#1397 セチア対ケイローン
俺たちが次の部屋に行くとそこは日差しが入る森の中だった。そして俺たちが先程まで話していたケイローンが鎧を着て登場した。識別するとちゃんとアクティブになっている。
「私が射手座の試練の最後を務めさせて頂きます」
「よろしくお願いします。あなたの相手をするのは彼女です」
俺はセチアを召喚した。これにケイローンは驚きの様子を見せた。
「あなたの相手をするものだと思ってましたよ」
「俺も相手して見たかったんですがそれよりもセチアとあなたの真剣勝負を見てみたいと思ってしまいました」
「なるほど。同じ弓使いで魔法使いでもある。私とあなたは確かに共通点が多そうですね」
「私もそう思います。タクト様の召喚獣で賢者担当と言えば私ですから」
イオンやアリナなどの抗議の声が聞こえた気がした。セチアがエターナルマウニラバーを構えて、スコーゲンタクトとアドマイアタクトを展開する。これに対してケイローンも杖と魔導書を展開した。
俺としてはこの戦闘はきっと今抱えているセチアの問題に一つの答えを教えてくれるものになると思う。さぁ、注目の戦闘が始まる。最初に仕掛けたのはセチアだ。
「ファントムフォレスト!」
森が霧に包まれる。これに対してケイローンも魔法を使用する。
「ダウンバースト!」
強烈な下降気流で幻を発生させる霧が吹き飛ぶ。それをセチアは読んでいた。
「寄生木!」
『『『『『レールガン』』』』』
セチアが出した寄生木がレールガンとなって、ケイローンに飛来する。
「「ランパード!」」
これに対してケイローンはランパードの壁を二枚展開して、寄生木のレールガンを防いだ。威力を完全に見切っているな。ここでケイローンはランパードの壁をジャンプで飛び上げる。
「マジックバスター!」
「ディメンションフォールト!」
「おっと…いい判断ですね」
セチアはマジックバスターをディメンションフォールトで跳ね返したがこれは避けられる。そしてお互いに多種多様な詠唱が短い小魔法を撃ち合う。小魔法と言ってもセチアたちが使うと数が多く中魔法と規模にあまり変わらない。お互いに大魔法を使うために牽制している。
ここで動いたのはセチアだ。セチアは森の中に走るとケイローンの射線を切った。それを見たケイローンはここでセチアに急接近した。
「はぁ!」
ケイローンは杖を振りかぶって、殴りつけて来た。
「っ!? はぁ! っ!? く!?」
セチアは避けて、反撃に杖で攻撃するがケイローンは狙われた前足を上げて、躱すとそのまま地面を踏みつけて、衝撃放射でセチアを吹っ飛ばした。そしてケイローンは杖を振りかぶって、セチアに追撃に出る。
ここでケイローンが地面に魔方陣が展開される。ケイローンは脱出スキルで茨の蔓から逃げた。しかし背後に迫っているフォレストウォーリアーたちの襲撃を受ける。すると後ろ足でフォレストウォーリアーを蹴り飛ばすと回転して、フォレストウォーリアーの攻撃を杖でガードするとあっさりぶっ飛ばしてしまう。
「「「「「ブロッサムストーム!」」」」」
大量の桜吹雪がケイローンの背後から襲い掛かるがこれは神足通で避けられる。
「今のがエルフの秘術ですか…ふふ。面白い。最初の拘束魔法を受けていたら、木の兵士たちの攻撃を受けた上に彼女の大魔法を受けることになってましたね。恐ろしいのが森の中に移動したあの一瞬で魔導書を飛ばして罠を仕掛けた。しかもその罠は私の襲撃を予測した上に吹っ飛ばされるのも全て計算されていたところですね」
「ルートスクイズを読まれた…あのケンタウロス、精霊眼を持っているんですか」
ケイローンはクロノスとニュンペーであるピリュラーの子供だ。つまりケイローンは神と精霊のハーフという事になる。なぜケンタウロスの姿になったかはクロノスには正妻がいたことが原因だ。正妻の目を逃れる為にクロノスが姿を馬に変えて、ピリュラーと交わったことでケイローンはケンタウロスの姿で産まれたということになっている。
