#1336 ラグナロク、アクアス防衛戦
時間は遡り、ここはエリクサーラピス。この国でゾンビが沸いたのは場所はパラディンロードとアクアスの中間地点にある熱帯雨林の中だ。その森からアクアスとエリクサーラピスに敵の進軍が確認された。
「まさかこの町が狙われるなんて…そんなにこの町の水樹が邪魔なのでしょうか?」
「それはどうか分からないの。でもお兄様はユグドラシルが狙われるならこの町の水樹が狙われる可能性は高いと話していたの
「本当にタクト様の予想は当たりますね」
「私たちの召喚師ですから。では、私たちは彼らの排除に動きますね」
「よろしくお願いいたします。皆さん」
リーシャにお願いされたアリナとミールだが、既にアリナはもうぷよ助とディアンに指示を出している。
森の中を大量のゾンビたちが歩いて行く。しかしこの森はアクアスから川が流れている場所だ。この地形が彼らになって、どれだけ最悪の地形が思い知ることになる。
ゾンビたちは次々、水に捕まると木の上に連れて行かれて、体に取り込まれると消滅する。ぷよ助だ。流石にどこから現れるかは分からなかったけど、川が流れていたことでぷよ助はすぐさま配置に付く事が出来た。
そしてゾンビたちにぷよ助は煽動を発動させて、ゾンビたちに自分に強制攻撃をさせて、捕食していく。しかし敵はゾンビだけではない。ヨトゥンやムスペルがいる。
最初に攻撃して来たのはヨトゥンだ。極寒ブレスをぷよ助に放つが寒無効で氷属性はぷよ助には通用しない。ここで棍棒で叩いて来たが衝撃無効で意味がない。逆にぷよ助は棍棒に捕まれるとそのままヨトゥンに襲い掛かり、食べてしまった。
次にムスペルがぷよ助に挑む。溶ブレスを放ってきたがぷよ助の火属性無効で効果はない。そして棍棒で爆心を発生させてきたがぷよ助の爆属性無効で通用しない。ここで棍棒をぷよ助は同じように捕まれるが流石にムスペルはここで距離を取ると地面を踏みつけて、猛爆を発生させる。しかし沢山の爆炎の中から複数のぷよ助が現れる。
流石のムスペルもぷよ助との相性の悪さを感じ取る。しかしここでムスペルは旱魃スキルを発動させてきた。身体が水分であるぷよ助にとっては最悪のスキルだ。しかしぷよ助も酸性雨を降らせて、対抗する。
酸性雨に触れたムスペルは腐蝕の状態異常になる。それよりもどんな雨でも雨が降ったことで旱魃スキルは打ち消された。しかしぷよ助の分裂体は蒸発してしまった。ここで呪滅コンボが発動するがぷよ助は珍しく怒る。自分も蒸発しそうだったのだ。怒るのも無理はない。
怒ったぷよ助は真っ向からムスペルに挑む。それに対してムスペルは笑むを浮かべる。ぷよ助が得意としている戦術は奇襲だ。それなのに真っ向勝負を選択するのはぷよ助らしくない。見えているぷよ助はムスペルからしたら、かなり戦いやすくなったことだろう。
しかし怒ったぷよ助はやけになった訳では無かった。棍棒をぷよ助に振りかぶったムスペルの地面からぷよ助の分裂体が現れて、ムスペルの体に張り付く。更に棍棒を振る腕にも粘着糸が巻き付いた。
戦闘する前にぷよ助は罠として地面にも自分の分裂体を配置していたのだ。そして恐怖のぷよ助の捕食時間が始まる。本体も跳びかかり、ムスペルを包み込むとムスペルはもがき苦しみながら体は骨すら残さず消え去った。
『ぷよ助? 他のゾンビたちが抜けているの』
アリナの指摘にぷよ助のぷるぷるボディが震え上がった。ムスペルとの勝負に自分の分裂体と時間を使い過ぎたのだ。その結果、ぷよ助からみて、左右の大量のゾンビが後ろに向けてしまったのだ。流石に今から追っても間に合いはしないだろう。
『しょうがないからそっちはミールに行ってもらうの。ぷよ助はそのままその辺り一体の防衛をお願い』
そのミールはゾンビ相手に無双状態だ。相手からするとミールがいる森は恐怖の森と化している。まずゾンビの侵攻だが、ミールの樹海支配で行く手を徹底的に阻まれている。その上で神水による放水を受ける事になのだからゾンビからするとたまらない。
しかしここでヨトゥンが樹木を凍らせて、棍棒で破壊する形で強引に突破して来た。だが、彼らが踏み込んだ場所は既にミールの森だ。
「トリカブト、ゲルセミウム・エレガンス」
「「「「グ!? オ…オォオオ…」」」」
毒の植物たちを前に巨人たちは指すすべなく、倒れ込むと動かなくなる。流石に植物の知識がない巨人たちに森に生える毒草は分からないだろう。更に言うと自分たちを殺せる草がこの世にあるとも思っていないだろうね。
ここでムスペルがやって来る。ムスペルの炎ブレスとミールの水が激突すると互角となる。
「私の水だと互角ですか…っ!?」
「オォオオ!」
ここでムスペルはミールをしたと噴火される。ミールは神速で瞬時に距離を取り、噴火に対処する。その隙にムスペルはミールに突っ込んで来る。自分が強いと自覚した奴は強気に出てくるものだ。
『ミール』
『はい。例の場所に誘導しますね』
