#1382 聖戦イベント対策会議②
俺はシルフィたちと共にエステル王国にいき、魔王討伐同盟の会議を開く。これに今回は各国の代表者が勢ぞろいして、国際会議の場にもなった。
まず重要な国際会議から始まる。議題はラグナロクで被った各地の被害状況とそれに伴う支援についてだ。各国から報告された内容はかなりやばいものだった。
俺が知らなかったことではまずエリクサーラピスの生命線である研究所や工場がウートガルザ・ロキの襲撃でかなり破壊されてしまった。このせいでエリクサーラピスの生産能力が大幅に低下することになる。
同じような被害を被ったのがヴェインリーフ。こちらも町の鍛冶場がかなり破壊されたことで大打撃となった。
そして改めて被害状況をまとめると中央大陸の東部であるゴネス、蜀、呉、ワントワークはヨルムンガンドの水害の被害を受けた。これにより多くの村が壊滅。特に農村は海水が流れ込んだことで農業まで出来なくなった。
蜀と呉、ワントワークはライヒ帝国のこともあって、農業にかなり力を注いでおり、作物もしっかり備蓄していたらしいのだが、それも蜀と呉は全滅。ワントワークとゴネスも各地の農村が備蓄していたことで深刻なダメージを受けた。呉とワントワークの船も壊滅して、桜花との貿易手段が失われた。
これについては今までとは逆に桜花から呉とワントワークに作物を送ることが決まった。今までの恩義を返したいという聖徳太子の言葉は実に侍の国らしく思えた。そして俺たちからはダゴンの時に活躍した塩害対策を提供し、作物の支援も約束した。
他の国も町が破壊されたが武器屋や鍛冶場、工場、食糧庫が比較的狙われていたことが判明した。これは明らかにロキの指示かサタンの指示が影響しているだろう。戦争において兵站の破壊は基本中の基本だ。武器がないと戦えないし、水や食料がないと戦う前に死んでしまう。人数が多いが故にそこを狙って来たのは流石としか言えない。
ただこのゲームには島という生産拠点をプレイヤーたちが多くの持っている。十分に立て直すことは可能だ。逆に言うと多くのプレイヤーが持っていなかったとしたら、結構絶望的な状況になっていたかもしれない。島を色んなプレイヤーが使える事に賛否があったのだが、こういう事になることを運営が予想していたのなら色々納得が行く俺たちだった。
最後に国際会議の本題が話し合われる。それがライヒ帝国についてだ。ライヒ帝国の憲法では玉璽を持つ者が王になることが決められている。これを曹操が持っており、曹操が倒されたところに現れた曹丕が持って、王の宣言をしたのだが帝さんに倒されたことで現在は帝さんの手元にある。
しかし帝さんは王になるつもりはないので、これからのライヒ帝国をどうするか決めないといけない。ここで名乗りを上げたのが蜀だった。それは理解出来ないのだが、意外なのが呉が名乗り出なかったのだ。
しかしその呉にも懸念点がある。それが蜀の動きだ。ライヒ帝国を吸収して軍事力が上がった蜀が弱体化している呉に攻め込む可能性を考えるのは当然だろう。呉は故郷を大切に思っている国だからね。壊滅的な被害を受けたからこそ心配するのは当然だ。
ここで仲介役として名乗り出たのがワントワークだった。ワントワークの案ではまずライヒ帝国、ワントワーク、蜀、呉の四か国を三分割し、真ん中をワントワークが治めることで蜀と呉の防波堤となる案だ。
「私たちとしてもそうして貰えると安心できますので、構いませんよ」
「こちらも依存がない」
「決まりですね。では、詳しい国境線については我々だけで話し合いましょうか」
この間に俺たちは魔王討伐同盟の一週間のスケジュールを大まかに決まる。まず水曜にベルゼブブ、金曜日にルシファーの領地に攻め込むことが決まった。サタンが決めた聖戦イベントのスケジュールから考えて、このスケジュールが無難という結論だ。
