの力が宿っていることで斬った相手の力を奪い取る特殊な能力がある。ただし無限の力は人間には強すぎるために5分経過すると持ち主は死んでしまい、持ち主の精神にも影響を与える可能性があるので、扱いにはかなり慎重にならないといけない。
必殺技のラッシュで決める。そう思った時だった。俺たちに黒い霧状の蛇が巻き付いて来た。
『馬鹿な奴らだ。俺様がただで力を貸す訳がないだろうが』
『くく…そいつは人間を堕落させるドラゴンだ。手なずけたと思わせておいて裏切ることがそいつの本質なんだよ。さぁ、どうする?』
『タクトさん…』
イオンの悲しい声が聞こえて来る。このままで終わらせたら、俺はイオンの夫を名乗る資格なんてなくなるだろうが。だから俺の答えは決まっている。
『うるせーんだよ! お前の力をありったけ使ってやるからとっとと力だけ使わせやがれ!』
俺の感情が爆発し、剣を強く握ると黒い霧の蛇が霧散し始める。
『俺様にそんな命令をするとはな…気に喰わんが…それは相手も同じ事…いいだろう。俺様の力を使って封印された俺様をずっと放置した忌々しい龍王に勝って見せろ!』
そういうと黒い霧はウロボロスグレイザーに宿る。それを見たゴッドアビスドラゴンは笑う。
『はははは! こいつは傑作だ! 人間の気迫に押されてるじゃねーか!』
『五月蠅いぞ! 絶海龍王! 俺様より弱い癖に王なんて名乗ってんじゃねーよ。ばーかばーか』
『お前は何も変わらないな…確かに力だけを見るなら俺たちよりお前のほうが上だ。そこは認めてやるよ。だがな力ある者が王になれるわけではない。自分以外の誰かを導いてこその王だ。お前はただ力を与えて堕落させるだけ。だから俺様たちはお前を放置したんだよ。ドラゴンにとってそれが最良と判断したからだ』
ただで自分の力を与えて、ドラゴンたちを堕落させるか。そりゃあ、力が欲しいドラゴンなら苦労せずに強くなれるならそっちを取るのが自然だ。しかしそれじゃあ真の強さは手に入らないことを龍王たちは知っているんだろう。何より強すぎる力は孤独を与える。そういうことを全部理解した上でウロボロスドラゴンは同族に悪影響を及ぼすと判断して封印を解除しないことを決めたってことか。
『話の途中で申し訳ないがこっちはもうギリギリなんだよ! さっさときめせて貰うぞ!』
『そうだったな。来い。お前たちに絶望を教えてやる』
俺たちはインフィニットエクスカリバーを振りかぶる。
『聖剣技! インフィニット・コールブランド!』
『不変! ぬぅうううん! 効かんな!』
ゴッドアビスドラゴンはインフィニット・コールブランドは身体で受けて、大爆発するが無傷で現れた。それに対して俺たちは間髪入れずに構えを取る。
『竜技! ウロボロスストリーム!』
ウロボロスグレイザーから全てを触れるだけで消滅させてしまう暗黒の蛇がゴッドアビスドラゴンに向かう。
『絶対防御! ぬぅううううん!』
これを絶対防御で止められてしまう。そして呼吸が続かないことで警告音が発生し、俺たちの生命力がみるみる減っていく。
『終わりか』
俺たちは奇跡の効果で元の装備の状態で蘇生するが俺の予想通り、アビスデスペレーションが使用される。これで本来なら勝負ありだ。しかし俺たちにはこの状態でまだ勝てる道が残されている。
『イオン!』
「はい! 海割れ!」
海が割れたことで俺たちは海からの脱出を果たした。俺たちが今いる場所は空だ。ここには空気があり、水圧は存在せず、水中スキルも必要がない。つまり海が戻るまでは俺たちは戦える。そして油断したアブソリュートドラゴンは俺たちとの距離を縮めていた。
『何!? なるほど。そう来たか。ぬ!?』
「雷神熱閃!」
『不変!』
俺の斬撃が不変スキルでガードされる。しかしこれで続いているイオンの攻撃は決まる。
「神威解放! 雨過天晴!」
イオンの雨過天晴が決まる。そして俺の場所も間合いだ。
「伝説解放! 神威解放! 天空雷覇斬!」
『ぐぅううう! 舐めるなよ! 大津波!』
冷静だな。確かに海を割っても、俺たちは水に呑み込まれると溺れて終わりだ。俺とイオンが集まっており、距離がある状態で大津波の判断をするのは流石だと思う。しかし俺とイオンもそう来るなら考えがある。
「いくぞ! イオン!」
「はい!」
「「超連携!」」
神剣草薙剣と神剣天羽々斬との超連携が発動する。即ち雨過天晴と天空雷覇斬の攻撃が融合された斬撃となる。
「「いっけぇえええええ!」」
『っ!? 液状化!』
俺とイオンの斬撃の一閃は大津波を斬り裂きと体の一部を液状化させたゴッドアビスドラゴンの身体も両断し、更に割った海を横一線に割ってしまう。とんでもない斬撃だと思っているとその威力を証明するように衝撃波が発生し、大津波と割った海、そして液状化でなんとか攻撃を回避したゴッドアビスドラゴンも吹っ飛ぶ。
