#1429 ファフニール戦、前編
俺とユウェルがファフニールと対面に付くとここでファフニールがとんでもない提案をして来た。
『最初に言っておく。我がつまらない戦いに興味はない。お前たちの全力に興味がある。故に最初から本気の姿で来い』
「え…それは…」
『ここで本気を出せば上にいる奴に勝てないか? そんな心配などするな。我は邪竜だが、あいつの戦いを汚すような真似はせん。一応我の我儘を聞いてくれもしたからな。ちゃんとドラゴンの秘薬を用意した』
ドラゴンの秘薬?初めて聞くアイテムだな。
『この薬はドラゴンのみだが、疲労も切り札を使った消費も回復する。人間も武器も効果はない。一応俺との対決も試練の一環だ。全て治すことは許されん』
それはそうだろうな。ここで全員が全回復出来たら、最初から全力戦闘をしたほうが完全にお得だ。しかも用意した数は一つらしい。つまり戦闘に勝った者以外にあげるつもりはないってことだね。
「はー…そんな薬があったのか」
ユウェルが感心した様子で薬を見ているとファフニールが言う。
『知らないのも無理はない。お前たちは山全体を見ていないからな』
「もしかして作っているのは木属性のドラゴニュートですか?」
『半分正解だな。木属性のドラゴンと共に作っている。ドラゴンでも病気になる奴はなるし、魔素に侵されてしまうものもいるからな。人間と同じように薬の開発は必要なんだよ』
ファフニールの言葉でイオンが魔素に侵された時のことを思い出した。確かにドラゴンでも状態異常になる者はなる。それを支えているのが木のドラゴニュートと木のドラゴンなわけね。
木のドラゴニュートの村は恐らく俺たちが登った山のコースの反対側だろうな。他のドラゴニュートの村ももしかしたら、じっくり探していれば見つかっていたかも知れない。ドラゴンに追われるし、時間もないからそんな余裕はないんだけどね。
「タク」
「あぁ。俺も全力で戦えるならどんな戦いでも全力で戦いたい派だ。ましてや相手がファフニールというならなおの事拒否する理由は俺にはない」
『くく。言ってくれるじゃないか。ならお前たちの本気を我に見せてみよ!』
「「マリッジバースト!」」
俺とユウェルのマリッジバーストが発動する。そして俺たちの姿を見たファフニールは歓喜の声を挙げた。
『はは! ははははは! いいぞ! その姿! その力! 我を真っ向勝負で倒すという決意の目! 我はこれを待っていた! 人とドラゴンが生み出す力がどれほどの物か我に味合わせてみよ! 魔素解放!』
ファフニールの体から膨大な魔素が解放されて、黄金の身体が黒ずみ、膨大な竜気も発生した。これが伝説に名を残す邪竜か。身体中が相手から放たれる殺気でビリビリする。
『全力で行くぜ! ユウェル!』
『もちろんだ! タク!』
『来い!』
俺たちが接近するとファフニールも飛び込んで来た。そしてフロッティと旭光近衛が激突する。するとフロッティが砕け散る。流石に旭光近衛のほうが遥かに武器性能は上だ。ただこの激突で俺たちはファフニールのパワーも実感した。
「はぁ!」
俺は更に距離を詰めて、ファフニールに斬りかかる。
『人化。ふん』
「『ッ!?』」
ファフニールが金髪の褐色肌のヴァイキングのような人になると竜の手で旭光近衛を止めた。そして空いている拳が握られる。
『どう!』
「『がはっ!?』」
俺たちは腹に一撃を貰うと吹っ飛ばされて岩に激突すると岩が木っ端みじんとなり、地面にクレーターが出来る。ユウェルの防御力をもってしてもこの威力のパンチ、半端じゃない。そして人になったファフニールを見る。以前にも説明したがファフニールは元人間や元ドヴェルグだ。人化を使えても不思議じゃない。ドヴェルグは妖精枠だけどね。
『おぉ! ッ!?』
「おら! はぁ! ッ!?」
『甘いわ!』
俺が襲い掛かって来たファフニールの腕を掴んで地面に叩きつけてから蹴り飛ばそうとすると逆に足を掴まれて、投げ飛ばされた。
『ドラゴンダイブ!』
『ドラゴンダイブ!』
俺たちは岩を蹴って、接近して来ていたファフニールとドラゴンダイブで激突すると両者共に吹っ飛ぶ。そしてファフニールは拳、俺たちは旭光近衛で全力スキルを発動させて襲い掛かる。
ファフニールの拳と旭光近衛がぶつかると火花が散る。
『はぁ!』
俺たちは殴り飛ばされる。するとファフニールは自分の手を見る。そこはかなり浅いが斬られていた。そこをファフニールは舐めると獰猛な笑みを浮かべる。
『素晴らしい武器だな! 俺の鱗を斬るとはグラムに匹敵している! いや、それ以上か!』
そういうと襲い掛かって来る。
『金剛拳!』
再びぶつかり合うと今度はファフニールの拳を斬れずにぶっ飛ばされた。刀じゃ無理だ。俺は旭光近衛を腰の鞘に納めると拳を構える。
「おぉおおお!」
『我と拳で戦うか! 良い度胸だ!』