ここからはこのスケジュールのことを考えて各自が動くことになる。魔王討伐同盟の動きとしてはまだ攻略していない各地の魔王領地の攻略をしなければならない。ここで重要となるのがサキュバスとヴァンパイアの領地の情報だ。俺は事情を説明して、その領地には手を出さない事をお願いした。
もし手を出したら、二つの国はサタン側に付く事になるだろう。そうなると時間から見ても致命的なことになりかねない。俺からの情報を聞いたみんなは同意してくれて、その二つの国を避けて各地の攻略を進める話し合いが始まり、大まかな攻略作戦が決まるとスケジュールも決まった。
「かなりギリギリなスケジュールだな」
「でも、やるしかない」
「悪いな…負担をかけてしまって」
「謝らないで下さいよ。俺たちは俺たちで魔王の領地を攻略作戦に参加出来て楽しんでますから。どうしても気にするというならベルゼブブとルシファーの領地攻略の時に体を貼ってください」
「そうだな…約束しよう」
俺たちは中級者のみんながこのゲームを楽しんでいてくれたことに正直救われる。ゲームってどうしても強くないとつまらなく感じてしまうものだからね。本当にありがたいよ。
上級者たちはそれぞれ更なる強さを求めて神の試練に挑む者がほとんどだ。また俺と同じでエデンの試練に挑んでいる人たちもいる。この人たちは俺の話を聞いた上で別ルートを選択した。同じルートだと情報を得られるがつまらないし、別ルートを選んだ場合どうなるのか違いを知りたいと思ってしまうのはゲーマーの真理なんだろう。
こうして俺たちにとっては勝負の一週間の予定はある程度決まったところでラグナロクの報酬の分配が行われた。一つずつ鑑定していこう。
悪巨人王の宝珠:レア度10 重要アイテム 品質S
ウートガルザ・ロキに進化させるために必要な素材。
悪巨人王の皮:レア度10 素材 品質S+
真っ黒な筋肉のウートガルザ・ロキの皮。冥界の巨人の王の力が宿っている皮で状態異常を受けると強化が発生する特殊な防具を作ることができる。
世界海竜の皮:レア度10 素材 品質S+
ヨルムンガンドの皮。見た目はドラゴンの鱗に似ているが蛇の皮のような弾力とぬめりを持つ皮で物理攻撃にかなり強い皮だが、ぬめりが気になる人には向かない装備となっている。
世界海竜の肉:レア度10 素材 品質S+
ヨルムンガンドの肉。ぬめりがある皮付きで処理するかそのまま料理するかはその人次第。長寿を得ることができる食品の一つとして知られており、料理すると生命力が増える特殊な料理を作ることができる。
氷魔狼の毛皮:レア度9 素材 品質S
ハティの毛皮。ふさふさで冷たく白く輝く見た目からセレブの大人の女性に大人気の素材。寒さや暑さに強いだけでなく、闇に対しても強いことから防具としても非常に優秀な素材として知られている。
氷魔狼の牙:レア度9 素材 品質S
ハティの牙。月に非常に強い素材で神を殺せる可能性を秘めている。見た目は白銀の牙で危険性を最初は感じさせるがずっと見ているとその美しさに心を奪われる人が数多くいる素材。
氷魔狼の爪:レア度9 素材 品質S
ハティの爪。月に非常に強い素材で神を殺せる可能性を秘めている。見た目は白銀の爪で危険性を最初は感じさせるがずっと見ているとその美しさに心を奪われる人が数多くいる素材。
ムスペルの皮:レア度9 素材 品質S
ムスペルの皮。真っ赤な筋肉の皮で非常に硬く、熱に強いのが特徴でその耐熱効果は灼熱地獄の中でも全く熱を感じない程強いとされている。
スルトの皮:レア度10 素材 品質S+
常に燃えているスルトの筋肉の皮。圧倒的な炎と世界を破壊する力を宿している皮で炎属性の皮としては最上級品の一つに数えられている。
プルトニウム:レア度10 素材 品質S+
超ウラン元素でウラン鉱石を超える最強の核兵器の素材として知られている。威力もさることながら放射線量もウランの比ではなく、使う際には国の許可が必要なほど超危険な素材。
フルングニルの角:レア度10 素材 品質S+
