#1381 氷河期竜と雪崩竜戦
現れたアイスエイジドラゴンが氷の中から俺たちに語り掛けて来た。
『ここら一体凍らせたはずだが? ほぅ…なるほどな。溶岩で俺の氷を溶かしたか。溶岩に触れたはずだが、そのまま氷漬けでいるよりは遥かにマシだろうな。お前たちが動けるくらいのスペースを作ったところは評価してやろう』
俺は熱無効でダメージを受けなかったがイオンたちは無理だった。ここはイオンたちの回復能力に頼るしかない。それにしてもアイスエイジドラゴンが言うように動けるぐらいのスペースしか出来ていないことは大問題だ。
周囲の氷は相当冷たいらしい。ラーヴァフローを使ってもすぐに解除されて、何度も使用してようやく高さがクリュスがギリギリ動けるぐらいだ。この状況で戦闘はしたくないが許してくれるような相手でもない。
『だが、その広さで満足に俺相手に戦えるか? ドラゴンクロー!』
氷の中から俺たちに襲い掛かって来る。クリュスが止めるが反撃しようにも分厚い氷に阻まれて攻撃が届かない。
「どうするんですか!? タクトさん!」
「…今は氷を溶かすしかない。こっちから攻撃するための手段がないからな」
氷が溶けたら、あいつも氷からでないと攻撃することが出来なくなる。今はそこに掛けるしかないが相手も甘い相手では無かった。俺がラーヴァフローを発動されようとした瞬間を狙われる。
『魔力枯渇!』
「く!?」
『俺が名は氷河期竜アイスエイジドラゴン! この星で最もマナの活動が止まった時期に生まれしドラゴンだ。俺の前で魔法など使うことなど出来る訳がない』
この世界での氷河期はマナの活動が止まったことで訪れたって感じの設定になっているのか。正直マナの話は魔法使いの領分なので俺には全く理解出来ない話だ。恐らくリッカたちならわかる話だとは思う。
『絶望し、近道を選んだ己の愚かな判断を悔いるがいい!』
確かに近道を選んだからこの状況になった。しかし俺には間違っている気がしていない。
「絶望しろと言われたら俺はしたくなくなる性格でな。それに選択も間違っていない。お前たちとの戦闘が回避できない以上、この状況は上でも起こりうることだ。違うか?」
これほどのレベルが高いドラゴンが水中で出来た現象を地上で再現出来ないとは俺には思えない。そもそも山頂に湖があるらしいからそこに落として湖を凍らせれば状況は俺たちとそこまで大差がないだろう。
『ほぅ…この状況で冷静だな。ドラゴンクロー!』
「クリュス! あいつに向かって次元震!」
「次元震!」
『ぐ!?』
クリュスの次元震でアイスエイジドラゴンは吹っ飛ぶ。やはり次元を震わせるほどの震動は氷の中にいようが届くか。しかしここでもう一体のアバランチドラゴンが動いた。
「ギャオオオ―!」
俺たちに雪崩が襲い掛かり、折角あった空間が全て雪に包まれる。
『貴様! 余計な前をするな!』
どうやらあいつらは仲が悪いらしい。これは好都合だ。俺はみんなに作戦を伝えるとアバランチドラゴンは俺たちを仕留めようと接近して来る。
『ルミ!』
『…うん!』
「「エンゲージバースト!」」
俺が青い男のサンタ服を着た召喚師になるとアバランチドラゴンの突撃を神剣エスカトンリープリングで止める。
「魔法がダメならスキルを使えばいいだけの話だろ? 耐えてみろよ。ヘーパイストスの灼熱地獄を! 大焦熱!」
俺たちを中心に灼熱地獄が広がり、この場にいる者全てを包み込んだ。
『ふん。甘いな。大紅』
『…魔力枯渇』
今度は俺たちがアイスエイジドラゴンの魔力をゼロにして大焦熱の逆に位置する氷の地獄スキルである大紅蓮スキルを阻止した。大紅蓮地獄は八寒地獄の第八階層の地獄の名前だ。摩訶鉢特摩地獄という名前のほうが知られているかもしれない。
『貴様ら』
『…お前はパーパの魔力は奪った。だから返して貰っただけ』
「ギャオオオーーー!」
ここでアバランチドラゴンが氷獄を発動されてきたが領域戦は俺たちが押し勝つ。大焦熱とのスキルとのレベル差が出た形だ。
『大した熱量だが、俺に熱は通用しない! 熱吸収!』
大焦熱で発生した気温が急低下し、炎が消えて行く。水属性や氷属性と火属性は相性が悪いと理解させられてしまうな。しかしこいつらは俺がなぜ大焦熱スキルを使用したのか理解出来ていない。
「いいのか? 解除しちゃってよ」
