#1368 神槍グングニル
俺たちはアーレイたちとユグドラシルに向かう為に合流場所に到着すると珍しくアーレイたちが予定から遅れて来た。
「珍しいな…そっちが遅れるなんて」
「アーレイが町中の女の子にデレデレしていたからよ」
「し、してねーよ!」
「あれだけ声に答えて置いて良くそんなことが言えるわね」
今回フリーティアを守るために頑張ったのはアーレイたちだ。その結果、フリーティアでアーレイたちの人気が急上昇したらしい。
「頑張れ!」
「なぜ急にお前は応援しているんだよ!?」
アーレイたちの人気が上がれば俺たちへの変な視線とかが減ることになるから心の底から応援しますとも。俺の応援の意図に気付いたシフォンが聞いて来る。
「タクト君って本当にそういうの苦手だよね?」
「陰キャですみません」
「そこまでは言ってないよ!?」
シフォンは否定してくれているが少なくともアーレイよりは陰キャの自信があります。さて、時間を無駄にしないために早速アースガルズに向かうとしよう。
俺たちがアースガルズに転移するとカラスを肩に乗せたオーディンがやって来てくれる。
「わざわざ来てもらってすまんのぅ」
「いえ。ユグドラシルも無傷では無かったですし、アースガルズの建物も滅茶苦茶になっていることは知ってますから」
アースガルズの建物がぶっ壊れたのはリリーたちの戦闘によるものだ。それだけ激しい戦闘をしていたことがこれを見ればわかる。ユグドラシルもヨトゥンヘイムから上がってきていた巨人たちを相手にしたことと数体のムスペルが防衛線を強行突破したことでダメージを結構受けている。
スルトの攻撃を最小限に留められたことが一番でかい。満月さんたちや黒鉄たちには本当に感謝したいよ。ユグドラシルをやられていたら、スルトに勝ってもこっちの負けみたいなものだからね。
「うむ…エルフの森も直してやらねばならんが最初に儂らを救った勇敢な勇者たちに報酬を与えねばな。最初にお主にはこれを渡しておくぞい」
俺はオーディンからロキの指南書、ロキの鍛冶書、ロキの鞍、ロキの神石の四つのアイテムを貰った。調べてみるとロキの指南者は罠に関する技を覚えられるアイテムみたいだ。俺たちも罠設置を手伝いはするが戦闘メインなので俺たちが使うのは勿体なさすぎる。これは銀たちか火影さんたちにあげた方がいいだろう。
次にロキの鍛冶書はこれは鍛冶師の専用アイテム。レーヴァテインが作れるようになりそう。もしそうならかなり大きいね。これはもちろんクロウさんたちにあげるべきアイテムだね。
ロキの鞍はフェンリル専用のアイテムみたいだ。実際に優牙には騎乗スキルがあるからこれは欲しい。ロキの神石については間違いなく強いと思うのだが、俺よりもたぶんレッカに合っているんだよね。
俺は接近戦をしがちでレッカは俺に負けないくらい悪戯や相手を掌の上で弄ぶのが結構好きなタイプだ。だからこれはレッカにあげて、代わりの物を貰うとしよう。ここで俺はオーディンに聞く。
「ロキ討伐の報酬ですか?」
「そうじゃ。儂が言うのもなんじゃがあ奴はひねくれた悪戯小僧じゃが根は悪い奴じゃないんじゃよ。報酬を残したところからもそれが伺える」
ここでオーディンは深く息を吐いた。
「儂らの誰もが悪役はしたくないから引き受けてくれたところからロキは段々と歪んで行ってしまった…それがお主たちと戦ったことで少しは歪みが修正されたのではないかと儂は思っておる。だからこそこれらの報酬はお主にこそ相応しい。どうするかはお主の自由じゃ」
「はい」
悪役を引き受け続けて、その悩みを誰にも言うことなく、演じ続けたのがロキという神って感じか。そして俺たちと戦闘して溜め込んだストレスが少しでも晴れたのならそれはいい事だと思う。
「ここからは儂らからのお礼じゃ。好きな物を一つ選ぶが良い」
報酬が表示される。
神槍グングニル
神鎚ミョルニル
ヤールングレイプル
メギンギョルズ
グリダヴォル
神船フリングホルニ
神笛ギャラルホルン
神剣ホヴズ
神剣ジークシュベルト
神籠手マグニラーム
神籠手テュールラーム
ウルイチイボウ
ヴァーリイチイボウ
マルデルの涙
ミストルティン
グリーザルヴォルル
ラーンの網
ティルフィング
ダーインスレイヴ
フロッティ
スヴェル
ブリーシンガメン
ユグドラシルロッド
タスラム
聖杯
各種神石
各種宝石
遂に来ました!グングニルとミョルニル!俺はこれを待っていた!しかしここで俺は気になることをオーディンに聞く。
「これを全員に一つずつ与えるんですか?」
