#1409 火竜の名持ドラゴンラッシュ
俺たちが先に進むと予想通り戦闘は激化していった。ドラゴンたちとサラマンドラの混成部隊が襲い掛かって来て、非常に戦い辛い。何せサラマンドラと接近戦をしていても普通にドラゴンたちが乱入して来るからプレッシャーを結構感じている。一発の破壊力がある敵だからこそ油断することは出来ない。当たればその瞬間、負ける可能性があるのだ。戦いにはこういうプレッシャーのかけ方もあるんだと再認識してしまう。
ここで地面が大きくひび割れる。俺たちが避けるとその場所が噴火し、中から新たなドラゴンが現れた。
火山竜ボルケーノドラゴンLv80
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
四足歩行のドラゴンで鱗は黒くごつごつで背のあちこちに噴火口があり、そこから溶岩が流れているドラゴンだ。そしてもう一体俺たちの背後から放射熱線の拡散光線をぶっ放して来たドラゴンが現れる。
破壊竜デストロイヤードラゴンLv80
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
こちらは二足歩行で真紅色の鱗を持つドラゴンで身体中にルビーのような宝石があり、胸には炉心のようなものがあるドラゴンだ。これで終わりかと思ったが次は空から危険が知らせられて、俺たちは回避行動を取ると日輪の閃光が俺たちがいたところを貫いた。そして火山噴火で灰色に染まった空から新たなどころが現れた。
太陽火竜ソーラーコアドラゴンLv80
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
二足歩行で美しい紅色のドラゴンだ。このドラゴンの胸にも炉心はあるが破壊竜デストロイヤードラゴンは真っ赤に燃えている炉心でこちらの炉心は白い光を放っている。これで終わりかと思うとジークが唸り声を挙げると山肌からドラゴンブレスが放たれ、そこから遂に難関のドラゴンが現れた。
赤軍天竜ウェルシュドラゴンLv85
召喚モンスター 討伐対象 アクティブ
明らかに難易度が風のドラゴニックマウンテンより上がっている。
「タクト? どうするのかしら? 予定とだいぶ違うわよ」
「あぁ…ウェルシュドラゴンは予定通り俺とジークでやる。ボルケーノドラゴンは燎刃、デストロイヤードラゴンはファリーダ、ソーラーコアドラゴンは恋火と和狐で挑もう。大変だと思うがウェルシュドラゴンから距離を取らせてくれ」
俺たちはそれぞれ別れて襲い掛かる。この指示にはウェルシュドラゴンの軍略スキルが関係している。軍略スキルで味方がいるほど強くなってしまうので、基本戦術は弱い味方から倒していき、ウェルシュドラゴンの強化の効果を下げていくことが大切だ。
それに加えてウェルシュドラゴンは強力なバフのドラゴンだ。当然その本気状態にも厄介なスキルが存在している。それを封じるためにもウェルシュドラゴンから距離を取らせることがウェルシュドラゴン攻略の第一歩となる。
燎刃がボルケーノドラゴンに真っ向から襲い掛かるとボルケーノドラゴンは口から火砕流を発生させる。
「皆さん! 逃げて下さい! っ!?」
「ゴア―!」
空に逃げた燎刃にボルケーノドラゴンが背中にある噴火口から連続で火山弾が放たれた。それを避けていた燎刃だったが突然火山弾が爆発し、火山弾が飛び散ったことでダメージを受ける。爆発の魔眼で上手く爆破させたようだ。
燎刃も抵抗するが同じ属性同士が遠距離で決するのは難しい。お互いに火属性が効かないし、お互いに炎熱支配を持っているからね。もちろんこのクラスのドラゴンになると耐性無効持ちがあり、遠距離でも勝つ可能性はあるが燎刃はそういうタイプじゃない。
「折角貰えたこの武器、試させていただいきます! 爆竜解放!」
爆発竜人族の大剣から紅のオーラのドラゴンが現れる。そして燎刃が突撃すると飛んで来る火山弾を全て爆破し、そのままボルケーノドラゴンに一撃を与えた。しかし燎刃の表情はよろしくない。
「…硬い」
「ゴア―!」
「く…きゃ!? この!」
