#1342 ラグナロク、ヴァンパイアの国戦
お盆休みの告知をさせて頂きます。8月13日~8月16日まで毎日23時に更新を行います。
また『動物保護』の方で同じ期間に朝9時に更新を目指して執筆中です。こちらの方はお盆休みの直前に告知することになると思います。
それでは本編をお楽しみください。
リビナが転移しているほぼ同時時刻、セフォネもまたヴァンパイアの国に転移していた。そしてそこでは巨人の軍勢と必死に戦うヴァンパイアたちの姿があった。
「何をしておるんじゃ!」
セフォネは飛び出すと今にも殺されそうになっているヴァンパイアナイトたちの助けに入る。
「だ、誰だ!」
「ヴァンパイア?」
「妾のことを考えるよりも動かぬか! 馬鹿者! そこに座っておると死ぬぞ!」
この国の戦場はある意味ではサキュバスの国よりも酷かった。ある程度攻撃が通じるが故に抵抗した結果、ヴァンパイアたちの被害が拡大している。そして既にヴァンパイアの国の都に巨人たちは侵入していた。
「斥力操作! ぬぅえええい! デススライサー!」
セフォネは斥力で強引に棍棒を弾き飛ばすと跳び上がり、巨人の首を切断して、即死される。
「うわぁあああ!?」
「助けてくれえええ!」
「え…あ…あぁ…お母さん」
セフォネの目に逃げ出すヴァンパイアナイトたちと置き去りにされたことで巨人に狙われる小さな女の子のヴァンパイアが映る。
「闇転移! ぬうぅうう!」
「え? お母さん?」
「妾はお母さんではないわ! 早く逃げ出すのじゃ!」
しかし女の子は動かない。
「く…ええい! 世話が焼けるのじゃ! 血竜!」
セフォネは血竜を巨人に襲わせている間に女の子を抱きかかえて後ろに下がる。
「大丈夫か?」
「…かっこいい!」
「む? ふ、ふはははは! そうかそうか! 妾は格好良いか! なかなか見どこがある子供じゃな!」
「オォオオオ!」
褒められて、いい気分になっているセフォネにヨトゥンの覇撃が飛んで来るが魔神障壁でガードしていた。
「やれやれなのじゃ」
「セフォネ様!」
「妾が援護する。戦っている者を全員下がらせるのじゃ。妾の戦いに巻き込まれるぞ。後、この子を安全な所まで頼むのじゃ」
「は!」
セフォネが小さな女の子を見送ると自分の故郷を破壊している巨人たちを怒りの目を向ける。
「妾の故郷を破壊するとはいい度胸なのじゃ! 今すぐ追い出してやろう!」
セフォネが次々巨人の首をプルートデスサイズで斬っていくと巨人たちの動きがセフォネを狙い出した。それを感じ取ったセフォネは後ろに下がると巨人たちはセフォネを見てしまう。
「馬鹿め! 石化の魔眼!」
ゴルゴネイオンネックレスが緑色の閃光を放つと巨人たちが石化する。そして町を破壊している巨人を背後から奇襲して、首を落とす。しかし巨人は次々なだれ込んで来る。
「セフォネ様! 部隊の撤退させました」
「やっとか…これで本気を出せるのじゃ! 行くぞ! 巨人どもよ! 生物創造! いでよ! 我が軍勢よ!」
セフォネがフェンリルを中心にしたモンスターの部隊を呼び出すと突然のモンスターたちの襲撃に巨人たちは襲われる。
「なんという生物創造…」
「はぁ…はぁ…これで町の巨人たちは押し返せるはずじゃ。それでこれはどういう状況なのじゃ?」
「は! 奴らは不死殺しの指輪を持っているようです。既に不死身に調子に乗った部隊が何隊も壊滅しました。しかし魔法や攻撃が通じるので、抵抗していたのですが」
「パワーと生命力、防御力の高さで強引に押されて、こうなっているわけか…」
「ご推察の通りです」
サキュバスが状態異常に対策を取られていたようにヴァンパイアは不死身の対策を取られた。自分たちが不死身だと思って、意気揚々と戦いを挑んだヴァンパイアの部隊はさぞ巨人たちにとってはいい鴨だっただろう。
そしてヴァンパイアはパワーと生命力、防御力では巨人たちには勝てない。その上、数で押されたら、どうしようもなかった。
「いかがしますか?」
「そうじゃな…地魔法のランパードを使える者はおるか?」
「はい。何人かいますが」
「妾は使えぬ。集めてまずは突破された城壁をランパードで塞ぐのじゃ。それから城門に魔法か弓矢が得意な者を配置せよ。誰もおらんではただの高い壁じゃ」
セフォネも俺たちの戦闘をたくさん見てきた。それ故にヴァンパイアたちのダメさがよくわかった。ただこれはサキュバスたちと同様に無理もないことだ。彼らもまた大規模な戦闘の経験がない。
それでも力の強さや人間との争いは経験して来て、自分たちが上位種であるプライドがあった。だからこそ不利な状況なのに自分たちが勝っていると疑うことがなく、守りを捨てた結果がこの惨状だ。
「奴らモンスターに襲われて逃げ出しているぞ!」