雷神トールを苦しめたフルングニルの角。とんでもない硬さを誇っており、刺さった相手を激痛で苦しめる効果与がある。
この他にはシンモラからはレーギャルンチェーン、スルトから大量のコロナサイト、ウートガルザ・ロキから冥性石、フルングニルが黒曜石とダイヤモンドが手に入った。この他だとフェンリルとスコル、ガルム、マーナガルム、ソールガルム、ヨトゥンたちのいつもの素材があった。
その上で報酬の分配が行われる。俺は悪巨人王の皮、世界海竜の皮、世界海竜の肉、スルトの皮、フルングニルの角、フェンリルの素材を貰う。プルトニウムは俺の手に余るので、貰わなかった。国からの許可を取るのも面倒だが、用途を説明するのも面倒臭いし、最悪説明しても許可が下りない可能性もある。そんな時間を無駄にする時間は俺にはないのだ。
これでフェンリルに進化させる召喚師が格段に増えることになり、これを契機にオリハルコンゴーレムに挑む人が増え、俺が挑んでいないアトランティスの試練に挑む人も現れた。
これで取り敢えず会議は終了。ルインさんたちはまだ残って作戦会議している。各地の復旧もサタンとの勝負前に終わらせたいし、暗黒大陸の攻略組の支援もしないといけない。その上でラグナロクで生産拠点がいくつもやられたので、各地の生産職さんたちと連携が必要となった。
クロウさんも武器の修復や新しい素材を使った武器の作製で大忙しいなようだが、ここで声を掛けて、俺はロキの鍛冶書を託した。
「いいのか? 一応ヘーパイストスやパンドラちゃん、ユウェルちゃんにも使えるだろ?」
「恐らく使えるとは思いますがヘーパイストスやパンドラが覚えるのは違う気がしますし、ユウェルにロキの鍛冶書を読ませたくないので」
「あー…なるほどな。そういうことならありがたく使わせて貰うぜ。お前も武器製作で困っているなら俺を頼れよ? 最優先で作ってやるよ」
「客の順番は守った方がいいですよ? でも、ありがとうございます。その時は頼らせて貰います」
その後、俺は予定通りロキの指南書は火影さんにロキの神石はレッカに託した。レッカは口を尖らせていたが悪戯好きなことは否定せず、あっさり受け取りました。
そして今日手に入った素材を売って、ラグナロクで各地の国から頂いた報酬金を合わせるとかなりお金が俺の手元に集まった。流石にこれはみんなにご褒美を買ってあげないといけない金額だが、それはまた明日にしよう。
俺はシルフィたちと国に帰ると最初にヘーパイストスたちに武器の依頼をする。注文するのはウロボロス結晶を使った武器で大剣と剣で注文した。
「一応聞いておくが魔法剣は無理だよな?」
「無理です。無限の力に耐えられる宝石があればチャンスがありますが恐らく存在しません」
「なら通常の大剣と剣で頼む」
「わかりました。リリーさんとイオンさんの剣ですか?」
「秘密」
俺がそういうとリリーとイオンが襲い掛かって来た。
「どうしてそこで意地悪言うの! タクト!」
「絶対私たちの武器でしたよね!」
「決めつけは良くないわよ? 二人共」
まぁ、二人の武器なんだけどね。それを伝えると二人はご満悦だ。そしてユウェルにはフルングニルの角を使った槍を注文した。そして和狐たちにはアイアース・アスピスにスルトの皮、悪巨人王の皮、世界海竜の皮を使って貰う事にした。するとユウェルが言う。
「フルングニルの角を使った槍ならすぐ作れそうだぞ? タク」
「それはありがたいな。これからドラゴニックマウンテンに行く。そこでドラゴンの素材が手に入るだろうからそしたら武器を頼むとするよ」
「おぉ~! 任せろ! タク!」
「頼もしいな。セチアはどうする?」
「すみません。明日の朝でお願いしていいですか」
「いいぞ。今日はゆっくり休んでくれ。それじゃあ、ドラゴニックマウンテンに挑もうか」
俺がそういうとみんなが元気よく返事をしてくれた。さぁ、いよいよ召喚師の最難関クエストに挑むとしよう。