ボルケーノドラゴンが二足で立ちがあると前の両爪で燎刃を踏みつけるように爪が振るわれるがこれは流石に燎刃は回避したが地面に両足が踏みつけられた瞬間、猛爆に襲われる。それでも怯まず燎刃は接近戦を挑んで次々爆発が発生する。
『ここで引いても同じことの繰り返し。ならばこのまま接近戦で押し切る!』
「はぁあああああ!」
「ゴア―!」
足元を動き回りながら斬りまくる燎刃に対してボルケーノドラゴンは猛爆で対抗しているとここで背中の噴火口から大噴火スキルが発動する。しかし燎刃に逃げる素振りが無い。このまま倒しきるつもりだ。
「ゴア…」
燎刃の覚悟を知ったボルケーノドラゴンは身体の側面の至る所から白き煙を発生させる。火山ガスだ。火山ガスは数百度の温度に加えて、毒性をもつ成分や酸欠で死ぬ可能性がある。この設定はこのゲームにも適応されており、触れていると火属性の継続ダメージに加えて火傷と毒の状態異常、更に水中や宇宙空間で適性が無い時と同じように呼吸が封じられる。
「すぅぅぅ…んんー!」
燎刃は大きく息を吸い込むと火山ガスの中で怒涛の攻撃を見せる。これに対してなんとか燎刃を離れさせようと攻撃を続けるボルケーノドラゴンだが燎刃に攻撃が当たる気配がない。
「んん~…ん! ぷは!」
「ゴア―!」
ここで呼吸の限界が来て、燎刃が距離を取る。その瞬間を狙って、溶ブレスと背中から大量の火山弾を放ってきた。これに対して燎刃は全て潜り抜けて、爆発竜人族の大剣を一振りすると多乱刃が発動して、ボルケーノドラゴンが倒れた。防御力と不屈で燎刃の攻撃を耐えていたが最後は多乱刃の連続攻撃で不屈が耐えられずに終わった形だ。燎刃はそれを理解した上で距離を取ったな。あのまま続けていたら、どうなっていたかわからなかっただろう。あの場面で確実な勝利を選んだ燎刃の勝利だ。
燎刃が戦っている頃、ファリーダもデストロイヤードラゴンとの対決に挑む。
「はぁ!」
「ギャオオオオー!」
イフリートバトルアックスとデストロイヤードラゴンの爪が激突し、大爆発が発生すると激しい接近戦の応酬となった。斬りつけるファリーダに対してデストロイヤードラゴンは巨体を活かしてファリーダに体をぶつけて来た。
ファリーダが距離を取ると爪と尻尾の攻撃が来る。かなり戦闘慣れを感じるな。そして破壊竜の本領の発揮される。ファリーダが武器を見ると耐久値がやばい事になっていた。
「なるほどね…灰燼スキルがあるから接近戦に自信があるってことかしら?」
これで武器はかなり使いにくくなった。しかしこの程度でファリーダを止められるはずがない。
「それならこっちは拳で戦わせて貰うわ! シャイターン・ラッシュ! デモンクラッシャー! 」
「ギャオ!? グゥウウウ! ギャオオオー!」
拳のラッシュと爪が激突するがファリーダのラッシュのほうが速く、拳が次々決まると強烈なデモンクラッシャーを叩き込んだ。ぶっ飛ぶデストロイヤードラゴンだが耐えるとドラゴンブレスと共に体の宝石から追尾光線の拡散光線を放ってきた。
ファリーダはドラゴンブレスは躱すが追尾光線は躱せず、腕をクロスさせて、正面から受け止めた。そして爆煙から飛び出すとデストロイヤードラゴンが襲い掛かる。ここでデストロイヤードラゴンは逆鱗を発動させて、ファリーダと真っ向勝負を挑んだ。
最初は両手に核撃を作り出し、激突した後に激しい殴り合いとなったが徐々にデストロイヤードラゴンだけに拳が決まるようになる。ファリーダがカウンターを叩き込んでいるからだ。これに対してドラゴンフォースが使用されて、デストロイヤードラゴンのスピードがアップしたがファリーダは冷静にカウンターを決めていく。
「グゥ!? ギャオオオ! ッ!?」
ドラゴンクローを使用して、大振りしたデストロイヤードラゴンに対してファリーダは転瞬を使用して、上を取る。デストロイヤードラゴンは目の前で使われたことで完全に姿を見失っている。
「デモングランドクラック!」
「ギャ!?」
「中々激しかったけど、まだまだね。破壊を司るなら人や町の破壊で満足していてはだめよ。世界くらい破壊しないとね。黒星!」
最後は黒星が直撃して、消し飛んだ。
