#1426 地竜の山での決闘試合
ユウェルが武器の修復が終わると虎徹からの舐め舐め攻撃を受けている。自分の刀が元通りになって、相当嬉しいみたいだ。
「わかった! もうわかったから! やめるんだ! 虎徹! タク! 見てないで止めてくれ! 時間が大変なことになっているんじゃないのか!」
「それを言われると辛いところだな。虎徹」
「ガウ!」
「やっと終わった…涎でべとべとだぞ」
「よかったね。タクト」
なぜリビナが俺によかったのか聞いて来たのか理解出来ないな。もちろん聞く事もしません。ろくな答えは返って来ないからね。そんなわけで俺たちのこの山の最後の山登りが始まった。敵襲はないと思っていると山から流れている滝を見つけた。
「タク」
「あぁ…タラスクが来るぞ」
俺がそういうと山に地震が発生する。しかし現れたのはタラスクではなかった。地面から黄金のドラゴンの首が現れて、俺たちに襲い掛かって来た。こいつを俺は知っていた。
「九頭竜!?」
八岐大蛇の進化先であるドラゴンだ。八岐大蛇が最初に出て来た時点で警戒するべきだったか。そして九頭竜の奇襲で陣形が乱れた俺たちに滝を破壊してタラスクが現れると黒鉄に突撃して、黒鉄を回転激突でぶっ飛ばした。
本来なら負けないんだろうけど、足場を九頭竜に破壊されたのが痛かったな。更に空から敵襲が続く。騎士甲冑に身を包んだ六つの腕に剣を持つ緑色のドラグーンが虎徹に襲い掛かる。
『武器好きとお見受けする! いざ尋常に勝負!』
奇襲されたところに更に襲撃している時点で尋常に勝負してねーよ!
「くそ! ん? なんだ!? この魔力の高まり…まずい! 全員、逃げろ!」
俺たちの場所に光の砲弾が飛んで来る。それをユウェルが受け止めたが大爆発に包まれる。
「うわーーー!? こ、これは!?」
「タスラム!?」
俺たちがよく知っているタスラムの砲撃だった。
『ほぅ…タスラムの一撃に耐えるか。随分成長したじゃないか。お前ら。今日まで待った戦い甲斐があったぜ!』
タスラムを口から出していた俺たちとかなり縁が深い黄金のドラゴンが空を飛んでいた。
「ファフニール!?」
『おうよ。ドラゴニックマウンテンにお前たちがやってきたことを聞いてな! 遠路はるばるやって来てやったぞ!』
来るにしても土のドラゴンとして現れるのか。邪竜だから闇の可能性が高いと思っていたがこのゲームだと洞窟に引き込まって、武器を集めているドラゴンのイメージが強いから土のドラゴンの要素のほうがファフニールは強かったわけね。
『行くぜ! フロッティ!』
「「「「ギャオオオ―――!」」」」
「グオォオオーーー!」
「ひとまず自己判断で対処してくれ!」
それほど今の状況はよろしくない。完全に相手の奇襲が決まってしまい、みんなバラバラの状況だ。
『ドラゴンクロー!』
「く…! おぉー!」
ファフニールは自分の愛剣であるフロッティを取り出すと俺に向かってドラゴンクローで叩きつけて来た。細剣でする攻撃じゃない。俺は旭光近衛で弾き飛ばしてまずは距離を取る。
『うぉ! はは! 人間が我をパワーで負かすか! いいぞ! 戦いはこうじゃないと面白くない!』
タラスクに押し潰されている黒鉄は両腕をロケットパンチで左右に飛ばすと念動力と必中の効果でロケットパンチは向きをタラスクに変えるとそのままタラスクに決まる。しかし高速回転するロケットパンチを喰らってもタラスクはびくともしなかった。
ここで黒鉄は超変形で足と背中にロケットブースターを作り出すとジョット噴射で強引に空に移動するとそのまま九頭竜に突撃した。流石に九頭竜とぶつかりたくは無かったのかタラスクはここで黒鉄から放たれた。
この黒鉄の突撃でみんなも引くことができた。そしてタスラムで吹っ飛ばされたユウェルと合流する。ここで改めて識別する。
黄金邪竜ファフニールLv88
ボスモンスター 討伐対象 アクティブ
原始聖竜タラスクLv85
召喚モンスター 討伐対象 アクティブ
九頭竜Lv82
召喚モンスター 討伐対象 アクティブ
戦国騎士竜ウォーニングドラグーンLv84
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