『何? ッ!?』
「ギャオ!?」
この場にいる全員が頭上と周囲から流れて来る水が直撃する。俺が大焦熱スキルを使用したのは周囲の氷を溶かすためだ。彼らもそれを理解出来ていたがどうなるかまでは理解出来ていなかった。それはそうだ。大焦熱スキルが発動した時点で氷は溶けて本来なら水が流れ込んで来るのが自然の流れだと言える。しかし大焦熱スキルの熱量が高すぎたことで本来なら流れて来る水が大焦熱の範囲に入った瞬間に蒸発して水が大焦熱の範囲に入ることが無かった。それが熱吸収で水を蒸発されていた熱が失われたことで一気に水が流れ込んで来たのだ。
「「「「シャー!」」」」
「ギャオ!? ギャオオオーーー!」
この隙をみんなは逃さない水に流されているアバランチドラゴンをディアンは補足し、距離を詰めると噛みつく。突然の水に予想出来ていた者と出来ていなかった者とでは動きに差が出るのは当然だ。しかしここでディアンの身体が凍っていく。
これは紅炎スキルと氷バージョンと言える寒氷スキル。かんごおりと読むと和菓子になるので注意しよう。寒氷の意味としては寒々(さむざむ)とした氷のことを言う。要はとても冷たい氷という理解で大丈夫だと思う。正直紅炎と比べると負けている感じはするがこのゲームでは互角の力を持つスキルだ。
そしてイオンとリアン、クリュスはアイスエイジドラゴンに襲い掛かっていた。
「シールドドライブ!」
「ドラゴンダイブ!」
「マーメイドダイブ!」
クリュスのアイアース・アスピスの突撃が炸裂すると左右からイオンとリアンが突撃する。するとアイスエイジドラゴンはアイアース・アスピスを掴んで強引にクリュスを投げ飛ばすがクリュスの蛇たちから一斉のドラゴンブレスが放たれ、炸裂する。
「ゴッドブレス!」
「ドラゴンブレス!」
「スクールフィッシュ・トーピード!」
クリュスのゴッドブレスとイオンのドラゴンブレスが炸裂すると無数の魚がアイスエイジドラゴンの密着すると爆発する。
『調子に乗るな! 小娘ども! ドラゴンフォース! 氷のドラゴンでも水中戦ぐらい出来るわ!』
「そりゃあ、そうだろうな。絶海龍王の加護を持っているだろうから水中の適性はあるだろうよ。でもな。お前は今までで水中で戦ったことはどれだけあるんだ?」
氷河期という海を凍らせるほどのドラゴンがわざわざ水中戦をするとは俺には思えない。したとしても最初のように海を凍らせて戦闘するのが恐らくこいつのスタイルだ。なら水中戦に馴れているこちらに水中戦は分がある。
イオンとリアンが動き回りながら次々アイスエイジドラゴンに攻撃を当てていく。やはり二人の泳ぐ速度に追いつけていない。そうなるとアイスエイジドラゴンはクリュスは狙う事になるがクリュスは接近戦をせずに遠距離攻撃にシフトした。
その結果、クリュスとアイスエイジドラゴンとの距離が縮まらない。やはり泳ぎは苦手らしいな。
『この! 俺を舐めるな! 魔力枯渇! 魔力吸収! 氷山! 氷雷! 水爆! ドラゴンブレス!』
ここでリアンの魔力が狙われた。これで魔力を回復したアイスエイジドラゴンのスキルを撃ちまくって来る。
「ふふふ。そんな闇雲な攻撃当たるもんですか。神撃!」
『く…お前らもさっきからうざったいんだよ! 爆氷!』
「おっと…そんな攻撃、当たってあげません!」
アイスエイジドラゴンのほうはドラゴンフォースを使用して、魔力を回復したのにかなり一方的な戦闘の流れになっている。一方でアバランチドラゴンのほうは凄いことになっていた。ディアンは凍りつけになってはいるがアバランチドラゴンの身体中に噛みついた状態で凍っており、更にディアンの尻尾のアバランチドラゴンの身体を貫いている。
なんとかしようとしているが首と手足、羽をディアンに噛みつかれたことで身動きが取れなていない。すると氷山を作り出して凍ったディアンに叩きつけようとした。
『…氷山』
それを俺たちが破壊する。
「悪いがお前には何もさせないぜ。このままディアンの毒で苦しんで死ね」
ディアンが噛みついたまま離れなかったのは凍ってもなおこいつに毒を与え続けるためだ。その意志と覚悟を守ってやるのが俺の役目だと思う。
『くそったれが! あぁ! 認めてやるよ! 水中戦だとお前らのほうが強い! だがな! 時間停止!』
ここで周囲の時間が止まる。そして竜魔法を展開する。