「今が好機だ! 奴らを倒せー!」
「後、あの大馬鹿者たちを止めてくれ。妾はああいう輩は苦手じゃ」
そこはセフォネには止めに入って欲しかったが指揮官経験が少ないセフォネにこれを求めるのは酷かな?セフォネも戦場では悪魔たちの指揮をしたりするがこれまでの戦場で同族の指揮はしたことが無い。必然的に指揮官としての経験値が少ない上にセフォネは人付き合いが結構苦手なタイプだ。これは過去が過去なだけにどうしようもないところなので、今回のヴァンパイアのまとめ役はレベルが高いヴァンパイアに任せるのが適任だろう。
その後、セフォネは生物創造のモンスターたちと共に巨人たちを押し返すと魔法や吸血鬼技の援護がやっと来たことを確認すると魔力の回復も兼ねて、一度城に入ることとオリジンヴァンパイアと面会する。
「よく来てくれたな」
「タクトが妾たちの背中を押してくれたお陰じゃ。タクトに感謝するんじゃな」
「ふふ。進化する前はあんなに頼りなかったのに随分大きくなったものよ。そうは思わぬか?」
「はい。まさかセフォネがここまで強くなっていたとは親として鼻が高いです」
セフォネの父親と母親が姿を見せるとセフォネは安心する。彼らが無事かどうか分からないのがセフォネにとってはかなりの気がかりだったからだ。
「生物創造だけをみれば私を超えているな。やはり外の世界を旅する者との差が如実に出るスキルか…トゥルーヴァンパイアでそこまでの実力を持つ者は稀だ。最終的にはオリジンヴァンパイアに匹敵する力を得るところまで行くかもしれんな」
「行くつもりじゃ。あの時、選択した妾とその道を支持してくれたタクトのためにもな」
「ふふ…本当に立派なヴァンパイアになったのね。それにタクトさんと仲が良さそうでほっとした」
「お母さん…タクトの話は…」
母親の前で夫の話をセフォネはしたくないらしい。照れているセフォネの様子を微笑ましく見ている両親だったがここで空気を読めないムスペルたちが火山弾で攻撃を仕掛けて来た。
「どかどかと五月蠅いわね…あいつらがどれだけ弱いか教えてあげようかしら?」
「い、いけません! 女王! 女王に暴れられたら、国が無くなります! それを避ける為にセフォネ様を呼んだのではありませんか!」
とんでもない実力者であることはこれではっきりしたな。恐らくリリスも同じ悩みを抱えているからこそリビナを呼んだに違いない。
「妾がまた行って来るのじゃ」
「そう…それなら魔力を回復していきなさい。彼女に飲み物を」
セフォネはワインのような飲み物を出される。臭いを嗅ぐとかび臭った。
「ぬわ!? なんじゃこれは!?」
「ここで作られている魔力回復の飲み物よ。結構美味しいと評判なの。飲んでみなさい」
セフォネは無言で飲み物をみて、ここに来る前に回復用の飲み物を持ってこなかったことを強く後悔した。しかし巨人たちが今も攻めており、回復手段がない以上、飲むしかない。
「…んぐ! …げー!」
セフォネは吐くまではいかなかったが舌を出して、まずさのアピールをする。しかも魔力があまり回復していない。
「全部飲まないと全回復しないわよ?」
「マジか! なのじゃ!」
俺の言葉が普通に出るほどの衝撃だったらしい。そしてセフォネは全部を一気に飲む。それほどまでに状況はひっ迫していた。
「頑張っていってらっしゃい」
「お主たちにはこの戦いが終わったら、絶対にタクトの飲み物を飲ませてやるのじゃ~!」
「あの男の血のほうがいいんだけど?」
「それは妾だけのものじゃ! 絶対に他の誰にもタクトの血はやらん!」
そういうとセフォネは戦場に戻ると最前線に立ち、血の能力を蒸発されてしまうムスペルたちを中心に葬り去っていく。これにはセフォネが考える作戦がった。
「これで終わりじゃ! 黒星! はぁ…はぁ…これで邪魔者はいなくなったのじゃ。血の海に沈むがいい! 血流支配! 沈殿! 物質化!」
他のヴァンパイアたちと共に血の海を作り出すと血の手を作り出して、強引にセフォネは巨人たちを沈める。しかしここでヨトゥンたちが血の海を凍らせた。してやったりの顔を見せるヨトゥンたちだが、状況を理解出来ていない。
「氷属性のお主たちならそう来ると思っておったぞ。それで腰まで沈んだ状態で毒も混じっている血の海を凍らせてお主たちはこれからどうするんじゃ?」
巨人たちは凍った血の海から抜けられなくなってしまった。流石にこれは勝負ありだ。ここぞとばかりに援護に徹していたヴァンパイアたちが前に出て来るとセフォネは後の事を彼らに任せて引くのだった。
「妾の故郷は取り敢えず守ったぞ…タクト、みんな。後は頼んだぞ。アラネア、ハーベラス、叢雲」
セフォネは城に戻り、リビナ同様に城に留まる選択をするのだった。




