#1381 ビナーの領域決戦
エロヒムの体に植物の蔓が巻き付き、新たな神となった。識別している。
エライオン?
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ウガリット語で最も高きものを意味する言葉だ。エライオンが俺を見ると早速仕掛けて来た。
「武装創造」
エメラルドグリーンの剣がエライオンの周囲に複数展開されると一斉に俺目掛けて飛んできた。
「武装創造! タクはやらせない!」
ユウェルが剣を作り出し、撃ち落とすが弾かれた剣をエライオンが掴むとユウェルに精神誘導を仕掛けて来た。するとユウェルがゾンビになると地面から分銅付きの鎖がエライオンの腹に決まる。
これを見たブランが追撃に出たがスクリームペガサスの突撃で妨害されるが代わりにクリュスとゴルゴーンのドラゴンブレスがエライオンに放たれた。しかし反応が遅れたので、これは回避される。そしてエライオンはシルフィのリッチを見る。
彼女がゾンビを召喚し、身代わりスキルをユウェルに使用したことでエライオンの精神誘導からユウェルを守ってくれたのだ。ここでリッチに武装創造で作られた剣がリッチに使用されるとゾンビたちがリッチの盾となる。
しかし盾となったゾンビたちが木に変貌する。木魔法のウッドフィケーションと同じ効果を持つ剣か。厄介だな。俺がそう思っているとリッチはゾンビたちを消すと再召喚する。これがアンデッドモンスターの女王の力か。しかし彼女の力はこんなものじゃない。
エライオンがリッチに剣で襲い掛かるとリッチの攻撃をデュラハンが止めると別のデュラハンが攻撃し、これをエライオンが回避すると背後に召喚されたスカルドラゴンの爪の攻撃が襲い掛かる。これも回避してスカルドラゴンに精神誘導を掛けるとスカルドラゴンは消滅し、再召喚される。
リッチの特殊スキルである悪霊召喚と屍召喚は召喚獣の召喚と再召喚とは異なっている所がある。それは召喚した存在が別々の存在となるところだ。つまり見た目は同じゾンビを召喚していても再召喚されたゾンビは別の存在となっているため、新しく召喚されたゾンビは精神誘導を受けていないゾンビが召喚されるという絡繰りだ。
かなり便利なスキルだけどネクロマンサーと同じでアンデッドモンスターを集めないといけない面倒臭さがある。まぁ、フリーティアだと荒野でゾンビが沸くからそこまでの苦にはならないらしい。
ここでユウェルの砲撃がエライオンに来るがこれを回避するとクリュスとゴルゴーンの光線とブレスがエライオンに襲い掛かる。これも回避しながらエライオンも拡散光線や武装創造、神撃で攻撃してくる。
そして俺ではなく、シルフィを狙って来たがシルフィは身代わりスキルで無事だ。代わりに俺の斬撃がエライオンに放たれるがエライオンの体の蔓が動いたのを見た俺は危険を感じ取り、斬撃を諦めて距離を取ると植物の蔓が俺に鋭く伸びて来る。
「溶岩壁!」
ファリーダが溶岩の壁を作り出すと溶岩に触れた蔓は流石に燃えてしまう。
「タラスク! 地殻変動です!」
「グォオオオーーー!」
タラスクが地面に強く踏みつけるとエライオンがいた左右の地面が一瞬で盛り上がり、渓谷を作り出すと地面が動いて、エライオンを押し潰した。するとエライオンは渓谷を破壊して空に上がる。だが地面が次々盛り上がり、不自然に動き回りながらエライオンを攻撃する。
地殻変動は一瞬で地面を盛り上げたり、盛り下げることができるスキル。大地支配を極めれば同じようなことは出来るがスピードと規模の差が段違いだ。タラスクが使っているように大地支配は地殻変動で動いた地面を操ることに徹した方が遥かに厄介なスキルとなる。
「タラスク! 惑星!」
「グォオオオ!」
空から惑星が落ちて来たことでエライオンの意識が上に向く。それを盛り上がった地面に乗っていたユウェルは待っていた。
「ヴァジュラ! でやあああ! わ!? っとと」
ヴァジュラを叩き込もうとしたユウェルだが、あっさり躱されて、エライオンの杖から放たれた神波動が放たれるが地殻変動と大地支配で動く地面に乗ることで躱すことに成功する。ただ神波動で乗っていた地面が破壊されたので、ユウェルは急いで別の地面に移動した。
