#1321 世界を見渡すオーディン
俺とリースがアースガルズに行くとオーディンのカラスが飛んできた。
「話を聞きつけるのが早いのぅ」
「話ですか?」
「む? ロキたちの情報を聞きたくてやって来たのではなかったのかの?」
「いえ、リースの専用装備の試練を受けに来たのですが…何か分かったんですか?」
どうやら誰かと入れ違いになってしまったらしい。リースの専用装備を受けたいが先にロキの情報を貰うことにした。
「ロキは巨人が乗れるほどの巨大な船を作ったようじゃ。ここにムスペルたちが入っていくのをフリズスキャールヴで確認しておる」
フリズスキャールヴはオーディンが世界を見渡すのに使用する高座の名前だ。神話ではこれでパルドルを殺して逃げ出したロキをオーディンが見つけている。
「船と言う事はやはり海から来るんでしょうか? それとも空を飛んだりしますか?」
「ふぉっふぉ。お主たちが持つ異星の船のようにはいかんよ。ムスペルヘイム中のムスペルを運ぶ上に空まで飛ぶとなるとどれだけの力が必要になると思っておるんじゃ?」
研究者とかじゃないので、分かりません。ただたくさんの巨人を乗せて海に浮かぶ船を作製する大変さはなんとなく分かる。ノアズスクナでもノアが一生懸命作製してくれたからいいけど、俺たちじゃ無理だったとはっきり言えるもんね。とにかくこれで海からの進軍があることは確定した。これはラグナロクの神話の通りだ。
ただここからオーディンが俺たちが知るラグナロクとは違うところを教えてくれる。
「今回のロキの反乱にはヨトゥンヘイムとニヴルヘイム、ムスペルヘイムの巨人たちと魔獣が参戦する。他の世界の奴らはロキに手を貸してはいるが直接の戦争参加はないと思ってくれて良い」
逆に言うと敵の装備作製にドヴェルグが手を貸していると宣言された。これは俺たちも敵の強さの認識を変えないといけない。何せミョルニルを作ったのがドワーフだからね。このゲームでドワーフの進化であるドヴェルグが手を貸しているとなるとそれなりの武器を想定しないといけない。更にオーディンの話は続く。
「ここからが重要な話なのじゃが、ムスペルの巨人たちは船に乗るなどの動きを見せておるのじゃが、他の巨人たちは動いておらんのじゃ。装備はしっかりしておるから戦う気があるのは確かなんじゃがな」
「え? ムスペルたちと同じ船に乗ったり、徒歩で進軍しているわけじゃないってことですか?」
「複数の船を作ってはおるが無人の船が結構ある感じじゃな…ロキの奴の狙いは儂らであることは明確じゃが、サタンと手を組んだ時点で世界中に対して何かしらの侵攻を考えるはずじゃ。それなのに動きがないのが不気味でのぅ。一応お主たちに話しておくことにした。他の神たちにこの事を伝えるかどうかはお主たちの判断に託すわい」
これは伝えた方がいい流れなんだろうな。ラグナロクも話によっては微妙に違っている。フリュムが船に乗っていたり、ロキがムスペルたちを乗せた船を運転する話もある。その話がある一方、ムスペルたちはスルトと一緒に現れたり、フリュムが普通に現れる話もあるのだ。どの話が適応されるのかそれともある程度全ての話を拾って来るかは分からない。
俺としてはある程度の話は拾ってくると思う。全世界に戦争を吹っ掛けるなら大体のラグナロクの話は拾って来る上でこのゲームのオリジナルのラグナロクをして来るだろう。そしてオーディンのこの話で運営が悪巧みをしていることも確定した。
普通に歩いて来ないなら考えられるのは転移だろう。いきなり転移で現れてからの奇襲作戦…うーん。このゲームの運営がこの情報を出してまでこんな手を使って来るかな?もっと別の事を狙っていそうな感じがする。特に今回の敵は神の中でもトリックスターとして有名なロキが相手だ。普通の戦術はとって来ないだろう。
一応各国のギルドマスターにメールで伝えようとすると俺のところに伝えようとしたメールが届いた。本当についさっき入れ違いになったんだな。長文打たずに済んで良かった。一応俺もアテナとスサノオ、時々ご飯をつまみ食いしていく九尾に伝えておこう。
フリーティアが襲われるなら海からかアジ・ダハーカが現れたイエローオッサ山が濃厚だと思う。俺としては相手にムスペルがいるなら火山を使う可能性のほうが高いと考えている。その場合は九尾たちと激突することになるのがロキ側の悩みではあるのだが、スルトの怒り様からするとフリーティアが狙われそうなんだよね。俺がちょっかいをかけたせいなんだけどさ。
スルトが来るにしてもフリーティアの防衛にはシルフィが担当することになるだろう。流石にフリーティアの最強戦力の一人でしかも王族で守護竜まで召喚出来てしまうなら自分の国を守るべきだ。そうじゃないと国民や騎士たちの指揮に影響が出る。
夫としては一緒に戦いたいけどね。エルフとの繋がりもフリーティアからすると重要ではあるから、俺の立場はエルフとの同盟としてフリーティアから派遣される戦力の一つという立場だ。これなら獣魔ギルドなどのフリーティアの戦力が国防に回っても大丈夫ということになるだろう。
最後に俺が個人的に気になっている事を聞く事にした。
「ファフニールはどう動くと思いますか?」
ファフニールがいるのはこのゲームではヒンダルフィヨン山だ。オーディンが言った世界にはいないので、ラグナロクで敵対するのか気になってしまった。俺の問いにオーディンが答えてくれる。
「あ奴は参戦せぬよ。儂らが戦った後に落ちている武器を拾いに来るくらいじゃろ」
実にファフニールらしい回答だった。とにかくファフニールの参戦は確約されたわけじゃないけど、ほぼないとみてよさそうだ。聞きたいことは聞けたし、本来に入ろう。
「ロスヴァイセの試練でいいんじゃな?」
「はい」
「わかった。では、儂の後について来なさい」
オーディンのカラスに案内されて、一つの神殿に辿り付くとクエストのインフォが来る。
特殊クエスト『ロスヴァイセの試練』:難易度SSS
報酬:ロスヴァイセの装備一式
特殊条件:騎乗できる召喚獣は一体のみ。召喚獣の種類は自由。
ヴァルキリーのロスヴァイセに騎乗戦闘で勝利せよ。
これで宮殿に入るとクエスト開始だ。俺は騎乗戦闘の召喚獣としてスピカを選ぶ。どうせ相手が乗って来る馬はスレイプニルだ。それなら手加減する必要はない。
「準備はいいか? リース」
「はい! 必ず勝って見せます! でも、あの…」
「俺もちゃんと手を貸すよ。ただ騎乗戦闘が上手なわけではないからお互い頑張ろうぜ」
「はい! 主様とスピカさんが一緒なら百人力です!」
滅茶苦茶気合いが入っているリースを一旦落ち着かせてから俺たちは宮殿の中に入ることにした。




