#1347 ラグナロク、ウィザードオーブ戦
みんながそれぞれ戦闘をしている中、ウィザードオーブでも戦闘が発生していた。まずはナグルファルの艦隊とウィザードオーブの魔導船艦隊の勝負だ。
最初はウィザードオーブの艦隊から次々魔導砲が放たれる。するとナグルファルはシールドを展開すると魔導砲を跳ね返して来た。本当に場所によっての性能差を感じる。この攻撃をウィザードオーブの魔法使いたちが結界を展開して、防いで見せた。
ここからは砲撃戦となる。こちらが魔法の大砲に対してナグルファルからは氷山や火山弾が放ちながら敵艦隊は接近してきている。船の大きさで勝っている上に乗っているのが巨人たちであることを考えるとダメージ覚悟で接近したほうが向こうはかなり有利に戦えるという判断だろう。
ここで正式にウィザードオーブの艦隊の司令官から俺に支援要請が来たので、リアンたちに攻撃の指示を出した。するといきなりサフィが海中からナグルファルに向かって体当たりするとそのままブリーチングすると別のナグルファルにのしかかる。
だが沈没まではいかない。サフィの体をムスペルたちが受け止めていた。
「やるな~」
俺はその様子をユグドラシルからイクスの目を使うことで見ていた。素直にサフィの巨体にのしかかられて無事な物は中々いないと思う。そしてサフィは逆にムスペルたちの炎の拳を受けてしまうと更にムスペルたちはジャンプすると棍棒を構える。
「それは調子に乗り過ぎだ」
「グォオオオ!」
海から星矢が飛んで来て、武技をキャンセルされるとチェスが横から体当たりをするとナグルファルを体当たりをして、そのままナグルファルを押し続けて、他のナグルファルにぶつける。
この結果、跳び上がったムスペルたちは着地地点を失う。それならとサフィを土台にしてジャンプして見せたがここで空から大気の壁が降り注いで水中に押し付けた。この結果、ムスペルたちは溺れてしまう。
相手の動きを完全に読んでいたのはコノハだ。空に空虚で姿を消した状態で完全に狙っていた。更にチェスの体当たりでぶつかり合ったナグルファルに悲劇が起きる。
「ブルーホール!」
巨大なブルーホールに捕まり沈没する。リアンの人魚魔法だ。なんとか助かったサフィは息を吸い込むと特大のドラゴンブレスを放つ。これに対して、狙われたナグルファルはシールドを展開する。
「それはもう見せてるぞ。甘いんじゃないか?」
「ペネトレイター!」
ダーレーが人モードで海から飛び出すと霸王戟でシールドを破壊する。その結果、サフィのドラゴンブレスがナグルファルに直撃し、完全に油断していた後ろのナグルファルたちまで炸裂する。
これを見たウィザードオーブの艦隊は攻め手に出る。海からの襲撃があるとやはりナグルファルの軍勢はかなり不利だ。折角のシールドもリアンとコノハ、チェス、ダーレーに破壊されては意味がない。
「そろそろ魔力がやばそうだな」
『リアン、補給の時間だ。みんなを引かせてくれ。艦隊には俺から話しておく』
『了解しました』
リアンたちが補給に戻るのに合わせて、ウィザードオーブの艦隊も後ろに下がる。するとナグルファルの艦隊はチャンスとばかりに前に出て来た。
「恩恵。破壊神の加護。思いっきりやっていいぞ。イクス」
「マスターからの加護と許可を確認。ツインバスターキャノン、魔力チャージ開始…魔力チャージ完了。目標敵艦隊。ロックオン完了。マスター」
「撃て」
「イエス、マスター」
ユグドラシルからとんでもない魔力の砲撃がナグルファルの艦隊に向かうとシールドを展開するが破壊神の加護が加わったツインバスターキャノンに耐えられずシールドがぶっ壊れると艦隊が消し飛ぶ。