これがシルフィが言っていたユウェルでも空中で飛び回る敵と戦える方法だ。今の現状のフィールドは空のあちこちに盛り上がった地面の道が出てきている。この道をユウェルはドラゴンホイールで移動しながらエライオンへの攻撃のチャンスを伺う。
「樹海支配」
空に作られた立体的な地面から木の根が発生するとユウェルに襲い掛かるがユウェルは見事なドリフト走行で躱していると跳ね上げられてしまう。しかしそれと同時にユウェルはドラゴンホイールを解除する。
「舐めるな! ドラゴンブレス! ドカドカドカーン!」
ユウェルはドラゴンブレスで木の根を破壊すると四方からの木の根を大砲で破壊する。しかしそんなユウェルをエライオンは狙うとファリーダが横から殴りかかると逆側から分銅鎖が飛んで来て、背中に決まる。
「核撃!」
「女神技。ビナー・アブゾーブ」
ファリーダがゼロ距離からの核撃をお見舞いすると核撃がエライオンに吸収させる。
「ゴッドクラッシャー!」
「くぅううう…っ!?」
「お返します。核撃」
エライオンからファリーダの核撃と同規模の攻撃が放たれた。しかし距離があったので、ブランが神盾アイギスで受け止める。するとエライオンはこの隙にスクリームペガサスにビナー・アブゾーブを使用する。
この結果、スクリームペガサスは干上がり、召喚石に戻るとエライオンは逆に生命力を回復する。
「スキルを吸収すると吸収したスキルの威力のまま使う事が出来て、生命体に使うと回復することができる技か…木属性らしいスキルだな」
『タクト様』
「女神技。ビナー・ストーム!」
俺たちはこれを回避すると勝負を仕掛ける。
「雷化! はぁあああ!」
「エロヒム・ブレイズ! 物質化!」
俺はドリルの髪の毛を回避しながら接近戦を挑むとエライオンの植物の蔓がやはり動く。
「格納!」
俺は神息を取り出す。無限連続コンボの構えだ。
『わたしくの蔓があなたを貫けばわたしくの最強の女神技で終わりなのですよ』
ここでエライオンは同士討ちを選択した。同士討ちで首を斬られてもエライオンが隠している女神技は相手のステータスを全部奪い取る女神技だった。このため、首を斬られても俺の生命力が加算されることでエライオンは死ぬことはない。
しかし俺が神息をなぜ取り出したのかそこを考えなかったのは致命的だった。
「次元震!」
「なっ!? くぅううう」
エライオンが狙った技のヤバさには気が付いていた。だからこそ神息を出すことで斬撃が来ると思い込ませた。悪いけど、この勝負は貰った。
「多重障壁!」
「く!」
多重障壁で斬撃が止められる。これじゃあ、連続コンボは無理だ。
「エロヒム・ブレイズ!」
「精霊門」
俺を狙ったエライオンの背後からセチアが精霊門を通って現れる。手には弓矢を持っており、そのままエライオンに突き刺すが多重障壁で止められる。
「よくもやってくれましたね。お返しです! 宝石解放!」
エライオンとセチアとの間に大爆発が発生する。俺たちが対戦している間にシルフィのティターニアがセチアを回復してくれていた。
大爆発で吹き飛んだセチアが空中で体勢を整えるとエライオンがセチアに襲い掛かるとファリーダがエライオンに殴りかかり、両者の拳が激突する。これにファリーダが勝つとセチアの援護射撃が来て、これを回避し、俺の斬撃、クリュスとゴルゴーン、タラスクの追撃も躱される。
「簡単には決めさせてくれないな」
確実に決まったと思ったんだけどな。多重障壁で台無しにされた。最もその多重障壁のセチアの自爆覚悟の宝石解放で吹き飛んだみたいだけどね。それにシルフィのリッチが上手く俺たちの連携に合わせてくれたらしい。
「リッチ!」
「魔王技。イビルスピリットバインド!」
エライオンの背後から悪霊が憑りつき、エライオンを拘束する。
「後光。っ!」
悪霊はエライオンの後光で一瞬で消し飛ぶがそれでいい。
「いくぞ! ユウェル!」
「思いっきり頼むぞ! タク!」
「超電磁! いっけーーー! ユウェル!」
