#1332 ラグナロク、桜花の都の戦い
関ヶ原で戦闘が始まる少し前の時間まで遡る。ここは桜花の都だ。敵の出現位置が近すぎた結果、都の周囲に広がっている平野で敵軍を迎え撃つ選択となった。
こちらの部隊には都の防衛というだけあって、侍の大部隊の集結している。ここにいる有名なNPCは伊達政宗、上杉謙信、武田信玄、近藤勇、坂本龍馬などがいた。
「おーおー…空まで大量の妖怪だな。こりゃあ、殺し甲斐があるぜ」
「あれが話に聞いた巨人ですね。確かに大きい。あまり突出した行動してはいけませんよ。政宗殿」
「分かっているよ」
「俺たちの目的は都の防衛だ。だが、守ってばかりいては敵の数に呑み込まれるだけになりそうだな?」
「バランスが重要そうですね。軍師たちの指示をよく聞くように気を付けましょう」
そしてここでも決戦が始まる。最初の激突は侍たちが優勢に動いた。というのも軍師が直江兼続で彼が非常に優秀だった。前線で敵軍とぶつかる際に前線のラインを一直線になるように指示出しをしてくれていた。
このラインの意識はかなり重要で乱れると突出した部隊が側面から敵の襲撃を受けやすくなってしまう。そうなると前線の崩壊に繋がりかねない。関ヶ原での戦闘はこのラインを揃えず、敵軍にみんなが突撃した結果、いつの間にか敵軍に呑み込まれているという最悪の結果になったのだ。
「直江の指示は流石ですね」
「謙信様! 巨人が決ます!」
「彼らの大振りの攻撃は脅威ですが懐に飛び込めばなんてことはありません。皆の者! 私に続け!」
「「「「は!」」」」
侍たちは巨人たちの攻撃を躱して、懐に入ると連携して斬っていく。巨人たちの情報は俺たちが事前に報告している。その上で侍たちに最適の巨人の倒し方がこれだという結論になった。
しかしここでヨトゥンが仕掛けて来た。
「「「「ハァー!」」」」
「これは!?」
「白霧です! 謙信様!」
『敵の狙いは相打ちと霧に紛れて強襲するのが狙いだと思います。各自戦闘を控えて、霧が晴れるまで防御を優先してください』
直江兼続から的確な指示が出されるがこの霧は時間が立てば晴れる自然の霧じゃない。それに防御を優先した結果、妖怪たちに数で押されてしまう。どうしても敵を見つけてから攻撃することになるので、妖怪たちの対処に遅れが発生するのだ。
「くそ!」
「数が…」
「相手の気配を読んで攻撃しなさい!」
「「「「俺たち、謙信様たちのような達人じゃないです!」」」」
こればっかりはどうしようもない。上杉謙信が風を発生させるがまた白霧を発生させられて、詰んでしまう。
「おのれ…む! 全員、逃げなさい!」
「「「「え?」」」」
「オォオオオ!」
霧の中からヨトゥンが棍棒を上杉謙信の部隊に振り下ろそうとしていた。しかしここで三日月の巨大な斬撃が後方から飛んで来て、ヨトゥンの首と胴体が真っ二つになる。
「何が起きた!?」
「ふふ。どうやら毘沙門天の加護が我々を守ってくれたようですよ」
斬撃を放ったのは虎徹だ。直江兼続の指示で味方が全員地上に降りたことで虎徹の三日月宗近の斬撃の射線が開いたのだ。こうなると空を飛んでいる妖怪や巨人ぐらい大きい敵なら斬撃を放つだけで斬れる。
もちろん虎徹は味方のピンチを察知して的確に斬撃を放っているけどね。
「直江さん…今の状況では」
「やむを得ないですね…味方も混乱していますし、お願いします」
「了解です。月輝夜さん、お願いします。狙いは敵の前衛。味方の前衛より前を一掃してください」
「グオ!」
虎徹と共に桜花の都で待機していた月輝夜の姿が消えると指示された場所に空から落下する。
「グォオオオオオ!」
