#1306 マヒシャのヴィマナ
墜落したヴィマナは再浮遊をしようとしたがセチアやミールたちが樹海支配で浮かぶのを阻止して、次々担当が割り振られたプレイヤーたちが殴り込みをかける。
とはいえみんながヴィマナの一番上にある庭園で見たのはリアンのエナリオス・クェイクが直撃して、庭園の地面にめり込んで倒れているアスラとラークシャサの姿だった。
「あーあー…」
「お前たちは喧嘩を売る相手を間違えたんだよ…」
「せめて解体して安らかに眠らせてやろう」
そういいながら解体するこの人たちにはただ解体したいだけだろうとツッコミを入れたい。そんな彼らに庭園の中央にある宮殿から弓矢が飛んできた。建物の中にまで攻撃は届いていないらしい。これをみんなが迎え撃つがヴィマナは敵の本拠地だ。当然敵に有利な効果がある。
「敵の回復が速いな…」
「幼女サモナーさんの鯨が持っている回復領域でしょうか?」
「そうだろうな。回復無効の武器が持っている者は攻撃をがんがん当ててくれ。長期戦は不利だ。ダメージ覚悟で押し貸すぞ!」
みんながごり押し攻略に挑むがヴィマナの構造に問題があった。ヴィマナは一般的な円盤型の巨大UFOの上が庭園と宮殿がある構造になっている。宮殿の攻略に向かうと下部分の巨大UFOにいる敵が宮殿内の救援に駆けつける事で宮殿内の攻略組が挟撃される構造になっていた。
「向こうから敵が来たな」
「ですね。下に降りる階段は俺たちが押さえますよ。ギルドクエストとか色々お世話になりましたから。任せて下さい」
「ふ…では、頼んだ」
宮殿の攻略は上位プレイヤー、下の雑魚敵は中堅プレイヤーが中心となり、抑える事になった。ここまではどのヴィマナも構造と攻略する流れは一緒だったが宮殿の攻略はどうやらそれぞれ違うらしい。
最初に突入に成功したのは俺たちから一番近かったマヒシャがいるヴィマナだ。ここにメルたち女性プレイヤー連合が攻略に挑んでいる。
「「「「ウー! ハ! ハ! ハァアアアー…ニャー!」」」」
「「「「な、何?」」」」
ここにいるアスラたちが上半身裸で俺たちが知っているアスラよりもムキムキのアスラがいた。武器はなく、空手の型を見せるような動きをすると変なポーズを取る。
流石にこれにはメルたちも絶句するがインドにはカラリパヤットという古くから伝わる武術がある。様々な動物のポーズの構えがある武術で彼らが見せたのはネコのポーズだ。
「「「「ウォオオオオオーーー!」」」」
そこからメルたちに全力疾走で襲い掛かって来た。普通に怖いのは通路の横や天井を走っていることだ。もちこんこんなことは現実の格闘技に出来るはずがない。運営は完全に遊んでいるな。
「あー! もう! 暑苦しい! 盾で殴ったら、なんで笑顔を見せて来るかな!? きゃ!?」
メルや他の通常職種の人たちは非常にやり辛そうだ。何せ普通に剣や槍を白羽取りして来るし、攻撃を当ててもその後にカウンターを受けてしまう。そして吹っ飛ばされると向こうは内気功や仙術の自己再生で回復する。
それが大群でやって来るんだから女性からすると悪夢だ。しかしこちらにも格闘家はいる。
「メル姉ちゃん! よくもメル姉ちゃんをやったな!」
「オォオオオオオーーー!」
「おりゃりゃりゃりゃりゃーーー! そこ!」
「オォ!?」
リサが腕が四つあるパンチの連打の打ち合いに勝つとアスラの腹に強烈な拳が決まって、吹っ飛ぶ。
「どんなもんだい! ん?」
「オォ―!」
「この! おりゃりゃりゃりゃーーー! でや! ちょ!? 待って!? なんでこいつら、あたしにばかりにやって来るの!?」
リサは完全にタゲ引きをしてしまった。そのリサの疑問にミライが答える。
「…いいライバルに出会えたから?」
「ナイスだよ! リサちゃん! 私たちは先に進もう!」
