#1387 ツィルニトラ討伐戦
本気となったイクスが一瞬でツィルニトラとの距離を詰めて、斬撃を放つとツィルニトラの姿が消えて、イクスに旋風刃が襲い掛かる。
イクスが重力と星光刃を使うことで斬り裂くと空に展開された複数の魔方陣から流星群が降ってきて、イクスの正面からウルトラバイオレットレイ、地上から火山の噴火が襲い掛かった。イクスと蒼穹は回避行動を取るが流石に魔法が多すぎる。
イクスと蒼穹が対処に回ると超低周波が二人に襲い掛かり、風気圧で二人は潰されそうになるとそこにボルケーノ、サンダーボルトが降り注いで二人は大ダメージを受けてしまった。
二人はそれぞれ動き回って、なんとかツィルニトラとの距離を縮めようとするが速さもさることながら衝撃波と風、鎌鼬や怪風による斬撃、大気壁で近距離戦に持ち込めない。
しかも吹っ飛ばしたところに魔法を展開するし、それを躱しても魔法の遠距離攻撃でジリ貧だ。しかしこの戦闘にイクスは疑問を持つ。
「天昇にドラゴンフォースを使った戦闘とは思えませんね」
この疑問はしょうがないだろう。今まで切り札を使った存在はガンガン攻めて来ていた。それと比べるとツィルニトラの戦闘は徹底してイクスと蒼穹を近付かせず、遠距離攻撃で圧倒している。
自分の魔法の腕前と相手を近付かせないことが得意な風スキル持ちで更にスピード特化タイプともなればこの戦闘が確かに正しい戦術だ。それを切り札を使ってもなお実行しているのが凄い。ドラゴンフォースの強化を魔力とスピードを得るためだけに使うなんて普通は考えないよ。俺の脳が脳筋になっているだけかも知れないけどさ。素直に称賛に値する。
ここでイクスはミアたちと共に遠距離攻撃戦で受けて立つことにした。イクスのデウススナイパーエネルギーライフルの狙撃とミアたちの連携がここで光る。ミアたちの攻撃を次々残像や蜃気楼、心眼で回避するのは凄いが手数では数で勝るミアたちのほうが上だ。そして回避しきれない所でイクスの狙撃がツィルニトラの翼に命中する。
ここで反撃でアークフレアが飛んで来ると蒼穹の氷雷がツィルニトラに決まり、イクスたちは躱したが蒼穹は相打ちという結果となった。蒼穹はかなり厳しい戦闘を強いられている。風スキルが相殺ぐらいにしか使えない状態でイクスたちを信じて攻め時を伺っている。
それはツィルニトラも同様だ。遠距離攻撃の撃ち合いで押され始めた上に翼を狙われている状況はツィルニトラにとっては非常に良くない。風竜とって、翼は生命線だからね。そこを狙うイクスはアリナの弱点をよく分析していたんだろう。
その結果、ツィルニトラが仕掛けて来た。怪風でイクスたちの回避行動を計算して、集めるとそこに爆轟を使用した結果、イクスたちが吹っ飛ばされる。そして雄叫びを上げるとイクスも神杖コズミックトラベラーを構える。
「「天変地異!」」
お互いの天変地異が激突する。暫く膠着状態となったが徐々にイクスが押される。流石に風のドラゴンが使う天変地異は威力が違うか。そして蒼穹が暴旋風で援護し、再び拮抗するとお互いに吹っ飛ぶ。
「竜魔法。エアリアルカースバインド」
吹っ飛んだイクスたちがエアリアルカースバインドで拘束される。
「終わりです。真空」
『すぅううう~…ん!』
これがジルニトラが持つ特殊なスキル。指定した場所の空気を消滅させることで範囲にいる空気が必要な生き物全てを窒息死させるスキルである。シルフィからの情報でこれを知っていた蒼穹はありったけの空気を吸い込み、窒息までの時間を稼ぐ。
「いつまで持つか見ものですね。っ!?」
イクスたちが一斉に武器を構えるとツィルニトラに攻撃が炸裂する。真空スキルの弱点は自分の風スキルや魔法も消してしまうことになる。最も普通の生き物は真空で自由に動けないからそこまでの弱点にはなりえないが今回は致命的な失敗だ。
ツィルニトラはイクスたちが宇宙空間を生身で行動することができることを知らなかった。というか知る術がない。風竜の情報源は音だ。真空状態の宇宙では音は発生しない。故に風竜はこの星の情報しか知れないのだ。因みに宇宙の全てが真空ではないので、宇宙で音は発生することもあります。それを聞き取れたとしてもイクスたちの情報は知れないだろうけどね。
「く…」
『ドラゴンダイブ! この時を待っていた! 王撃!』
「サテライトキャノン、発射。瞬間換装。デストロイヤーユニット。光速激突!」
蒼穹がドラゴンダイブで上空に上がって行くと王撃で更に上にぶっ飛ばすとツィルニトラの上からサテライトキャノンが炸裂する。するとデストロイヤーユニットに換装したイクスが光速激突で強引にツィルニトラを宇宙空間に連れて行く。
「「ドラゴンブレス!」」
ツィルニトラの双頭からドラゴンブレスを受けて、イクスは被弾するが宇宙空間まで行くことは出来た。ここはイクスたちのホームグランドだ。
「全砲門、解放。目標ロックオン。マザーシップより遠隔魔力充電を開始」
「荷電光線、拡散光線!」
「雷ブレス!」
風が使えないことで雷の攻撃にシフトして来た。これをイクスは受けて耐えるとマザーシップからイクスに魔力が送られ、チャージが完了する。
「デストロイヤーユニット、全砲門一斉掃射!」
「荷電球!」
「黒星!」
ツィルニトラはこの他にも自分の周囲に魔方陣を展開して竜魔法ドラゴニックサンダーボルド、惑星魔法ネプチューン、アークフレア、ウルトラバイオレットレイ、サンダーボルトを発動させたがイクスのデストロイヤーユニットのほうが威力で勝り、攻撃が直撃する。
「見事です…異星の者よ」
ツィルニトラはそう言うと切り札が切れて、目を閉じたまま地上に墜落するのだった。
「マスターの敵の排除を確認。任務完了」
イクスの体力は残り一だった…不屈でギリギリ耐えていたらしい。最後の魔法の攻撃や荷電光線の拡散光線の数でイクスは負けていたかもしれない。本当に紙一重の勝負だった。イクスが地上に戻ると切り札が切れた蒼穹がイクスを待っていた。
「お疲れ様でした。わたしたちの勝利です」
「シャー!」
イクスの労いの言葉に蒼穹は勝利の雄叫びを上げるのだった。