「うむ…儂らとユグドラシルを見事に守ってくれたのじゃ。これぐらいの報酬は出さねばな。それに今回の戦いで巨人たちの多くが倒された。再起にするのに数百年はかかるじゃろう。しかしまだ世界の危機は終わっておらん。その為の力をお主たちに与える事で儂らの世界も救えるというなら託す価値があると儂ら全員が判断した」
俺はオーディンの様子からこの世界の終焉がもう決まっていることを察している感じがした。オーディンの能力を考えると何も不思議なことはない。
聖戦イベント終了まで残り一週間でプレイヤーの戦力を完全にぶっ壊して来たな。プレイヤーみんながグングニルを投げる世界ってどうよ?しかしこれは逆に怖くもなったな。そこまでブーストしても楽に勝てるわけじゃないってことでしょ?怖くないか。
ただ一つだけ言える事はサタンが聖戦イベントで掲示していた暗黒大陸の解放は一気に攻略が進むだろう。恐らく中堅のプレイヤーたちが一気に攻略を進めるはずだ。彼らにとっては強い武器が手に入ったら、次はレベルアップが重要になるだろうからね。敵が多く出る暗黒大陸の領土攻略はかなりレベル上げの効率がいい。敵を纏めて消し飛ばせるだけの武器があれば尚更効率がいいだろう。ここらへんも運営は考えているだろう。
これほどの戦力でも不安を感じる現在分かっている敵となるとルシファー、ベルゼブブ、ベリアル、ルキフグス辺りはヤバそう。アガリアレプトだと恐らくボコボコに出来るはずだ。ただ悪魔たちがこのまま攻略を簡単に進めさせてくれるとも思えないんだよね。俺だったら、やはり援軍を送り込む。そこら辺の話し合いは夜の会議でするとしよう。
さて、話を戻して報酬の説明を見て行こう。まずグングニルからだ。
グングニルは一言で言うならブリューナクやゲイボルグを全属性にした武器と言える。最大の特徴は回復スキルの多さで初見の自然回復というスキルでこの星にいる限り生命力と魔力を自動回復する新たなスキルが追加されている。
オーディンによるとこのスキルは領域スキルで無効化されてしまうらしいが逆に言うと領域スキルをなんとか出来れば恐ろしい自動回復を獲得することになる。これに加えて攻撃能力も高いんだから始末が悪すぎる。
俺たちが最近の戦闘で主流になっている瞬間火力で倒すか回復無効、武器封印などで対処するのが正解なんだろうな。だからこそ神に対して瞬間火力が高いフェンリルと相性が最悪だったんだろう。まぁ、これは交換確定だろう。ここでシフォンが感想を言う。
「この武器って…大丈夫かな? 回復職の人たちが全滅しそうな気がするんだけど」
「槍装備の人だけじゃないから大丈夫じゃないか? まぁ、槍装備の人が増えられたら、困るけど」
「そうね…私の個人の意見だと満月さんたちがやばくなりそうって感じね」
「あぁ…ただでさえ防御に全振りしていて、そこにこの回復能力と攻撃力を獲得したら、確かにヤバそうだな」
次はミョルニル。雷属性の鎚の中ではヴァジュラに双璧となる最強の武器で大きさや重さを自在に変えることが出来るらしい。また投げると手元に戻って来る力も再現されている。これを踏まえて見ていると接近戦ならミョルニル、遠距離戦ならヴァジュラって感じだな。鑑定してみて改めてリリーやユウェルと相性が良さそうだ。
同じくトールの武器であるグリダヴォル。これはトールがゲイルロズというヨトゥンを対戦する時にミョルニルの使用を禁止されたことでグリーズという女巨人にヤールングレイプルとメギンギョルズと共に貰った武器だ。雷属性の棍棒だが、あまり魅力を感じない。対巨人には強い武器みたいだけどな。
次は神船フリングホルニ。光の神バルドルが持つ世界一大きい船。乗組員や船自体の回復能力が非常に高く、波の影響なども無効化する船だった。これを見て完全に対レヴィアタンの船という印象を受けた。安全に船旅をしたいのなら手に入れていい船だと思う。大きいってそれだけで強さだからね。
次は神笛ギャラルホルン。北欧神話の光の神ヘイムダルが持つ角笛だ。鼓舞スキル持ちで神技も味方全体を強化する物だった。最大の特徴は神軍スキルでヴァルキリーとエインフェリアたちを召喚することが出来るところだ。リースに持たせるのはありな気がする。
神笛ギャラルホルンと同じくヘイムダルが持つのが神剣ホヴズ。光の剣だがぶっちゃけそこまで強くない。速度重視で剣で軽く、攻撃力が低いのが特徴的だな。正直これならオリハルコンの武器のほうが強いだろう。瞬間火力もたぶんエクスカリバーに負けている。これを取るなら俺は神笛ギャラルホルンを選ぶな。