神剣イガリマの一振りで空振が発動し、霧と妖怪たちを吹っ飛ばす。その結果、ヨトゥンを見つけた。白霧が吹き飛ばされたことでヨトゥンはまた吐こうとするが目の前に月輝夜がいる状態でそれを優先するのは間違いだ。
月輝夜の腕が伸びるとヨトゥンの顔を掴んで白霧の発動を妨害すると腕を縮ませて、自分の手元に戻すと神剣イガリマで串刺しにした。
ここで妖怪たちとヨトゥンたちが月輝夜を狙う。ここで白霧を使用するべきだな。彼らは完全に丸見えだ。
「グォオオオ!」
月輝夜は空に炎ブレスを放ち、妖怪たちを焼き払うと左右からヨトゥンの棍棒の攻撃と足元から妖怪たちが月輝夜に噛みつく。
この状況に月輝夜は神剣イガリマを地面に突き刺し、ヨトゥンの棍棒を片手で止めた。そして電弧放電で全員を感電される。そして神剣イガリマを手に取り、身体を回転させながらヨトゥン二体を横一閃に両断した。
そして前方の空に火の球を放つと火の球が爆ぜて、地上に焼尽が降り注ぎ、地上にいる妖怪が消し飛ぶ。
「強い!」
「なんて強さだ…」
「あれが中央大陸のスクナビコナ様と同じ鬼神の力…」
「ぼさっとしているじゃねーよ! ここは戦場だぞ! 霧が晴れている内に少しでも敵の数を減らすんだよ!」
流石に有名NPCたちは動きも判断の速さも全然違う。月輝夜の登場で侍たちは体制を整えることに成功したがまた白霧を発生させられた上に霧の中から火山弾が降って来るようになる。それを月輝夜が破壊していく。
ただ火山弾が放たれた一瞬の灯りを頼りに攻撃するが攻撃が当たらない。斬撃や波動技では遅すぎるのだ。かと言って、接近戦を挑むとそこは敵の真っただ中だ。流石にきつい。しかし敵は確実に桜花の都に迫っている。
そんな中、上杉謙信が提案を出す。
「あの虎は虎徹と言いましたか? 彼らなら恐らくこの状況に風穴を開けてくれると思いますよ」
「「「「え?」」」」
「ガウ!」
虎徹を尻尾を振って、やる気満々だ。というか余裕というドヤ顔をしている。しかし虎徹の事をあまり知らないカグヅチの侍ちゃんなどはその提案に待ったを出す。
「確かに虎徹さんのスピードなら灯りが見えた瞬間に霧の中の敵を襲撃出来ると思いますが周囲の妖怪に囲まれるのはどうするんですか?」
「それだけの刀の数があれば対処可能です。それに神剣十拳剣にそんな鎧まで着ているんですから心配は無用ですよ。もちろん全てを彼に託すわけではありません。虎徹殿が飛び出せは敵は虎徹殿を狙わざるおえないはずです。放置すれば敵軍は大損害を受けることになりますからね。なので我々は虎徹殿の飛び出しに合わせて、敵軍に総攻撃をかけることを提案します」
上杉謙信の提案にプレイヤーたちは尻込みする。自分たちも実力を付けて来たからこそあまり虎徹に頼りたくはないのだろう。しかしここで自分たちの切り札も使いたくはない。
「虎徹さん…お願いしてもいいですか?」
「ガウ!」
「くれぐれも無茶はしないで下さい。召喚主さんを怒らせると私たちがどうなるかわかりませんので」
虎徹と月輝夜が苦笑いを浮かべる。本当にみんなが思っている俺の評価はどうなっているんだ?とにかく桜花の都側では打って出ることが決まった。
「海に出た部隊がこちらの防衛に回ってきているそうだ」
「では、そちらには敵側面からの奇襲をお願いします。作戦開始の合図は」
「それはこちらが空に神波動を放ちます」
「わかりました。各自、準備を整えて下さい。それまでは防衛に徹します」
全ての準備を整えて、プレイヤーの一人が神波動を天に放った。すると敵は反撃とばかりに火山弾を使用する。その灯りを虎徹は見逃さない。神速と超加速、雷光を使用して、雷速で神剣十拳剣がムスペルの首を切断した。