太陽火竜ソーラーコアドラゴンと恋火、和狐との勝負は二人が觔斗雲に乗って、上空で戦闘が行われることになった。最初は身体中から日光の光線が拡散光線で放たれて、更に目から放射熱線で放たれた。
これを回避した恋火たちは恋火が先に襲い掛かると両者が激突する。
「まぶし…ッ!?」
ソーラーコアドラゴンが閃光に包まれると恋火は目を瞑り、武器の入れている力も弱くなってしまった。その隙にソーラーコアドラゴンに恋白と恋輪を弾き飛ばされてしまう。そして爪が恋火に迫るが和狐が投げた白蔵主の錫杖が目に飛んできたことでソーラーコアドラゴンは追撃を諦めて回避を選んだ。そして恋火は弾き飛ばされた武器を回収する。
「大丈夫どす? 恋火」
「助かりました。お姉ちゃん」
「接近戦は厳しいそうどす?」
「いえ、光ると分かれば大丈夫です。タクトお兄ちゃんから目が見えなくても戦う方法も聞いて訓練もしてますから」
恋火は本当に俺の真似をしたがるからな。生産作業をしている裏とかちょっとした空いた時間にこそ練をしていたりする。因みにリリーたちは全部知っていて、話を聞いて一緒に真似しているがそれは遊びな域で真剣にやっているのは恋火以外だと燎刃と千影くらいだと思う。
そして恋火は挑むことになるのだが、ここでソーラーコアドラゴンは両手に白熱刃を作り出して、更に溶断まで使用して恋火に斬撃での勝負を挑んで来た。そこで恋火はソーラーコアドラゴンはどういうドラゴンなのか理解する。
『このドラゴンさん、上手いです』
恋火と斬撃を繰り広げるほどに上手かった。小回りが利く恋火に対してソーラーコアドラゴンはパワーで押し、引くところはしっかり引くことで恋火の追撃を阻止している。明らかに他の火竜と比べて理性的だ。
恋火としばらく斬撃の応酬したが徐々に押し始める。恋火がパワーをいなすようになり、懐に積極的に飛び込み始めたことでソーラーコアドラゴンは後手に回っている。このことから防御力とスピードにそこまで自信がないことが伺える。
ここでソーラーコアドラゴンは烈日を発動させて、恋火を強引に引かせると拡散光線とドラゴンブレス、空から日輪を使用して遠距離戦を挑んで来た。しかし遠距離戦には和狐がいる。
「「「「ディメンションフォールト!」」」」
『『『『ディメンションフォールト』』』』』
『『『『ディメンションフォールト』』』』
和狐は遠距離攻撃を全て弾き返してみせた。火竜の中でもソーラーコアドラゴンは恐らく筋力、魔力、器用値が高いタイプのドラゴンなのだろう。スキルの威力が他の火竜たちと比べて高く感じた。それを返せる和狐も流石だ。そして恋火は和狐の援護を信じて飛び込んでいる。
「グゥ…ギャオオオー!」
「やぁあああー! ッ!?」
ドラゴンクローで迎え撃つ態勢を取っていたソーラーコアドラゴンが光となって消えると身体が再構築され、恋火を手で捕まえた。そして和狐を見ながらドラゴンノヴァの態勢となる。すると和狐が白蔵主の錫杖を構える。
「シフトチェンジ!」
「転瞬! 星光刃! 溶断! 雲耀!」
和狐と恋火が入れ替わったことで和狐が捕まり、恋火が自由になる。そして和狐が何をしようとしているのか察していた恋火はすぐさま反応し、和狐が捕まっている腕を斬り落として和狐を解放した。しかしドラゴンノヴァは止まっていない。
「ギャ!? ギャオオオー!」
「遮断結界!」
ドラゴンノヴァが炸裂する。しかし和狐は見事に防いで見せた。そして和狐が防いでくれることを信じていた恋火は息を吸い込んでいる。
「太極ブレス!」
「ハーミットテイル!」
「ミーティアエッジ! グランドサザンクロス!」
太極ブレスが炸裂すると和狐がハーミットテイルで拘束し、恋火が距離を詰めて、連続で斬りまくて、グランドサザンクロスを斜めに打ち込んで下にぶっ飛ばす。
「千本鳥居!」
「「太極ブレス!」」
最後は和狐が千本鳥居で逃げ場を封じて二人同時の太極ブレスが炸裂して、ソーラーコアドラゴンは倒された。これでウェルシュドラゴンの討伐準備は出来た。いよいよアーサー伝説で有名な二匹のドラゴンがドラゴニックマウンテンで激突する。