「助けてあげたのに何言い出すの!? あぁ!? 待ってよ! みんな! あ!」
「やぁ! 私たちも一緒に戦うから頑張ろう?」
リサの格闘家友達とそのパーティーが参戦して格闘家アスラと対戦する。その彼女たちはそれぞれ格闘技の技が違っていて、かなり強い。恐らく現実でも格闘技を嗜んでいるか憧れが強い子たちだろう。空手や柔道、ボクシング、少林寺拳法なら分かるが合気道やムエタイを使うとはかなり癖が強い。
そんな彼女たちに対してアスラたちは笑顔を浮かべると蛇のポーズを取り、彼女たちと格闘戦をする。最もゲームなのでスキルを駆使した格闘戦だ。派手な爆発や衝撃波、波動技の撃ち合いで廊下はボロボロになるがそんなことは気にせず、激しい拳と拳のぶつかり合いが続くのだった。
一方メルたちは宮殿の上を目指して上がっていくが当然同じアスラたちの襲撃を受ける。ここでメルたちも戦い方を変えた。相手を斬るのではなく、突き刺して窓の外に放り投げることで通路からどかす事にしたのだ。
「「「「オォオオオオオー!!」」」」
「…なんか怒っている声が聞こえて来るよ? お姉ちゃん」
「無視無視! 私には聞こえません!」
「空からアスラがどんどん降って来るんだけど!? 何が起きているの!? ミライ! ヘルプミー!」
まぁ、窓から投げ捨てたら、そりゃあ、下に戦っているリサたちが被害を被る。ミライがメルに避難の視線を向ける。
「えーっと…助けに行ってくれるかな?」
「…私を守ってくれる人がいる事が最低条件」
ミライは重戦士の盾役プレイヤーの人たちとリサたちの救援に向かう。その重戦士の人たちは通路で武技による壁を作り出し、アスラたちからミライを守る。
ただこうなるとメルたちも新たな戦術を考えないといけない。そこで活躍したのが銀たちだった。銀たちは多種多様な爆弾を投げつけて、アスラたちを翻弄している。
「催涙ガスだよん!」
「胡椒爆弾をくらえー!」
「それ…普通の爆弾」
どんな敵でも同じことがいるが自分がしたい戦闘が出来ないことが一番辛いことで敵の嫌がることをするのが勝利への道の一つなんだと証明している。ただこの攻撃にも欠点はある。
「へっくち! あ…」
「大丈夫だよん。メルさん。可愛いくしゃみだねん」
「う…にやにやして言われても」
「ここには男どもはいないから問題ないですよ」
女性にとって、くしゃみしている姿は男性には見られたくない姿らしい。俺は結構可愛い姿だとは思うけどね。特にリリーのそういうの気にしないからなんというかありのままの自分を見せてくれている感じがしている。
ここでメルたちは遂にボス部屋がみえる廊下まで来た。前にはアスラたちが並んで徹底抗戦の構えだ。これに対して先頭のメルがアーサー王のクエストで手に入れた盾を構える。その盾は俺がアーサーと戦った際に船として乗っていた盾だ。
「プリドゥエン! 伝説解放!」
プリドゥエンに描かれた聖母マリアの絵が光輝くとそれが盾全てに宿っていく。
「聖盾技! ホーリーマザー・オラシオン!」
プリドゥエンから日輪スキルのような特大の聖なるレーザーが放たれて、アスラたちを呑み込む。アスラたちは腕をクロスにして防御態勢になってはいたが流石に防ぐことは出来ず、不屈スキルで耐えた形だ。
「今だよ! 突撃!」
「「「「やぁあああああ!」」」」
「「「「ク…ウオォオオオオオ!」」」」
ボロボロの状態でなおアスラたちは真っ向勝負を挑んだ結果、全滅する。それでもあのボロボロの状態からメルたちの生命力を結構減らしたので、強さと不屈の精神は本物だ。その結果、メルたちはボス戦前に回復アイテムを使う事になる。
「みんな、準備はいいかな?」
「「「「オッケー」」」」
「じゃあ、ボス戦がんばろう!」
「「「「おぉー!」」」」
こうしてメルたちはマヒシャとの決戦に挑むことになった。