この結果に嘆いたピリュラーはゼウスにお願いして木に転身した。こうしてケイローンは育ててくれる存在がいなくなり、母の代わりにケイローンを育てたのが神々となったというのがケイローン出自の伝説だ。なのでケイローンには神瞳と精霊眼の二つは確定で持っている。
セチアとケイローンはお互いの実力を再認識したところでケイローンが再びセチアに向かって突撃する。エルフを相手に接近戦を挑むのは賢者として当然の選択だ。ましてやケイローンはケンタウロス。パワーもスピードもあるからこの選択は合理的な判断と言える。
「「樹海支配!」」
セチアが森を操り、ケイローンの突撃を妨害しようとしたがケイローンも森を操り激突する。このゲームではピリュラーは先程話した伝説から木属性の精霊という設定になっている。なのでケイローンも木属性のスキルを使える。この勝負は互角に終わる。
しかし互角に終わると言うことはケイローンの接近を許すということだ。ケイローンは木々の隙間を通り、セチアに杖を振りかぶるとなんとセチアは受けて立った。当然パワーで負けるがセチアは杖を構える。完全に接近戦を挑む目付きだ。
「わかりませんね…なぜ距離を取らないのですか? スピードで負けていても遠距離攻撃を挑むべきだと思うのですが?」
「そうですね。私もそう思います。でもそれじゃあ、今までの私と一緒なんです。折角あなたが杖で接近戦をしてくれると言うなら私も挑みたいと思います」
「なるほど。彼が私の相手にあなたを選んだ理由が分かりましたよ。道理で懐かしい感じを受けたわけです。私が教えている頃のアキレウスやアスクレピオスと同じ目をしていますよ」
セチアがその二人と同じ目をしているならセチアには英雄の資質があるってことかな?これを知ったケイローンは本気でセチアと接近戦をする。ケイローンの武術は凄まじい物があった。基本は力任せの攻撃なのだが、セチアが反撃に出ると急に杖を巧みに操りガードして、カウンターを仕掛けて来た。
パワーとスピード、技術と思考の融合している者が接近戦を制する。これをケイローンは高レベルで実行している。セチアは追い込まれる一方だ。それなのに更に馬からの蹴りに格闘戦まで組み合わせて来た。
流石にセチアは全部対処しきれずに次々ケイローンの接近戦のコンボ攻撃がセチアに決まってしまう。ケイローンは俺と本当に似ているタイプだ。魔法使いでありながら接近戦が得意でその上、速さがあるから魔法使いからすると本当に始末が悪いと思うよ。
「く…」
「終わりです!」
「力の…ルーン!」
「む!?」
ボコボコにされていたセチアがケイローンの杖の攻撃を止める。
「速さのルーン!」
更にセチアの急に早くなり、ケイローンの懐に潜り込むと片手をケイローンに触れる。
「石波動!」
「ぐわぁあああああ!?」
セチアが持つエターナルマウニラバーには無限のルーンが刻印効果で付与されている。それを上手く使ったな。そしてセチアは魔方陣を一気に展開する。
「「「「「ウルトラバイオレットレイ!」」」」」
「「「「「レッドスプライト!」」」」」
『『『『『ナパーム』』』』』
『『『『『ミーティア』』』』』
『『『『『ツイスター』』』』』
この魔法を見たケイローンも切り札を切る。
「やむを得ませんね。時間停止!」
時間が止まるとケイローンはセチアに接近して、時間停止が解除させるとセチアの腹に神拳が決まると空を飛んだセチアにケイローンは追尾すると杖を叩きつけて、地面に墜落させた。ここでセチアは力尽きて、奇跡の効果が発動する。
「時間まで操るんですね」
父親であるクロノスの力だ。これを知ったセチアは遂に武器を神弓シャールンガに変えた。奇跡を使ってしまった以上、もはや勉強の時間は終わりだ。セチアが取り出した武器とセチアの本気の気配をケイローンも感じ取り、武器を弓に変えた。