ファフニールと拳でぶつかる。すると予想は出来ていたけど、パワーで押される。それでも俺たちはぶっ飛ばずに済んでいる。
『いい拳じゃないか! おぉおお!』
『だぁああ!』
まさかの拳での接近戦に突入する。拳でぶつかり合うと蹴りでぶつかり、お互いにドラゴンテイルが激突した。結果は全体的にパワーで押されている結果となるが俺はファフニールの接近戦を理解すると拳をいなしてカウンターを決め始めた。
ファフニールの格闘戦は武術を習った格闘戦ではない。本能のままに拳を振るう喧嘩の格闘戦だ。それなら俺のほうが強いのだが、カウンターの拳が顔やリバーに決まってもファフニールは怯まず拳を振るって来た。
『タク! このままじゃ』
『あぁ…ユウェル。武器を使う。上手く合わせてくれ。指示する余裕がありそうにない』
『わかったぞ!』
ユウェルは俺が防御態勢になるとルナティックトンファーを出してくれる。しかしファフニールの拳一発でひびが入る。しかし耐えてくれた。俺はファフニールの拳をバク転して蹴りで挙げると拳を握る締める。
『神籠手ユウェルバスター!』
「おらぁ!」
渾身の神籠手ユウェルバスターが決まるとファフニールは爆発して吹っ飛ぶ。
『ぬぅ…面白い武器を使うじゃないか。それでこそ土のドラゴニュートよ!』
ファフニールは黄金のドラゴンの翼を広がて向かって来た。
『部位竜化! ドラゴンクロー!』
『デルピュネーの盾! ぐぅ!』
『来い! ヴァジュラ!』
ユウェルがデルピュネーの盾を出してガードするがまたしてもひびが入る。しかしこれで十分だ。俺たちはファフニールの下に潜り込むと俺の判断でヴァジュラを取り出し、ファフニールに叩き込む。
『魔素化!』
「チッ! ぐ!?」
魔素化で躱されると俺たちの首にファフニールの尻尾が巻き付きて来た。しまった。
『それを喰らう訳にはいかんな。おぉおおお!』
『「うわぁあああ!?」』
俺たちは地面に何度も叩きつけられると空に投げ捨てられるとファフニールがドラゴンブレスを放ってきた。
『反射装甲! ドラゴンアーマー! 金剛装甲! 竜鱗装甲! 超装甲!』
俺たちの体にドラゴンブレスが直撃すると反射装甲が破れられて、俺たちは大爆発する。しかし俺たちは無事だ。ユウェルのありったけの防御スキルがかなりダメージを減らしてくれた。だが、ファフニールはすぐに目の前に現れる。まるで俺たちが死なないことを確信しているような動きだ。
『ユウェル! ヘラクレスの棍棒だ!』
『わかった! ヘラクレスの棍棒!』
ヴァジュラは俺が使うには相当難しい武器だ。それを使うぐらいならパワーを底上げして棍棒で戦ったほうがまだいい。
「おらぁ!」
『ぬぅ! これもいい武器だが、まだまだ。ぬ!?』
俺の振りかぶった棍棒の一撃は止められたが俺たちはすぐにファフニールの側面に回り込んで再び一撃を放つ。筋力と防御力で不利ならスピードで勝負するまでだ。
「おらおらおら!」
『ふ。いい攻撃だ! おぉおお!』
俺たちの攻撃を受け続けているがファフニールは守るどころか攻撃してくる。その獰猛さに邪竜の本質を見た気がした。ここで俺は攻撃を止めた。このまま戦闘を続けていると俺だけでなくユウェルに何かしらの影響が出るという危機感が俺をそうさせた。
『ん? どうした! もっと来い!』
「…竜化」
俺たちはドラゴンの姿になる。
『ほぅ…ならば我もドラゴンの姿になってやろう。竜化!』
二匹のドラゴンが相対する。
『ユウェル、マルミアドワーズと神剣シュルシャガナを出してくれ』
『わ、わかったぞ。タク。でも、どうして戦いを止めたんだ』
『ユウェル…ファフニールは間違いなくなく強い。でもその戦い方を見習っちゃいけない』
『え…どうして…』
やはりユウェルはファフニールの影響を受けていた。なら俺の攻撃を止める判断は間違いじゃなかった。
『いいか? ユウェル。よく覚えておくんだ。ファフニールのようになりふり構わず暴れていると周りの人に恐怖しか与えない。それじゃあ、行けないんだよ。その先にあるのは孤独だ』
ファフニールからするとそりゃあ、嬉しくもなるだろう。俺たちとの戦いは一時の孤独からの解放となる。しかも強い自分と互角に戦えるとなるとまるで同類に出会えた喜びまで与えることにもなるだろう。ファフニールには悪いけど、ユウェルを同類にさせるわけにはいかない。
『孤独…一人ぼっちになるってことか?』
『あぁ。だから俺は戦いを止めた。ユウェルにそうなって欲しくないからな』
『タク…』
俺は両手の剣を握りしめて、構えを取る。
『いくぞ。ユウェル。ファフニールに教えてやるんだ。一人の力より二人の力のほうが強いって当たり前のことをな!』
『うん!』
ファフニールはフロッティを二本だし、俺たちのドラゴン同士の負けられない戦いが始まった。