態勢を整えたゴッドアビスドラゴンの目の前に俺とイオンはもう迫っている。
「霹靂閃電!」
「流水乱舞!」
『ぐ…調子に乗るなって言っているだろうが! 天変地異! ドラゴンフォース!』
天変地異がゴッドアビスドラゴンを中心に吹き荒れる。もうここが元々海だとは誰も思わないな。この天変地異に対して俺たちは離れるがこちらも時間がない。ここで一気に決める。
「ドラゴンフォース! 逆鱗!」
「逆鱗! おおお! 雷神蒼嵐波!」
雷神蒼嵐波が天変地異で発生した巨大竜巻と激突するとぶち抜いてゴッドアビスドラゴンに直撃する。
『忌々しい! 嵐の神の力か! ッ!?』
「ミーティアエッジ! はぁあああ!」
『ぐ…氷雪刃! 不変!』
「「はぁあああああ!」」
不変の氷雪刃が体に展開されても俺とイオンの斬撃のラッシュは止まらない。するとここでゴッドアビスドラゴンも攻撃に転じて来た。俺たちでも回避が間に合わせない高速の巨大な拳が振るわれる。しかし俺たちは吹っ飛ばされても迷わず接近戦を挑む。
もう海が元に戻り始めている。禁呪を使うより接近戦で攻撃を決めた方がダメージは大きい。
「ドラゴンノヴァ!」
『ぬ!?』
「ゼロ距離でのドラゴンノヴァなら不変スキルでは対処できませんよね?」
『確かにそうだな!』
イオンがゴッドアビスドラゴンの手に捕まる。
『これでお前も逃げ場はない。海ももう戻り始めてる。よくここまで俺様にダメージを与えたが終わりだ。ドラゴン』
「竜穴! 雷神熱閃! イオン!」
俺が腕を斬り飛ばしたことでイオンが解放される。
「雨過」
『時間停止!』
全ての時間が止まる。俺もクロノスの加護が封じられているから逃げられなかった。しかし時間停止は元に戻ろうとしている海の時間も止めている。ただこれでゴッドアビスドラゴンにとっては十分だった。
『ドラゴンクロー! ドラゴンクロー!』
俺たちはぶっ飛ばされて、割れている海の中まで吹っ飛ばされてしまった。そして時間停止が解除されて俺たちは溺れる。意図的なのか分からないが俺とイオンは同じ場所に吹っ飛ばされたことでお互いに頷くあうと超連携を発動させる。
雷神蒼嵐波と雨過天晴の超連携が発動する。雷神蒼嵐波の周囲に雨過天晴の斬撃が纏っている攻撃が放たれるとそれは海を吹き飛ばし、一瞬だが俺たちは溺れている状態から解放された。そしてゴッドアビスドラゴンに攻撃が直撃するがこれは不変で防がれる。
『残念だったな。ッ!?』
ゴッドアビスドラゴンの目に迫ってきている俺たちの姿が映る。さっきの攻撃でゴッドアビスドラゴンに到達するための道が出て来ていた。俺たちのスピードならこの一瞬に出来た穴を通り抜けられる。これが最後の超連携だ。これで決められなかったら俺たちの負けだ。
「霹靂閃電!」
「流水乱舞!」
「「超連携! 霹靂電水乱撃!」」
俺たちの高速で放たれた無数の斬撃がゴッドアビスドラゴンに襲い掛かり、海が元に戻る。すると目の前のゴッドアビスドラゴンがアブソリュートドラゴンに戻る。
『よく最後まで戦い抜いた…この勝負、絶望しなかったお前たちの勝ちだ』
アブソリュートドラゴンがそういうとインフォが来る。
『ドラゴニックマウンテンの四つ目の山をクリアしました。セーブポイントが解放されました。中断することが可能です』
『職業召喚師のレベルが上がりました。ステータスポイント5ptを獲得しました』
『職業召喚師のレベルが上がりました。スキルポイント5ptを獲得しました』
『クリュスの女神技のレベルが30に到達しました。女神技【ゴッドオーラ】を取得しました』
これと同時に俺たちは状態異常から解放されて二人揃って必死に呼吸をする。マジで何度死ぬかと思ったか分からない。というか竜化とウロボロスグレイザーが全く活躍出来なかったのがえぐすぎた。
ここでサファイアブルーの輝きとなって消えていくアブソリュートドラゴンが俺たちに質問して来た。
『最後に聞かせろ。なぜもっと早く海割れを使わなかった? 無限属性の剣の力を解放している時に使っていればもっと楽に勝てたんじゃないか?』
確かにこの疑問はあるだろうな。理由は色々ある。まず無限属性の剣を持っている状態だと油断して接近してくれないことがある。後は無限属性の剣より竜殺しのほうが俺の中ではダメージが出る気がしている。そこら辺を考えていたのだが、この質問に俺は別の答えを返す事にした。
「あの場面で裏切られてあいつの願いを叶えて上げるほど俺は優しい人間じゃないんですよ」
『…ぷ。ははははは! なるほどな! いい具合に性格がひん曲がっていやがるぜ! お前!』
うけたらしい。それなら良かった。
『他の龍王に言われたかも知れんが俺様に勝ったんだ。他の龍王に負けんじゃねーぞ』
そういうとアブソリュートドラゴンは消えて、俺たちの水のドラゴニックマウンテンの攻略は成功で終わるのだった。