しかし予想通り周囲の妖怪が虎徹に襲い掛かる。それを虎徹は尻尾の刀を四方八方に振ることで全方位の妖怪を斬りまくりながら移動する。虎徹の天耳通が白霧を発生させている音を捉えていたのだ。
霧の中を稲妻が走る度にヨトゥンが倒されていく。しかしここでムスペルが虎徹に棍棒で攻撃して来た。虎徹はあっさり躱すと空虚を使って霧の中に逆に隠れる。ムスペルはすぐに虎徹がいた場所に溶ブレスを放つが側面に回った虎徹に旋風刃を浴びる。
「オォオオオオ!」
これに耐えたムスペルだったが斬れる竜巻を浴びたことでプレイヤーたちからは位置がバレバレだ。みんながムスペルの体を斬り裂き、止めを刺す。その間にも虎徹は妖怪たちの相手をしていると霧の中からヨトゥンの手が現れる。
こいつも空虚で隠れていたのだ。虎徹は刀でガードするがパンチで吹っ飛ばされると追撃を受ける。しかし虎徹が着地した場所は霧が晴れている場所だ。
虎徹に襲い掛かったヨトゥンの顔に装備を酒呑童子の金砕棒に切り替えていた月輝夜が閃電の一撃がカウンターとして炸裂すると鬼太鼓の効果で大爆発して、宙を飛ぶ。
それを見た虎徹はヨトゥンより先に宙を取ると覇撃をお見舞いして、それを見た月輝夜は地面に墜落したヨトゥンに覇撃を放って、倒される。巨人の中には結構強い奴が紛れ込んでいるのは間違いない。それをここで倒せたのはでかい。
そして虎徹はここで月輝夜と合流するとここで海からやって来た沖田たちが敵側面に奇襲をかけて、一気に桜花の都の防衛を任された部隊は敵を押し返した。
「作戦は成功です。各自順番に休憩を取って下さい」
みんなが桜花の都で休憩を取る。
「やっぱり幼女サモナーさんの召喚獣はレベルが違うな」
「やっている事は私たちと同じなところが凄いですよね」
「しっかり連携していたもんな」
「それだけ幼女サモナーさんは召喚獣同士の連携や助け合いを重要視しているってことだろうな」
みんなが上杉謙信と一緒に水茶屋の娘さんたちからお団子を貰っている虎徹を見る。
「なんというか…」
「ああいう所まで召喚主に似る者なのかね~?」
水茶屋の看板娘は江戸時代のアイドル的存在だ。それを上杉謙信と独占している虎徹は相当なものだが、本人はあまり女性に媚びを売るタイプではない。原因は虎徹の活躍を彼女たちに話した上杉謙信にある。俺は全く関係がないと彼らに訴えかけさせて貰おう。
その後、戦いは他の場所と同じ流れになる。妖怪の数が減り、巨人の数が増えて来る。それに合わせて、直江兼続も作戦を変える。腕がある侍たちを巨人の撃破や足止めに割り振ったのだ。
侍たちは攻撃を見切る能力と間合いに入るための瞬間加速は他の職種の中でもトップクラスだ。だから巨人の周りを走り回るだけで足止めには十分だった。しかし確実に巨人たちは桜花の都に迫っている。
ここで空から日輪が放たれ、巨人たちが消し飛ぶ。
「聖徳太子様!」
「お疲れ様です。皆さん。戦況はどうですか?」
「妖怪の数は減ってきているのですが変わりに巨人たちの数が増えて来てます」
「そうですか…よく地獄の妖怪たちを食い止めてくれました。もう少しの辛抱ですので、頑張ってください」
聖徳太子の予言に直江兼続は質問すると聖徳太子が答える。
「既にこの状況を止める為に大陸の冒険者たちが動いています。彼らの作戦が成功すれば巨人の数も落ち着くはずです」
「ガウ」
「グオ」
「えぇ…動いているのはあなたたちの召喚主ですよ。彼の作戦が成功したら、お知らせしましょう」
これを聞いた虎徹と月輝夜はここでの戦闘がもうすぐ終わることを確信するのだった。