ミールはムスペルたちを引き連れて、俺たちが以前死んだことがある滝に誘導した。背に滝がある状態なのでムスペルたちは完全にミールを追い詰めたつもりでいる。
「「「「オォオオオ!」」」」
「きゃ~! こんな感じでいいでしょうか?」
「「「「っ!?」」」」
ミールの悪戯成功の顔を見て、自分たちがやばい状況にいることを知ったが手遅れだ。彼らの胸が川から現れた尻尾に貫かれるとディアンが現れ、ムスペルに噛みつくとそのまま滝に引きずり込んで、滝壺に落とした。
アクアスは以前ヒュドラに襲われたことがある町だ。少しでもディアンに対して、いいイメージを町の人には持ってもらいたいと思って、ここに配置した。
「さて、巨人さんたちはいなくなりましたね? 神水! 津波!」
「「「「アァアア~!?」」」」
今回の誘導でゾンビたちはアクアスの町にかなり接近出来たが神水の津波に呑み込まれて、一気に元の位置までゾンビたちは全滅する。しかし巨人たちはこれには耐える。
「「「「ク…オォオオオ!」」」」
「うるさいの。こっちは空のゾンビたちを退治するのに忙しいの」
「「「「ッ!?」」」」
アリナは空のゾンビたちを対応していた。気流や大気圧を操るアリナにただ空を飛ぶだけの屍が勝てるはずがない。そんなアリナが無事だった巨人たちの後ろに現れる。
「雷光、電子分解なの」
巨人たちは声がした方を見るがそこには既にアリナの姿はなく、一瞬に内に巨人たちはフェンリルレイピアに突かれまくると倒れる。
「遅すぎなの」
アリナはこういうが森の中を縦横無尽に飛び回れているところが凄い。これは風のドラゴンには出来ない芸当だ。風のドラゴンだと身体が大きすぎる上に森だと目視で敵の位置確認は出来なくなるので、かなり苦手なフィールドなんだけどね。アリナにとってはかなり得意なフィールドみたいだ。
「オォオオオ!」
「時空断層。それで隠れているつもりだったの?」
ムスペルの棍棒がアリナに触れることなく、止まっている。時空の断層に攻撃を阻まれたのだ。アリナは音で森の中の敵の位置を把握している。ゾンビがたくさんいる状態だったら、判断出来なかったが森にたった一人隠れている敵はかくれんぼになりはしない。
「荷電球なの」
「オォオオオ!?」
至近距離から荷電球が直撃して、ムスペルは痺れるとアリナは魔方陣を展開していた。
「あなたを倒して休憩するから大サービスなの。竜魔法、ドラゴニックサンダーボルド!」
雷のドラゴンがムスペルに襲い掛かり、感電するとムスペルは倒された。
「みんな、ここで休憩するの」
アリナは一旦休憩を指示し、アクアスの町の外でリーシャさんたちからご飯などの支援を受ける。そこでリーシャさんに現状を話して安心させる。
「そうですか。皆さんが来てくれて本当に良かったです。町の人たちや水樹の精霊も皆さんの強さを見て、安心してますよ」
「それは良かったの。でも、大変なのはこれからなの。みんなも今のうちにたくさん休憩して欲しいの」
「確かにこの程度で終わるはずありませんもんね」
みんな、色々なイベントをやって来た経験がここでいかされる。そして他の場所と同様に巨人たちが徐々に増えだして来た。
『流石に数が多くありませんか!?』
『おかしいの…』
『おかしいですか?』
『最初に倒した巨人たちがあの中にいるの! つまり倒したのに蘇生しているとしか思えないの』
『えぇ!? どういうことですか!?』
流石にアリナは気が付いた。巨人たちの増殖の原因は正しく蘇生だ。しかし俺たちが知る蘇生とはだいぶ異なる。何せ奴らは間違いなく、このフィールドで死んでいるのだ。その後、別の場所で蘇生して戦線に復帰している。
ミールたちは驚くが別におかしなところはない。不死殺しで殺した敵でも蘇生魔法で蘇生可能となっている。なぜなら不死殺しは不死を封じるスキルで蘇生を封じるスキルではないからだ。
『たぶん巨人たちを蘇生させている奴が冥界の中にいるの…少なくてもこのフィールドにそいつがいないことは間違いない』
アリナは自分の目と耳を使った情報収集能力で見事に正解を出す。
『え…それって、どうすればいいんでしょうか?』
『アリナたちの任務はここの防衛なの。たぶんお兄様ならこの事に気が付いて動いてくれるの。だからアリナたちは』
『ここを守るわけですね。了解しました』
『ディアンは地上戦で巨人たちの相手をして欲しいの。もうこっちのことを知っている奴に隠れていても意味ないからここからは二人ずつ交代で休憩しながら敵に対処するの。幸い空のゾンビはほとんど退治出来たからアリナも地上戦に回るからきっと大丈夫なの』
ディアンが地上戦に移行するとブレスの連続使用で次々巨人たちは倒されていく。そしてディアンと変わるようにアリナとぷよ助が敵軍の相手をしている隙にディアンは魔力を回復させて、ミールと共にアリナたちと交代する。
アリナの見事な指示とみんなの奮戦のおかげでアクアスの町は今のところ、無傷なのだった。




