#1387 絶海龍王アブソリュートドラゴン戦、中編
アブソリュートドラゴンの姿が消えると俺たちに襲い掛かって来た。さっきより更に速くなった。俺たちがアブソリュートドラゴンと戦っているとすぐに異変に気が付く事になる。さっきまで折れていた氷雪刃が折れなくなった。
「はぁ!」
『氷雪刃!』
俺が斬撃を叩き込もうとした場所に氷雪刃が生えて攻撃を止められる。離れて神鎌鼬を連射するが全く通用しない。これじゃあもう刃の鎧だな。水属性なのに土属性のドラゴンのような真似されるとは想像していなかった。
『これはどうなっているんでしょうか?』
『恐らく氷雪刃の耐久値を無くしているスキルだと思う。耐久値がないと破壊することは出来ないからな。アブソリュートドラゴンの言葉を使うなら絶対に物が壊れないスキルって感じか』
『なるほど…それでどうしますか?』
『普通の剣戟ではダメージ与えられないな。チャンスがあるとするなら透過スキルで氷雪刃をすり抜けるしかない。耐久値が無い武器を全身に装備するだけでこんなにも防御手段になるなんて考えたことも無かったよ』
考えてみると当たり前なんだけどね。壊れない武器と言うのは無限に相手の攻撃を受けることが可能であることを示している。
『俺様の不変スキルに気が付いたか』
不変は変わらないって意味だ。つまり氷雪刃の状態が変わらないということは即ち破壊することが出来ないって理屈になるんだろう。絶対に土属性のスキルだよ。これ。
『それでどうする?』
『竜』
『みすみす竜化なぞさせるか!』
俺たちが竜化をしようとするとアブソリュートドラゴンにぶっ飛ばされる。そりゃあ、そうだろうな。
「ドラゴンブレス!」
『ドラゴンブレス! 俺様相手にドラゴンブレスの撃ち合いで勝てると思うな』
俺たちは押されて、ドラゴンブレスが直撃する。
『くぅ…タクトさん、大丈夫ですか?』
『あぁ…イオン、あのスキルの弱点が分かった』
『え!?』
俺は自分の周囲に魔導書と武器をエターナルソウルラバーと怪物王の魔法封印杖に変更して、一斉の魔法攻撃をする。しかし時空断層でガードされる。
『効かんな』
『ダメでしたよ!? タクトさん』
『いいや。ダメじゃない。アブソリュートドラゴンが防御スキルを使ったことが俺の考えが間違いじゃないことを証明している』
不変スキルの弱点はずばり変わらないだ。俺の予想が正しいなら不変スキルの発動中は他の強化スキルは使えないんだと思う。なぜなら強くなることは即ち変わることを意味しているからだ。
つまり不変スキルが発動している間、自分の防御力を上げる装甲スキルや堅固スキルが使えないから自分の周囲に展開される防御スキルを使用し、わざわざ俺たちのドラゴンブレスに撃ち合いをして来た。
中々面白いスキルの使い方だったけど、身体中に氷雪刃を作ってもどうしても隙間は生まれてしまうものだ。つまり広範囲攻撃は不変スキルを使った氷雪刃では防ぎようがない。魔力切断とかも刃に付与するタイプのスキルだ。だから魔法攻撃に対して防御スキルを使用して来たわけだね。
『ち…不変スキルを完全に理解しやがったか…だがそれならお前はもう気が付いていないはずだな? このスキルをどう破る?』
『そんなの魔法でばーんって』
『違うんだよ。イオン。アブソリュートドラゴンが言っているのは不変スキルを自分に使用した場合の話だと思う』
自分の状態が変わらないということは生命力も魔力も変わらないことを意味にしている。一種の無敵状態なわけだ。もちろん強化スキルも使えないんだろうがこちらだけ一方的に消費していく状況は非常によろしくない。
『そんな…そんなのどうやって勝てばいいんですか』
『常時発動出来るスキルなら封印で使用を封じるしかないがそれだと封印スキルを持っていないと詰んでしまう。だから常時発動出来るスキルじゃないはずだ。ただスキルの再発動時間は短いだろうな。俺たちの攻撃に完全に対応して来たからな』
『つまり勝負はスピードってことですね』
『そういうことだ。俺たちの得意分野で助かったな』
攻略法が分かったところで俺たちは戦闘を開始する。まずは時空断層を次元震で破壊することと魔法を撃ちまくる。それに対してアブソリュートドラゴンは接近戦を挑んで来た。するとアブソリュートドラゴンにダメージが通らず、氷雪刃が砕けた。両方の両立はやはり不可能なスキルだよな。万能過ぎるといくら難易度が高いゲームだからといってやり過ぎなところが出てしまう。
そして俺の予想通り魔法を連射することでスキルの再発動のタイムラグも確認出来た。しかしその代償に俺たちはアブソリュートドラゴンにボコボコに殴られて、覇撃でぶっ飛ばされる。杖での接近戦はアブソリュートドラゴン相手には通用しないと証明されました。杖でダメなら当然槍もダメだろう。
