#1357 ロキ軍分断作戦
一方空ではスルトの軍の動きと合わせるようにハティとスコルを中心にしたソールガルムとマーナガルムの大群が向かって来ていた。これを迎え撃つのは俺たちを含めた召喚師部隊とオーディン率いるワルキューレとヴァルキリー部隊だ。
俺たちの先頭を駆けているのはグレイと騎乗する千影だった。これはグレイが自分から志願した。グレイもしっかり防具は装備しているから問題ない。それに同じ狼として負けられないグレイの意志を尊重した。
「「「「ガァアアア!」」」」
両軍が空で激突すると敵の先頭にいた狼の軍勢がグレイとグレイの群狼たちの空振と衝撃放射でちりちりに吹き飛ぶ。切り込み隊長としての仕事をグレイはしっかり全うしたな。敵が乱れたところをグレイと同じく先頭付近にいた召喚獣が次々襲い掛かった。
先制はこちらの勝ち。しかしここからは獣タイプの召喚獣とソールガルムとマーナガルムとの激しい噛み合いと引っ掻き合いの猛獣バトルが勃発することになる。
「やっぱりオリハルコンの鎧を装備している召喚獣ってずるくない?」
「「「「同意する」」」」
「そう思うなら作ってやれよ」
「「「「シャシャ!」」」」
「ほら。ラードーンたちもそうだと言っているぞ」
戦場ではゲイルが暴れている。普通でも防御力が高い召喚獣な上にオリハルコンの鎧を装備しているからソールガルムやマーナガルムが苦戦するのはしょうがないところだ。しかも複数で挑まれてもゲイルには電弧放電がある。
その電撃で麻痺しているソールガルムとマーナガルムたちを召喚獣たちは殺到して倒している。
「ガウ?」
その中に堂々と白夜がいて、ゲイルと目があるが何か?という顔で返している。真っ向勝負でも十分強い白帝だが、基本的には奇襲タイプの召喚獣だからな。許してやって欲しい。ただゲイルのおこぼればかりを狙うのはやめましょう。他の白虎たちが真似しているからね。白虎の王としての威厳を見せて欲しい。
そして猛獣バトルがあちこちで発生しているなら次々マーナガルムとソールガルムの首を千影が原初海竜の太刀で次々突き刺していた。乱戦の中、機動力がある敵が潜んでいるとこういうことになるんだよな。完全に千影の奇襲パラダイス状態になっている。
人間なら警戒とかするものだが、目の前で噛み合っている獣だとこういう判断は難しい。もし気付いていてもまず目の前の敵を噛み殺すのが先と考えるのが普通だろうからね。この点においては戦いやすいところは変化ない。
ここで通常のハティとスコルたちが戦いに参戦していくと一瞬の隙を付いて、オリジナルのハティとスコルが戦場を抜ける。彼らの狙いは明白で北欧神話の月の神マーニと太陽の女神ソールの兄妹神だ。
「「ガァアアア!」」
「うわぁあああ!? 来るなぁあああ!」
「いやぁあああ!? 来ないでぇえええ!」
まぁ…他の神話の月の神と太陽の神と同じにしてはいけない。何せ彼らは美しいという理由だけで太陽と月の名前を父親に付けられた元人間だ。この父親の傲慢のせいで神々はキレて、彼らを太陽を牽く馬車の馭者にしたことで神となった。
そしてハティとスコルに永遠に追いかけられることになるという神の中でもかなり不遇な神だ。伝説の通りのラグナロクだと結局食べられるしね。そんな神だから戦闘能力がほぼ皆無なのは許してあげて欲しい。
さて、ここからが俺たちの連携の見せ所だ。ロキが率いている軍勢の最大の弱点はそれぞれ脅威となる存在の狙いが明白であるということ。これは戦争において、相手の軍の狙いが筒抜け状態にあるのと一緒だ。そこを利用しない手はない。
「「ガァ!?」」
「キュー!」
「ギー!」
「…ヴェンジフルドラゴンストリーム」
「ブレイブサラマンドラ! 強閃!」
ジークと叢雲が蹴り飛ばしたところにノワと燎刃が攻撃を当て、二匹を分断する。そしてハティの方には恋火、燎刃、コノハ、狐子、ヒクス、コーラル、ジークが囲い込み、スコルの方にはイオン、ノワ、リビナ、伊雪、蒼穹、リオーネ、叢雲が包囲した。更に叢雲が自分たちとマーニとソールとの間に次元封鎖スキルを使用する。これで二柱の安全は取り敢えず確保した。彼らには安全を確保する約束で囮役をして貰いました。
「「あなたの相手は私、あたしたちです!」」
そんな状況になるとここで通常のフェンリルも突撃して来た。これを見た前線のみんなはフェンリルの突撃を避ける。ここでフェンリルと対峙してもマイナスにしかならないからこの選択は当然と言えた。
そしてフェンリルたちの狙いも明確であり、オーディンを狙っている。ここで叢雲の次元封鎖が突破される。
