#1335 ラグナロク、ワントワークの都防衛戦
白夜たちが戦いを開始した同時刻。ワントワークの都の防衛を任された劉備軍とブルーフリーダムを中心にした部隊は丘がある草原で防衛線を敷いた。
そして両軍が激突する。最初はワントワーク軍が押していく。流石に劉備軍は有名NPCたちがそれぞれがとんでもなく強い。指揮しているのも諸葛亮で奇襲のタイミングや撤退の合図などもそつなくこなしている。
更に虎戦車の大部隊も展開され、ゾンビたちが焼かれていく。流石にこれを見たヨトゥンたちは兵器の破壊に動いたがカタパルトやアーバレストが撃ち込まれて、迎撃に動いた瞬間をプレイヤーたちに斬られてしまう。
「仲間が強いと指揮のし甲斐がありますね」
「丞相! 空を飛ぶゾンビたちが向かって来てます」
「虎戦車を狙わないところをみると敵は統制が取れてませんね。暴旋風!」
諸葛亮が羽団扇を振ると竜巻がいくつも発生して、飛行しているゾンビが巻き込まれる。更に黄忠が率いる弓部隊とプレイヤーたちの銃部隊が撃墜に動いた。
「順調ですね。丞相」
「そう思いますか?」
「え? 違うんですか?」
「確かに初戦はこちらが有利です。しかし敵は軍師が一番嫌いな戦術を取って来るはずですよ」
諸葛亮の言う通りに戦場は徐々に押されていく。どうすることも出来ないのが数の暴力だ。本来なら戦力差を何とかするのが軍師としての腕の見せ所なのだが、今回の相手が人間ではなく、ゾンビや巨人であることを諸葛亮は危惧していた。
そしてそれが現実のものとなる。
「奇襲の合図だ! 全軍! 私に続け! 敵軍を斬り裂く! 超連携!」
「行くぞ! 全軍俺に続け! 超連携!」
趙雲と馬超が敵軍の側面から自分の愛馬と共に奇襲を仕掛ける。彼らの突撃は多くのゾンビを蹴散らし、敵軍を真っ二つにするがゾンビたちは飛び込んだ彼らに押し寄せる。
「く…! 馬超! 密集陣形で共に駆け抜ける! 殿は私がやる」
「おう! 俺は正面で退路を確保する! 全員俺に続け! 遅れると襲われるぞ!」
人間だと奇襲をすると陣形が乱れたりするがゾンビだと奇襲してきた部隊に迷わず襲い掛かって来る。しかも突撃されたゾンビたちは自然と奇襲部隊を追うので、退路が塞がれてしまうのだ。
そして奇襲で一番効果的な前線の影響がほとんどない。何故なら彼らには目の前の敵に襲い掛かることしか脳が無いので、味方の心配や奇襲受けたほうを見るなどの効果はない。
逆にいうとそれは奇襲部隊が開けてくれた横の道が自然と開けることを意味しているんだが、それも一時のことだ。
「状況はどうだ? 孔明」
「帝。御覧の通り劣勢です。いくつか策も講じましたが敵の数を減らすだけで進軍を止めるには至っていない状況となっております」
諸葛亮もプレイヤーと共に地雷などを設置したりしたが敵の数を減らすだけに留まる。更に関羽が洪水スキルを使って、敵を押し流したりしたが時間稼ぎにしかなっていない。
「やはり皆が同時攻撃したほうが良いのではないか?」
「確かにそれをすれば前線を押し上げることは容易でしょう。しかしその後の疲労で結局押し上げられます。もしそこに兵士を配置すれば多大な被害が出る事になります」
「では、例の作戦を使うか?」
「はい。折角フリーティアの英雄殿が送ってくれた戦力。使わない手はありますまい」
「分かった」
ここで諸葛亮は巨人たちを狙うようにブルーフリーダムや関羽たちに指示を出す。コーラルを使う作戦を実行するためには巨人たちがどうしても邪魔なのだ。
しかしそれをするのもかなり大変だ。そこでコーラルの出番が来た。
「ピィ!」
「流石にこのレベルの敵が相手だとタクトさんの召喚獣は敵無しだな」
「感心している場合じゃないだろ? いくぞ!」
「うん! 頼むよ。コーラルさん!」
コーラルの突撃で空のゾンビたちを問答無用で燃やされ、空振で吹っ飛ばされる。例えダメージを受けてもコーラルならダメージよりも回復量のほうが上回っているから敵の攻撃は意味がない。
そんなコーラルが指示を受けて、巨人に突撃すると背に乗っていたブルーフリーダムのメンバーが同時に降りて、倒れた巨人をすぐに倒す。しかしこのままだと包囲されてしまう。
「ピィ!」
「「「「ナイス!」」」」
コーラルが旋回して、彼らは飛び乗り、次の獲物を狙う。次に狙いのはムスペルだ。流石にコーラルの接近は嫌がるがコーラルに火山弾が当たるはずがない。ここで攻撃を躱しているコーラルが自分がよく知る気配を感じ取る。
「ピィ!」
「え!? 捨て身の一撃!?」
「おいおい…大丈夫なのかよ…」
「ピィ―!」
コーラルが叫ぶとブルーフリーダムのメンバーは大丈夫なのだと考えて、コーラルの動きに合わせる。