『水爆!』
「星核!」
『おら! ぬ!?』
『『『『『ギルティソーン』』』』』
爆発の中から現れたアブソリュートドラゴンの攻撃を躱すとアブソリュートドラゴンの周囲に魔方陣が展開されて、ギルティソーンがアブソリュートドラゴンを拘束する。
『鬱陶しい! 寒冷渦!』
アブソリュートドラゴンの周囲に冷気の渦が発生しギルティソーンが凍り付くと破壊される。しかし大魔法の詠唱時間は稼いだ。
『『『『『サンダーボルト』』』』』
『『『『『ミーティア』』』』』
『『『『『ウッドフィケーション』』』』』
『『『『『レールガン』』』』』
強烈な雷と共に空から雷速の隕石と巨大な木がアブソリュートドラゴンに襲い掛かる。
『舐めてんじゃねーぞ! おらおらおらおら! ぐ!?』
流石に全てを破壊することが出来ず、尚且つ不変スキルでも耐えることが出来なかったので、アブソリュートドラゴンはぶっ飛ぶことになった。これで隙は十分だ。
『「竜化!」』
ドラゴンとなった俺たちが降臨する。
『ち…使われたか…まぁ、これでようやくドラゴン同士、決着を付けれるってもんだ。俺様も本気の姿を見せてやるよ! 神格解放!』
アブソリュートドラゴンを中心に超巨大な渦潮が発生すると渦潮の中心点から青紫色の鱗を持つドラゴンの頭が現れると渦潮をぶち抜くように巨大な手が出て来る。ちょっと待て。これで頭と片手であることを考えるとかなりでかいぞ。
深淵龍神王ゴッドアビスドラゴン?
? ? ?
今まで戦って来たドラゴンたちも大きかったが間違いなくゴッドアビスドラゴンが一番大きいぞ。しかもただ大きくなっただけではない。大きくなった分、鱗の分厚さが半端じゃ無さそう。何よりこの巨体でアブソリュートドラゴンの速度を超えて来るとなんと相当やばそうだ。
『それでも負けるわけにはいかねーよな』
『はい! 私の面目が立ちませんし、何よりリリーに何を言われるか分かった物じゃないですからね!』
『結構余裕あるよな? イオン』
『タクトさんと一緒に戦っていますから』
戦闘中にこんな会話が出来るだけでも俺たちは相当余裕がある状態だ。これなら相手がどれだけ強くても戦える。
『いくぞ! イオン!』
『はい!』
俺たちが初手で渾身の爪で攻撃するとやはり相当硬くなっていた。
『渦潮! 氷山!』
ゴッドアビスドラゴンの周囲に渦潮が発生したことで俺たちは距離を取ると渦潮の回転に合わせて俺たちのほうにとんでもない速度で氷山が飛んできた。それを爪で破壊するが不変スキルで破壊することを封じられたことで直撃すると続く氷山が俺たちに連続ヒットする。
『冷凍光線! 拡散光線! 氷雷!』
俺たちに容赦ない攻撃が降り注ぐと俺たちは凍り付いてしまう。
『お前たちに絶望というものを教えてやろう。竜魔法! アビスデスペレーション!』
俺たちに謎の竜魔法が炸裂したがダメージは何も起きていない。つまりこの魔法は強力なデバフの魔法であることは確定だ。
『俺様は優しいからな。お前たちの氷結を解いてやるよ。ドラゴンブレス!』
ドラゴンブレスが直撃して思いっきりダメージを受けたが確かに氷結は解除された。その瞬間に体全体が握り潰される感覚と息苦しさを俺たちは感じた。そしてこの一瞬で俺は俺たちの身に何が起きているのか理解した。
『イオン、物理無効だ! 水圧で身体が潰される!』
『はい! 物理無効! でも、タクトさん、息が』
『分かっている。俺たちは水中適正を得るスキルの全てが封じられた。息がどれだけ持つか分からないが残された時間が少ない事だけは確かだ。この残された時間で勝つしかない』
これがアブソリュートドラゴンが言っていた絶望を象徴する魔法だった。俺たちの今の状況は潜水艦が事故で深海から脱出不可能な状態でいるようなものだ。いや酸素ボンベも潜水艦の中に空気が無い分、俺たちの状態は潜水艦の中でただ死を待つのみの状態と言える。
『ほぅ? 水圧にすぐ対処した所を見ると魔法の効力は理解しているな? それなのにまだ敵意を俺様に向けるか』
『当たり前です! そもそも絶望を超えろと言ったのはあなた自身ですよ!』
『そうだったな。だが、氷結から抜けた時に結構な空気を出してしまったようだが? その状態は後、何分持つんだ?』
確かに俺たちに残された時間は少ない。奇跡の効果で蘇生することで現状からの脱出は可能だ。しかし竜化とマリッジバーストは使えない。それに俺がゴッドアビスドラゴンなら蘇生と同時にアビスデスペレーションを再使用する。勝負に出るならここしかない。
俺たちは覚悟を決めるとお互いに勝利への道を共有して、絶望を超えるために勝負に出るのだった。




