#13 生産職と周回
気がついたら、日間VRゲーム部門ランキングで2位、週間では5位になっていました。
まさかこんなにも読んでくださるとは思ってませんでした。
ありがとうございます。これからも更新頑張っていくので、よろしくお願いいたします。
若木の森から帰ってきた俺達はクエスト達成の報告をしてから、ご飯も兼ねて宿に戻ると一階が人で溢れていた……何事だ?
「タクト君! ちょうどいいところに!」
「どうしたんですか? これ」
「説明は後! 急いでお肉を焼いて!」
「えーっと……わかりました」
俺は調理場に行くとボア肉の山があった。え? これ、全部焼くの? 結局全部焼くことになりました。途中でリリーとグレイはちゃっかりお肉を食べている。当然あとでお代を要求されました。
人が多い理由は安くて上手い肉料理が食べられるお店があると噂になって、人が集まってきたらしい。
大げさだと思ったが、お客さんの中には泣いている人が結構いた。
「ボア肉がうめ~!」
「ボア肉をまともに食える日が来るなんてな……」
理由を聞くとボア肉は臭くてとても食べられる代物じゃなかったらしい。もちろん、肉の臭さが好きな人もいたらしいのだが基本的に敬遠されてきたものという話だ。それでいて、この町では主食がボア肉……感動する気持ちもわからなくはない。
とりあえず大量に焼いたので、しばらくは大丈夫だろう。俺もご飯を食べ、モッチさんにグレイのことを話すと同じ部屋で泊まっていいらしい。助かった。
それからログアウトする前にクロウさんのところに行くとルインさんと他に何人かプレイヤーがいた。
「お久しぶりです」
「あら? タクト君にリリーちゃんと……あら? 狼?」
「新しく仲間になったウルフのグレイです」
「ガウ!」
俺が紹介するとグレイは声を出して挨拶する。賢いな。
「てっきり幼女ハーレムを作ると思っていたが外れたか……」
「なんですか……その予想」
俺とクロウさんの会話に知らない単語が出たので、リリーが俺に聞いてくる。
「タクト。ハーレムって何?」
「俺も知らないな。クロウさんに教えてもらってくれ」
「わかった!」
リリーがクロウさんの元に移動する。
「ちょ!?」
「やるわね」
俺の言葉にクロウさんは慌て、ルインさんは笑ってる。リリーがクロウさんの前に行くとクロウさんを見上げ、質問する。
「ハーレムってなんですか?」
「ぬぐっ!? あ、あ~……子供にはまだ早いな」
「つまり知っているわけですね」
「人が躱そうとしている所に追撃を加えるな!」
失礼な。逃げる相手に追撃するのは当然でしょ。
「あ、あの!」
「ん?」
ルインと一緒にいた女性プレイヤーが何やら意を決した様子で声をかけられた。
「グレイちゃんを撫でていいですか?」
あぁ。この子、動物好きなんだな。俺はグレイに確認の視線を向けるとグレイは頷く。
「いいみたいだよ」
「やった!」
「私も!」
女性プレイヤーに大人気のグレイ。まぁ、普通、狼を撫でる機会がないからな。すると一人の女性プレイヤーがおそるおそる聞いてくる。
「か、噛んだりしませんよね?」
狼だし、普通はそこを気にするよね。
「大丈夫だと思うよ。グレイは賢いから」
心配していた女性プレイヤーがおそるおそる撫でると次第に馴れてくる。そしてグレイに手を舐められて、呆気なく撃沈した。グレイ、恐るべし。
「リリーも撫でる!」
リリーがそういうとグレイは嫌な顔をした。そして俺の後ろに移動する。どうやら俺を壁にしたらしい。
「なんで!?」
グレイの行動にショックを受けるリリー。なんでって首を絞めたからだよ。
「賑やかでごめんなさいね。クロウに何か依頼かしら?」
「はい。新しい素材を見つけたので、見てもらおうかと」
「ほぅ」
クロウさんの目が光った。やはり鍛冶師としては新しい素材には興味があるらしい。俺は水性石とピラニアの牙、ピラニアの鱗を取り出すとルインさんとクロウさんが驚く。
「水性石にピラニアの牙? ベータでも見掛けたことがない素材だぞ」
「ピラニアの鱗もね……しかも火属性耐性が付くって序盤で手に入る素材じゃないでしょ」
どうやらクロウさん達からしても、未知の素材らしい。マジか。
「これ、どうするつもりだ?」
「それがまだ考えていなくて……。水性石は魔石に出来ませんかね?」
「石だし、出来ると思うわよ? まぁ、失敗することはあると思うけど」
「石を魔石に使うなら武器は無理だな……。ピラニアの牙はどうする? 良い値で買うぜ?」
「うーん……武器も捨てがたい……」
水属性の武器……ロマンがあるね! そこでルインさんから提案される。
「それならこの素材が手に入ったクエストか何かを周回するしかないわね」
ちょっと待って……あれを? 巨大ピラニアと小さな岩場で一騎討ちを何回もしろと? ははは……きっつ。
「その様子だと大変な目にあったみたいね」
「えぇ……二メートルぐらいのピラニア相手に小さな岩場で一騎討ちをしました」
「何、それ?」
うん、訳がわからないだろう。でも状況を伝えるとこうなるのだ。
「ミュウ。新しい防具素材があるからこっちに来なさい」
「え!? 新しい防具素材!」
グレイを撫でていたプレイヤーの一人がルインさんに呼ばれ、ピラニアの鱗を見る。
「本当に新素材だね。でもこれだけじゃ防具は作れないね。残念だけど」
「あ、この子は防具職人よ。私達のメンバーなのよ」
ルインさんに紹介され、自己紹介をしてくれた。
「革細工師、レザーワーカーのミュウです。名前の由来は◯ケモンです!」
あぁ、伝説の奴だな。懐かしい。
「召喚師のタクトです。リリーとグレイです」
「リリーだよ!」
リリーが元気に挨拶する。するとミュウさんがルインさんを見る。
「えーっと……。この子って、掲示板で話題になってる?」
「そうよ」
「すご!? 本当に召喚獣なんだ! あ、フレンドにならない? 依頼があれば引き受けるよ」
それは助かる。防具職人は必須だろうからな。
「わかりました。じゃあ、登録を」
「「「ずるい!」」」
グレイを撫でていた三人が声をあげる。
「ミュウちゃん、モフモフを独占する気でしょ!」
「そうは行かないよ!」
「グレイさんは渡しません!」
「チッ!」
いや、グレイは俺の仲間なのだが……ミュウさんも舌打ちしてるし……ルインさんが場を落ち着かせる。
「はいはい。タクト君はクロウのお得意さんだし、みんなフレンドになれば問題ないでしょ? タクト君もこれからゲームしていくなら彼女達とフレンドを組んでおいたほうがいいわよ」
「じゃあ、お願いします」
俺の言葉に三人が喜ぶ。そして自己紹介をして貰った。
「木工職人、ウッドワーカーのユグです。杖や弓とか作れるからよろしくね」
「農家、ファーマーのユウナです。草、野菜、木を育てる職業だよ。野菜が食べたかったら、私に任せてね」
「薬師、ヒーリングブッダのハルです。英語名は苦手なので普通に薬師と読んでください。回復アイテムなどの作成をする職種です。よろしくお願いします」
わかる。ブッダ……仏様だもんね。名乗り辛いだろうな。俺は三人に自己紹介し、フレンドに登録した。しかし一気に増えたな~。