うん。出会った時にファフニールに襲われていたら、確実に負けてたね。ぶっちゃけここまで強いと思っていなかった。しかしそれはしょうがない事だ。出会った時のファフニールと放って来る殺気の質が全然違う。
「あの時は俺たちが弱かったから手を出して来なかったのか?」
『いいや。お前たちには利用価値はあったからな。それを優先したまでだ。弱い人間と戦う気がしないことは事実だがな。強い我が弱い者と戦って殺しても何の意味もない。強者と戦ってこそ戦いは意味がある!』
「否定はしないよ」
『強くなったお前たちならそういうだろうな。そこで一つ提案がある』
おや?これは珍しい流れだけど、ここでの提案は何となくわかるな。
『我はお前とそこの土のドラゴニュートとの対決に興味がある。同じく九頭竜はラードーン。ウォーニングドラグーンはそこの虎。タラスクはゴーレムに興味がある。この組み合わせて勝負する気はないか?』
まぁ、こういう対決方式を提案してくるよな。
「ボクが入っていないんだけど?」
『ふん。切り札を使った貴様などに興味はないわ。それとも我らの対決に口を挟んで足を引っ張りたいか?』
リビナがカチンと来るが深呼吸をして落ち着く。ムキにならないのは意外だな。これを成長した証拠か。
「ふぅ。確かに援護くらいしか出来ないことは事実かな? どうするの? タクト。タクトの判断に任せるよ」
「その提案を受ける。連携されたほうがずっと不利だからな」
『よく状況を見えているじゃないか。我らが同時に戦うと邪魔になることがあるだろう。順番に戦うのがいいだろうな』
「「「シャー!」」」
ファフニールの提案を聞いたストラと九頭竜がお互いに声を挙げて、威嚇し合う。どうやら最初のカードは決まったらしい。するとストラが俺を見て来る。
「本気を出していいぞ。ストラ。それだけの相手だと思うからな。虎徹も黒鉄もこの勝負でたぶん命農龍王ライフドラゴンに挑めるかが決まる。手加減は無用だ」
「「「シャー!」」」
こうしてストラと九頭竜との戦いが始まる。九頭竜は八岐大蛇やヒュドラと同様に飛行する手段はない。ただ現時点で九頭竜はそれぞれの首が地面から出している状態で胴体は地面に潜っている。これが九頭竜の戦闘スタイルだ。
桜花に出現が確認されている九頭竜も身体を出す事はしないらしい。これは自分の巨大な胴体が弱点になっていることを知っているが故の判断だろう。地中を潜って胴体を狙って来るならそれならそれで地中戦闘は九頭竜の得意分野なので問題はない。
こうなるとストラと九頭竜との対決がどうなるかは大体分かる。空を飛ぶストラと地上から攻撃する九頭竜との対決だ。
「「「「「シャー!」」」」」
お互いに手始めにブレスを撃ち合う。威力は互角。しかし手数では首が多い九頭竜に分がある。これに対してストラは回避が間に合う距離から攻撃を行う。ストラからすると空での機動力で勝負するしかないからな。
しかしストラも巨体だ。流石に手数が多い九頭竜の攻撃を全て躱すのは不可能だ。相手が本人ばかり狙ってくれるなら可能なんだけどね。流石に九頭竜のレベルになると逃げ場を潰す撃ち方をして来る。
「「「シャー!? シャー!」」」
ブレスを喰らったストラが叫ぶと焼尽が発動する。本来なら流星群や雷轟で勝負したい所なんだけど、九頭竜も流星群を持っており、雷無効があるので使えない。
「「「「シャー!」」」」
ストラの焼尽に対して九頭竜は火山弾を撃って来た。威力で勝る火山弾がストラに飛んで来るが斥力場でストラは防いだ。しかし状況から見て、ストラが追い込まれていることは事実だ。恐らくストラはこの事態になることが分かっていて、俺の本気を出す許可を求めていたんだと思う。
「「「シャー!」」」
ここでストラは火砕流を発生させるとその隙に切り札を使用する。九頭竜は火砕流を黄金障壁でガードするだけで火砕流の直撃で発生した視界妨害を防げなかった。九頭竜は山のドラゴンで一応風のスキルや雹などの天候スキルを有しているのだが、火砕流を完全に防げるようなスキルは持っていなかった。
火砕流が消滅すると地面から無数のドラゴンの首が出現する。これで条件がほぼ九頭竜とストラは同じとなった。圧倒的に違うのは首の数だ。ここからストラの反撃が始まる。
「「「「「シャー!」」」」」
圧倒的な数の暴力をストラは見せつける。まるで先程までの仕返しをしているようだ。次々ブレスや目から光線、直接の噛みつきなどで九頭竜を追い込んでいく。しかしこのまま押しきれる相手では無かった。