『俺が全ての海をも凍らせることが出来るドラゴンだと最初に見せつけたはずだ! 竜魔法! クライオジェニアン!』
これが最初に使われた魔法の正体か。クライオジェニアンは数ある氷河期の中でも最も寒かった時代の名前として知られている。クライオジェニアンに発生した氷河期はなんと赤道近くまで海が凍ったとされているらしく信じられない気持ちを抱くが有名な氷河期を題材したパニック映画も赤道までは凍らなかったがその近くまで凍っていた描写があったので、知っている人ならイメージはしやすいだろう。
何はともあれ赤道近くまで凍らせるならここら辺一帯を凍らせるのは問題はない…のか?ここが深さどれくらいか分からないがこんなに深く凍らせることがいくら最強の氷河期でも出来るものだろうか?専門家じゃないからわからんがこのゲームでは可能らしい。
そんな竜魔法を俺が黙って発動されるはずがない。雷速で飛来したエスカトンリープリングが竜魔法の魔方陣に命中すると魔力切断の効果で魔方陣を破壊する。
『ッ! 貴様!』
「悪いが湖の中に飛び込んで来たのはお前らだ。自分たちの判断ミスを悔いるんだな」
山頂で戦っていたら、恐らく遥かに苦戦していた戦いだ。二体とも飛行戦は恐らく馴れているだろうからな。猛吹雪の中、この二体のドラゴンを相手にするのは相当きつい気がする。イオンは大丈夫だろうがリアンとクリュスが空中戦で勝てる気がしないんだよな。
最初の奇襲は相当やばかったがそれさえ乗り越えることが出来たならフィールドの有利はこっちある。ましてやこっちは水中戦を意識した編成寄りだ。乗り越えたからこそ言える事だが、近道を選んで正解だったよ。
逆鱗を発動されて俺に向かって来るアイスエイジドラゴンだが俺に届く前に時間停止が解除される。すると物凄い速度でリアンが俺の前に立つ。
「先輩! お願いします! 魔力を下さい!」
「はいよ。エントラスト。思いっきりやってやれ。リアン」
「はい! トリアイナ! 伝説解放!」
『させるか! 魔力枯渇! ッ!?』
俺たちがリアンの前に入り、魔力を奪われるとエンゲージバーストが解除される。俺はルミが溺れるのを防ぐために召喚石に戻した。これでリアンの技のほうが速い。俺はリアンの後ろに避難する。
「エナリオス・クェイク!」
『時空断層! ぬぅううううう! ぐわぁあああ!? ッ!?』
時空断層を展開して耐えようとしたが流石にポセイドンの一撃の前に跡形もなく消し飛ぶとそのままアイスエイジドラゴンはぶっ飛ばされると飛んだ先ではイオンが光を放っており、クリュスが巨大な尻尾を振りかぶっている。
「ドラゴンノヴァ!」
「ゴッドグランドクラック!」
ドラゴンノヴァが炸裂すると大地を砕く程の重い尻尾の一撃がアイスエイジドラゴンに炸裂してぶっ飛ぶとそのまま動かくなった。そしてアバランチドラゴンも息絶えており、戦闘終了。ディアンの氷結をリフレッシュで治してあげた。
「山頂で戦いたかった気持ちしか湧かないが勝ちは勝ちだ。先に進もう」
「私は水中で戦えて良かったとしか思えませんけど、タクトさんらしい考え方ですね」
「ほんとよ。楽に勝てたほうがいいでしょうに」
「俺もその方がいいだけどな。本当の強さが見れていないことがどうしても残念に思ってしまうんだよ」
「先輩って意外と欲張りさんですよね」
確かにリアンが言うようにこれは欲張りなんだろう。万全の敵と真っ向勝負で戦って勝った方が一番気持ちいいに決まっている。一番勝ったという実感が得られるに決まっているのだ。ただ楽に勝ってもしてやったりという真っ向勝負とは違った勝利の美酒を味わえる。
今回の勝負だと相手の強さを理解出来た上に相手が自分たちの有利な戦場を捨てて不利な戦場に来ると言うケースだった。これだとしてやったり感は感じない。だからこそ真っ向勝負で戦って勝つほうを俺は求めていたんだろう。
自分を再認識したところで海底を見るととんでもない気配をいくつも感じ取る。その中には知っている感覚もあった。違いない。この下にタンニーンがいる。そしてタンニーンと同格の強さを持つ敵が複数いることは間違いない。
「ここからが正念場だぞ。気合い入れていくぞ!」
「「「おぉ~!」」」
「「「「シャー!」」」」
気合いを入れ直した俺たちは海底に潜っていくのだった。