俺たちがユグドラシルにいる理由はここなら海への支援砲撃や地上への支援砲撃が可能だからだ。これと同じことがエリクサーラピスの地上戦で行われている。わざわざ事前に狙撃用のタワーまで作ったエジソンたちの行動力には驚かされたものだ。
「魔力減少…マスターに補給を要請します」
「はいよ。エントラスト」
「マスターの魔力チャージを確認。みなぎって来ました」
「全然みなぎっていない声で言われてもな」
また変な言葉を覚えたな。絶対サバ缶さんたちの影響だよ。イクスが補給を受けているようにリアンたちも補給が済むとみんなが海に戻る。そしてまた敵艦隊と激突することになる。
一方地上のほうはユグドラシルから巨人たちが現れるのではなく、スカアハ師匠たちの故郷である影の国ダン・スカーとウィザードオーブの都を狙う二か所攻撃が行われた。
これを知ったスカアハ師匠とオイフェは自分たちの国を守るためにクーフーリンたちに後の事を任せて、向かう事になった。そして俺からも援軍をここに送る。
「まさかフェンリルを寄こすとはな…何を考えているんだ? あいつは?」
「タクトは師匠の心配や強くしてもらった恩義とかで動く奴だからな…私たちではあいつの考えはわからんよ。一つだけ言えることがあるならタクトは今の戦いにおいては余裕を持っているのは確実だろうさ」
スカアハ師匠には俺の考えはバレバレだ。スカアハ師匠の言う通り、現状では俺は負けるとは思っていない。みんなの個々の強さに加えて、イクスのとんでもない砲撃支援がある。これで負けるビジョンを想像するのは結構難しい。
ただこれは現時点での余裕の話だ。ロキがこのまま黙っているはずがないし、神話のラグナロクはまだまだこんなものじゃない。何はともあえスカアハ師匠とオイフェは優牙と共に自分たちの国の城壁を叩いている巨人たちに襲い掛かった。
流石はゲイボルグで巨人たちを次々即死させていくが不屈で耐えられる。
「「うざったい! 死針」」
二人がゲイボルグを空に向けて投げると死針が降り注いで不屈の効果限界を超えるダメージを与えて、倒すが巨人は次々城壁に迫って来る。二人で抑えれる量じゃないのだ。しかしここには優牙がいる。
「ワオーン」
「「「「オォオオオオ~!?」」」」
優牙の天変地異で発生した巨大竜巻に巻き込まれて、城壁に迫っていた巨人たちが空を舞う。その間に城壁を攻撃していた奴らは優牙も爪で斬り裂いて吹っ飛ばすと別の巨人には噛みついてぶん投げる。
そして優牙は影分身を使うと影の国の城壁の前に陣取る。これを見たスカアハ師匠は感想を言う。
「我が弟子ながらよくもまぁ、こんな召喚獣を従えたものだ…」
「獣なのに防衛戦を理解している所が嫌らしいわね…味方だと頼もしいけど」
「だな。お陰で時間が出来た。戦士たちの指揮は任せるぞ。オイフェ」
「えぇ。女王が攻撃した敵を優先して狙う様に言っておくわ」
スカアハ師匠はオイフェを睨むが笑顔で返される。妹の笑顔に勝てないスカアハ師匠は何も言わず、戦場に出た。そんな姉の様子にオイフェは笑うと影の国の戦士たちに指示を出す。本当にこの姉妹は仲がいいのか悪いのかよく分からないけど、今の関係は悪いようには見えなかった。
ここでの戦闘はスカアハ師匠とオイフェ、優牙が巨人たちの生命体を削り、奇襲が得意な影の戦士たちがとどめを刺すように動く。
しかしここには強いヨトゥンやムスペルが現れる。強いヨトゥンが氷山を投げつけて来ると優牙は重力球で氷山を消し飛ばしながら射線上に強いヨトゥンを入れる事で強いヨトゥンを消し飛ばす。
ムスペルは核撃を使って来たが黒星で相殺するとムスペルの背後から爪が現れて、ムスペルの胸を割くと次元潜伏で隠れていた影分身がムスペルの頭を噛み千切って倒した。
