#1304 ヴィマナ攻略会議
夕飯を食べ終えて、ログインすると夕凪の中で俺がよく知る兎のセリアンビーストが粘着糸で逆さまの蓑虫状態でいた。
「何しているんだ? 遊兎」
「面白そうだから亀さんの中に入ったら、皆さん寝ていて一緒に寝ようとしたら一瞬でこうなったでウサ…助けてほしいウサ」
そりゃあ、リリーたちが許すはずがないだろう。遊兎を助けて外に出ると今度は不機嫌そうなシルフィがいた。そして第一声がこれだった。
「今日の夜はタクトと二人で寝させて貰います」
「「「「えぇー」」」」
「えぇーじゃありません! 私抜きで二回も寝たんですから当然の権利ですよ!」
「「「「しょうがないな~」」」」
リリーたちがやれやれといったリアクションをするとシルフィは俺を睨んで来た。召喚獣の全責任は育てた召喚師にある悲しい現実だ。とにかく今日の夜はシルフィと寝ることが決まった。
この後はプシュパカ・ヴィマナとヴィマナの攻略会議をしてから攻略する流れが決まっているのだが俺はまだ成長を実行していなかったので、ここで纏めて実行する。
『セフォネの成長が完了しました。鮮血の魔眼、衝撃放射、星震、極寒ブレス、沈殿、加護無効、魔素解放を取得しました』
『セフォネの虚空切断スキルが時空切断スキルに進化しました』
『セフォネの復活スキルが強化復活スキルに進化しました』
『セフォネの魔力回復スキルが魔力超回復スキルに進化しました』
『セフォネの魔王障壁スキルが魔神障壁スキルに進化しました』
『ダーレーの成長が完了しました。格納、帰還、堅牢、衝撃放射、流動、不屈、起死回生を取得しました』
『ダーレーの聖水スキルが神水スキルに進化しました』
『サフィの成長が完了しました。暴食、回転激突、超低周波、粒子分解、気圧操作、月光、光化、水爆を取得しました』
『蒼穹の成長が完了しました。竜角、気力融合、雲海、超充電、超電磁、霊化、王撃、荷電球を取得しました』
『蒼穹の聖水スキルが神水スキルに進化しました』
『コーラルの成長が完了しました。気力融合、溶岩壁、戦闘高揚、真昼、王撃、光化、核撃、不屈を取得しました』
『千影の成長が完了しました。弓、気力融合、帰還、衝撃放射、爆風波、冥波動、身代わりを取得しました』
『千影の閃電スキルが雷光スキルに進化しました』
『千影の荷重操作スキルが荷重支配スキルに進化しました』
『千影が弓【矢舞雨】を取得しました』
これでよし。千影が弓を覚えたので、新しい弓と矢を用意しないとね。それにセチアが取得した矢舞雨を覚えるとは思ってなかった。こんなこともあるんだな。そういえば虎徹が覚えている五月雨斬りなども奥義書で確認されているんだった。
俺たちは遊兎をシルフィとリースたちに紹介して、遊兎の月での雑用の愚痴を聞かされているとみんなが集まったので、攻略会議が開かれる。
「まず四つのヴィマナの攻略から話しましょうか」
「ボス戦の前に接近するのに妨害はあると思っていいのか?」
「そりゃあ、ヴィマナ自体がお前たちのいうところの要塞のようなものだからな。当然攻撃して来るし、あいつらも黙ってヴィマナに乗せてはくれないだろう。ド派手な空中戦をするつもりでいた方がいいぞ」
インドラがそういうからにはまず空中戦は確定した。そしてみんなが怪訝点を話し合う。
「巨大UFOを見ると俺は巨大UFOから守られている小型UFOのイメージがあるぞ」
「実際にこのゲームでUFOは出て来ていますから普通にありそうですね」
「プシュパカ・ヴィマナもどうしても天空の城をイメージしちゃうわ」
「出て来るなら飛行ゴーレムってこと?」
「そのイメージなら空は飛べないと思うがウッドゴーレム系がイメージに合うな。飛行ゴーレムというならガーゴイル系になると思う」
いずれにしても硬さが結構厄介な敵が来そうだ。後はチャリオットも使われているし、ほぼ確定で出て来るだろう。
「空ならやはり運んでもらうのが確実か」
「地面に落としてから乗り込むのはダメなんですかね?」
俺の呟きにみんなが俺を見るとインドラが言う。
「それが出来るなら一番手っ取り早いだろうな。言っとくがかなり厳しいぞ」
「ダメか…忘れてくれ」
「そこで引いちゃうんだ」
「今のお前さんの戦力なら普通に出来そうだと思ったんだが? 試す価値はあるんじゃないか? 正直空中戦がまだ慣れていない人もたくさんいるからな。攻略を担当するなら落として貰った方が正直楽だ」
「それに今の呟きは勝算があって言ってますよね?」
否定はしない。あれならたぶんヴィマナを全て落とすことが出来ると思う。問題は威力があり過ぎる所だが、上手く制御して貰えたら、大丈夫だろう。