九頭竜はここで土石流を発動させて、ストラは全ての首が逃げきれずに巻き込まれてしまった。この辺りは多頭竜の弱点だよな。全ての首が個別ではなく、あくまで一つの生命体だ。一つの首が流されたら、それに引っ張られるものだし、生命力も共通だ。
ぶっちゃけると一つの首に攻撃を集中するだけでこのゲームの多頭竜は倒すことが可能なんだよね。最も首が邪魔過ぎるし、生命力が共通だから別々の首を攻撃したほうがダメージは与えやすいからみんな一つの首に集中砲火で倒す倒し方はしないんだけどさ。
ここで九頭竜も神格解放を発動する。九頭竜は日本では九頭龍神社があることから神格化されている。このため九頭竜は超覚醒ではなく神格解放が切り札となっていた。
神格解放を使った九頭竜は首に七色の数珠と注連縄が装備され、首が更に太く巨大に変化した。これが九頭竜の本気の姿だ。流石に九頭竜の首が増えるなんてことは起きない。その瞬間に九頭竜じゃなくなるからね。
「「「「シャー!」」」」
お互いに本気の姿でのバトルが始まる。この勝負を見るとどんな勝負かはっきりわかる。ストラは首の多さを増やし、九頭竜は首単体を強さを増した形だ。
神の力に目覚めた九頭竜は時空断層を展開してストラの噛みつき攻撃を防ぐ。これは困った。ストラに時空切断などの時空断層を破る手段はない。そして九頭竜の噛みつき攻撃でストラの首が三本同時に噛み千切られた。
しかし不死身と強化復活の効果でストラの首は何度も復活する。
「タクト…この勝負、決着が付くの?」
「わたしもこの勝負が決着つくとは思えないぞ」
「そうか? 俺はストラが勝つと思うが?」
「「え?」」
確かにこの本気状態では決着が付く事はない。勝負は切り札が切れた後だ。先に使用したストラが元の姿に戻る。当然その隙を九頭竜側は狙って来る。ここでストラは逃げを選択した。本気状態の相手に挑むほど、ストラは馬鹿じゃない。
しかしこれは最初の時と流れは同じだ。九つの首のブレス攻撃がストラの逃げ場と奪いつつ、正確にストラに命中される。そして空から雹と流星群、神撃が降ってきて、ストラは地面に墜落すると九頭竜の九つの首の口に星核と地核スキルが発動されるとストラに炸裂した。
「「ストラ!?」」
「タクの嘘つき! ストラが負けちゃったぞ!」
「そーだ! そーだ! タクトの嘘つき!」
「落ち着け。リビナ、ユウェル。ストラが不死身の怪物であることは元から変わらない」
俺がそういうと消し飛ばされたストラは蘇生する。そして九頭竜はここで神格解放の効果が切れた。しかし九頭竜はストラに止めを刺す際にわざわざ接近して至近距離から確実に攻撃を当てて来た。その判断が勝負を決定づける事になる。
「「「シャー!」」」
ストラがここで接近戦を挑み、九頭竜の首に噛みつく。これに対して九頭竜は噛みつきを返して首を噛み千切り、更にストラの羽や足、体まで噛みついて来た。しかし強化復活でストラは復活する。そしてまた噛みついた。
ここで全員が理解した。死ぬことが無い無限に蘇生、復活するストラに九頭竜は勝てない。そしてストラの強化復活の効果で九頭竜へのダメージが徐々に増加していき、ストラの身体も頑丈になっていく。
「「「「「シャー!」」」」」
「「「シャー!」」」
それでもなおお互いが噛みつき合い、スキルを撃ち合う。これは同じタイプのドラゴン同士がどちらが強いか決めるプライドバトルだ。故に死ぬ最後の時まで九頭竜は戦う事を止める事は無かった。
「「「シャ…シャ…シャー――!」」」
ストラの勝鬨が上がる。結果から見るとストラが本気を出す必要性は無かったのかも知れない。それでも俺はこの二匹のドラゴンの全身全霊を掛けた戦いを見れて良かった。何よりこの勝負はストラをまた一歩強くさせることになるだろう。何せ本気の姿を出して手も足も出なかったことはストラになってはかなりショックだったはずだ。それでもなお勝利を手にしたことはきっと財産になると思うんだよね。
『いい戦いだったな。さて、次はどうする?』
「ガウ!」
『拙者に武器を向けるか…その意気やよし! 受けて立たせて貰おう!』
虎徹が志願したことで戦国騎士竜ウォーニングドラグーンとの勝負が決定するのだった。