そしてケイローンは前に出るとセチアが狙撃してケイローンが前に出るのを防ぐ。これに対してケイローンも弓矢を放つ。セチアが走って躱すと木の後ろに隠れて、狙撃するとケイローンも森を走り、攻撃を躱す。
ここからはお互いに森の中を移動しながらの弓矢の撃ち合いだ。
「魔法もよく鍛えられていましたが弓矢も強いですね…」
ケイローンはセチアの弓矢の撃ち合いは負けていた。まず単純にケイローンのほうが体が大きい分、隠れるのが辛く、当たる面積が大きい。その上で弓の性能差まで出ていた。
ケイローンの弓も普通の弓ではなく、アルテミスに狩猟を学んだことからアルテミスの弓とアルテミスの弓矢を装備している。しかしヴィシュヌが持つ神弓シャールンガが相手では流石に分が悪すぎた。圧倒的な弓矢の威力の差が出ている。
かと言って弓矢を装備したセチアが簡単に接近をさせてくれるほど甘い相手ではないことを相手にしているケイローンが一番理解しているはずだ。
「弓矢での勝負は負けを認めましょう。流星群!」
「惑星!」
流星群が降り注ぐセチアに対してケイローンには惑星が落下してくる。これも威力の差があり過ぎる。神弓シャールンガという武器が力関係を完全にぶっ壊してしまった。これを持ち前の速度で逃げるがセチアは次々弓矢を放つ。これをなんとか撃墜するが次はセチアの魔導書から魔法が放たれる。
これは避けられず、精霊結界でガードするが吹っ飛ぶ。こうなるとセチアの魔法ラッシュは止まらない。
「星座魔法! アルゴ!」
「時間停止!」
再び時間停止でケイローンは避けるとセチアに有利性を証明した接近戦を挑む。そしてセチアに襲い掛かろうとした瞬間、セチアが持つ弓矢が格納の効果で変化する。セチアは時空支配を覚えていないが神弓シャールンガが時空支配を持っていた。
「(しまった!? 誘い込まれた!? しかもあの弓矢はまずい!? 心眼!)」
ケイローンはセチアが直接突き刺そうとした弓矢を心眼で回避する。しかし次の瞬間、セチアは神弓シャールンガに手に持っている異星海蛇のミストルティンをつがえて射る。これをケイローンは避けられずに命中する。
ケイローンはヘラクレスが使ったヒュドラの毒が塗られた弓矢の誤射が原因で死ぬことになる。正確には死ねずに苦しむことに耐えきれなかった形なんだけどね。不死身というのは本当にいい事ばかりじゃない。死もまた救いになるとケイローンの伝説は伝えていると俺は思っている。
これでもうケイローンの蘇生はない。しかしここでケイローンも意地を見せた。魔導書が射手座を描く。これにセチアも答える。
「星座魔法! サジッタ!」
「神弓シャールンガ。伝説解放!」
神弓シャールンガ(伝説解放):レア度10 弓 品質S+
重さ:100 耐久値:17000 攻撃力:10000
効果:英雄技【バルガヴァストラ】、魔神殺し、破魔、神気、万物破壊、自動修復、時空支配、時間停止、時空切断、領域破壊、領域支配、星矢、無限連射、光速激突、粒子分解、星光刃、神障壁、時空断層、後光、神雨、陽光、慈雨、浄化、次元震、烈日、日輪、全波動、帰還、回帰、神撃、光化、奇跡、防御無効、耐性無効、加護無効、光球、惑星、天変地異、神域、神威解放、原初の加護、創造神の加護
インド神話の創造神で維持を司るヴィシュヌが持つ光の弓。太陽の力と宇宙最強のアストラを宿している弓で力を解放するとビックバンに匹敵する一撃を放つことが出来る。弓の武器の中でも最強クラスに位置している。
終わりだな。セチアが必殺技の構えを取るととんでもない赤雷が発生し、弓矢に力がチャージされていく。
「英雄技! バルガヴァストラ!」
赤雷の弓矢が放たれると星座魔法のサジッタの弓と激突し、バルガヴァストラはサジッタの弓をあっさり貫通するとケイローンに突き刺さると空が赤雷の放電に包まれる。これがインドラストラを超えると言われているパラシュラーマがカルナに授けた矢の一撃だ。