俺が作戦を伝えるとみんなから賛同を得られたので、試すことが決まった。次に担当するヴィマナを決めるわけだが、その前に俺はある懸念点について話す事にした。
「シータ姫は地下世界に幽閉されていると聞いたのですが…プシュパカ・ヴィマナにいるんですかね?」
「…それは誰からの情報だ?」
「シェーシャからです」
「あの野郎がそんなことを言っていたのか…まぁ、信じるかどうかお前たちが決めるんだな」
インドラのこの様子は間違いなさそうだな。恐らくシータ姫は地下世界にいる事はほぼ確定だ。更にインドラジットの解体でシータ姫の檻の鍵とアグニ・タルワールが二本、大量のナーガパーシャが手に入ったそうだ。ナーガパーシャは恐らく攻略に参加した人数分あるのだろう。これはルインさんに任せて、プレイヤー全員に配ってもらう。
これを踏まえて議論する。危険ではあるが時間が限られているので、戦力を分けて攻略することになった。
「まずシータ姫の救出はラーマたちとレイジさん、シルフィ姫に任せて、タクトさんたちがプシュパカ・ヴィマナを担当でいいですか?」
「はい」
「え…ええんかいな? ずっとシータ姫を救出するクエストをすすめていたんわギルマスやろ?」
「だからこれが最善手なんだよ。もちろん俺からも護衛に出す。監視役とかいないはずがないからな」
ハヌマーンの話では地下世界の入り口はプシュパカ・ヴィマナの現れた湖の底にあるらしい。水中となるとやはり召喚師の力が欲しいということで俺からはイオンたちを出す事にした。ラーヴァナの相手をするのが俺と確定している感じなので、シルフィがシータ姫の救出に向かうのがいいだろう。逆でもいいんだけどね。シルフィにはなるべく危険な目には合わせたくない夫心です。異論はでなかったので、話を進める。
「問題は他のヴィマナの攻略ですね。情報を整理して担当を決めましょうか」
まず分かりやすいマヒシャから決めていく。マヒシャは以前にも言ったが男と神では勝てない相手だ。よって、担当は女性となる。
これと逆になるのがナラカの攻略だ。何せアプサラスを誘拐した奴だからね。担当するのは男性がいいだろう。
次にナムチだが、ここにはインドラが参戦する。スカー酒を持っているはずなので、恐らくインドラはこれをナムチに飲ませて以前の仕返しを狙うんだろうけど、そんな簡単にいくかはちょっと謎。実力ではインドラの友というくらいだから一番強いのが濃厚だろう。
最後にシュムバ、ニシュムバの兄弟。こいつらはぶっちゃけ怖いのは数とシュムバの実力だ。
「敵が数で来るならシュムバ、ニシュムバの兄弟は召喚師とテイマーが担当するのがいいと思います」
「どれだけ強いか知らないけど、私なら倒せると思う」
「では、ルークさんとチロルさんたちに任せるとしましょうか」
「他のところにプレイヤーを割けるしな。実力もあるし、異論はない」
というわけで最初に決まったのはルークたちの担当だった。ただここからは結構揉める事になる。やはり上位プレイヤーをどこに割り振るかがポイントなんだよね。ボスを倒せないとプシュパカ・ヴィマナに挑めないし、しっかり協議して担当を決める。
「じゃあ、マヒシャの相手は私たちだね」
「お願いします。メルさん」
「まぁ、タクト君が喧嘩売ったみたいだし、責任もって倒させて貰うよ」
喧嘩を売ったとは思うけど、あいつは買ってないと思うんだよね。ここにはトリスタンさんやミランダ、銀たち、カグヅチの契約者など女性の上位プレイヤーたちが集結した。
「ナムチの相手は僕たちですか…よろしくお願いします。皆さん」
「こちらこそよろしく頼む」
「女性少ないけど、頑張りましょうね。シフォンさん」
「はい! マダムさん!」
ナムチにはブルーフリーダムのメンバーにライヒ帝国メンバーにブルーフリーダム、鉄心さんたち、シフォン、サラ姫様などが集結した。ぶっちゃけ俺たちはインドラを信用していないメンバー選びである。ここに兎のセリアンビースト部隊も参加する。
最後に決まったのがナラカでアーレイに満月さんたち、与一さんたちなどが割り振られた。
「納得いかねー…どうしてサラと分かれることになるんだよ…」
「まぁまぁ。アーレイさんも上位プレイヤーとして認められているって事ですよ」
与一さんはそう言っているがアーレイを推したのはミランダだったんだよな。あの顔は完全にアーレイを貶めようとしていた。果たしてミランダの目論見通りになるのか俺としては気になる所だ。
後は作戦の段取りを決めて、料理バフと各バフを付与してから俺たちはこのエリアでのボス戦攻略が始まるのだった。