コーラルが突撃するとムスペルは棍棒でカウンターを狙って来る。しかし振った棍棒は陽炎で空振りをして、コーラルの突撃ががら空きの腹に炸裂する。そのままムスペルを押していき、ムスペルを倒すとブルーフリーダムのメンバーが降りる。
すると低空飛行をしたせいで他のムスペルにコーラルは狙われてしまう。しかしコーラルはわざとムスペルがいる方に逃げたのだ。援護が来ることはわかっていたから。
天空からドラゴンブレスと無数の雷撃が降り注いだ。ドラゴンブレスがムスペルに炸裂するとコーラルは尻尾を巻き付けて、ムスペルを空に連れて行く。そして援軍としてやってきた蒼穹と共に空でボコボコしてムスペルを倒す。
そして二人は会話をするとブルーフリーダムのメンバーの回収を蒼穹が交代した。流石に生命力がない状態では無理は出来ない。
「蒼帝がこちらに来たという事は」
「海のほうはどうやら余裕があるみたいですね。まぁ、真武がいるなら当然と言えば当然のことですが」
「感謝は言わないのだな?」
「彼の召喚獣ですから。呉に礼など不要ですよ。いずれにしても蒼帝がこちらに来たのなら使わない手はありません」
二匹が撤退し、諸葛亮からこれからの作戦の流れが説明される。最初に仕掛けるのが蒼穹と関羽のコンビだ。
「まさか青龍の王である蒼帝と共に戦う日が来るとはな」
「兄者! 思いっきりやってやれ!」
「任せておけ! 頼みますぞ! 蒼帝殿!」
「シャー!」
関羽が青龍偃月刀を構えると蒼穹と超連携を発動すると蒼穹の青い魔力が青龍偃月刀に宿る。
「ゆくぞ! 大洪水!」
大量の水がゾンビたちを呑み込む。しかし今回は今までの洪水とはわけが違う。蒼穹と超連携したことでこの水には聖竜の加護が宿り、ゾンビたちは次々浄化されていく。
これで敵のゾンビの大部隊は一気に全滅した。
「ははは! 流石、兄者だぜ!」
「いや、蒼帝殿の協力があってこそだ。流石青龍の王。とんでもない力を感じたぞ」
「シャ~」
まあねとドヤ顔の蒼穹である。蒼穹も自分だけの力じゃなかったんだけどね。ここで掲示板を見ている人が俺たちが巨人の増殖を防ぐ作戦に動いている情報を知らせ、蒼穹が伝令役を乗せて、援軍として出発した。
「我々も策の準備に入りましょう」
諸葛亮はゾンビたちを相手に下がりながら、巨人たちを徹底的に狙う指示を出した。その結果、前にゾンビたちが集まる状況となり、更にワントワークの都には城壁がある。全ての門が閉ざされるとゾンビたちは城壁を囲むように群がって来た。この状況はかつて見たことがある。
「まさかワントワークでまたこの光景を見る事になるなんて」
「そういえばフリーティアでも同じ作戦が行われたらしいですね」
「はい。でも、今回は」
「えぇ。ここには炎帝がいます。炎帝の神火はゾンビたちにとっては最悪の炎となるでしょう。作戦開始」
一斉に油が入った樽がワントワークの都の城壁に設置されたカタパルトから射出され、更にララを中心にした空爆部隊がカタパルトで届かない中間地点に樽を落とし、城門に配置された部隊が油が入った樽を城壁から落とす。これで準備は完了だ。
「炎帝よ! 今こそその神の炎でワントワークの大地に平和をもたらして下さい」
「ピィ―!」
コーラルが城門の周囲に神火を放つと炎上していく。そして仕上げに諸葛亮が有名なエピソードを披露する。
「風よ。巻き起こりて炎の助けとならん。英雄技、大火の祈祷!」
諸葛亮が祈ると絶対にあり得ないワントワークの都を中心にダウンバーストが発生すると風はワントワークの都を中心に周囲に流れ、それに炎が流され、全方位に炎が一気に流れていく。
赤壁の戦いで諸葛亮が祈祷をしたことで東南の風を吹かすことで赤壁の戦いで使われた火計を成功されたエピソードがある。これはそれを再現した英雄技なのだろう。
そして巨人たちがいないゾンビたちは見事に神の炎に焼かれて行く。しかしここで巨人たちがいるところに炎が到達すると流石に対処される。しかし炎の中から関羽たちとブルーフリーダムのメンバが現れると巨人たちを倒すとコーラルが地面に着地するとこれらは背に乗り、撤退に成功する。
これでゾンビの大半の撃破に成功し、時間はかなり稼げた。そして彼らの目の前に巨人の部隊が姿を見せる。
「帰還した者たちはすぐさま休息を取るように言ってください」
「じゃあ、私の部隊が出ますね」
「お願いします。ララさん」
「大丈夫です。レギオン召喚!」
ララの召喚獣たちを中心にした部隊が巨人部隊と激突する。その間に帰還を果たした関羽たちとブルーフリーダムのメンバーとコーラルは休息を取と終わるとララの部隊と交代する形で防衛をすることになるのだった。