次は俺たちが良く知っている神剣ジークシュベルト。シルフィが持っているフレイの勝利の剣だ。オリジナルのエクスカリバーとほぼ互角の性能だが、フレイの加護と神軍スキルがあるので、こちらに軍配があがりそうかな?個人的にはエクスカリバーにもっと頑張って欲しいが神の勝利の剣とほぼ互角な時点でかなり凄いと思うべきかもしれない。
次は結構悩むところになる籠手シリージだ。まずは神籠手マグニラーム。このゲームオリジナルの武器で力の神マグニが装備している義手だ。最大の特徴は倍化スキルがあること。これだけでも十分取る価値があるだろう。
ただこちらも捨てがたい事になっている。神籠手テュールラームもこのゲームオリジナルの武器だ。ただ伝説は存在しており、テュールがフェンリルに腕を差し出したことでフェンリルの封印に成功した功績としてオーディンが与えた魔法の義手が存在している。能力は全波動を使える事から全属性の義手であることが分かる。それだけフェンリルの封印の功績は大きかったという事だろう。格闘家はかなり悩むことになるんじゃないかな?因みに俺なら神籠手マグニラームを選ぶね。格闘家で倍化の恩恵がでかすぎると思う。
ヴァーリイチイボウは基本的にはウルイチイボウとほぼ同じ。違うところは不屈があるところ。これはヴァーリがラグナロクを生き残るという伝説から来ているスキルだろう。ここでアーレイが疑問を言う。
「弓矢に不屈ってどうなんだ?」
「弓矢の撃ち合いで倒れないのはありなんじゃないか? それに遠距離職は集団戦だと狙われやすいからな」
「奇襲受けて暫く生き残れるだけで価値があるってことね。反撃も一応出来るでしょうし」
「そうだな…ただ一番いいのはそういう状況にならないことなのは間違いない」
マルデルの涙はどうやら黄金の名前らしい。シフォンの話ではフレイヤ関連のアイテムのようだ。使い道を見ているとどうやら生産職専用のアイテムらしい。これで作った道具で採取などをするとたくさんアイテムが手に入れることが出来るそうだ。
「うーん…ありはありだけど微妙」
「意外だな? 素材はあるに越したことはないだろうが」
「タクトの場合は例外よ。アイテムが沢山あるんだからそういう反応になるんだと思うわ」
ミランダが正解だ。ちょっと前までなら欲しがっていたと思うんだけどな。これはスルーで良さそうだ。
他にも宝石やスレイプニルの進化素材などがあったがこれで確認は終了。俺は迷わず神槍グングニルを交換する。
神槍グングニル:レア度10 槍 品質S+
重さ:200 耐久値:15000 攻撃力:4800
効果:全属性アップ(究)、全ステータスアップ(究)、回復アップ(究)、神殺し、魔神殺し、神気、星気、万物破壊、魔力切断、時空切断、防御無効、無限のルーン、神速、光速激突、神障壁、帰還、必中、巨木壁、魔力吸収、粒子分解、瞬間再生、魔力超回復、自然回復、光合成、月光、後光、神雷、天変地異、樹海支配、即死、星震、次元震、全波動、神波動、冥波動、自然波動、神撃、自然球、神域、奇跡、耐性無効、物理無効、加護破壊、神槍解放、神威解放、巨人の加護、勝利の加護、世界樹の加護、オーディンの加護
主神オーディンが持つウィザードオーブ最強の武器。ドヴェルグが作製した武器の中でも最強の武器と言われている。他を寄せ付けない圧倒的な回復能力を有しており、投げれば必中必殺で手元に戻って来る全属性の神槍。
かなり重いところが気にはなるがブリューナクより少し重いぐらいなら我慢の範囲だ。トリアイナと比べるとステータスでは劣っているがスキルの多い感じだね。どちらが強いかは結構難しい。トリアイナのほうが攻撃的な槍な気がするな。それをいいと判断するかどうかだね。
俺はリースにあげようとするとリースはブリューナクが使いたいらしい。俺からブラン、ブランからリースに託された武器だ。それを考えてブリューナクがいいと言うならリースの気持ちを優先しよう。
そうなるとグングニルを上げるとなるとやはりミールになるな。
「いいんでしょうか? とても恐縮なのですが」
「それはたぶんみんなが抱えている事だよ。それにミールが昨日どれだけ頑張っていたかみんな知っている。もちろんオーディンもね。だからもっと自信を持っていいんじゃないか?」
「…はい。この槍に負けないように頑張ります!」
張り切るミールの頭を撫でて、緊張をほぐす。さて、次の報酬のところに向かおう。流石にここでチケットを使ってミョルニルをゲットするのは問題行動な気がするからね。オーディンからエルフの森に向かうように言われたので、向かうとしよう。