巨人たちも優牙の影分身を倒すところまでは行くのだが、城門に陣取る優牙に成す術がない状況だ。優牙は防御特化のフェンリルである。守る戦いのほうが向いている。フェンリル自体が強すぎるから分からなくなるけどね。ここにスカアハ師匠たちもいるのだ。巨人たちが攻めあぐねるのも無理はなかった。
一方ウィザードオーブの都方面には巨人たちに加えて、大量の死霊が襲い掛かって来ていた。ここで重要になったのが役割分担だ。何せクーフーリンたち戦士は死霊の対処は出来ない。なので死霊たちの対処は魔法使いたちの仕事だ。
しかしこの死霊たちが結構魔法を霊化で躱して、接近戦を挑んで来た。中々に賢い選択だが、まだ甘いね。こちらには接近戦で幽霊に強い者もいるのだ。
「…星光刃! …多乱刃!」
ルミがサリエルの鎌に星光刃を発生させると多乱刃で死霊を次々刈り取り消滅させる。死神の性質を持つルミは対幽霊には効果抜群だ。
そして聖剣を持つルーナとシフォン、神剣グラムを持つスピカとリースは無双状態だ。スピカとリースに至っては巨人たちを次々倒している。神剣グラムの勝利の加護は今でも健在で対抗手段がない巨人たちはスピカとリースを全然止めれていない。
「だいぶ死霊が減って来ましたね…そろそろ行きますよ! 星座魔法! アルゴ!」
アルゴ船が現れると巨人の軍勢に向かって、砲撃支援が行われる。そして敵をどんどん押して行った。
『セチア、そろそろみんなの魔力がやばい。部隊を引かせるから思いっきりセチアの力を見せてやれ』
『任せて下さい。私の故郷とユグドラシルに手を出したことを後悔させて上げますよ』
セチアが杖を構えると天に星座の魔方陣が次々描かれる。その魔法の術者を狙って、ムスペルたちの攻撃が来るがエルフたちの精霊結界がセチアを守る。そして魔法の準備が整った。
「黄道十二星座の力を思い知りなさい! 星座魔法! ゾディアック!」
巨人たちにゾディアックが炸裂した結果、消し飛ぶ。この結果、地上部隊は補給を済ませることが出来た。ウィザードオーブの部隊の弱点は魔法を戦闘で多く使うから他の軍隊と比べると補給するタイミングが早くなる。
こうなると一撃で敵を葬り去る火力があるとだいぶ補給が楽になる。接戦的にでも魔力が切れたら、補給しないと戦い無くなるから倒しきれないで補給に戻ると押し込まれてしまう。なのでセチアの存在はかなり有難いはずだ。
もちろんウィザードオーブの中には一撃で戦闘をひっくり返す魔法や技を持つ者がいるけど、戦力は多いに越したことはない。
ここで大技を使ったセチアがスピカとリースに連れられて、戻って来た。するとイクスから報告が来る。
「敵第二陣、出現しました。場所は最初と同じ場所で向かう先は同じなようです」
「え…もうですか!?」
「みんなは暴れ過ぎだからここはウィザードオーブの軍隊に任せよう」
ここでフェグルスの一撃が放たれて、敵の第二陣が消し飛ばされると第三陣がやって来る。ここで俺は違和感を持った。
「敵艦隊の動きが変だな…地上戦のほうも巨人たちが増えている。イクス、俺はちょっとオーディンと話して来る。ここを頼むな? 何か敵に動きがあったら、押してくれ」
「イエス、マスター」
俺がオーディンと話をするとオーディンは早速調べてくれた。そしてみんなを苦しめている巨人の無限湧き現象の元凶が判明した。
「ロキの娘にしてヘルヘイムの女神ヘルがどうやら各地で死んだ巨人たちを蘇らせているようじゃ」
「他の国までそんな状況なんですか? でも、他の国で死んだ者はその国の冥界に行くはずでは?」
このゲームでは各国の冥界でのルールはそういう設定になっている。俺の疑問にオーディンが答えてくれる。