「ドラゴンダイブ!」
俺がユウェルを持ち上げると超電磁を掛けてから思いっきりユウェルをエライオンに向けて投げた。雷の速度で放たれるドラゴンダイブがエライオンに迫るがあっさり躱される。
「そのような攻撃当たるはずが…っ!?」
エライオンは通り抜けたユウェルに引っ張られる。身体を見るとクラトスの鎖が巻き付いていた。躱されることはこちらも計算の内だ。ユウェルはクラトスの鎖も持った状態で飛んでいき、自分が躱された瞬間に後ろのクラトスの鎖を操り、エライオンを拘束した。
そして光化で先回りにしたブランがユウェルを掴むとそのまま急降下して、地面にエライオンを叩きつけた。
「「星核!」」
「「黒星!」」
「聖剣解放!」
「「ドラゴンブレス!」」
俺とシルフィの星核、リッチとファリーダの黒星、シルフィのティターニアの聖剣解放、クリュスとゴルゴーンのドラゴンブレス、タラスクの惑星が次々決まると空に十二星座が描かれる。
「私を操った罰です! 星座魔法ゾディアック!」
セチアの怒りの魔法が炸裂するがこれでもまだ終わらなかった。
「女神域!」
「シルフィ!」
「ゴルゴーン! 魔神域です!」
世界が花畑に包まれた瞬間、すぐさま世界が石化していく。
「まだ生きてる! 攻撃を続けるんだ! 大雷霆!」
「はい! ここでなんとしても仕留めますよ! マジックバスター!」
「私たちも行きますよ! エンジェルストライク!」
「もちろんだ! 竜魔法! チクシュルーブメテオ!」
「いい加減に落ちなさい! 魔神魔法! レッドシャイアント!」
この他にも魔力が切れるまでありったけの魔法を撃ちこんだ。そして俺たちはエロヒムに戻り、倒れ込むのを視認した。
「見事です…あなたたちを理解しました…先にお進みください。より強さを求めるかそれとも最短であなたたちが欲している物に辿り着くか判断はあなたたちに任せます」
そういうとエロヒムは満足そうな顔をして消えた。そしてインフォが来る。
『セチアのレベルが50に到達しました。成長が可能です』
『ユウェルの竜魔法のレベルが40に到達しました。竜魔法【ドラゴニックヒールオーラ】を取得しました』
『ファリーダの魔神魔法のレベルが40に到達しました。魔神魔法【ルイン・アイン】を取得しました』
インフォが来たがセチアは滅茶苦茶落ち込む。
「こんな戦いでレベルアップの成長が来ても全然嬉しくないです…」
「気持ちは分かるけど、そう落ち込まないでくれよ。セチアが無事だったんだ。俺はそれだけで十分だよ」
「そういうわけにはいけません! こんなことが二度と起きないようにしっかり反省しないと!」
うん。その気持ちは大切だね。でも、全く情報がない相手だと後手に回るのはどうしようもない事なんだけどな。今回はたまたま狙われたのがセチアとスクリームペガサスだったというだけの話だ。しかしやられた本人はどうしても納得がいかない。
「狙われたという事は狙う隙があったということです! もっとしっかりしませんと! あう」
「気持ちは分かるけど、気負いすぎ。でも、今すぐの成長はやめておくか?」
「はい…少し時間をください」
「わかった。丁度この後、会議だし、その後でいいかな?」
「はい。ありがとうございます」
それじゃあ、エロヒムが落とした物を鑑定しよう。
ビナーの女神像:重要アイテム
エデンのビナーを守護している女神の像。設置することで周囲の味方の回復効果を高める効果と状態異常回復を与えるエリアを作り出すことができる。
大型の戦闘だと滅茶苦茶ありがたい効果だな。回復が早ければ早いほど戦場への復帰が早くなるし、状態異常を治してくれるのも優秀だ。レベルが強くなってきて、状態異常に苦しむことが多くなってきているから余計に有難く思えて来る。
さて、それじゃあホームに帰って、会議に行くとしますか。
「ぶくぶくぶく…」
「タクト? セチアちゃん、どうしたの?」
「色々あってな。今はそっとしておいてやってくれ」
「わかった!」
温泉で反省しているセチアの姿を心配そうにしているリリーの姿が微笑ましかった。