「えぇえええ~!? ちょっと!?」
「おぃいいい~!? 破られてるじゃん!」
「「「「五月蠅い!」」」」
このチャンスにソールとマーニを狙おうとしたオリジナルのスコルとハティを必死に止めている恋火たちが守られているだけの二柱の神に怒った。この事態も想定はしていた。フェンリルたちが来るまでにオリジナルのスコルとハティを倒せればよかったんだけど、流石にそんなことは許してくれないな。
恋火たちまで抜けたフェンリルたちに優牙とシルフィのフェンリルに加えて和狐とファリーダ、セフォネ、アリナ、虎徹、ダーレー、ハーベラスが妨害に入った。
するとここでスレイプニルに乗りながら空から様子を伺っていたオーディンの背後で空間が歪む。
「父上!」
「ぬ!?」
「エネルギーバスターキャノン、撃ちます」
いち早く次元転移に移動しているオリジナルフェンリルを補足していたイクスが狙い撃ちとアースガルズから黒鉄が歪んだ空間に腕の伸ばしてドリルパンチを叩き込むと空間の中から黒鉄のドリルに噛みつき、回転するドリルをそのまま噛み砕いて、オリジナルフェンリルが現れた。
この結果に黒鉄はすぐに腕を修復しようとしたが元には戻せない。復活スキルの妨害スキルを持っているらしい。テュールの腕も元には戻せなかったからな。その伝説から来ているスキルだろう。
「うむ…逃げるぞい」
「はい」
「リリーたちも逃げるよ!」
スレイプニルに乗るオーディンとヴィーザルはアースガルズに逃げ込む。当然オリジナルのフェンリルは追尾するがイクスたちが援護した。
「今どす! ハーベラスはん!」
「「「ワオーン!」」」
「叢雲さん! 張り直してください!」
「…ギー!」
ここでハーベラスの封鎖が発動して、オリジナルのフェンリルと通常のフェンリルとの分断に成功した。そして下では叢雲が再度次元封鎖を使用する。
そしてアースガルズでオリジナルフェンリルとリリー、イクス、ブラン、ユウェル、黒鉄、月輝夜、夕凪に加えて、オーディンとヴィーザル、テュールが対峙する。
これで一先ずロキの軍で厄介な敵をそれぞれ分断出来た。後は各々が撃破して、倒した者から援軍として参戦して行けばいい。
この結果にロキが溜息を吐く。
「やれやれ…獣たちは本当に戦闘になると頭に血が登って、大変だよ…それに脳筋人魚は迷惑だね」
「神槍トリアイナ! 伝説解放! 神槍技! エナリオス・クェイク!」
リアンの必殺技が炸裂するとロキの残りのナグルファルが一撃で全部吹き飛ぶ。これではロキが言っている脳筋人魚を否定することは出来ないな。
これで無限湧きは恐らくこのラグナロクでももう起きない。あるとするなら今、ロキが空間から召喚したヨルムンリングぐらいだろう。ロキが海岸からやって来る俺たちを見ると聞いて来る。
「君のところの人魚には美学が無いね」
「へぇ…お前は影に隠れて踊りのチェックをしたり、歌の練習したり、俺に合う前に必ず髪型や服装のチェックをしている人魚に美学がないと言うのか? 見る目が無さすぎるぞ」
『ちょっと待ってください…なんで知っているんですか! 先輩!』
そりゃあ、リアンの召喚師だから知ってますとも。それにしても未だに気付かれていないと思っていたのは予想外だ。まぁ、見てもその場からすぐに離れていたからね。リアンは結構影で努力するタイプだからずっと見られているのは嫌うだろうから見て見ぬふりをしてました。
「ふん…いずれにしても脳筋なのは事実だろ?」
「そこは否定しない」
『否定してください! 筋力、全然ないですよ!?』
いや、結構あるよ。脳筋レベルには到達してないけどね。
「まぁ、安心しろよ。お前の相手は俺たちだ」
俺の周囲にはセチア、ルーナ、ミール、ルミ、スピカ、リースがいる。海にいたリアンとサフィ、クリュスはアラネアとロコモコ、エアリー、ぷよ助たちが参加しているユグドラシルを登ってきている巨人の相手に向かう。
またユグドラシルを目指しているガルムたちの処理にディアンとストラがブレスを撃ちまくっている。
「「「「妖精の輪!」」」」
「妖精たちでヨルムンリングに抵抗するつもりかい? それでいいなら構わないけど、創星竜を使わなくていいのか?」
「いいよ。それでもお前に勝って見せるからさ。言っておくがここにいるみんなはお前に怒り心頭だからな? 覚悟しろ。召喚獣の怒りは召喚師の怒りだ。ここでお前を足させて貰う」
「君に出来るかな? 僕の名前はロキ! まともな戦闘が出来るとは思わないことだね!」
こうして敵を分断して各々の戦闘が始まるのだった。