「確かに基本的にはお主がいったルールであっておる。じゃがな…ロキの奴が冥界同士を繋げたことで死んだ魂も冥界での行き来を可能になっておるようじゃ」
「つまりヘルを倒さないといけないわけですか…」
「それが出来ればいいんじゃがな…ロキが許すとは思えんし、ヘルヘイムにおるヘルを倒すのは儂らでも難しい…それにヘルがロキの行動全てに関わるとも思えん。恐らく巨人たちを蘇生させるだけの手伝い程度じゃろう」
確かにラグナロクの神話ではヘルの立ち位置はどれも微妙だ。一応死者の軍団を送り込む描写はあるが基本的にヘルはラグナロクの時でもヘルヘイムにいる神話がほとんどだと思う。
「仲が悪い感じなんですか?」
「そうでもないんじゃが…単純に面倒なことには関わろうとはしない女神なんじゃよ。それでも父親であるロキのお願いに対して少しの協力はしてしまう女神でもある。その結果がこれなんじゃと儂は考えておる」
ノワタイプの女神みたいだな。死者の軍団と巨人の無限蘇生は手伝うけど、それ以上のことはしないって感じか。そういう話ならヘルとの戦闘を避けることも出来るかもしれない。
「どうやらお主も儂と同じ考えらしいのぅ。スカアハとオイフェを連れて行け。影の国の方にはワルキューレたちを向かわせよう。あの二人ならロキの転送魔方陣を破壊することが出来る筈じゃ」
「転送魔方陣の場所はわかりますか?」
「儂を誰だと思っておるんじゃ?」
オーディンからマップデータが送られて来た。そこには印が表示されており、そこがロキの転送魔方陣らしい。これを破壊出来れば、少なくとも各国に巨人たちが行くことは無くなり、転送魔方陣を破壊した後に倒された巨人たちは各国の冥界に行くことになるはずだ。つまりヘルは彼らを蘇生することが出来なくなる。
これをした後にヘルがどう動くか判断したいというのがオーディンの考えで、もしまだロキに肩入れするならオーディンたちが動くことが確約された。まぁ、これは恐らくヘルはラグナロクに直接かかわることは無さそうな流れだね。
とにかくこれは早ければ早い方がいい。というわけで話を聞いた俺たちが動くことになった。まず地上で戦っているスカアハ師匠とオイフェに連絡を入れると俺もメンバーを決める。
「コノハ、スピカ、リースは俺と一緒に来てくれ」
「それはいいですが流石に人数が少なすぎではないですか? タクト様」
「俺たちの目的は転送魔方陣の破壊だ。場所も分かっているし、少数精鋭で速攻で潰すだけの仕事だからな。これぐらいで十分なんだよ」
「タクト様たちが話した通りに動くだけとは思えませんけど、戦力をなるべく減らしたくない気持ちは理解しました。本当に気を付けてくださいね? タクト様が倒されると全て終わりなんですから」
流石に俺の死亡でラグナロククエストが失敗になることはないが影響が大きい事は理解している。なので慎重にかつ迅速に動くとしよう。エルフの森でスカアハ師匠とオイフェと合流すると何故かシフォンまで付いて来ていた。
「やっぱり何かクエストに行く気だね? タクト君」
「クエストまでは発生していないからおつかいにいくだけ」
「私も行くから。拒否権はないからね」
今日のシフォンはやけに迫力がある。一応シフォンが地上戦に抜ける事のヤバさを伝えるが何故かスカアハ師匠とオイフェがシフォンの味方をする。
「すぐに帰るなら問題ないだろう?」
「そうよ」
「それならセチアたちも連れてくか」
「「「それは困る」」」
俺には理解出来ない理屈だが、ここで揉めて、時間を無駄にするのも馬鹿らしい。それに今も必死に戦っているみんなに申し訳が無さすぎる。こうして俺たちはユグドラシルを下ることになるのだった。