黒焦げになったケイローンが地面に落下して、倒れ込むとケイローンの体が光となって消えて行く。
「見事です」
「いや、まだまだです。杖を使ったあなたの戦闘術、色々真似させて貰います」
「えぇ…頑張って強くなってください」
そういうとケイローンは消えてインフォが来る。
『おめでとうございます。射手座の試練をクリアしました』
『称号『射手座の試練の攻略者』を獲得しました』
『セチアの雷魔法のレベルが65に到達しました。雷魔法【サンダーボルト】、【エレクトロニックレンジ】を取得しました』
『セチアの爆魔法のレベルが65に到達しました。爆魔法【ソーラーフレア】、【ニュークリアエクスプロージョン】を取得しました』
『セチアの木魔法のレベルが65に到達しました。木魔法【インファクション】、【アシッドレイン】を取得しました』
『セチアの氷魔法のレベルが65に到達しました。氷魔法【オーロラベルト】、【パーマフロスト】を取得しました』
『セチアの時空魔法のレベルが65に到達しました。時空魔法【ハイパースペース】、【ディセラレーション】を取得しました』
『セチアの樹魔法のレベルが70に到達しました。樹魔法【フォレストガーディアン】、【リーサルバイオロジー】を取得しました』
称号『射手座の試練の攻略者』
効果:オリュンポス山の試練に挑戦できる、千里眼
射手座の試練をクリアした者に贈られる称号。
セチアにとって、とても大きな戦闘になったことは間違いないね。そして樹魔法が上限に到達しなかったという事は90レベルが上限なのは確定したかな?
そして新しい樹魔法は実はユグドラシルの攻防戦で使用させていたので、詳細は判明している。まずフォレストガーディアンは木の巨人の騎士を召喚する魔法。フォレストジャイアントの上位魔法だね。
流石にムスペルたちが相手だと全然ダメだったが侵攻の邪魔にはなっていた。本来の強さがどれほどか俺も分からないので、実戦で見るのは結構楽しみに思っている。
次がリーサルバイオロジー。日本語では老朽化という意味でそのままの効果となる。木に使うと朽ち果て、生き物に使うと全ステータスがダウンし、部位破損を受けやすくなる魔法だ。これも巨人たちに使われていたが元々年寄りが多かったため、目立った効果が発揮されることはユグドラシルでは無かった。
本来はかなりえげつない魔法のはずだ。そして女性にとって、ある意味最も受けたくない魔法だろう。対象は単体なのでそこだけは注意だね。先程話した通り、元々年寄りだったり、年の概念が強さに影響を与えない神などには効果が発動しない魔法となっている。
ここでセチアが俺の所にやって来る。
「彼と戦闘は出来たのは良かったですけど、いきなり過ぎませんか? それに情報もわざとくれませんでしたよね?」
「セチアなら勝てると思っていたからな」
「思いっきり一回やられましたけど?」
「まぁ、情報を与えていれば対処出来たと思うけど、セチアも一生懸命ケイローンの戦闘を観察してたじゃないか。あれはセチアの落ち度だぞ」
力のルーンも速さのルーンももっと早くに使用出来たのに使わなかった。それは現時点での自分の実力の把握とケイローンの杖を使った接近戦を見たかったからだろう。そのせいで余計なダメージを一杯受けてしまったのが原因の一つだ。もちろん情報を与えなかった俺にも非があるね。
「はぁ…いずれにしても私が甘く見たせいですね…」
「でも、勉強にはなったんじゃないか?」
「はい! とても勉強になりました!」
「それなら良かった」
最後にケイローンが残したアイテムを鑑定すると賢者の書という魔導書が手に入った。これは大賢者の専用アイテムだ。俺たちが持っていてもそこまでの効果は発動しないので、売るとしよう。こうして俺たちの射手座の試練は終わった。




